私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

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前回のあらすじ

主人公ちゃん、破れたり。
そう思ったのもつかの間、怒りのパワーで劇的なパワーアップを果たした主人公ちゃん。(演出)
先ほどはぎりぎりアイリス・魔王・魔王の娘で一進一退の攻防だったのに……


不意打ちの爆裂魔法をなんとか耐えてみた

「始めようか、世界の終わりを――」

 

お父さん、 お母さん、元気ですか。

俺は元気に……逃げ回っております。

 

「ねえ、何でこんなことに巻き込まれてるのよ! 私、ただただ魔王城の観光に来ただけなのに! のじゃロリちゃんに連れられてアルカンレティアとか王都とか色々なところの観光してただけなのに! どうしていつの間に魔王の討伐なんかさせられようとしてて、なんかよくわからないけど狂っちゃった裏ボスのじゃロリちゃんのことを止めなきゃいけなくなってんのよ!」

「俺が知るか! そんなこと言ってる暇あるんだったらさっさとその足を動かして逃げるんだよ!  本当にどうして俺の幸運値は高いのにこんな目にあってるんだ!  絶対幸運値が低いお前のせいだと思うんだ!」

「どうしてこの不幸を私のせいだって言うの……ヒィィイイィイッ!? 今なんか飛んできた! でっかい何か飛んできたんですけど!?」

 

 

今飛ばされてきたのはナナシと真正面から戦ってたアイリス。

俺が声をかけようとしたその瞬間には、吹き飛ばされてもなお強敵に立ち向かおうと、アイリスはすぐに立ち上がりナナシの方に神速一線で踏み込んでいた。

その戦いの様子に目をやると、アイリスの剣先のスピードが早すぎるあまり、まるで見えない。

しかし、ナナシは緩急の付け方が激しいのか、見えないどころか動いたことすらわからない時がある。

 

もはや次元が違う。

アイリスの攻撃でさえなんだかよくわからないくらいにやばいのに、それをナナシは未来を予知しているかのごとく、だ。

音なく研ぎ澄まされた刀を振るう合理の戦い方……それに肉体が追いついてしまったと言えばいいのか。

すでに完成されていた技が心技一体となり、華やかな演舞は音を置き去りにした。

 

この戦いに俺らが参戦しようものなら、俺たちが死んでしまうどころか、アイリスたちの戦いの足手まといになる。

特に俺とめぐみんなんか、アクアからドレインタッチで走れる分の魔力はもらえたものの、魔法を放つには圧倒的に足りない魔力量。

本当は役に立ちたいところだが選べる選択肢はただ一つ。

物理攻撃なんか一切役に立たない俺たちは、本当に逃げるしかない。

そう、別に怖いから参戦しないわけじゃなく、勝利をつかむための逃走を敢行しているとダクネスが。

 

 

「なあカズマ!  本当に私たちは逃げる他にないのか! アイリス様が戦っている以上私も戦いに参加したいのは山々なんだが、足手まといになるのは分かっている。でもこうして逃げるだけなのが歯がゆい。カズマ。 お前ならできるだろういつも通り卑怯で悪知恵が働いた鬼畜で非道な小賢しい作戦を打ち立ててなんとかできないのか!」

「なんかめちゃくちゃ俺のこと悪く言ってないか!?  しかも 簡単に言ってくれるなよ! あのナナシだぞ! 俺の小手先の技なんて一切通用しないし他の魔王軍幹部とはわけが違うんだよ!  しかも作戦なんて、結局いつものあれだろ! アクアが回復魔法と支援魔法、ダクネスが足止め、めぐみんが爆裂魔法を撃つ。 そんな状況ができるように俺がなんとか敵を誘導するんだ!  でもあいつを誘導してみろ、 一瞬で塵一つ残さず滅ぼされる、弱さには自信があるわ!」

「なんで胸を張ってる! どうして自分の弱さに自信満々なんだ!」

 

 

自分の弱い部分を認める、それも強さの一つ……

その強さでナナシを止められたらどれほど楽なことか。

 

そんなことを考えるも、現実的に、このままアイリスたちに戦わせてもこっち側の負けは確定だ。

暴走状態にあるナナシをどうにかして倒すなり封印するなりしないと、俺たちどころかマジで世界を滅ぼしかねない気がする!

…………どうしてそんなやつと戦おうとしてんだろ。

 

 

「逃げるんだ……勝てるわけがない! 勝てっこない!」

「はあ!? カズマさん正気!? このままじゃのじゃロリちゃんが世界を蹂躙し出すわよ! 私、まだ死にたくないわ! まだマイケルさんのシュワシュワの銘柄全部試せてないし、ゼル帝のお世話もまだまだしないとだし!」

「いや、世界崩壊したらゼル帝だって消えるんだし、お世話も何もないだろ。どうせなら本当になんかの拍子にドラゴンに急成長してナナシのことどうにかしてくれないかな」

「望み薄ですね。それよりちょむすけが暴虐の魔獣になって世界に終焉をもたらす方が確率ありますよ」

「お前たち! なんでそんな諦めムードで奇跡を願っているんだ! 今まで私たちが立ち向かってきた相手を思いだせ! ゆんゆんだとか、魔剣の勇者だとか、その街の冒険者だとか、私たちだけじゃ無理でも他の皆と協力してなんとかやってきただろうに!」

 

 

逃げ腰のアクア、現実逃避しすぎて一周回って冷静な俺とめぐみん。

そんな俺たちに叱咤するダクネスだが、そんなことできるわけ……

……いや、待てよ?

皆と協力してきた?

と考えたとき、そこでめぐみんがダクネスに。

 

 

「ですが、流石に魔王と爆裂魔法習得以前のカズマが戦ったところで勝負の結果が目に見えているように、いくら宇宙一と言っても過言ではない師匠に地上最強レベルの有象無象がかかったところでですよ」

「で、でもめぐみん、お前は前に倒したことがあったろう! ウォルバクの時に……」

「あれは魔力が溢れるほどあり、師匠の魔力も有限だったからこそですよ。今マナタイトが山のようにあったとしても、師匠の魔力の源を絶たない限りは我が爆裂魔法など無意味でしょう。現に、アクアの結界破りと私とカズマの爆裂魔法の組み合わせでさえ倒れない……ということは、どこからか魔力を引っ張ってきていると考えられます。流石に魔力源の大元は近くにないとおかしいのでこの辺りにあるとは思うのですが」

 

 

めぐみんの考察が当たっていれば、今の状況はウォルバクの時と同じってわけだ。

あのときの俺たちはどうしたっけか。

……確か、ナナシの魔力源であるタンクをめぐみんに使ってもらい、魔力枯渇を狙ってたよな。

でも今回は魔力を無限に生成しているらしい。

魔力の枯渇を狙うのは難しい…………けど。

 

 

「なあ、確か王都にも結界あったよな? あれもここと、ナナシの魔力源と同じ、魔力が無限に供給されるものなのか? ほら、ウォルバクの時みたいに使えるのかなって」

「おそらくは。ですがそこから魔王城を狙い撃つのは…………ここらか王都に行くには時間がかかりますし、行ったとしても精密射撃なんてできませんよ? できたところでアイリスたちに当たります」

「つまりはアイリスたちを逃がした上でなら問題ないってことだ」

「えっ……カ、カズマ?」

 

 

なんでこんな当たり前のこと気づかなかったんだろう。

まるで思考を誘導されてたみたいに俺らしくない考え方ばっかりしてた。

そうだ、真正面から戦わなくたっていいんだ!

俺の口元がニヤリと歪むのを見たダクネスが。

 

 

「な、何か思いついたのか!」

「ああ、飛び切りの作成を思いついたぜ! アクア! ドレインさせてくれ! まだまだ魔力量に余裕あるだろ!」

「そりゃ女神ですから。あとさっきの爆裂魔法の時のドレインタッチ2回でもいけ……って、なんとかなるんでしょうね! なんとかならないんだったらあげないわよ!」

「そんなに吸わないわ! ……なんとかしてやるから抵抗すんなよ! 『ドレインタッチ』!」

 

 

逃走の際に引っ張っていたアクアの手からドレインタッチで魔力を吸い取る。

その量、2人分のテレポート。

めぐみんはその魔力を自分に譲渡してくれるのかと思っていたらしく、一向に流れてこない魔力に不安げに。

 

「わ、私は何をすればいいのですか? 魔力がない魔法使いなんて戦闘力たったの5。53万に一般市民と変わらない存在が抵抗できるわけもないのですが……」

「いや、お前は今回の作戦一番のアタッカーだ。王都にテレポートで転移したら好きなだけ撃たせてやるからそれまで待ってろよ!」

 

 

そこまで俺が言った瞬間、アクアの体がピシリと硬直する。

ナナシの魔法でも食らったかと心配になっていると……

 

 

「カ、カズマさん? 今、テレポートで王都に行くっていったわよね?」

「言ったな」

「今吸い取った魔力量って二人分よね? 非力でか弱い乙女な私とめぐみんが先にテレポートで安全地帯に行けるのよね?」

「お、おい! その言い方だと私がまるでか弱い乙女じゃないように聞こえるんだが! 訂正してくれ、私とアクアとめぐみんがか弱い乙女だと訂正を求む!」

「何言ってんだお前ら……。か弱いのは俺とめぐみんだろ。お前ら二人は居残り組。じゃ、そういうことでお先に……」

「「!?」」

 

 

『悪いな二人、このテレポートは2人用なんだ』

某おぼっちゃまの様な台詞を聞いて驚愕の表情を浮かべるアクアとダクネス。

 

 

「……あら、よく聞こえなかったわ? 私とめぐみんって言ったのよね? いやだ、間違ってカズマさんとめぐみんってきこえちゃったんですけどぉ!」

「いや、そう言ったんだが?」

「いやぁ、私の耳も戦闘の余波を庇い続けたせいでおかしくなったらしい。こんなに傷だらけの私をか弱くないとは言わせない。一乙女として、たまにはめぐみんのような扱いをされてみたいものだ」

「回復魔法一発で治るかすり傷しかないやつがなんか言ってら」

「おい、私がこの中で一番弱いもの扱いされてる気分になるのでいちいち『誰々とめぐみん』と言うのはやめてもらおうか。魔力が枯渇したから動きが悪いだけで、このメンバーの中ではダクネスの次に物理が強い自信がありますよ?」

「おまえは魔法使いの自覚持て」

 

 

今現在最終決戦の真っ最中みたいなもんだぞ?

全く本当に、どうして俺たちはこうもまとまりがないんだ……

そんなまとまりがない状態なのに……どうして調子がいいんだろうか。

 

 

「アクア! 支援魔法でこの状態維持し続けてくれ! お前の支援がなくなったらただでさえ押されているアイリスたちが耐えられなくなる! 10分もかからない! すぐに迎えに来るからそれまでは耐えてくれ!」

「……はぁ。まったく、カズマってば私がいないと何にもできないんだから! 任せられたわ、でも早く戻ってこないと承知しないわよ!」

「もちろんだ! なんなら遅くなったら1秒ごとに高級シュワシュワおごってやってもいい」

「…………やっぱり少しだけ遅れてきてもいいわよ?」

 

 

まるで現状維持だけなら何の問題もないからと言ってるように聞こえるが……

物欲に目がくらんだだけなのに、駄女神の魔法はどういうわけか信頼に足るものがある。

まあ、単純にやる気が上がってくれればいいかなと思って言っただけで、遅刻するつもりは毛頭ないのでその言葉は無視しておくものとする。

 

 

「ダクネス! お前はアクアを守ってくれ」

「ああ。戦いの要だ、しっかりこの身が邪心に支配されようとも守り切ってみせる!」

「今、邪な神じゃなくて邪な心ってニュアンスに聞こえたんだが?」

「そそそ、そんなことはない! 会話してる時間も惜しいだろう、早く行け!」

 

 

こいつ、目ぇそらしやがった!

戦いに集中してる風を装ってるが絶対違う!

ナナシに支配されるとかも心配だが、今は自分の欲求に抗えるかどうか怪しくて心配なんだが……

まあ、いつも通りだし、なんとかなるだろ。

 

 

「よし、じゃあ頼んだぜ! めぐみん!」

「は、はい! 掴まりましたよ!」

「じゃあいくぞ! 『テレポート』!」




次回

バーソロミュー・かずま。
PX-めぐみん。

どっち!

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