カズマがめぐみんとどっかいった後、ウィズたちが登場。
魔物の大群で押し寄せ、ナナシの結界を破り、さらなる戦いが繰り広げられようとしていた。
※今回、ゼーレシルトさんは登場しません。
お店のレジ打ちを一生懸命しています。
<カズマ>
「テレポート」
俺はそう叫び、 アクセルの街にある俺たちの家へと転移した。
もちろん俺とめぐみんだけで情けなく逃げたわけではない。
「どうして王城じゃないのですか! 王城であれば即戦力の王様や王子様がいるじゃないですか! まさかみんなを見捨てたわけじゃないですよね!」
「違う、違うから! だからめぐみん、背負ったままの俺の首を絞めるのをやめようか!」
「ならばどうしてアクセルの街なのですか! 王城にテレポートせずにどうしてアクセルの街なのですか!」
「とりあえず落ち着け! そもそも俺は王城にテレポート地点の登録してないんだよ! 今登録してるのはココとダンジョンと魔王城だわ! ……なあ、俺が何の考えもなくアクセルに飛んできたと思ってんのか?」
「そ、 それは……すみません確かにそうですよね じゃあ一体どういう算段で?」
「話すより見てもらったほうが早い! とりあえず俺の目的地に行くぞ!」
そう言って俺はめぐみんを背負い、 ある場所へと向けて走り出す。
その途中でめぐみんも俺が考えていることに気づいたのか、 ハッとした表情をしていた。
俺が向かっている場所、 それはウィズ魔道具店だ。
「ウィズ! いるかウィ……」
「フハハハハハ! 来たか来たか、お得意様の元アルバイターよ! 貧乏ながらに美人な店主かと思ったか? 残念わが輩でした!」
「バ、バニル! ウィズはいるか! ちょっと頼みたいことがあってきたんだが!」
「もちろん、 もちろん 店主は今ここにはいないから我輩が出ているのだ! ……おおっと、 そんな残念そうな顔をするでない幸運な男よ。 我が輩は貴様がどうして今ここにそんな慌てた様子で来たのか、その全てを知っている。何せ我が輩、見通す悪魔バニルであるからして。 おおっと、別にからかっているわけではないのだが悪感情は ありがたく頂戴するのである」
「からかっていないだって? 今の俺は余裕がないんだ、だったらどういうことかさっさと説明してくれ!」
「ふむ、 先ほど言ったであろう? 我が輩はこの状況を知っているのだ。ナナシと 長いこと生活したおかげか、 吾輩の見通す能力がもう1段階進化したようでな。 その上でもう1度言ってやろう、この状況は貴様が望んでいる最も望ましい状況である。……と、噂をすれば何とやらであるな」
バニルがにやりと 俺の方を見ながら顔を歪めていると、店の扉がバタンと開く。
そこにいたのはウィズ魔道具店の他の面々――ウィズ、ウォルバク。
それに加え、どういうわけかダンジョン支部のセレスディナとウィズ魔道具店に関係のないゆんゆんも一緒で、全員の背中には巨大なリュックが背負われていた。
「ちょ、ちょうど良かったウィズ、ウォルバクさん! それにゆんゆんまで! 緊急事態なんだ、手伝ってもらえないか!」
「ええ、もちろん、 バニルさんからお話を伺っております」 何でも魔王さんとお嬢様がナナシさんと喧嘩をなさっているだとか」
「喧嘩するほど仲がいいとは言いますが、 さすがにこの規模は見過ごせません! 私にもお手伝いさせてください!」
「おおっ、ありがとう二人とも! なら話が早い! 確かゆんゆんは王都にテレポート登録してたよな! すぐにテレポートの準備できるか!」
「もちろんです! 今準備しますのでちょっと待っててください……」
そう言ってテレポートのために魔力を練り出すゆんゆん。
ゆんゆんを見つけられなかったら、直通のダンジョンを使って王都の近くまで行こうと思ってたが、 まさかゆんゆんが必要だと知ってて……
「もちろんである!」
「人の心を勝手に覗き見るな! 確かに この方が話早いけど! ……ただなぁ、悪魔がただ働きするはずないよな?」
「おおっと小僧、 我が輩のことを見くびるでない。人類が滅んでしまっては悪魔にとっても不本意なのである。 契約したいというのならまた別だが、 今回は大盤振る舞いの大 サービスである! 赤字覚悟でバーゲンセールするのでじゃんじゃん使うが良い!」
「…… あくまで金は取るんだ」
「無論、商売に口うるさい悪魔故に」
正直、俺には今までために貯めておいた貯金があるし、 きっとナナシを止めれば王様とか魔王とかから褒美の金もらえるだろ。
……いや、 今からやろうとしてる作戦的に魔王たちからは一銭も出なそうだが、それでも元魔王軍幹部たちが味方となってくれるのはありがたい。
まあ、この仮面の悪魔のことだ、 きっと俺の全財産をむしり取る気だろうが、 今はそんなことにかまってる暇はない。
「全財産むしり取る気だろうと思っている小僧よ、それ相応の働きに応じて金額を要求するのでそこのところは心配せずとも良いぞ?」
「それ相応の働きって……思ったんだが そのクソデカリュックには 一体何が入ってんだよ? めぐみんより重そうじゃないか」
「おい、 重さの比較対象として乙女である私と比較しないでもらおうか。……ですが確かにその大きさ、一体何が入ってるのか気になりますね。 もしかして大量に仕入れた高純度のマナタイトですか?」
「惜しい、 実に惜しいところをついているのである。 実はこの中に入っているものは…………どんなモンスターでも手のひらサイズに縮小させる捕獲用のアイテム。その名もモンスターボー」
「はいアウトォオッ!! なんか著作権的に色々とアウトな気がするからやめろその名前は! 確かに手持ちのポケモンいっぱいありすぎてどんな状態になってるんだろうと思いを馳せたことはあるけどもリアルでやってくんな!」
俺が生まれた頃からある懐かしきゲームの記憶がよみがえる。
というか そのリュックの中に全部それなのかよ!
さすがに過剰戦力が過ぎはしないか?
いや、 一体そのボールの中に何が入ってるのかわかんないけれど!
そう思っているとセレスディナが。
「こん中にはアタシのダンジョンの一番深いところに出てくるモンスターが入ってんだよ。ドラゴンだのフェンリルだの、そこそこ頭が回る獣系モンスターがどっさりとな。ナナシお姉様の結界を破ったらこいつらのブレスと魔法で集中放火する算段さ」
「うっわ、お前えげつねぁ……」
「わざわざ遠くから駆けつけた先輩になんだその対応は……てかカズマ、鬼畜だの何だの言われてるてめえにだけは言われたくねえよ。もともとアタシらを呼びつけてお姉様と戦わせる予定だったんだろう? たく、人のことをこき使いやがって」
「でもこうでもしないとナナシには勝てないだろ? そもそもこの現状の戦力でさえ勝てるかどうか怪しいのに……。でもそのモンスターたちがいれば……いや、なんかあいつに勝てる未来が想像できないんだが 一体どういうことだってばよ」
「それだけの規格外ってことだ。正直、魔力発生装置がなければ魔道具店のメンバーで安全に持久戦に持ち込んでお灸を据えてやることはできると思う……が、さすがに無限のエネルギーを持ってちゃ持久戦で百日手、一生を費やしても終わらない戦いになる」
と、ここでゆんゆんの詠唱が終わったのか「いつでも テレポートできます」と俺に視線で合図を送ってきたゆんゆん。
1回のテレポートで運べる上限は通常4人まで。
最初に俺とウィズ、ウォルバク、めぐみんを送ってもらい、ゆんゆんたち三人は後から合流してもらうことになった。
ゆんゆんの魔法によって最初に飛ばされた俺はほかのメンバーに。
「よし、そしたら王都をテレポート地点登録してないやつは俺と同じく登録してくれ! 俺が魔王城にテレポートさせる前に!」
「わ、わかったわ!」
ウィズは登録してたみたいだが、そうじゃない俺とウォルバクは急いで設定する。
もちろん爆裂狂いはそんな魔法を覚えているはずもないことは知ってる。
わざわざ「私は覚えてないですよ」とか報告せんでいいわ!
と、その間にゆんゆんとバニル、セレスディナが到着した。
全員ちょうどいいタイミングで集まったから登録作業をしながら今回の作戦の指示を飛ばす。
「今回の目的はナナシを倒すことじゃない、みんなにはこっちの準備が準備し終わるまでの間、ナナシの感心を引きつけておいてほしい!」
「フハハハハ! つまり時間稼ぎであるな! ……しかしそれだけでよいのか? 別に倒してしまっても構わないのだろう?」
「おい、冗談でもそんなこというんじゃない!」
「失敬失敬、ついつい破滅願望が漏れ出てしまった……まあ、まさか自分が挑む側になろうとは思わなかったがな」
バニルが面白そうに顔をにやつかせるのを見て、何というか、むしろ頼もしさを感じる。
だってそうだろ、あんな強い相手を前にして飄々といつも通りなんて心強い。
強いていえば破滅願望むき出しにして真っ先に何の役にも立たないまま死んでしまわないかが不安だが、多分そういうやられ方は本人にとっても不本意だろうし、きっとしないだろう。
「とにかくそういうわけだ! テレポート使えるウィズ、ウォルバク、ゆんゆん! 準備ができたら俺もそっちにテレポートするから、それを合図にみんなをここへテレポートで避難させてほしい!」
「あ、ちょっと待ってくださいカズマさん! もしよかったら紅魔族のみんなにも協力を求めようと思うんですが……」
「よし分かった、それじゃあまずは紅魔の里に行ってくれ! そんで、できれば 何人かは残ってもらって、変な兵器を稼働させるように指示を出しておいてくれ!」
「あれ、皆は魔王城に行かなくてもいいんですか? 多分みんなノリノリで魔王城に乗り込むと思うんですけど……」
「魔王城へ行く目的は戦力の増強じゃない、少数精鋭で全員を魔王城から避難させたいんだ。だから連れて行くにしても1パーティーくらいだ。紅魔族には協調性のきょの字もなさそうだし、 連れて行くなら戦闘の邪魔になるようなことをしない奴らがいいんだが……。それよりも紅魔族には王城でナナシが作った魔力発生装置の解析をしてもらいたい、いけるか?」
「りょ、了解しました! とりあえず里のみんなにはそう伝えておきますね!」
ゆんゆんが ぶつぶつと「紅魔族で協調性がある人…… 協調性がある人…… あれ、もしかしていない!? どどどどうしよ……」などと慌てていたが、 俺より早くテレポートの詠唱を終えて紅魔の里へ向かっていった。
さすが本職、詠唱速度がめちゃくちゃ早い!
俺も負けじとテレポートの詠唱をして、ゆんゆんが消え去った後遅れて……
「よし、じゃあ頼むわ」
「任せてください、こう見えて私たち、結構強いんですからね?」
「知ってるよ。マジで頼んだ」
そう言ってウィズ、バニル、ウォルバク、セレスディナ――4人の元幹部連中を送り出す。
そしてここには俺とめぐみんだけ。
「……こう見えてってか、全員魔王軍幹部に席おいてた奴らだろ」
「そんな四人を相手にしても一切引くことなく戦える師匠はやはり師匠ですね。さて、カズマ。残された私たちは一体何をすればいいんですか?」
「そんなの決まってんだろ? いつも通りだよ、いつも通り」
そう言って、めぐみんにマナタイトを握らせる。
ウィズから貰った最高級のソレは家の価値よりも高い一品。
それが王城はゴロゴロとまるで子供が散らかしたレゴブロックのように散乱している。
ゲームでゲットした消耗品のアイテムを一生使わずにゲームクリアしたことがある貧乏性なプレイヤーならもったいないだとかいうんだろうが、俺は違う。
「さあ、いつも通りぶっ放しにいこうぜ、爆裂魔法!」
次回かも次々回かもしれない次回予告。
次回……次回こそ……!
魔王ゆんゆん! 降臨してくれ!
どっち!
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討伐
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共栄