私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

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前回のあらすじ

ウィズ魔道具店に助けを求めにいったカズマ。
ウィズ、バニル、ウォルバク、セレスディナ、そしてゆんゆんが戦力になってくれることになり、いざ、作戦を本格始動し始めたのだった。


魔王軍と戦ってたら新たな敵が降臨した

魔王城を覆い尽くす、崩落した天井から見える黒雲。

戦いの痕跡がいたるところに鏤められる中、仮面の悪魔に抱えられた生娘二人は辛うじて目を開けて戦況を見守っていた。

 

「魔王さん。幹部を脱退したのに図々しいお願いだとは思います。ですが、お願いできませんか」

「……相手が相手だ。むしろこちらから助力を頼むところであった故に好都合だ。いままで俺に散々迷惑かけてきた分、ここで返してもらうぞ」

 

魔法を撃つ手を止め、入れ替わるように支援へ回る魔王。

魔王の加護を受け取ったのか魔力量が目に見えて肥大し、先ほどにも増して存在感が際立つ。

 

「バニルさん。魔力供給源をお願いします」

「まさか召喚された者たちはこのような扱いを受けるとは思わないであろう鬼畜店主よ。まあ、我が輩は何にも痛くないので、召喚された者には申し訳ないが、文字通り出血大サービスしてもらおう」

 

仮面の悪魔の指が虚空を裂き、大地から無数の土塊の傀儡と悪魔どもが這い出てくる。

暗黒の軍勢が蠢く中、アンデッドの王たるリッチーは周囲から湧き出す悪魔に無慈悲に手を伸ばし、前に手をかざして道を切り開く。

その手は、悪魔どもの魂を次々と刈り取る。

命の焔(魔力)が尽き、魂が抜け殻となった肉体()が崩れ去り、召喚されて間もなく地獄へ送還される。

 

悪魔どもの残機を代価に静かに繰り出される呪文詠唱。

かつて氷の魔女と恐れられていた巧妙な冒険者の魔力に共鳴し、周囲の空間が揺らぎ始めた。

 

「ほぅ……。よもや、よもやだ。他者の魔力をそのように練り上げ……至高の領域に近い魔力のうねり。流石は氷の魔女。腐っても……いや、腐ったからこその賜物か」

「失礼ですね。肉が腐り落ちてしまったら、おいしく食べられないじゃないですか。……そして、貴女が帰ってこなくっちゃ、おいしく食べれません! 私はナナシさん、貴女を止めて見せますッ!」

 

本当にまさかまさか、肉弾戦が不得意とされている職業の魔女が、 どうしてそのような動きができるのだろうか。

モーゼの海割りが如く悪魔の海を掻き分け、視線が交差した瞬間、まさに流星が如く高威力かつ高速の魔法が結界に亀裂を入れようと放たれる。

……だが遅い。

 

「術式展開……破壊殺・羅針ッ!!」

 

さらに激しくなるだろう攻撃に対してギアを踏む。

闘気を感知する領域を展開、五感に頼らない敵情報の把握が可能になり、一挙手一投足が手に取るようにわかる。

そして、魔力が具現化され、周囲の温度が一気に下がったのを第六感が捉える。

 

技の種類、始動、癖、狙い、思考、感情までも、長く連れ添ってきたからこそわかる、思考が共鳴する。

……ならば、その共鳴のままに同じ動作を繰り出せばいい。

 

 

――今、静寂は破られた。

 

 

 

 

神の怒(メギド)が氷塊を穿ち、粉氷が飛び散り生物の肺を凍てつかせ、巻き起こる嵐(テンペスト)は雷を呼び起こす。

人知を越えた現象の応報の外でさえ人を死至らしめる、まさしく天災級(カタストロフ)

その中にいるナナシは動じず、その瞳は冷静に気配を、迫りくる敵を見据えていた。

 

「この程度では、私を止められない」

「ではこのようなものはいかがかな?」

 

仮面の人形がナナシの足下から、異様な増殖速度で生成され、掴み襲いかかろうとするが、瞬時に立ち退く。

その様子を見て、バニルがニィと不敵な笑みを浮かべ、未来を見通す目を赤く光らせながら、次の着地点へと人形を生み出していく。

 

「厄介な悪魔だ」

「ふはははは! 大して苦にも思っていないのが未来を見通すまでもなく表情でわかるぞ、副店長殿」

 

バニルの予知をもとに放たれる攻撃が、まるでナナシを追い詰めるかのように着地点に次々と襲いかかる。

しかし数度繰り返された展開は、ナナシが地に落ちず、空中で静止することで止まる。

 

地面を覆いつくさんと湧き出す爆弾。

初めて空に領域を広げたナナシ。

 

最初から空での戦いを選択していれば、一方的な魔法による蹂躙になっていただろうに、そうしなかったのは戦闘を楽しみたいが故の手加減か、それともわずかに残っている人の精神がそうすることを無意識下で避けていたのか。

どちらにせよ、この瞬間にナナシのリミッターは外された。

 

「嗚呼、夢のようだ。私を追い詰めるほどの強者との一時。この一時が永遠続けばいいのになぁ。そうは思わないか」

「生憎私は一線を退いた元冒険者ですので、永遠と戦い続けるのは遠慮しますね」

「むしろ力を持て余し、今に至っておいて何を今更。……人は至高の領域に踏み入れられない。人間であるが故に老い、そして死ぬ。だからこそ、アンデッドも悪魔も神になれば! ……そうすれば百年でも二百年でも鍛錬し続けられる。強くなれる」

 

――さあ、この身が朽ちるまで、この世界の終焉まで、私が失望するまで……共にいよう。

 

すべてを見下すナナシが魔法を弾幕のように張り巡らせ……逃げ道がないほどに詰め込まれた魔弾が到来し始めた。

それに対抗してウィズもドラゴンゾンビを盾にしつつ応戦しようとするも、高火力の魔法が次々と着弾すると灰となって消えていく亡骸。

魔法を魔法で打ち消しても次の玉が到来する。

 

バニルが絶えず生み出すも、次から次へと消されていくモンスター。

ウィズの回復手段が潰され、魔法によって強固な氷が壁として生成してもすぐに破壊される。

バニルの攻撃も届かず、かといってナナシに有効な高火力の攻撃を仕掛けために溜る暇さえない。

 

炎が巻き上がり、雷が地面を穿つ。

すべてがナナシの無差別な魔法。

均衡が崩れたかと思ったそのときだった。

 

「ウォルバク、援護しろ!」

「まったく! こんな予想外の考えを実行するだなんて、どこの誰に似たのかしら!」

「うっせぇ! ちょっとだしいいだろ! いいから神気寄越しやがれ! ほら、魔王ももっと力入れろ!」

「無茶言うな! 老いぼれにとんだ無茶注文してくれおって!」

「死ぬ気でやらねぇと殺られるんだ、出し惜しみなんてシケたまねすんじゃあねぇぞ!」

 

セレナが叫ぶと、ウォルバクがやけくそになってセレナの背中に触れ、自身の力の源を流し込む。

そして魔王も目を血走らせながら悲鳴を上げ、支援の術を送る。

 

「けっ、どうせアタシの傀儡の力も復讐の力も大して効かないだろうしな。だったらダークプリーストの力を存分に出し切ってやらぁッ! 『負の光線(レイ・オブ・ネガティブエナジー)』!!」

 

一人で切り開けないなら?

――二人で、それでもだめなら三人で切り開くまで。

 

神に一撃を届かせるには?

――自らが神と同じ力を得ればいい。

 

そんな単純極まりない脳筋な考えで怠惰を司る女神から神力の一部を魔法に乗せ、魔王によって強化された闇の力。

闇のエネルギーとでも言えばいいのだろうか、アンデッドに当たれば回復するダークプリーストの技。

生物に当たれば……体力を削り死に至らしめる。

 

それが今まさに朽ちようとしていたドラゴンゾンビに当たり、ナナシの魔法に当たり――

瞬間、崩れ落ちた体が形を取り戻すばかりか、破れていた翼までもが修復される。

瞬間、空間が歪み、正と負が交わり無になるように、光線も魔法も消滅する。

 

「店長さんよ、呆けてないでさっさと次の策考えろ! アタシの連れてきた魔物全部アンデッドに変えちまったんだ、アタシにできることは回復くらいってな。だからアンタはどうやって攻撃を通すかだけ考えろ!」

「お気遣いありがとうございますセレナさん。……ですが、攻撃が止んだのです。考える必要すらありません……『エクスプロージョン・オブ・セイバー』!!」

 

エクスプロージョンは通常広範囲、高火力の魔法……その火力を一点集中させ、光の速さで放つ。

全魔力を乗せて。

回避は不可能、防御も不可能、避けられない死の光線がナナシに向かって一閃。

それでも、心の中のどこかでよぎる「この程度では息の根は止まらない」という信頼に似た思い。

だからこそ、次の一撃を放つために魔力を回復させる。

 

 

弾幕の嵐がやみ、台風の目を見るとナナシと、何もなく孔が開いた胸。

そう、"何もなかった”

ぽっかりと空いた虚。

 

「……亜空間ですか」

「流石世界有数の魔法使い、博識だ」

「ふむ……流石に我が輩というチートな存在から見ても、それはズルではないか? というか、あの早さの魔法をどうして瞬時に展開したそれで回避することができるのだ。未来視や直感ではなく、見てから避けるなど、流石の我が輩でもドン引きである」

「流石は見通す悪魔殿、それすら見えていたとは」

「お褒めに預かり光栄であるな、ドン引きと言われて喜んでいるバトルジャンキーな邪神殿」

「そうだ、私は戦いが好きだ。まだまだ私のことを楽しませてもらうぞ?」

「まったく、一体どこまで底なしなのか、この見通す目を以てしても驚きを通り越して呆れるわ」

 

ナナシの魔力の高まりがもう一段上がる。

まだ、カズマは来ていない。

時間稼ぎはまだ終われない。

一体どうすべきか……

そのときだった。

 

「先生――いえ、邪神ナナーシャ! ……我が名はゆんゆん、紅魔族随一の魔法の使い手にして、一族を束ねる者! 紅魔族の長である私が引導を渡しに来たわ!」

「遅かったではないか。まあ仕方ないか、英雄(ヒーロー)は遅れてくるものだ…………が、神を見下すとは、少々頭が高いな」

 

ゆんゆんが魔王城の上空より、黒いドラゴンの背中から見下ろしていた。

 




次回

王の素質

どっち!

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