私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

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前回のあらすじ

魔王軍とナナシの戦い。そこにゆんゆんが参戦した。


新たな魔王の誕生を煉獄で祝福してみた

「――神を見下すとは、少々頭が高いな」

 

上空にいるゆんゆんをナナシが見上げる。

魔力のこもった言霊が、威圧的に大気をビリビリと振動させる。

しかし、ゆんゆんの表情は変わらずナナシを睨みつけていた。

 

「私は、先生を助けるためにここに来たんです! そんなただの虚仮威しで私の意思は揺らがないわ!  早く先生を返しなさい、裏の人格!」

「返せも何も、私こそが本来の体の持ち主であり、主人格である。 今までは名も無き人格を作り出し、 自由に動かせてやっていただけのこと」

「それが嘘でも本当でも、 私の大好きな先生はあなたじゃない! 覚悟しなさい!」

「覚悟するのはどちらか、思い知らせてやろう」

 

目を爛々と赤く輝かせて宣言するゆんゆん。

その言葉には 魔力がこもっていたのか、ナナシの言葉と同様にビリビリと大気を震わせ、 赤黒い火花を散らせる。

常人ならその言葉に込められた圧力に屈するしかないだろうが、 世界の頂点に立とうとしている邪神と戦闘民族の長はどちらも屈することなく視線を交わらせる。

しばらくして空気の震えが終わった。

それが戦いの合図と言わんばかりにゆんゆんは手持ちの魔道具を空中へばらまく。

見る人が見ればすぐわかる紅白の球体はその境目から割れ、 強力なモンスターたちを解き放つ。

 

「なるほど、人一人が持つ限界以上の魔力を感じたと思えば、 まさかそのようなカラクリだったか」

 

ナナシが見上げる場所には十以上のドラゴンの顎。

それは、かつて暴虐の魔獣として恐れられ、神格を持ってしまった漆黒の魔獣。

それに相反する純白の毛皮を持つ、世界に終焉ををもたらす人工精霊と右方の四神獣。

さらには、旧訳聖書に姿を現した深海の王の名を冠する巨大な龍。

日本神話の水神、はたまたギリシア神話に登場した不死の怪物を彷彿とさせる八街の龍。

そして、ゆんゆんを背に乗せ、翼を羽ばたかせ空を飛んでいるのは真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)

 

「全くどうして。もしや、 魔物調教師に職業を転じたか」

「私は紅魔族ですよ。生まれてこの方、就いた職業はアークウィザードだけです」

 

魔物の頂点と言っても過言ではない、 それらを取りまとめる紅魔族の長。

魔王でさえ、 ドラゴンや聖獣をその手に収めることはかなわなかったというのに、どうしてモンスターテイマの職業ではなく、アークウィザードたる彼女が強大な力を手中に収めたのだろうか。

 

「真なる魔王とでも呼ばせていただこうか、ゆんゆん。孤高を極めた魔法使い故に、自らが知らぬうちに魔王の力を開花させた者よ。その新たに目覚めた力を全力で私にぶつけてくるがいい。魔王からは逃げられない。古来から 世界に組み込まれているシステム故、私はそれを真っ向から対処せざるを得ない。が、全て受け止め、 技が出尽くしたが最後、絶望をくれてやろう」

「私が魔王だとか、世界のシステムだとか、よくわからないけれど……これだけは言えるわ。私はもう一人じゃない!  孤高の極みだとかいって私のことを惑わす算段だったのかもだけど、私は孤独なんかじゃない。こんなにも心強い仲間がいるんだもの! みんな!」

 

ゆんゆんのそんな声に応じるが如く、 強大な力を秘めたモンスターたちは阿吽の呼吸で攻撃を仕掛ける。

ナナシに襲来する龍の息吹。

灼熱の業火が2体の漆黒のモンスターから吐き出され、次の瞬間、リヴァイアサンが水を超高圧で吐き出しレーザーがごとく敵を切断しようと追撃を行う。

しかしそれだけではない。

超高温で熱されたその中に水が注ぎ込まれた時、 マグマの熱で熱された地下水が爆発を起こすのと同じ現象が起きる。

すなわち水蒸気爆発。

結界の魔法やヒュドラの陰に隠れたおかげで直撃を免れた地上の味方だったが、その攻撃の余波が伝わり、思わず足を一歩後ろに引いてしまう程の一撃。

 

にもかかわらずまだ終わらない攻撃。

純白の魔物たちは爆発の影響で周囲に散乱した水分をもとに、巨大な氷柱を形成し、それを爆発の中央へ弾き飛ばす。

集まりきらなかった水分は、ヒュドラの猛毒と合わさり、吸い込めば肺を突き刺す極小の針と化す。

 

殺意全開のこの攻撃。

それでもゆんゆんのエネミーサーチの魔法には中心にいる人物が健在であることを示し、思わず冷や汗が流れる。

 

「流石、紅魔族随一を名乗るだけある。指示を飛ばし操るのではなく、自律した各個が脳を使って仕掛けるとは。……が、生物の枠を超えない範疇だな。真紅の瞳を持つ黒竜よ、怒りの黒き炎ですべてを焼き尽くせ!」

 

氷柱が突き刺さった中心に目をやると、掌で巨大な重量を受け止め、発勁で粉々に砕く。

仕上げと言わんばかりに先ほどの灼熱に勝るとも劣らない煉獄で周辺の空気ごと焼き尽くす。

そのもやし尽くした空気が熱により上空へと舞い上がり……

 

「堕ちろ、神に仇なす竜の群れよ」

 

その熱風の嵐がゆんゆんたちへ襲いかかった。

防御魔法を習得していない、水や氷系統の上級魔法も習得していない。

頼みの綱である白い獣もゆんゆんに氷魔法が当たり巻き込んでしまうと魔法を放つのをためらう。

絶体絶命のピンチ。

……そう思っていた。

 

「『ライト・オブ・セイバー』――ッ!!」

「魔法を切り裂く魔法か。その刃ならウィズたちと同じように私に届きうるかもしれん」

「……なら、届かせて見せるわ!」

 

そう言って、ゆんゆんは魔道具に龍たちを戻し、唯一最初からいた真紅眼の黒竜とともに急降下を始める。

マナタイトを消費したのか、魔力の減少なしに、先ほどより大きな光の刃を顕現させる。

しかもその数は2本。

迫り来る魔法を縦横無尽に2刃で切り裂き、わずか数秒で肉薄する。

ひたすらに真っ直ぐ、迂回という言葉を知らない人龍一体の魔道士。

至近距離でなら間違いなく確実に魔法をたたき込めると思っての行動か。

ナナシは魔法だけでは対処できないと、いよいよもって腰に納めていた刃を狂気に染めて抜刀し……

 

「人の身でそこまでの素晴らしき才能を持つ者よ。この私に魔法と刀の両方を使わせたこと、誇ってよいぞ」

 

切り刻まれた光の剣。

その光景を作り出したのは光とは対極の禍々しさを放つ刀。

魔法を纏っているのか、黒金の輝きが消え失せ漆黒の刃となっていた。

 

「惜しむらくは人であるが故に永遠を望めない、永遠とともに戦い続けられないことだろう」

「確かに、この戦いは長く続かない……むしろ決着が近いわ」

「……諦めか。つまらんな、もう少し付き合ってくれてもいいだろうに」

「ごめんなさい、それはちょっとできないわ。だって……もう次の作戦の段階だし」

「何を――」

 

 

『『『テレポート』』』

 

 

その瞬間、ナナシの目の前からゆんゆんの姿がかき消えた。

それだけではない。

ウィズたち魔王軍のメンバーに加え、アクア、ダクネス、アイリスまでもが綺麗さっぱり消え去った。

 

 

「あー……なるほど、してやられたな。油断してるつもりはなかったんだけどなぁ……まあ、今回は認めよう。名演技だったよゆんゆん。そして、流石の策士だ。佐藤和真」

 

 

魔王城から遠く離れた王都の様子を――私と同等以上の魔力を操る魔法使いの姿を知覚して、楽しげにナナシは呟いた。




次回

魔王様、ご愁傷様……

どっち!

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