魔王城が燃やされ、お家が無くなってしまった魔王一家。
テンションがハイになって爆裂魔法連打しためぐみんたち。
とりあえず敵感知スキルがナナシの存在を感じ取れなくなったのでナナシを蘇生しに魔王城……だった場所へ突入するカズマたち。
「満足だ……久しく満足なる戦いであった……」
まさか、魔界から魔力を引き出す魔法陣を破壊されるとは思ってもみませんでしたよ。
慢心、というのもあるのでしょうか。
私の弟子であるめぐみんだけではなく、他の方々も大きな成長していましたし、何よりウィズやウォルバクといった元魔王軍の幹部たちがこんなにも成長してるとは思ってもみませんでした。
だって、めぐみんたちはまだレベル2桁台前半で、成長の伸びしろが大いに残されていますが、私を含む人外は、すでにレベル3桁に迫る……もしくは3桁を超えている、成長性E。
カズマくんがウィズ魔道具店のみんなに助けを求めることは想定内でしたが、さすがにここまでの成長をしているとは、いやはや参りましたね。
現在、私が内包している魔力はゼロ。
魔力の代用に使用していた神力も体力も底をつきかけて、もはや積極的な戦闘は不能といったところでしょうか。
こちらの無限魔力の機構を破壊され、人類側にそれを利用され、1対4という数の不利を背負いながら、それでもよく死なずに耐えられたものです。
なんとか魔力操作の転生特典のおかげで超低燃費かつ効率的に、そして空気中に漂う魔力を使いここまで死なずに持ちこたえることができました――がそろそろ限界でしょう。
魔王城の周囲は全てを吹き飛ばされ、がれきどころか地面すら消失し、そんな中でも高温の炎で全てを焼きつかさんと私の方に生成される爆炎。
めぐみんとウィズ、ウォルバクの魔法。
敵対する意思も薄れゆく中、もはや無意識に魔力結界を張り続ける。
3人の魔法によるダメージはほとんどゼロに近しい、それでも自分が使う魔法によりどんどん存在が蝕まれていく。
多分ウォルバクさんと同じ結末を辿るのでしょう。
爆炎の激しい光が自分の体の視認を阻害してしまい見ることはかないませんが、それでもなんとなく体が透過していくというのはこんな感じなのだと実感してしまうのです。
存在を燃やすというのはこういうことを言うのでしょう。
もう少し早めにテレポートをしていれば、もう少し早めに爆裂魔法で敵を滅ぼしていれば、もう少し、もう少し……
と、なんか悲壮感あふれることを考えてみましたが、全然元気です。
反省はしていない後悔もしていない、全然命の危機に瀕していない私ことナナシです!
いや実際MPとかHPはゼロに限りなく近いんで瀕死であることには変わりないんですがね、ハハッ☆
まあいざとなったら奥の手――ドラゴンクエストで言うところの教会に行くみたいなもんで、少しロストがありますが――があるので、何とでもなるでしょう。
そんなことより、今問題なのは近くに勇者パーティーが来ているということです。
「ゆんゆん、ウィズ、エネミーサーチの魔法をかけてもらえるか? 俺の敵感知スキルには何も反応ないんだが、もしナナシがいたらアクアの回復魔法やらで、もし爆裂魔法のサビにされてたら蘇生魔法かエリス様に頼んで生き返らせるから」
「……カズマさん。さすがに鬼畜すぎてドン引きです。まさか先生のことを本気で倒すだなんて……いえ、確かに人類に敵対してましたしそうするのが一番なのかもですが、今まで付き合いのある人を何の躊躇もなく……」
「おい、人のことを人の死を何とも思ってない鬼畜って言うのやめてもらおうか。さすがに俺も良心は痛んだわ。でもあのナナシだし、これくらいしておかないと正気に戻すも何もなさそうだし、しょうがなかったんだよ。……それで、エネミーサーチでは見つかったか?」
「カズマさん、こちらの方にはいらっしゃいませんでしたよ。範囲を広げて捜索してみましたがやはり……」
ウィズの言葉を聞いてシュンとする勇者パーティーご一行様。
もしかして私のことを心配してくれてるのでしょうか、嬉しすぎて涙ちょちょぎれますわ。
そんな息をひそめてる私のことには気づかず、「やっぱりあの威力じゃそうなるよな。仕方ないからアイツの体の一部でもいい、探して蘇生させるぞ」とやる気になっているカズマ君。
すいません生きてるんです。
ただ、限りなく体力が少なくて敵対する意識もないのでスキルとか魔法に引っかからないだけなんです。
しかし、まさかカズマ君が魔王城にテレポート地点を登録するとは思いませんでした。
そして、私の敵対意識がなくなったからと言って、容易に近づきすぎですよ。
私を倒したと、私のことを正気に戻せたと。
敵感知スキルに反応がなくなったから足を運んだのでしょうが、油断しすぎです。
だって――
目的は未達成。
最後までお付き合いいただきますよ、勇者佐藤和真。
「っ……! ひぐっ……」
「お、おい、そろそろ泣き止みな? お嬢の可愛らしい顔がもったいない」
「でもぉ! 私の、私たちのお城がぁ!」
焼け野原どころか跡形もなく、土地ごと蒸発し尽くされた魔王城だった場所。
さすがにナナシを討伐するためとは言え、作戦立案者の俺の良心が痛む。
というか、ナナシの壁の涙じゃなくてマイホームを失った悲しみか!
わかる、家がなくなったた悲しみはわかるけども、さすがに全く心配されないナナシはかわいそうというか何と言うか。
力がありすぎるって言うのもなかなかかわいそうなことだ。
そんなことを思ってわずかに残った瓦礫をどかしていくと、ちょうど俺の足元から人の肌が見える。
まさかと思ってさらにどかし続けていくと、そこにはナナシの顔。
未だかつてないほど安らかな顔をして横になっていた。
まるで生きているかの如く自然な顔色で、一切の傷なく。
ただ、口元に手を当ててみても、胸の上下を見ても、呼吸していないことがわかる。
手首に触れて脈をとってみるも、一切触れない。
つまりはそういうことだ。
「全く、人様に散々迷惑かけやがって、そんな安らかな顔して休んでんじゃねぇよ。さっさと起こしてやるからちょっと待ってろ。アクアー、こっちにいたぞー、リザレクションやってくれ」
その言葉を聞きつけたアクアが「全くしょうがないわね」と言いつつ、どこかほっとしたような様子で蘇生魔法をかけようと近づく。
それはそうか、爆裂魔法をあんなに浴びせといて、幸運とかそういうの関係なく普通蒸発するはずだもんな。
なのにこうして残っている。
全く、常人じゃなくても助かる可能性は絶対に0%だって思ってたのに、ここまで耐えしのいだってことは、賞賛もんだ。
ほんと、最後の最後まですごいやつだよ。
と、とそんなことを思っていたがアクアの様子に違和感を持つ。
「おいどうしたんだよ、早くリザレクションの魔法をかけてやれよ。……もしかしてあれか? ルーシーゴーストの件で言ってたが、自分の商売敵を1人でも減らそうとしてわざとかけないつもりか? そっちがそういう考えなら俺にも考えがあるが……」
「ちょっと、待ってカズマ! 確かにそういうことはちょっとだけ思ったかもしれないけど、私の可愛い信者を生き返らせようとしないなんて女神の名が廃るわ! じゃなくて! おかしいのよ!」
「おかしいって何がだよ、お前がおかしいのはいつもだろ?」
「今度帰ったらゼル帝の食育係にしてあげるから覚悟なさい! それに、おかしいおかしいって言うけども、のじゃロリちゃんとかめぐみんと比べるのはさすがにどうかと思うの。私、あそこまでおかしくなってる自覚ないんですけど! まさかその2人と比較対象にされるくらいおかしくなってたの!?」
「元から前はそんなんだよ。ナナシ含めた4強のうちの一人だわ」
ずーんっと落ち込んでいるアクアだが、よく思えばさっきの慌てっぷり、いつも頭がおかしいことを加味してもおかしな言動だった。
アクアのことを言い負かす遊びはここまでにして、機嫌を取りつつ本題に戻る。
「まあそもそもアクシズ教が頭がおかしい奴らで構成されてるからな。お前が頭おかしいのは当たり前だ。そんなに落ち込むことないって」
「絶対それ慰めじゃないから! 私の信者のことを頭がおかしいって呼ぶのやめてちょうだい!」
「元気出てきたじゃないか。元気出てきたついでで教えて欲しいんだが、一体何がおかしかったんだって」
「カズマが話をややこしい方向に持って行ったんでしょうに……」
「まあまあ、アクセルに帰ったらシュワシュワ飲み放題で宴会開くから……」
「…………まあ、何がおかしかったかって言うと、もうすでにリザレクションかけてるのに全然目も覚まさないってことよね。ちゃんと発動してるはずなのにどうして生き返らないのかしら? まあ、生き返ってるはずだし問題ないわ! そんなことよりその話は本当かしら? カズマが遅刻しなかったせいで高級シュワシュワおごりの件がなくなってたからちょっとしゅんってなってたけど、このシュワシュワ飲み放題っていう話にはもちろん高級シワシワも含まれてるわよね? よね!」
能天気にそんなことを言ってくるアクア。
しかし、俺の直感はそんな能天気な考えをかき消す。
蘇生魔法が効かないっていうのは、つまり死んでいないっていうことだ。
死んでいないってことは消滅したということ。
もしくは――
生きているということ。
俺は思わずアクアの襟を思いっきり引っ張り、そして……
ニヤリと歪む口元を見た。
終章 運命の勇者、世界の破壊者とともに――
どっち!
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討伐
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共栄