私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

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前回のあらすじ

ナナシの死亡確認に来たカズマたちだったが、実はナナシ生存。



勇者は魔王から逃げられなかった

「やれやれ全く。ドレインタッチもさせてくれないとは。勘のいい勇者様だ。嫌いになってくる」

「…………ナナシ」

 

先ほどまで安らかに眠っていたその瞼がゆっくりと開眼し、紫紺の瞳が俺を見つめる。

不敵に笑うナナシ、全くもって和解する意思が伝わってこない言葉、空を切るナナシの右手が触れているのはアクアがいた場所。

体力とか気配だとか魔力とか敵意だとか、そんなものは一切感じられずそこにあるのは存在感のみ。

 

「本当に、これが最後の策だったんだが、さすが、嗚呼さすがだ勇者佐藤和真」

「そんなこと言って、どうせ俺たちを油断させるための策だろ」

 

今ここにめぐみんもダクネスもいない。

連続して爆裂魔法を放ったせいで今は燃え尽き症候群のように真っ白になって……いや、真っ赤の間違いだった。

脳が焼き切れるほど、血管の破裂するほどその体を酷使し続けたのか、鼻から血がたれダクネスに看病されている。

 

代わりについてきてくれたのはエネミーサーチとテレポートを使えるウィズとゆんゆん、それから回復要員のアクアとセレナ、能力補助担当の八坂娘。

あの爆発を受けてきっと治療か蘇生が必要だろうから最低限の人数できたってのに。

 

「ナナシさん! もうこんな争いはやめましょう!」

「何を言っているのだウィズ。戦いとは往々にして勝敗が決まるまでやるもの。まだ勝敗は決していない」

「……ナナシさん、あなたが何を以て勝敗を決めているのかは存じ上げませんが、私が見た限り、これ以上やらずとも雌雄は決っしています。大人しく正気に戻って、それで治療を受けてください」

「治療を受ける? この私が? ……冗談ではない。我が肉片の一つも残すことなく、この肉体が滅ぶまで私は戦い続けなければいけない宿命にある。故に、故にまだだ。これの末に我が望みは満ち満ちるのだ」

「望み、ですか」

「ああ。ただ壊すだけだ。この腐った世界を」

 

ウィズの制止の声も聞かず、それでも心臓の音が鳴らない体を前へ前へと動かす。

今までの滑らかな動きとは違い、外付けされた機械のような動き。

さながら操り人形と糸。

と、その時アクアが突然。

 

「セイクリッド・ターンアンデッド!」

「アクア……お前何やってんの?」

「何って見てわからない? さっきカズマが言ってたでしょ、脈も呼吸もないって。それってつまりアンデッド化したってことよ。心苦しいけど私の魔法でって思ったんだけど……」

「生きてるんですけど」

「……ま、まあデュラハンの人だって私の魔法を食らっても生きてたし! その配下のアンデッドだって……」

「でもあの人ヒィイヤァァアアァアアっつってたし、痛いの確かだろ。……効いてなさそうなんですけど」

「アンデッドにしてくれるな。一時的に心臓の機能を停止していただけだ」

「うわぁ……」

 

ナナシの覚悟というか執念を感じたアクアはその人外ぶりにドン引きしていた

どうしてここまでして戦うのか、ナナシの望みとは何か、世界の架とは何のことか。

ここまできて本当に中二病だと断言していいものか怪しくなってきたが……

そんなことを思っているとセレスディナが。

 

「……もしかしてだがお姉様。アンタ、ウォルバクの一件と同じようなことしようとしてるんじゃねえだろうな」

「ほう、あの事件に関わっていなかった貴様がどうして知っている」

「噂はかねがね聞かせてもらってるぜ? 最初は世界の運命などどうだの、全く以て信じられないような話ばっかりだったが、それでも人間と敵対していたウォルバクが助かったのはお姉様のおかげだ。……今回もそういう何かを成し遂げたいっていうことなんだろ? それが何なのかは知らんがこんな大事件まで起こしてやるべきことだった。違うか?」

「……それは知らなくてもいいことだ。強いて言えば戦いへの渇望、と、言っておこう」

 

その言葉を言い終えた途端、ナナシからピリッと静電気のようなものを感じた。

敵意は全く感じられず、俺の敵感知スキルには一切の反応がない。

それでも俺の本能は避けると囁くのだ。

どうよければいいのかわからず、自動回避スキルと自分の本能のままに体をよじってやると、もともと体があった部分に熱線が走る。

雷か、炎か、光の魔法か、全くわからなかったが、線が走ったその先を見ると一瞬で何が起きたのか分かった。

めぐみんが放ったレールガンのそれと同じだ。

轟音とともに爆ぜ、燃えさかる火柱。

ナナシの方を見ると手と手の間に果てのない漆黒――亜空間が広げられており、いびつな形で現実に固定されていた。

 

「なるほど、今をよけるか」

 

不敵なまなざしでそんなことを言うナナシ。

……確かに魔力は時間経過で回復していく。

それはもちろん睡眠時により多く回復するのだが、ナナシは半球睡眠ができるし、ドレインタッチの応用で魔力を外から吸収することだってできるはずだ。

この爆裂魔法の残滓漂う戦場は、ナナシの魔力供給に最適なはず。

それでも、だとしても、この時間で爆裂魔法を圧縮するだけの魔力を集めることは不可能。

つまり――

 

「お前、もしかしなくてもめぐみんの魔法をその空間に収納しやがったな? 危ないまねしやがって……」

「そうは言うが、急所に当たりそうな攻撃はどうしろと。大人しく受け入れる道理はない」

 

攻防一体ってか?

本当に笑えない冗談だ。

こういうのは攻撃こそ最大の防御だとか、相手の攻撃をかわしながらの攻撃だとか……

どうして相手の攻撃をとっといて自分の攻撃手段にするって意味わかんない戦い方してくんだよ!

驚きを通り越して呆れている俺を見て、一体何を思ったのかにやりと口をゆがめ……

 

「さて、遊びはこれくらいでよいな。世界に改変がもたらされるそのときまで、いざ」

「行かん! 行かないって意味で! 俺知ってるぞ。お前みたいなやつは戦いで成長して、なんなら黄金長方形のうんたらとか言って、無限に続くパワーを手にして手に負えなくなるパターンだ」

「さて、そのパターンかどうかは世界が一巡せねばわからぬ。だが、世界が滅び、再構成されずとも運命の改竄は可能である。過程は重要じゃない。偉人の功績は、歴史は、この世は、結果だけが残る。故に結果次第で、未来は、運命は、世界は変わる!」

「つまり……何だ、お前の趣味は弱いものいじめか?」

「本史である勇者と魔王の戦いに代わり、汝と私が戦う。ただそれだけのこと」

 

じょ、冗談じゃない!

いくら弱体化しててもナナシはナナシ、俺が強くなったわけじゃない。

というか今の今まで弱体化してる様子がほとんどないんですがその件について小一時間話してくれませんかね?

具体的にはめぐみんが回復するまで。

 

そんなことを思ってもギラついた目は獲物を逃さないといった意思を見せつけてくる。

本当に、コイツと戦うなんて無理無理。

撤退だ、今からの選択は戦略的撤退であって勝利のための逃走だ。

 

「テレ……」

「『次元封鎖(ディメンショナル・ロック)』……勇者よ。先ほどはよくこの私から逃げてくれたが、今度はそうはいかない」

「げぇっ! 転移魔法阻害された!?」

「知らなかったか? 覚醒した魔王からは逃げられない。……さて、今夜をなかったことにできないほど鮮烈に世界の歴史に刻み込もう。それまでは私も汝も永遠の夜を漂うことになる。さあ、目の前にある永遠を切り裂いて暁を望め」

「……あ、あの、手加減とかって」

「今回の私は狂気的だ(ルナティックモード)。本気でかかってこなければ、本気で殺す。そうでなくとてもだがな。では、まず手始めに……先ほど、私たちにくれたプレゼントのお返しから参ろう」

 

俺たちを取り囲むようにして歪な亜空間と現実の隙間が開き、最強の魔法使いが魔法が……




次回 魂の叫び(適当)

どっち!

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