私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

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前回のあらすじ

ダンジョンで最後の戦いを始める


私を『エクスプロージョン』してみた

これだ、これこそが私が求めていた戦い……!

 

ひたすら攻撃を防ぐのに精一杯に見えるカズマ君。

私の猛攻をかわしつつ、何とか持ちこたえているものの、体力がじりじりと削られているのだろう、表情に焦燥が募る。

 

「くそ、これじゃ会話どころじゃ……!」

「時間稼ぎのつもりか? 我の会話の途中に刃を突き立てたのはどこの誰であったか」

 

どこかの誰かさんに向けて皮肉を言いつつ、爆裂魔法を亜空間から取り出す――

本来であれば1秒あたり何十発という高密度で爆裂魔法を発射させるが、魔力のない今はそれができないことが悔やまれる。

私にしては手ぬるい攻撃だ。

――数秒に一発の爆裂魔法、カズマ君が反撃する余裕はない。

その呼吸は乱れ、果てのなさそうな、されど有限なダンジョンの奥へとゴーレムを引き連れ逃げていく。

 

「どうやらお疲れのご様子だが、鬼ごっこはやめないのかね?」

「疲れたよ! 早くおうちに帰りたいよ! そういうお前は全然疲れてないように見えるし、どうやって動いてるんだよ!?」

「世界の真理を覗くことを断った者であれば、答えは己が身で探せ。でなければそろそろ己の最後について覚悟を決めろ。覚悟は幸福だぞ。これが人類のためなのだ」

「何が幸福だよ! 確かにここで諦めてもお前の暴走は止まるだろうしいいのかもしれない……」

「だったら……」

「だが断る! 自分が優位だと思ってるんだろうが、やすやす勝利を渡すのはなんか癪だ」

「ほう、言うではないか。では最後まで抗ってみせよ、世界の救世主」

「言うだけタダだぜ。だから言ってやる……倒してやらぁ、世界の破壊者」

 

そう言いつつも、爆裂魔法を逃れた2体のゴーレムを私の方に仕掛けるカズマ君。

そうだ、これは決着をつけるためだけの戦い。

死のうが生き残ろうが、決着がつけば私の目的もカズマ君の目的も達成されるのです。

それなのに、わざわざ苦しい道を行くカズマ君。

私は嬉しい、嬉しいですよ……!

カズマ君の覚悟を受け取りつつ、容赦なく爆裂魔法を投げ続ける。

 

「冥土の土産に、ひとつ教えておいてやろうか、カズマ?」

「……そういうのを負けフラグって言うんだぜ」

「ご忠告痛み入るが、私が負ける確率は確実に0%だ」

「そんなこと言ってると、お前がたった今見ている俺は……『未来』のお前自身になるかもしれないぞ?」

 

むしろそれを狙っている……ということは伏せておきましょう。

魔力の吸収量が依然として高火力な魔法を放つのに追いついていないながらも、私とカズマ君の間には実力差というものがあるのです。

未だカズマ君は明らかに劣勢。

私が望むのは最後の戦いの演出。

ここで終わると決めたなら、華々しく散りたいと願うは中二病の定め。

だからこそ私は話し続けるのです。

 

「この世界、ただの現実ではない。我らが足を踏みしめるこの地は、アカシックレコード――運命が記された偉大なる書物の一片に過ぎぬ。それこそがこの世界の真理。運命の大河は決して逆流せぬように定められているのだ……」

 

悠長にそんなことを言っている間にも、カズマ君のゴーレムはまた一体砕け、その破片が彼の頬をかすめ、赤く染める。

せっかく話しているのに、戦いに必要としない情報を全てシャットアウトしているのでしょう。私の言葉にピクリとも反応しないカズマ君。

実際それは正解で、私の使用可能な魔法は爆裂魔法のリリースのみですし、なんなら言葉をも戦闘に役立てようとしていたら、私は魔法は全て無詠唱で行い、発動魔法と違う魔法の名前を出すことで相手を撹乱させようとしていたことでしょう。

 

見たところ、手にしているマナタイト鉱石は残すところあと1つ。

爆裂魔法の詠唱が終了するまではおそらく四、五分といったところでしょうか。

私のようなチートもなく、才能と努力だけで爆裂魔法というただ一点において私を凌いだめぐみんのような突出した才能もないのに、よくぞこの時間で詠唱ができるものですね。

魔力操作の鍛錬を怠らなかったのでしょうか……

しかし、残念ながら私の負け筋は見えません。

 

「残るゴーレムは一体。エリスを、天使を模しているならばともかく、この程度の操作では物の数ではない」

 

手元が光り、亜空間から放たれたレールガンがカズマ君に向かって閃光のごとく飛び出す。

最後の一体を自分の防御のために手元に置いておいたのが運の尽き、ゴーレムが破壊されたその衝撃で彼は後ろへ吹き飛ばされる。

本当にマナタイトが腐るほどあれば、このゴーレムを何度も作れる余力があるはずですが、そろそろレールガンを節約し、「強制詠唱」で対処せざるを得なかったでしょう。

私が貯蔵しておいた爆裂魔法をウィズの氷の結界を破ろうとするのに浪費しすぎたのが痛手です。

それでも私は不敵に笑う。

 

「ふふ、我はすでに体力も魔力も尽きている。しかし、我が身はまだ動く。これこそが…お前には理解し難い『運命』の力よ。いや、むしろそれを操っているのはこの私――世界の法則にすら抗う者としての意志……! 我らが歩む道は、運命の鎖によって縛られているのだ。魔王討伐……それこそが、この世界が求める終幕。だが、それは汝が欲するところではないのだろう。鎖をちぎるには、並みの力では足りぬのだ。ならば、己が運命を、鎖を捻じ曲げるために何をするか……貴様にはその答えがあるか?」

 

聞いているのか、聞いていないのか。

苦しみながらも、何とか一撃一撃をかわし、時折クリエイト・アースで防御している。

直撃しそうになった際、とっさに時間稼ぎとして使っているようだが、それが破壊される衝撃で何度も地面に叩きつけられ、そのたびに痛みが全身を貫き、カズマ君は顔をしかめている。

彼の体中が痛み、肉体が悲鳴を上げる中でも、爆裂魔法の詠唱は着実に進んでいた。

 

 

 

 

<カズマ>

体は限界を迎えつつあった。

 

視界が霞み、息をするたびに胸が焼けるように痛む。

正直、ここで諦めてしまった方がいいんじゃないかと何度思ったことか。

だって俺の目的は、俺が勝っても負けても達成されるのだから。

それなのに、なぜか俺の体はダンジョンの最奥へと動き続けている。

 

――これは俺の意地なのか? それとも、ナナシに操られているのか?

 

頭の中で混乱が渦巻く。

目の前のナナシの姿が、どこかいきいきとして見えたのが引っかかっている。

そして、なぜか心の奥底で強く思ってしまう。

「最後まで戦わないといけない」と。

 

 

ナナシの攻撃は容赦なく続く。

強烈な魔法をかわし、逃げるようにダンジョンの奥へと進んでいくが、俺の体力はとうに限界だ。

次の回避が間に合わず、俺の肩に風穴が開く。

 

「ぐっ……!」

 

思わず声を漏らす。

だが、思っていたほどの痛みはない。

興奮物質が脳内に分泌されているからだろうか。

痛みよりも、血が肩からドクドクと流れる感覚が重くのしかかる。

それでも魔法が完成するまであと少しだと自分を鼓舞し立ち上がろうとする。

が、足元がふらつき地面に倒れ込んでしまった。

 

「はぁ……はぁ……」

「汝はよくやった。人類も魔族も全てが敵に回り、それでも滅ぼせなかったこの私を前にして、よくぞここまで持ち堪えたものだ。称えよう、人間の可能性を」

 

ナナシは俺より前に魔力も体力も尽きているはずなのに、未だに動き、威圧感を放つ。

……魔力もないのに一体どうやって力を維持しているんだ?

魔力も尽きているはずなのに、どうして魔法が使える?

この世界の技は魔力を消費する必要があるはずなのに……

 

ナナシが言った「運命」だとか「世界の流れ」なんて言葉が頭をよぎるが、そんな漠然とした話で魔法が使えるはずがない。

必ず、代償や何らかの仕組みがあるはずだ。

不自然な事象を引き起こすには何か代価を支払う必要がある。

一体ナナシは何を代価に……

 

 

考え、考え……息を切らしながらも、頭を働かせ続け、答えにたどり着く。

ダンジョンの空気。

いや、ナナシの周囲に感じた妙な違和感だ。

その感覚はナナシが魔法を亜空間から呼び出すたびに強くなっていく。

ぽっかりと何もないあの空気……何がないのかと思ったらきっと魔力だ。

バニルと一緒にダンジョンを探索した時に感じていたあの濃密な魔力と現在の状況のギャップが違和感の正体だ!

 

つまり、ナナシはこのダンジョンに漂う濃密な魔力を自らの攻撃に転化していたのだ。

外部魔力の取り込みはドレインタッチの応用……って言っていた気がする。

俺はそのスキル――ドレインタッチを持ってる。

魔力を練り、扱うことなら毎日毎日練習してた。

なら、俺もできるはず……そうやって試みて、無事成功――そういう熱い展開になればよかったんだが。

 

「ほう、もしや私の絡繰りに気づいたか? それで真似しようと……しかし失敗したな。土壇場で相手の能力をコピーするなど、星の戦士みたいなことをするがさすがに練度が甘い」

 

だそうな。

クソっ、普通こういう状況に陥った主人公はなんか力に覚醒してなんか急にパワーアップするような展開になるもんだろうが!

散々人のことを勇者だのなんだのと言ってくれたのにやっぱり俺にはそんな力はなかったよパトラッシュ!

今まさに燃え尽きようとしている俺の命だったが、どうして失敗したのかと考えたその瞬間、こう思ったのだ。

 

そうだ、気体から魔力を吸収しようとしたから失敗したんだ、固体なら……

 

俺はすぐに足元のダンジョンの床――つまりはダンジョンを構成する謎物質に手を伸ばし、いつもの要領で魔力吸収を試みる

よくよくこの材質を見ると、紅魔の里の建物に使われていたあの謎の建材と同じ材質だ。

確かゆんゆんの親父さんが「この建物に魔力を通すとその魔力量次第で爆裂魔法の威力にすら耐える、まさに鉄壁の要塞に早変わり~」みたいなこと言っていた気がする。

つまりこの固いダンジョンの一部から魔力を抜き取れば……

 

「『ドレインタッチ』ッ!!」

「……ほう、魔力の流れが変わったな。空気中ではなくダンジョンから奪ったか」

「『ヒール』! なかなか土壇場でうまくできたんじゃないか?」

「……何故まだ諦めず立つ」

「どうしてだろうな……自分でもわかんないわ。……強いて言うとすれば、お前の気持ちに感化されたか、それともそういう風に意識を誘導されてるとかじゃないか?」

「ふむ…………覚悟が決まった、と解釈しても良いのだろうか。不敵な眼差しを持ち、生意気な台詞を吐くタフな男よ。お前の粘り強さには感心する。汝の魔法はが発動するまであとわずかといったところだろう? 最後に生き残るのはどちらか、新世界の礎となるのはどちらか、そろそろ最終ラウンドに突入しようではないか」

 

俺はすぐに回復魔法をかけ、立ち上がる。

傷は完全には癒えないが、今は動ければ十分だ。

自分を回復させるより今はナナシの相手をするために魔法を使わなければと続けて魔法を使う。

 

「『クリエイト・アースゴーレム』ッ!」

 

魔力を振り絞ると、先ほど魔力を抜き取ったせいで硬さが失われたダンジョンの石床を引き裂きながら巨大なゴーレムが出現した。

狙ってはいなかったが、0から魔力でゴーレムの体を作り出すよりはるかに魔力の消費量を抑えられた。

しかしマナタイトを使っていた時と遜色ない、いや、ダンジョンの材質によりそれ以上の瞬発力を秘めていた。

 

爆裂魔法以外に割ける魔力が増えたおかげで攻略の幅が広がったがナナシの猛攻は詠唱が終わゆくにつれ苛烈になっていく。

それをなんとか歯を食いしばりながらも、一瞬の隙をついて土の壁を次々に作り、何とか防御を続ける。

そんな互いに命を賭けた状況なのに、ナナシは……

 

「汝、かつて私はウォルバクを生かし、共にこの世界で生きる選択をした。ちょうど最前線にあった砦でのことだ。覚えているか?」

 

ちょっと今それどころじゃないんで話しかけないでくれませんかね!?

あんたの攻撃を躱したりゴーレムに身代わりになってもらったりするのに忙しいんで!

そんな俺のことはお構いなしに話を続ける。

 

「あの時、ウォルバクは消滅する運命にあったのだ。それこそが世界が定め。しかしそれを鎖を壊すため、我は人間であることを捨て去り、邪神としての存在を選んだ。そして、ウォルバクと同じ邪神である我が討たれたのだ」

 

なんか前にもそんなこと言ってたよな言ってなかったような?

そういう話はみんながいる前で落ち着いた状態でするものだと思うんだ。

息絶え絶えな俺は苛烈になっていく攻撃を避けるのに手いっぱいで声も出さずにそんなことを心の中で訴える。

 

「そして、今回も同じだ。魔王が討伐されるという運命を私が書き換える。すべてを敵に回し、我は魔王として覚醒する。そして、討伐されるのだ。世界の巨悪が討たれる時こそ、世界の運命を覆す唯一の道が開かれる」

 

その言葉を言い終えた瞬間、魔法の嵐はやむ。

代わりに何とも言えない胸の奥がざわつきを感じる。

やっぱり俺がナナシと戦って、それで勝たなきゃいけないってのか。

ナナシは目を細め、俺に視線を向ける。

 

「お前が悪を討つことで、この世界は運命を変える。鎖を断ち切ることで運命に逆らい、別の結末を迎えるのだ」

「なあナナシ。本当にそれしか方法がなかったんだろうな? お前が単純に戦いたかったからっていう理由じゃないんだな?」

「戦いたかったというのは間違いではないが、この方法しかないのも事実。…………さて、某の吸収していた魔法は全て出し切った」

「……俺は詠唱が終わった」

「嗚呼、知っているとも。私の負けだ、本気で驚いた。……だが喜んで敗北するよ。だからこそ再び問おう。汝、運命を変える覚悟があるか?」

 

俺は苦笑いを浮かべ、肩で息をしながらも。

 

「運命を変える、ねぇ? んなもん知らねーよ!」

 

震える声でそう言い、再び周囲の魔力を手に集めた。

別にこれが終わりじゃない。

どうせナナシのことだ、爆裂魔法ごときで肉体が消失するなんてことないだろうし、もしそうなったとしても魔王討伐の報酬として生き返らせてやる。

だとしてもやっぱり、憎くもないやつを手にかけるっていうのは覚悟が必要だ。

 

俺は震える手をもう片方で押さえ、火傷しそうなほど光り赫く爆裂魔法の種を、クスっと笑うナナシに向ける。

ナナシの目は寂しさやら、安心感やら、達成感やら、様々な感情が入り混じっているようだった。

 

「ではの、カズマ君。これにてさようならだ」

 

ナナシが静かに微笑んでいるのが目に入った。

その表情が、やけに穏やかに見えるのは気のせいだろうか。

俺は深く息を吸い込み――

 

 

 

 

「『エクスプロージョン』ッッ!!」

 

 

 

 

一瞬、全ての音が消えたかのような静寂が訪れ……

世界が、運命の鎖が弾ける音が響いた。

どっち!

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