私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

161 / 162
前回

魔王ナナシと一騎打ちし、カズマは辛がら勝利を収めたが……


心を『エクスプロージョン』してみた

<カズマ>

 

俺が放った爆裂魔法の光が止んだ頃、ようやく視界がまともに見えるようになりゆっくりとまぶたを開けると、そこにはえぐり取られたダンジョンの地面、

そこに人の形はいない。

 

「なんだかなぁ…………」

 

ただそれだけしか言えない。

あのナナシだから爆裂魔法に巻き込まれたくらいじゃ体の一部くらい残っているかもしれない……

そう心の中で思っていたのかもしれない。

肉の一つも残っていないクレーターを見ると、自分でさえ無理だと思っていたが、ナナシを倒してやったのだと言う達成感。

それから自分の知り合いを手にかけてしまったという拭いきれない罪悪感。

しかし、ほとんど魔王みたいなやつを倒したんだからエリス様に言えばナナシを生き返らせてくれるかもしれないという希望を感じつつ、爆裂魔法の熱風に当てられた体を大の字に広げ冷ます。

 

「あぁ……ったく、何が『さようなら』だよ。こんなに俺の体を傷ものにしやがって、慰謝料払ってもらうんだから待ってろよ。世界を救った勇者様の治療費やらは高くつくぜ……いっつっ……」

 

戦いが終わったせいで石のつぶてが当たった損傷部位や爆裂魔法の光線で焼かれた場所が熱を帯びてズキズキと痛みだす。

体から失われた血液のせいか、起き上がる気力もないほどの倦怠感と疲労感。

いや、普通に爆裂魔法を撃ったせいだな、俺より魔力量が多いめぐみんだって爆裂魔法を撃った後は必ずこうなってた、そうに違いない。

 

しばらく魔力が回復するまで休もうかと思っていたが、このダンジョンはそうさせてくれそうにない。

ダンジョンがごごご……と地の深くから地響きを鳴らしながら揺れ動く。

爆裂魔法を撃ったせいか、それともナナシというダンジョンマスターがいなくなったせいでダンジョンの自身を保つための機能が失われたせいか、頭上からがれきが落ち始めダンジョンの崩落が始まったのを感じ取る。

意識がぼーっとしていてはっきりしない中、俺は地べたを這いずり壁の方へ。

壁をつたい、なんとか体を起こすがナナシと同様に魔力ゼロ、何なら体力もほとんどゼロな状態。

 

「はぁ……本当に、最後どうやって体動かしてるんだかしっかり理解できるレベルで教えてもらうんだった……」

 

両手で壁と地面にドレインタッチを使い始めるが果たしてテレポートに使う分の魔力をダンジョンが崩落する前に集めれるかどうか。

しかし脱出の手段はそれしかないため頭上に注意しながらもドレインタッチを続ける。

体内で循環できるだけの魔力が吸い取れたおかげか、先ほどよりいくらか頭のモヤがましになり、ドレインタッチの効率が加速していく。

あとちょっと、あともう少しでテレポートできる分の魔力が……

 

そんな思いが強くなるにつれダンジョンの崩落する瓦礫の音、その激しさが強くなって……

 

 

 

 


 

魔王城周辺に貼られていた転移魔法阻害の魔法をゆんゆんの解析で反対魔法を生み出し解除し、なんとか王城へ転移。

ナナシの体を探しに魔王城へ出向いていた6人が王城に戻ってきたのを見てダクネスとアイリスが私たちの元へ駆けつける。

 

「先ほどまでのあの爆発音、まさか戦闘があったのか!」

「しかし皆さんよくぞご無事で………………あれ? すみません、お兄様は一体どちらに?」

 

そう、6人中5人。

そこにいるはずの1人の姿がなかった。

もちろん最初はどういうことなのだろうかと疑問に思ったような顔。

でも、戻ってきたウィズたちの顔を見るとほとんどが暗い表情をしているのを感じとって、そしておおよそ何が起きたのかを理解しウィズたちと同じ表情に。

 

あのままでは自分たちの魔力が先に尽きてしまい全滅するところだったこと。

カズマが自分の命を投げ打ってまで時間を稼いでくれたこと。

それを知ってしまった。

 

「カズマ……」

 

王城で、誰かのそんな声が聞こえる。

あのいつでも自分たちを窮地から作ってくれたずる賢い男なのだから、この中の誰もかなわなかった邪神をも討伐してしまうのではないかという儚く淡い希望。

でも、そんな思いを踏みにじるかのような圧倒的な実力差。

 

事実、ナナシはこの大人数に対してたった一人で対抗していた。

魔力や体力を感じない状態であっても、アンデッドの王であるリッチーや同格の邪神たちを防戦に追い込む圧倒的な力。

カズマの機転がなければどちらの魔力が、魔法が先に尽きるかわからない状況。

 

そんな邪神を悪知恵が回るたった一人の勇者の力で討伐し得ようか。

この場にいる誰もが冷静さを欠いても欠かなくとも断じてありえないと口を揃える。

しかしいくら死んでいようとこちらには蘇生魔法を使える麗しき水の女神がいるし、無限の魔力を使って爆裂魔法連打する魔法使いもいる。

不幸になる結末なんてこの先にありはしない。

誰もが暗い表情をする中――

 

「みんな、くよくよしてちゃだめよ。カズマには死んでも骨は拾っておくから骨だけは残しなさいって言っといたわ、蘇生は私に任せなさいな! ……だから私たちがすべきことは悲しむことじゃないでしょ?」

 

爆裂魔法の用法用量をオーバーしてし

まっためぐみんを、世界を守るための切り札(ジョーカー)を回復させるため、両手をめぐみんにかざし、回復魔法の淡い光を放ち続ける。

そんなアクアの諦めていない様子を感じ取ったのか、アクアの回復魔法を受けていためぐみんが帽子のツバで目線を隠しながら。

 

「ええ、アクアの言う通りです。仮にカズマの骨が残らなかったとしても……魔王をも超えた魔王を、師匠を討伐しさえすれば、魔王を討伐した報酬として女神エリスから報酬がもらえるのでしょう? それは、死んだ人を生き返らせることも可能なはずです。それならば……私が師匠を討伐してしまっても構わないのでしょう?」

 

その声はわずかに震えど、決心の色が瞳には宿っていた。

迷いはなく、透明な汁が袖に染み込むと、そのローブはただの赤から深紅へと色が移る。

 

「犯人は現場へ戻ってくる……つまり標的は魔王城跡地でよろしいですね? あそこに影が見えた瞬間、それこそが邪神の最後です。カズマと師匠を奪った張本人が現れた瞬間に、我が最強の一撃をもって葬り去ってくれます! ……カズマが作ってくれた時間、無駄にはしませんよ」

 

先ほどまで魔力過剰使用の副作用で動けずにいためぐみんが起き上がり宣言し……

 

「おや、早速お出ましのようですね」

 

目を見張っていた先に黒い点が出現し、その黒い影はゆっくりと立ち上がる。

最強の魔法使いはつつがなく、よどみなく――

 

我こそは混沌の覇者なり。

深淵に揺れる煉獄の業火よ。

視濁する昏き焔、混濁する真紅の闇。

発狂し、絶叫し、破滅へと誘う灯火。

罪を以て罪を制す。

黒の断片を身に刻み、不遜なる摂理に牙を突き立てろ!

 

 

「『エクスプロージョン』ッッ!!」

 

 

さようならカズマ。

さようならナナシ。

 

二人は私たちの心の中で生き続けている……




次回 最終話(詐欺の可能性あり)

さよならは別れの言葉じゃない。また会おう。

どっち!

  • 討伐
  • 共栄
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。