王都に強制テレポートされたカズマは心の傷を癒やすために宿屋で一日中ぐーたらしてた。
一方レッドプリズンご一行はアイリス様を誘拐し、秘密の部屋へ通ずる回廊へ足を踏み入れ、見つけ出した巨大魔力出力装置や要塞合体デンドロメイデンに大興奮!
<カズマ>
俺とアクア、めぐみんとダクネス、ゆんゆんとナナシさんの組み合わせで二人乗りの馬車に乗り大通りを通過中。
外堀を埋められて今更家に帰りたいとか言い出せない重い空気を吸っては吐く。
「ねぇねぇカズマカズマ」
「カズマだよ?」
「どうしてこんな大々的に私たち見送られることになったの? 確かに私は麗しき水の女神でカズマさんもそんな私を支える勇者候補だけど流石に貴族の人とか王都の皆が集まって花吹雪を起こしたりして見送るのはちょっと規模がおかしいと思うの」
「そうだな、俺もそう思ってる。それと俺はお前を支えないし、勇者でもねぇから。借金は自分で返せよ」
「何でそんな酷いこと言うのよぉぉおお!!」
俺が目を離したらすぐ借金をこさえてくる穀潰し女神だ。
ほんの一日で暇な時間があれば食っちゃ寝して、高級シュワシュワを飲んだに決まってる。
俺はアクアのだらしなさを指摘しているのだよ、わかるね、良心が甘やかしちゃいけないって言ってるんだ……別に面倒くさいとかそういう話じゃ断じてない。
……それにしてもこれから魔王を倒す勇者を見送るみたいに酷く煌びやかだ。
「おおっ、あれが噂の『爆撃』か!」
「……思ったより弱そうだな」
「バカ言え! あの方はあの聖女様公認の勇者様だぞ! それに何が素晴らしいかと言えば奇想天外かつ大胆、それでいて確実に勝利へと導く知略! その頭脳を用いて作られた兵器こそがあの『爆撃』の由来というわけだ。それにお仲間もダスティネス令嬢に紅魔族が二人、それに凄腕のアークプリースト。まさに鉄壁の布陣ですな」
「す、すごく詳しいのだな……」
「ええ、これでも聖女ナナシ様のファンクラブNo.1024ですのでこれくらい常識かと」
「下っ端ではないか」
下っ端じゃねぇか!
て言うか何なのあの貴族連中!?
いろいろと貴族らしくないって言うか俺のことをヨイショしてくれるのはナナシさんの指示なんだろ!?
さっきから俺の話ばっかりしてたくせにナナシさんの方にばっかり視線がいくしきっと俺がやる気を出すように持ち上げてくれってお願いされていってるに違いない!
俺も舐められたもんだ。
そんな見え見えの持ち上げ方でやる気出すと思ってるのか!
<めぐみん>
「助けてぇぇええ!! やっぱおうち帰るぅぅうう!!」
「ぷーくすくす! かぁずまさんてばさっきまでノリノリで『この悲劇を断ち切れるのは俺たちしかいないんだ!』とか『この爆撃のカズマに任せてください』ってかっこつけて啖呵切って見送られたのにちょーウケるんですけど!」
「アクア、元凶のお前は後で絞めてやる!」
「お、おい! さっきからカズマばかりずるいぞ! 山賊に襲われないばかりかケサランパサランの群れに追われて! 私が屈強で下卑た男とモフモフな可愛い生き物が好きだと知ってわざと焦らしてるのか!?」
「んなわけねぇだろ! デコイ使って早く引きつけてくれ! じゃないと窒息する!」
時は夕暮れ。
このご時世に珍しい山賊相手に興奮してしまいエクスプロージョンしようとしたのをカズマのドレインタッチで阻まれてからしばらくして。
魔力が回復したのでアクアが呼び寄せたケサランパサランの親玉『ケセラセラ』という電撃クラゲのようにバチバチな雷の大精霊に一発撃ち込んだのですが……
スライムか何かのように分裂してケサランパサランの大群に。
それに追われて悲鳴を上げているのは我らがパーティーのリーダー。
「……平和ですねぇ」
「めぐみんの目は節穴なの!? それとも爆裂魔法撃った衝撃で頭まで爆発したの!?」
「失礼な、あのモフモフは一体一体は雪精と同じく無害ですよ? ねー、ちょむすけぇ」
「なーん」
「ほら、我が使い魔もそう言ってますし、あれは平和なんですよ」
「そ、そんなのかなぁ……い、いや、私は騙されないんだから!」
「ちなみにファイヤーボールとか撃とうとしてはいけませんよ? 爆裂魔法には遠く及びませんが炸裂魔法並みの爆発が起こると聞いてるので撃つなら水魔法で弱体化させてください。あ、雷魔法は吸収されてしまうので禁忌ですからね」
「やっぱりかなり厄介な相手じゃない!」
師匠がいるので安心してるだけですよ?
それに師匠が動かないのも、あの程度の戯れだったら何でもないと判断してのことでしょう。
何も心配はいりません。
「ほら、アナタがあたふたしてる間に師匠が掃除機で無力化始めましたよ?」
「あ、ほんとーだすごーい! じゃなくてどこから掃除機出したの!?」
「そんなもの亜空間からに決まってるじゃないですか。ミラーワールドとか面白い世界を見たことあるのに今更何を驚いて……」
「……わかった、先生については常識で推し量っちゃ駄目なんだわ」
「本当に今更ですね……」
<主人公ちゃん>
今日の予定は勇者に同行する師匠づらしながら王都のみんなに見送られ、山賊とかケサランパサランとか雑魚敵をなぎ払い……
そしてそろそろ本日のメインイベント!
ケセラセラ(勝手に命名)を退治してたせいで時間がとられ、本来なら今日中に砦に着いていたはずだった……と言うのは建前で、そうなるように時間管理をちゃんとしてた私エラい!
それで今晩は料理人カズマくんの栄養満点シチュー(材料提供:私、そして現地調達)をたらふく食べ、野営することになったのです!
やっぱり旅と言えば思いもよらないハプニング(予定調和)と雄大な自然(爆裂魔法等で破壊済み)を楽しむのが醍醐味でしょう!
そしてその醍醐味のメインディッシュ、ドラゴンゾンビ君がご登場です!
「……敵か」
「えっ、マジで? 俺徹夜で寝させてほしいんだけど……」
「私もお酒で酔っ払ったるからパスぅ……くかぁ……」
……そう言えばカズマくんは昨日ダイナマイト制作に励んでたよね、お疲れ様です!
アクアちゃんはいつも通りだけど二人ともこっちみてよ!
私がこれからスタイリッシュにドラゴンゾンビ倒すところみててください!
「うみゅぅ……だくねしゅ、その胸を捥いで私に寄越すのですよ……」
「お、おい! 一体どんな夢を!? じゃなくてめぐみん! お腹いっぱいで眠いのはわかるが早く起きろ! ほらゆんゆんも!」
「ダクネスさん……まだ夜ですよぉ……」
だめだ、めぐみんもゆんゆんもおいしい料理を食べれるだけ食べて撃沈してる!?
唯一まともなのはダクネスさんだけか……
まあこの際ダクネスだけでもいっか!
本当は魔法を使おうか迷ってたんだけど肉体で圧倒してダクネスの信仰心を底上げじゃい!
「どうして私以外誰も彼もがだらけてるのだ!?」
「だってナナシさんがいるしぃ……お前のせいで睡眠妨害されてるんだ。モンスターはナナシさんに任せてさっさと静かにしろよな」
「おい、カズマ! ナナシが一人で突っ込んでいく前に止めるのを手伝ってくれ!」
「あー、ダクネス殿? そろそろドラゴンゾンビがかかってくるが……一人で倒してしまってもかまわないのだろう?」
何か「構います!?」みたいな叫びが聞こえた気がするけど私の都合のいい耳はそんなことは気にもとめなかったみたい。
さて!
さっきの正直掃除機による戦闘とも言えない戦いよりましなバトルにしてくれよ?
「いざ、参る!」
今回の相手はスケリトルドラゴンでドラゴンゾンビの進化版みたいなおもしれぇやつ!
ドラゴンゾンビはブレスが失われその代わりに肉体のリミッターが外れ自傷行動も厭わない強力な物理攻撃を仕掛けてくるのですが、今回のスケリトルドラゴンくんは物理、魔法攻撃に強い耐性がある強敵となっています!
「だが遅い」
周囲に魔力を広げてものの動きを感知する索敵領域を広げずとも避けきれる。
きっと筋肉も神経もなくなってウェイトも軽くなったせいで弱体化してしまったんですね(超個人的意見)
地面が抉られるくらいの威力じゃダクネスさんもピンピン跳ね起きちゃいます、どうせ戦うのならもっと強力な個体がよかったですが、今回はこれで我慢ですね。
そんなことを考えつつ最小限の動きで攻撃を躱し、振り下ろされた攻撃に合わせて刀の位置を調整することで受け流しつつ相手の威力を利用して骨を断つ。
そんな単調な作業が十数回もすればあっという間に犬のおやつが完成です!
「こんなものか……詰まらんのぉ」
「ほら言ったろ? 勝手に処理するって」
「……聖女とは一体何なのだろうな」
ダクネスさんがまた何か変なことを言ってるみたいですが、聖女がアンデットを成仏させて何が悪いんですか!
そりゃ、確かにターンアンデットすれば直ぐかもしれませんが、戦いの中にかっこよさを求めるのが美学というものですので。
そういうところはいくら聖騎士だからといって怠ってはいけないポイントですよ?
毎回敵の猛攻を受けてピンチを演出するのは無骨な感じもありポイント高いですがもう少し鮮やかな決まり手を考えた方がいいでしょう。
本当は書かないかもしれない次回の話
ようやく辺境の砦に着いたご一行様。
疲れ(振動一つない快適な馬車の旅)を癒やすために混浴風呂にいざ突撃!
カズマくんは覗き見をして謎の局部を覆う光の攻撃で失明するのか!?
それとも堂々と入ってカズマちゃんにされてしまうのか!?
此、最重要選択為る事心得よ。汝、運命之選択、努々誤る事無き事願い給う。
-
怠惰暴虐之女神生存
-
怠惰暴虐之女神死亡