ダクネスのパンツで水戸黄門ごっこしつつ辺境の砦に入るご一行様。
疲れ(振動一つない快適な馬車の旅)を癒やすために混浴風呂にいざ突撃!
ロリボディには一切目をくれず邪神のほうへ足を進めると、カズマの眼を焼き切ろうとした不自然な光だったが、あまりにも堂々としていたせいで攻撃の対象にはならなかった模様。
その後、鼻血のせいで死にかけたカズマは裸一貫の勇者として伝説となった。
<めぐみん>
昨日は恐ろしい事件がありました。
師匠が駆けつけたから良かったものの、狡猾な魔王軍の敵は惨たらしいほど血に塗れたカズマを残し姿を消したと聞きます。
実際にお風呂を見に行くとそこにはどす黒く固まった夥しい量の血が。
それを見たときには思わず血の気が引きました。
武器を持たないカズマを屠るなんて一瞬のことだったのでしょう……なんとか師匠の回復魔法で事なきを得たからよかったものの……
「なあめぐみん。もう俺は元気だからさ、その……」
「離しませんよ、今のカズマは血が足りなくていつ倒れるか恐ろしくて見てられませんのでこうして私がついていてあげます」
「いや、そこはナナシさんの魔法で回復したから……あの、胸を押しつけようとしないでくれないか?」
「そうですか? 回復したのなら、まあ……」
「それよりさ! みんなで砦の探索しようぜ! そのときにでも風呂で裸一貫の俺がどんな風に舌戦を繰り広げたか語ってやるから」
「ほう! 砦の探索に戦いの話、どちらも興味深いですね!」
「だろ?」
ここは師匠がプロデュースした最強の前線基地。
そんな聖地とも言える場所を探索せずに師匠の弟子を名乗れようか、いや名乗れない!
早速私はゆんゆんらと一緒にこの素晴らしい場所を回ろうと決意し呼びに走り出した。
<カズマ>
あ、あぶなかったぁ!
あのままめぐみんに胸を押し当てられ続けられてたら鼻血が溢れるところだった……
せっかく誰かが俺の鼻血を戦闘の跡だって都合のいい噂を流してくれたんだ、こんなところで鼻血出してばれるわけにゃいけねぇ!
俺が襲撃されたせいで裏切り者がいるだとか防御結界を超えて転移魔法を使い侵入してくるぞとか、そんな根も葉もない憶測が戦況を不安にさせたらしいが、ナナシさんが「静まれぃ! 結界を強固にしておいた故安心せい。それとも何か? お前たちはそれしきのことで狼狽え揺らぐ正義なのか? 否だ! 正義は我々人類だ!」と兵士や日本人チート持ち冒険者どもの士気をあげたらしい。
……ほんと、ナナシさんが敵じゃなくて味方でよかったわ、マジで。
そうこうしてるとアクアとゆんゆん、それからナナシさんを連れて帰ってきためぐみんが走ってきた。
「カズマカズマ!」
「カズマだよ?」
「師匠が星の活動が終わるまでは働き続けるであろう装置を見せてくれるそうですよ! 何でも周りの魔力を引き寄せる魔法陣を完成させたらしくてですね!」
「何それすごい! 特許取ってないなら俺に権利くれないかな……」
「人に扱える力の範疇を超えているそうなので無理だと思いますが、そんなこと置いておいて早速探索に行きましょう! 施設に関して質問があれば何でも答えてくれるそうなので早くしないと時間がもったいないのです!」
「しょうがねぇなぁ……じゃあボチボチ行くかってオイ、今なんて? 人が扱える範疇じゃないって言ったよな!?」
「そういうのも師匠が答えてくれるので早速いきましょう!」
「いや、今すぐ答えろよ! そんなオーバーテクノロジー的なの使ったって碌なこと起きないんだぞ!? デストロイヤーがいい例だ! って鼻歌交じりで上機嫌だな聞けよ!」
めぐみんに手を握られ、というか逃げないように握りしめられた俺は、一瞬ドキっとしたが、残念なことに体力のなさの実感とめぐみんの握力による俺の右手の赤色のせいでトキメキは秒で消え去った。
そんな感じで腕を脱臼するんじゃないかというほどの力で俺は引っ張られ連れ回されたのだが、そんなことに対する抗議を忘れるほどにこの砦の中の設備はおかしかった。
地下では……
「この巨大なタンクはなんですか!? 地下一帯にズラリと並んでいて壮観ですがものすごく濃い魔力を感じます! もしや蓄魔機構ですか?」
「その通り、スリザリンに5点。レッドプリズンで理論は習っただろう? 魔力を圧縮することで物質化したりするのだが、それでは鉱石状で取り扱いが不便だ」
「スライムの核を混交すると液状になるんですよね。それにしても濃度が紅魔の里の2倍以上に見えますが本当にすごい魔力ですね……」
「うむ、確かに濃く作ってあるが濃度は10倍だ。グリフィンドール-1点」
「1タンクでも私の魔力量にせまる勢いね……ま、まあ女神であるこの私の方がちょっと上なんだけどね!」
「うまく運用すれば爆裂魔法3発は撃てる量だ。アズカバンに-10点」
「さっきから何の数字だよ!? 魔法学校違いだし反映されないし、アクアは投獄されてるの何なの借金まみれだからかそうなのか!?」
またある管理室では……
「このガラスで覆ってある赤いボタン……周りが虎柄で何というかボタンが押してくださいって語りかけてくるのよね……」
「それは自爆用のだ。押せば地下の魔力が暴走を始め、ファーストインパクトで平地一帯が地形変動を起こし、セカンドインパクトで岩盤が割れマグマが追り上がり、サードインパクトで各地の活火山が活発化し人類史上最悪レベルの天災をこの地にもたらす。すると不思議なことに生物が住めない環境になる」
「どこに不思議がってるんですか先生!? あ、アクアさん? 何指を近づけてるんですか押さないでくださいよ!? そもそももし押したらみんな死んじゃうのにそんなボタンこんなところに露出させておかないでくださいよ!」
「ねえゆんゆん、それは私の芸人魂に対する挑戦状なのかしら? あと一回押さないでって言ったら問答無用で押すわよ? そうしないといけないって抑えられない本能が叫ぶの」
「フリじゃねぇよこの駄女神! 希望通り熱湯に沈めてやろうか!」
また城壁では……
「おお、また懐かしい素材ですね! もしや城壁をこれにしたのは……」
「無論、変形合体デンドロメイデンのパーツであるからな」
「ふーん……鉄心が入ってるところは評価してあげるけど、ちょっと脆すぎないかしら?」
「魔力を入れると……ほれ、このように鋼鉄すら凌ぐ強度を生み出す」
「すごいわね……今度ゼル帝の家の素材に採用してみましょう!」
「無駄に多い魔力の使い道が決まったな」
とか
「ちなみにその変形合体なんちゃらって言うのは無人で動くんですか? 流石にパイロットとかは……」
「手動でもいけるが……乗りたいか?」
「もちろん乗りたいです!」「乗りたくないですッ!」
「ゆ、ゆんゆん!? まさかあなたという人が乗りたくないなどと……はっ、もしや神造兵器第一号機レッド・クリムゾン=スカーレットが自分の物とかそういうことですか!?」
「ち、違うから! そう言うことじゃなくて危険なことはしない主義なだけで……だから私の胸を平手打ちでビタンビタンしないで!?」
とか眼福眼福……
みたいなことしてるうちに主な設備の見学は終わっていた。
いや、面白すぎてほんとうにあっという間だったわ。
それにしてもこんなヤバい設備ならここから出ない限り無敵なんじゃないか?
……自爆スイッチは考えないものとする。
ただ、問題はここからでたらだよな……
聞いたところによると魔王軍側も強固な城壁を築き、その壁から遠距離攻撃をぶっぱしてくる難攻不落の要塞らしく、さっき真っ黒いGのごとく湧き出てきたミツラギに聞いたら戦線はやはり拮抗状態らしい。
そりゃそうだ、敵の砦近くに行ったら問答無用で消し炭にされるし、相手が無理にこちらに攻めてこない限りは戦況は睨み合いから動かないだろう。
そんなときに俺が鼻血出したせいで……混乱させてすみません、ほんと。
でも魔王軍の邪神様の攻撃はメデューサのごとく、目にしたが最後、回避不可の防御貫通攻撃が待っている。
だが、俺はぎりぎり致命傷は避けられたんだ、やっぱり悪いのは全裸でたゆんたゆんさせてた魔王軍側だ!
今度風呂場以外で出会ったらスティールして泣かせて戦意喪失させてやる!
「ナナシさん、これからどうするんだ? もしこの前の風呂好きのお姉さんがやってきたらまずはスティールしようと思ってるんだが……」
「邪神殿はもうここには現れないだろう」
「あ、そうなんすね」
「現れるとするのならこちらに爆裂魔法を撃ち込む瞬間か、はたまた汝らが敵陣に乗り込むときか……」
「そうなのか……って今爆裂魔法って?」
「そう言えばダクネス殿に頭を捻られて意識を失っておったの。今回の魔王軍幹部は爆裂魔法を操るぞ? そのあとはすぐテレポートで撤退する。まあ魔王城から結界の維持エネルギーを引っ張ってきておる故、もし爆裂魔法で突破するというなら10発分の威力はほしいところだ」
一応ここがかなり安全地帯だって確認できて安心したわ。
だけどその敵、爆裂魔法操れるってことはめぐみんとウィズとナナシさんレベルの魔法使いなのか、邪神って言ってたし無理ゲーじゃん。
しかもすぐに転移されたらめぐみんの爆裂魔法も俺たちの攻撃も届かないじゃん。
いや、でもこっちにはすごい設備とナナシさんがいる!
負ける要素なんて一切ないじゃないか!
「確かに強敵だな……だが、この砦の設備ならなんとかなるんじゃないか? ほらさっき魔力タンクあったし、強力な魔力発射装置とかあるんじゃないか? それにナナシさんがいれば」
「確かにそうかもしれんが……」
「じゃあ俺はゆっくりしてても大丈夫だな! よかったー、この前は何か知らないうちに温泉から出されててゆっくり入れなかったし、アルカンレティアみたいに変な勧誘もない! 温泉はいってのんびりさせてもらうわ!」
「申し訳ないが某、ちと用事がある故しばらく汝らで対応してくれ。ダクネス殿にこの設備の全権限は任せたが……あとはそこにあるマニュアル読んで対応してくれ。では」
「えっ? それってどういうこと重っ!? これなんだよってもういねぇ!?」
虚空に向かって話しかける俺はナナシさんから手渡されたハリーポッティ全巻くらいある極厚の本の表紙を見る。
そこには「魔力操作方法を用いた起動術式マニュアルその1」と書いてあった。
ナナシさんレベルの大魔法使いが使える装置はたくさんある。
だが、俺みたいな一般人が使えるのは自爆スイッチとか防壁魔力レベル操作レバーとかそれくらいなもんで……
ナナシがいない状況で、一体どうやって戦えばいいんだ!
この砦は堅牢だから負けはしないだろうが、さっきの作戦が丸つぶれして勝てない状況になってしまった……
……俺はリュックの中に詰め込んでいた改造偽マイトをムツラギたちチート冒険者に託し、膝に矢を受けたとか言ってこの砦から戦線を退こうと心に決めた。
何の意味もない次回予告
赤き炎、黒き灰燼が舞い上る。
神滅の魔法、爆裂魔法が同調し、抉られる万物。
勇者は勝ち筋を見いだし、魔法使いは師を超え邪神を倒すことができるのだろうか……
此、最重要選択為る事心得よ。汝、運命之選択、努々誤る事無き事願い給う。
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怠惰暴虐之女神生存
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怠惰暴虐之女神死亡