カズマが魔王軍の誰かに襲われ倒れたその翌日、「ノブレス・オブリージュ。私は私の責務を全うしてくりゅ!」と貴族の役目を自ら進んで行うお嬢様を仲間外れにカズマたちは砦探索!
でかくてごてごてしいその施設に中二病4人(+駄女神)は大興奮!
これで楽に勝つるな! がはは……なんてことはなかった。
<めぐみん>
いや~、やはり師匠の機械部分丸出しの無駄を削ぎ落としたからこそ見られる機能美は紅魔族の感性にビンビンきますね!
一通り砦の探索は終わったので今日も今日とて日課の一日一爆裂と行きたいところなんですが……
「カズマカズマ」
「カズマだよ」
「爆裂魔法を撃つのはどこでやればいいでしょう……その、もうそろそろ我慢できそうもないのですが///」
「もじもじして……おしっこ我慢してる風に言うなよオマエ。……あれだ、魔王軍来たら適当に撃てばいいだろ、それで砦の兵士や冒険者からチヤホヤされれば……」
「それができたら苦労してませんよ! この近辺で撃とうものなら魔王軍幹部の仕業だと勘違いされてしまいます! それにいいですか、今我が軍と魔王軍は拮抗状態にあります」
「お前の軍ではねぇよ」
「そんな状態で敵が自ら突撃してくるなんて馬鹿でもない限りありえません。それにいくら私の爆裂魔法の射程範囲が広いからと言ってここからは狙えませんよ。なので近づくために誰かについてきてもらおうとしたところに丁度……」
「控えればいいじゃん。もし我慢できないならその辺で野ションするみたいに野爆裂すりゃいい。それと丁度俺は準備してるところで連れションには行けないから」
「オイ、爆裂魔法とおしっこを同列視しないでもらおうか! そんなこと言うんでしたら別にカズマじゃなくていいです。……師匠はどこへ?」
「用事あるっつってどっか行ったぞ」
「用事……ですか?」
「なんでもしばらく帰ってこないらしい」
それはどういうことでしょう……
あの師匠が魔王軍を目の前にしてどこかへ行ってしまうなんておかしい。
敵の大軍を見かけたら目の色変えて嬉々として危機的な状況へ飛び込み鬼のような気配を纏って一人で楽しく血祭りをするようなあの人に限ってこのような好機を放棄して何かをするようなことは考えにくい。
「カズマは師匠から何か聞いていますか? 憶測でも構わないので何か教えてください」
「ナナシさんからはなーんにも。というか急にテレポートしてどっか行ったからな、近所ではなさそうだが、それ以上は何もわからん」
「そうですか……」
遠くと言ったら心当たりが多すぎて行き先を絞れませんね……
アクセルの街へ赴き、「この飯はフライドチキンに与える餌の分である」と律儀にゼル帝の世話を焼く魔道具店アルバイターバニルにお礼と報酬を与えに行ったのかもしれません。
もしくはゼル帝と商才のなさが災いし、強制断食させられている貧乏な店主ウィズに餌を与えに行ったのかも。
それか王都やここの結界や防壁維持のために魔王城に行って結界維持の魔力を頂戴しに行ったのか。
はたまた紅魔の里へ場を盛り上げるための増援を呼びに行ったのでしょうか……
それこそ単身で魔王軍の砦に乗り込み暴れ狂ってるのかもしれません。
とにかく、師匠がいないというのなら、カズマが一緒に爆裂散歩してくれないのなら仕方ありません。
ゆんゆんに適当に勝負を挑み勝利するか、友達だから連れ爆裂してくれませんかと言って、最終的に目標の一日一爆裂をしましょうと考えているとき、丁度カズマの軽そうなリュックに目がいく。
「おや、そのリュック……行きとは見違えるほど軽やかになりましたね? もしかしてアクアにシュワシュワすべて持って行かれましたか?」
「俺を駄女神と一緒にすんな! 携帯食のカップ麺とかは必要最低限、アクアじゃあるまいし重い酒を瓶ごと入れてくるか!」
「ではその中身は一体どこへ? というか何を入れてきたんですか?」
「ダイナマイトてんこ盛り合わせ。もう一度言っておくが酒じゃあない! そもそもアクアが持ってきたドデカいバッグ、あの中全部酒だったんだ、必要ねぇだろ」
まさかアクアが大事そうに抱えて、馬車の席一人分を占領していたアレの正体はシュワシュワだったとは……
まあ予想通り過ぎてアクアらしすぎて特段大きなリアクションはありませんが。
「あれ、そういうことならそのだいなまいと? とやらは何処へ? あれは爆発物なのでしょう、道ばたに転がしてきたのであれば危険なのでは? 敵味方関係なく無差別的に爆発してしまいませんか?」
「……!?」
「何ですか? そんな驚き仰天で顔真っ青にして……私の頭脳明晰な推理は正解で、回収しなくてはいけないことに気づいたとかですか?」
「いや、普段爆裂バカなのに地雷を思いつく頭の良さに驚きを隠せなかっただけだ。それとダイナマイトは上級チート冒険者の先生方に有効活用してもらうように無料配布してきただけだ」
「そ、その言い方だと私がとてつもない馬鹿という意味に聞こえてしまうのですが!? て、訂正を所望する! 私は普通の魔法をあえて習得せず最大最強の攻撃魔法をこよなく愛すだけの爆裂魔法一筋魔法使いなだけですからね!」
「あっそう」
「ところで、その爆発危険物の取り扱いはカズマ以外の冒険者でも大丈夫なんですか? 勝手に自爆しないといいのですが……」
「そこんとこは大丈夫だ。ライターの宣伝活動と同時に取扱説明はしてきたし、何なら俺の故郷の奴らならある程度の知識はあるからな、ダクネスでも使えたくらいだから大丈夫だろ」
「い、いつの間にダクネスが使ったんですか!? ……ま、まあそれならば大丈夫なのですが」
「……やっぱバカと天才って紙一重なんだよなぁ」
「なにか言いたいのならはっきり言ってもらおうじゃないか」
「今頭いいのに爆裂魔法からむと途端に馬鹿になるなって」
「なにおう!」
爆裂ソムリエの称号を授与した私が責任を持って爆裂魔法のなんたるかをこの男に今一度叩き込み直してあげないといけないのかもしれません、いえ、そうしなければなりません!
何故ならそれこそが今私が積める善行なのですから!
そうと決まれば無理矢理にでもカズマを連れて行くとしましょうええそうしましょう!
もし駄々をこねても襟を引っつかんで無理矢理にでも黙って連れて行きますよ!
****
ボッチが 現れた。
大魔法使い 兼 勇者めぐみんは どうする?
「さよなら、ゆんゆん。……私は一人で悪の根城を壊滅させに行ってきます。きっとそこに私の宿敵が……」
「き、急にそんなどうして!? そもそも一人で行くだなんて自殺行為よ! めぐみんは爆裂魔法撃ち終わった後に倒れちゃうから……」
「ですがこれも紅の業を背負いし我らが宿命。紅魔の里に邪神を面白半分で封印したご先祖様とその封印を面白いパズル感覚で解いた私がケジメをつけなければならないのです」
「……そんなこと言ったら私だって紅魔族次期族長。貴女だけに背負わせる訳にはいかない! そ、それにともだtライバルに勝手に死なれるのも困るしね!」
「じゃーよろしくおねがいしまーす」
「あ、あれ!? 今結構大きな決断をしたつもりだったのにそんなにふざけた感じであっさり目な言葉で終わり!? も、もしかして私がこう言うこと予想して言葉を……」
めぐみんは 仲間を 手に入れた!
今回のはボッチの習性を巧みに利用した私の頭脳プレーですね!
次いで邪神という言葉に妙に反応するアクシズ教の女神を自称するアークプリーストを勧誘。
最初は「前線なんて怖いし嫌よ!」と駄々をこねまくっていましたが、ゆんゆんのテレポートのことを伝えれば見事な180度手のひら返しを見せ、意気揚々と支度を始めました。
ちなみにダクネスは忙しそうだったので爆裂散歩のメンバー選出に途中落選したのでおいておきます。
さて、最後になりましたが今回私を散々コケにしてくれた男を勧誘です。
この男、リュックを整理してたときから少々挙動がおかしいと思っていましたがまさか私たちをおいて逃げようとしていたのでしょうか!?
……いや、流石にクズマとか言われてるとはいえ、果たしてそこまでクズなのでしょうか。
私としてはいつも何だかんやしょうがないといいつつ助けてくれる彼なら逃げるというよりも……
いえ、どちらでもいいでしょう。
この男の目的が何であれ私は爆裂魔法の伝道師めぐみん、この素晴らしき爆裂魔法を布教するためにこの男を連れ回すと決めたならそれ以外のことは二の次でいいのです!
そんなことを考えながら私は門を出た彼に声をかけた。
「……門から出て、何をしようとしてるんですか、カズマ」
「め、めぐみん!? それにゆんゆんとアクアまで……一体どうしてここに!?」
「質問を質問で返すんですね」
「ああ、いや、これはそのぅ……」
「ええ、みなまで言わなくてもいいですよ、一人で魔王軍の砦に行こうとしてるのですね」
「そ、そそそうなんだよ! やっぱりこんな危険なことお前らには任せられない、一人で背負わせてくれ」
「ふっ、水くさいこと言わないでください。……私たちは、仲間なんですから」
「そ、そうですよカズマさん! それに友達のパーティメンバーの自殺をみすみす見逃すわけにもいきません!」
「カズマー、私今から神を語る不届き者に天罰加えにいくところなの。あなたも一緒に来てその小賢しい悪知恵を私のために使いなさいな……ってどうしたのカズマ急に目を隠しちゃって。あ、わかったわ! 私の高潔な精神に感動して泣いちゃってるのね!」
嬉しくて嬉しくて涙が止めなくあふれているカズマ。
ええ、そうですとも、嬉しさのあまり涙が出ているのであって、私たちに取り囲まれたせいで脱出できず一人で逃げようとしてた計画が破綻したこととか、罪悪感で胸が引き裂かれそうだとか、そういうことではないとしておきましょう。
そもそも、私からしたら師匠がいなくとも設備が万全なこの施設にいる方が危険がないと思いますし、逃げる理由が見当たりませんしね。
それではいざ出陣の時来たれり!
わーっはっはっはっはっ、爆裂魔法が私を呼んでいるっ!
魔王軍という名の経験値が私という暴力を待っているのです!
<カズマ>
「ううっ……グスッ……」
「カズマさん、なぁにいつまでも泣いてるのよ。いくら私の慈愛の言葉に感動したからっていつまでも泣いてちゃ困っちゃうんですけど」
「泣いてねぇし……」
これから自ら危険地帯にいく俺の気持ちがわかってない俺以外のアクア含めたメンツ。
お前ら上級職とは違ってステータスが最弱の俺の気分はさながら処刑台に自ら上っていく犯罪者なんだわ。
罪悪感があろうとも生存本能を優先して脱出したい俺だが、トライフォースの中心を俺にしたような感じで取り囲まれ、逃げ出せない。
わざとか!? まさかの俺の意図を、脱出を阻止しようってかこの地獄鬼ども!
……いや、こいつらとしては俺を守るっていう意味とか潜伏スキルのためにこういう陣形にしたのかもしれない。
「なあ、やっぱ引き返さないか?」
「物怖じしてももう遅いわよ、ちゃっちゃと女神を騙る愚かな魔族に神罰と言う名のゴッドブローお見舞いしないと気が済まない気分なのよ私は!」
「物怖じっていうか、危険なことはよくないなって思ってさ。下手に魔王軍刺激して取り返しのつかないことになっても責任とれないだろ?」
「安心してくださいカズマ。魔王軍の戦力を削ろうというのが建前です。私は爆裂魔法が撃てれば何でもいいので適当なところで撃って帰りましょうか?」
「お前、今建前とか言ったか!? さっきまで罪悪感と格闘していた俺に謝れよ!?」
「おや、一体どんな罪悪感があったというのですか? 今ここで聖職者に懺悔してみては」
いや、俺の質問に答えろよ!
完璧なスルースキル、俺じゃなきゃ見逃すところだったぜ。
なんて言おうとしたときに、アクアが顔をずいと俺の方に寄せて。
「もしかしてカズマってば私に懺悔したいことあんの? シュワシュワのことだったら許さないんだから!」
「酒のことしか頭にないような生臭聖職者カッコ笑いカッコ閉じに誰が懺悔するか」
「誰がかっこ笑いよ! 私を愚弄した罰としてシュワシュワ奢らすわよ! それを拒否するってならあぐらかいたら足がしびれる可能性を3割増しにする天罰を与えるわ!」
「……やっぱ酒癖悪い生臭僧侶じゃねぇか。それと毎度思うんだが妙に嫌なとこついてくるアクア天罰なんなの?」
俺に物理的に噛みついてきそうなアクアをゆんゆんが取り押さえる。
うちの駄犬がすみません……
そんなこと思ってるとアクアを羽交い締めにしてるゆんゆんが。
「あ、あのぅ……ここまで来たのに帰っちゃうんですか? 私せっかく決死の覚悟で皆さんを守ろうとしてたのに……」
「重い!? 重すぎますよあなたというぼっちは!」
「だ、だってめぐみんが悪いんじゃない! 私に『貴女だけに背負わせる訳にはいかない!』とか恥ずかしいこと言わせて! ここで本当に帰るっていうなら私の覚悟を踏みにじられる思いよ!? 死ぬときは一緒に死のうと思ってたのに!」
重すぎる……俺なんか仲間を放置して一人帰宅しようかと思ってたのに。
ま、そんなことは置いておいて。
気が短く常にストレスを抱えがちなめぐみんのストレス発散爆裂魔法一発適当なところに撃ったら帰るか。
本人もそれでいいって言ってるし、アクアとゆんゆんがどうしてか攻撃賛成派だが、穏便派の俺はやることやったらクールに去るぜ。
そんなこと思ってると私はとにかく爆裂魔法が撃てれば何でもいいらしいめぐみんが。
「っと。このあたりでどうでしょうか? 丁度魔王軍の砦に有効な一撃を放てる場所ですが……」
「いいわね! あの中に神を語る不届き者がいるって言うのなら構わずいっちゃいなさい!」
「その辺に適当に放っとけー」
「ちゃんと砦を狙うのよ! 女神アクアが命ずる、私の代わりに魔王の手先をヤっておしまい!」
「……まあいいか。じゃあゆんゆんはテレポートの準備よろしくー」
「えっ、あっはい! というかめぐみん、もうそんな近くに来たの? この先生の地図によるとまだ距離があるように見えるんだけど……」
「はぁ、これだから人との距離感バグってるぼっちは……」
「流石にひどいわよ!? そもそも対人距離が駄目でも普通の距離はちゃんとしてるから!」
「ではそんなゆんゆんに質問です。他の一般的な攻撃魔法と比べて私の使う爆裂魔法の特筆すべき仕様とは?」
「えーっと……馬鹿げた威力?」
「ブーッ! 正解は天地を揺るがす鉄槌のごとき破壊力と自由自在の射程距離でした! 私の使う爆裂魔法の性能をとくと見よ!! 『エクスプロージョン』ッッ!!」
めぐみんがいつも通り砦に向かって爆裂魔法を放つ。
デュラハンのベルディアさんが立て籠もってた廃砦のときには半壊に収まっていた爆裂魔法だが、毎日研鑽してレベルアップしていくめぐみんの爆裂魔法の詠唱速度は日に日に短縮されているのにも関わらず、その破壊力はリッチーであるウィズの一撃をも容易く下し、今なら砦を消し飛ばすことができるのではないかという程にまで成長していたのだが……
「ふっふっふ! どーですかカズマぁ、私の爆裂魔法は」
「……逃げるぞ」
「えっ? どうしましたそんな鬼気迫った表情で……」
「いいから逃げるぞ! オイゆんゆん! テレポートはまだか!」
「は、はい! もうできます! て、『テレポート』ッッ!」
……最悪だ。
まさかこんな……
「一体どうしたというのですか?」
「いいか、めぐみん、落ち着いて聞いてくれ」
「は、はい……」
「……爆裂魔法が全く効いてない」
「そ、それは一体どういう……」
土煙舞う中、何か違和感を感じた俺は千里眼で魔王軍の砦を見ると……
そこには傷一つない砦がそのままあった。
これが意味するところは即ち。
「ナナシが魔王軍に寝返った」
なーんかシリアスっぽくなってきましたね。
後先考えないで書くからこんなことになっちゃうんだよもう……
というわけで行き当たりばったりな予告かもしれないコーナー
邪神に魂を売った魔女。
どうして爆裂魔法の師も中二病の師匠も敵に回ったのか。
その真相がわかる……カモシレナイデス
次回「拮抗解除」
此、最重要選択為る事心得よ。汝、運命之選択、努々誤る事無き事願い給う。
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怠惰暴虐之女神生存
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怠惰暴虐之女神死亡