ちょむすけの封印を解いた主人公ちゃん。
ついでに終焉の獣を呼び寄せた。
近づくだけで、いてつく波動で心ごと凍らされるか、灼熱の業火に魂ごと焼かれるか。
そんな巨大な怪物どもに一体の巨人が立ち向かおうとしていた。
<めぐみん>
「……私の半身が」
「ちょむすけがあんなはしたない姿に……!」
「ちょ、ちょっと待ってくれないかしら!? そのちょむすけっていうのはあの暴虐の魔獣のことを言ってるのかしら!?」
「そうに決まってるじゃないですか! 我が妹の食欲から救った代わりに使い魔の契約を結んだ彼女こそが我が半身、ちょむすけです!」
「……いちおう私の半身なのだけれど、完全に封印が解除されたみたいね。魔力が足りずに爆裂魔法を撃てないのならダメージを与えることは……」
お姉さんが何か言っている気がしますが、あれは私の使い魔で間違いないのです!
ちょむすけがあの巨大な魔物になったのです!
さすが前世が邪神である我の半身と言ったところでしょう……
だが、いくら強そうだからと言って私の使い魔に対して攻撃して倒そうとするのはやめてもらおうか!
……とは言ってみたものの、あの魔獣には見覚えがあります。
ドラゴンを彷彿とさせるその翼と牙。
古の力の奔流を纏うそのお姿は確か紅魔の里でお姉さんと出会ったときに、爆裂魔法で倒してくれた魔獣と同じ。
こんなに遠くにいるのに感じる熱波。
つまり熱・火炎耐性がない者は近づくだけで無慈悲に消し炭になることを意味している。
さらにその奥には分厚い毛皮と巨大な牙を持つナニカ。
見た目は初心者殺しに近くともその力は地面を凍てつかせ、氷樹がパキリパキリと音を立てながら空気を奪い森をなす。
大精霊冬将軍に匹敵するかそれ以上の何か敵意のようなものを感じる。
「……まずいことになってきたわね、急がないと」
「そのようですね……ですが心配は無用のようですよ」
「そ、それってどういう……」
「いえ。この場所自体師匠が作ったのなら紅魔の里でも使われている技術、ということですよ」
「あのもう一人の子がなんとか時間を稼いでくれるのね?」
「そういうことです! さあ急ぎましょう」
わずかに気持ちが焦り動揺していたお姉さんの足は止まらない。
今私たちは魔王軍と人類という垣根を越えて一人の大事に思う人を助けることに一致団結しているから、我が赤き瞳と我が胸に抱く金色の瞳が強き光を放ち、同調する。
……大勢の凄腕冒険者との戦いをしなくて済むという師匠のために用意されたかのような出現。
ところから見て、きっと師匠の仕業に違いありません。
しかし、それ自体は師匠の意思ではなく裏の人格のせい……の、はず……
なんだか師匠でもやりかねない気がしてきましたがおいておきましょう。
さあ、魔力タンクまではもう一踏ん張りです。
師匠なら私の爆裂魔法の1発や2発では簡単に防がれてしまうかもしれません。
ですが呆れかえるほど数多の連続高火力攻撃を前にしてどれだけ捌けますか?
内に指向性を持たせた爆圧を切れますか?
あなたの一番弟子が勝負を真っ向から受け止めてくれるのでしょう?
<ダクネス>
突然現れた二体の強力な魔獣のせいで冒険者や兵士が分断されてしまった。
ここにいる全員と強化されたナナシでようやく釣り合いがとれるくらいだと思っていたのに厳しい戦況にただ耐え忍ぶことしかできなかった。
「神砂嵐ッ!」
「あ、あぶにゃい!! ぐゥっ!」
「「だ、ダクネスさぁぁん!!」」
くっ、風圧で飛ばされるとはものすごい威力だ。
私でなければ一撃で吹き飛ばされていたぞ。
まあ衝撃波も混じっていたが私は頬や腕の切り傷程度で軽傷だ。
冒険者たちが私を心配する声が聞こえるが、私は問題ないといわんばかりに風圧で舞い上がった砂埃を剣を振り下ろすことで払う。
「ふんっ」
「……真空刃程度の物理現象では大した傷なしか」
「爆裂魔法をも耐え凌ぐ私の防御力を嘗めてもらっては困るぞ」
「すまないすまない……だが、このまま私を引きつけておくだけでよいのか? 勇者候補らが我が使い魔どもに今にもやらせそうだぞ? ……はぁ、こういうのをフラグというのだったな」
「何を言って……」
「全くめんどくさい加勢が来たものだ」
「貴様ら! 逃げろ!」
ナナシの一言で拮抗状態が終わる。
砦の方から聞こえてくる大きな音と揺れ、おとぎの話で聞いたことがある巨人、デンドロメイデンが登場した。
紅魔の里でも見た気がするが、それより無骨で、向こうにいる巨獣以上の体格だ。
それこそデストロイヤーとためを張れる大きさなのではないか。
ソイツの着地の衝撃によって地面が抉れ、石つぶてがはじけ飛ぶ。
その勢いで私以外の冒険者たちは外に吹き飛ばされてしまったがむしろ問題ないだろう。
あの巨体に押しつぶされればただでは済まない。
加えて万が一潰されずとも戦いに巻き込まれればどうなるかくらい想像がつく。
ちなみに私は礫がかすり、多少ながら快らk……擦り傷ができたがポーションで治すまでもない。
……まったく、このナナシは一体何をしたいのやら。
徹底的に打ちのめそうとするのなら砦にポーションをおいていかないだろうに。
都合が悪いのなら事前に操縦桿でも動力源でも破壊しておけば使えなかっただろうに。
どうして普段なら用意周到過ぎるほどの徹底ぶりなのに、いつもならこんなヘマをしないのに、どうして今日に限って私たちの都合のいいように……
やはりこれはナナシにとっても不測の事態、ということか?
紅魔族のような妄言ではあるまいが俄に裏の人格とやらの存在、か。
人格の出現を予知できなかったのだろうか、それとも予知できたとしても成さねばならないことがあったのだろうか。
「ほう、私を目の前にして考え事とはずいぶん余裕そうだな」
「掠っただけでこの衝撃とは……直撃したときの気持ちよさを考えて武者震いさせていたところだ」
「今気持ちいいって言ったか?」
「言ってない」
「……まあぶれない軸があるのはいいことだ。私の攻撃ごときでその軸、ぶれるなよ。さあ、打ち合おうか」
「それは誰の本心か?」
「無論、私だとも」
……私、か。
やはり違和感があるな、その一人称。
「さて、話は終わりだ。早々に決着をつけるには惜しいが、あの勇者のことだ。何かしらの奇策を企んでいるに違いない。防げるようなわざわざ姑息な罠に嵌まる愚かさは生憎持ち合わせていないのでな」
「くっ……随分と口が達者だな、もしあの男の元に行くというなら私を倒してからいくといい!」
……やった、言えたぞ、人生で言ってみたかったセリフ上位だ!
<主人公ちゃん>
かったッ!?
このダクネスさんアダマンタイトよりかったいよ!?
どうしてあんな大胸筋デカいのに堅い……デカいからかッ!
なんてくだらないこと考えてる間にもダクネスさんの誰も傷つかない空振り剣に合わせて受け流ししたり力を反作用させたり。
正直、神様的パワーを上乗せしてヤーしてるのにどうしてダクネスさんが吹き飛ばされずに打ち合えてるのかが不思議だ……
もしかして、もともと私、貧弱すぎ!?
冒険者ってステータス上がりにくいけどさ、流石に休暇を実家で筋トレに費やすドMの筋力ステータス極振りをなめてました……
とは言いつつ技術面では私の方に軍配が上がる。
そろそろダクネスの剣は自分自身の力だけで……!
「私の剣が!?」
「折れてしまったな。これからどうするのだ? 私を倒すなど夢のまた夢の果てのようだが?」
「……たとえ剣が折れようとも我が心は折れない!」
「これで内心もっと激しい攻撃をしてくれなどと思わなければ立派な騎士に見えるのだがな……」
「お、思ってにゃんかにゃい!」
いや思ってるでしょう!?
私にかかればその心の内を読み取るなんて簡単なことなんですよ?
っと、そんなこと思っているうちに敵の準備が整いましたか。
ダクネスさんとやりあって力の加減を試したかいがありましたね、スマートな戦いも好きですが激しい戦いもまた望んでいるのですよ。
「さあ、ここまでのお付き合い、楽しかったが幕引きだ」
「何を……」
「これが手加減というものなのだ!」
「ぐあああ……っ!!」
私は強めにダクネスの鎧に掌底をぶつけ遠くへ吹き飛ばす。
鎧は砕け、大砲のような勢いで吹き飛んだがきっと大丈夫でしょう。
問題はそれじゃありません。
爆裂魔法の嵐がやってくる!
全く、私の愛弟子は無茶なことをする。
私のまねをして膨大な魔力を得て、爆裂魔法に指向性をもたせようとするとは……
擬似的にあのレールガン(仮)再現し、私を中心に上下左右前後全方向から内側に同時に発射、加えて連射することでデストロイヤーを消滅させたときのような馬鹿げた威力を生み出そうとしているのでしょう。
「くくくっ……面白い!! それでこそ我が弟子だ! いいだろう。私の防御とどちらが上か、試してみようではないか!」
私はうねる魔力を集める。
そこに神力を織り込み、重ね、融合させていく。
……ああ、やはり楽しいな。
悪役は初めての経験だがしっくりくる。
もし機会があればウォルバクには魔王の座をいただくとよう!
次回
めぐみんとウォルバクが爆裂魔法でナナシを打ち破ろうとするが、その魔力タンクはナナシにもつながっている。
結界術を使い、爆裂魔法を耐えしのぐ主人公ちゃんだが倒されてしまうのか!?
どうなる主人公ちゃん!
此、最重要選択為る事心得よ。汝、運命之選択、努々誤る事無き事願い給う。
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怠惰暴虐之女神生存
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怠惰暴虐之女神死亡