私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

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シリアス味を出してみた前回のあらすじ

一世一代の国家事業を一ヶ月で終わらせるという地獄のような職務から解放されて、しかしその後遺症(=疲れ)で後頭部がバールのようなもので殴られたような鈍痛(=睡魔)に襲われていた主人公ちゃん。
カズマくんが自分の身の潔白を証明せんと、ロストメモリー(失われた過去)を見つけ出すために魔王軍幹部級の四天王が住まう魔道具店へと運んだのだが……


記憶を復元するために劇薬飲まされた

<カズマ>

 

俺は一ヶ月ほど記憶を失っている。

そんな状況で帰宅してみれば「あんたみたいな放浪ドラ息子、この家の子じゃありません!」ってアクアに閉め出された。

 

途方に暮れた俺は頼みの綱であるナナシさんの元へ。

ナナ師曰く、記憶を取り戻したいなら明日以降、何かしら行動を起こしたいならバニルのとこへ相談へ行くといい、されば己の欲っするところ見つかるべし、と。

ってことで俺は悪魔だから期待せずに冒険者ギルドの端にいる悪魔に声をかけた。

 

 

「おーっすバニル」

「フハハハ! 我が輩の見通す眼は屋敷を追い出された哀れーな小僧がトボトボとこちらへ来ることをも見通していたぞ! おおっと、これはこれは相談料以上の悪感情! この素晴らしいチップはありがたーく頂戴させてもらうとしよう」

「やかましいわ! てか相談料って前払い制かつ悪感情換算なのかよ!?」

「いや、普通はエリスだ。これは汝だけの……特別サービスである」(囁き)

「そんな特別サービスで喜ぶやつはいねぇよ! 無駄にイケボで囁くな!」

「ふむ、おかしいな。我が輩の元に来る女子は挙ってこれを待ちわびているのだが……」

 

 

いや、確かに今の俺は天下不滅の無一文だけども!

さすがに毎度これで勘定されたら精神がストレスマックスで死んじまう!

もし、もしもこれを待ちわびてる人がいるとしたらそれは熱心な悪魔信者か、それとも憧れを抱くサキュバスのお姉さんたちか、そんなところだろ。

そんなこと思っている間にもバニルの話は続く。

 

 

「まあいい。今宵は満月、我らが力の根源たる魔力が満ち満ちて感情が高ぶる夜、敵対関係である性悪女神に向けてこの高ぶりを発散するのは吝かではない」

「……つまりお前が駄女神の隙を作って、俺はタイミングを見計らって屋敷を奪還ってことか?」

「イグザクトリー。丑の刻参りと称して我が輩が仕掛ける。これは所謂Win-Winな関係というやつになるが、いかがかな?」

「いい案だ! 俺の悪感情取り過ぎた分……サービスは期待してるかんな?」

「もちろんである! 手に持ちだしたるはセクシー極まったダイコン! これを汝に」

「いや、仕事して還元しろください!? 大根もらったところで凶器としての活用方法しか今んとこ見いだせないから!」

 

 

と、そんな感じで昨日の晩、屋敷に潜入して奪還しようとして……失敗した。

いや、聞いてくれよ!

アクアとかいう僧侶、実は脳筋僧侶だったんです!

ガチビルド編成で、物理アタッカーとして前線張れるような、回復職じゃなくて怪我を顧みず自己回復しながら突撃するバーサーカーだったんです!

俺はちっぽけなプライドとともにボロボロにされ、屋敷からおめおめと引き下がってしまったんだ。

 

 

 

 

 

 

そんなことをしたのが昨日、そして今朝。

俺はナナシさんに記憶の回復をしてもらうべくウィズ魔道具店に立ち寄り……正座することになってしまった。

 

 

『平伏したまえ』

「聞くのである先輩店員よ!」

「い、いや聞いてくださいよナナシs……いや、団長! というかなんか動けないですが!?」

「支配の呪言だ、逃走防止のな。さて聞いてやろう、話だけは。何故に某に無断で盗賊団としての活動を行ったか、疾く申せ」

「我が輩は昨日、助手殿が屋敷を奪還すべく襲撃を仕掛けることになっていたのであるが、しかしこれは、これに関しては下っ端の我が輩は事情を何も知らぬ哀れな被害者的立場なのである! すべては助手殿が企てたこと……」

「ああっ! 裏切られた!? 違うからな! お前に相談しようとしたら話聞くまもなく、アクアにちょっかいかけるからその隙に屋敷へ忍び込めって、そう言ったのはお前じゃねぇか! そもそも自宅とは言え泥棒みたいでちょっとやましい気持ちもあったんだよ、顔バレしたくなかったんだよ!」

 

 

そう、俺はほとんど盗賊団のかっこうで潜入した。

それがナナシさんの気に障ったらしい。

ほっぺをプクーっと膨らませて不機嫌アピールをする様子は端から見ればロリっ娘が可愛らしく拗ねているようにもみえるだろうが、器用なことに圧を俺とバニルにだけかけていて、冷や汗だらだらっす。

 

 

「ふむ、まあいい。いいのだ、この団長たる某を差し置いて下っ端二人が仮面をかぶって屋敷への潜入をするなんてことがあったとしても。銀髪仮面盗賊団の掟である潜入前の予告状を送らなかったこととしても。さらにはそのことが街中の噂になりかけたことも。全て某の寛容な心で……そう、寛容な心を以て……」

「いや、本当に悪かったって。お前のことを置いてけぼりにしたことは謝るから、そろそろ許してくれないか?」

「そうである、実はいつもお思い付きで行動しているにも関わらず、幸運値の影響で大体お思い通りの結果になってるだけの変態技術者よ、今晩もリベンジマッチという名目で奇襲をかける予定故、さっさと許すs」

「さあ、何をしている! 準備じゃ準備!」

 

 

なんか変態呼ばわりされてたのに元気になってる!?

というか本当のところ、盗賊団とかどうでもよくて、面白そうなことに参加したかっただけなんじゃ?

いや、全く俺からしたら面白くもなんともないけど!

いつの間にか動けるようになっていた体を解しながらそんなことを思っていると、ルンルンと小走りで忙しない様子で準備をするナナシが。

 

 

「ああ、そうそう。実は例の記憶回復薬、改良版を今朝作成してのう、なんとなく理論上では副作用はいい感じになってるはずじゃ、飲むがよい」

「……なんか添加物でてんこ盛りで腐らなそうな色合いしてるな。というかなんでそんなポワポワしてんの説明!?」

「それと着色はしてないぞ? 純に天然物から生成した化学物質の味わいのレポートを後で頼む。安全性は保証できるブツになったが、味までは考えておらんかった故」

「ちなみに価格は10万エリスである、が! 今ならなんとお買い得! こちらの当店の店主が厳選してきた不良在庫をおつけして、併せて何と5万エリス!」

「なんか急に怪しくなったなオイ! 5万エリスって実は全部不良在庫の卸売価格だろ! 俺を体のいい在庫処分係にすんな不良品押しつけるな! そう言うのはナナシさんだけで十分だ!」

「まあまあ、せっかく作ったポーションを無駄にするわけにもいかぬし……一口でも効果は出る故、お試しに……」

「いやいや、怪しげな液体飲みたくねぇよ! 俺はセイクリッド・ハイネス・ヒールの方をお願いしt……」

「フハハハハハ! おとなしくこの薬を飲み、在庫処分を手伝うといいぞ、お・客・様ッ!」

「ごぼごぼげぼぐぼ……っ!?!?」

「おお、一口でいいのに一気に飲んだのう。……して気分はいかがじゃ?」

 

 

 

俺は死に神と名高い見た目小学生の高校生探偵のように怪しげな薬品を口に含まされた。

その瞬間、思い出す記憶。

俺はなんて大事なことを忘れてたんだ……ッ!

俺はアイリスに「お兄ちゃん大好き」って言われて、そしてあんの白スーツに無理矢理記憶を消去するポーションを飲まされたんだ!

記憶が戻ったからにはヤツを、俺とアイリスの兄弟愛を引き裂いた極悪非道の権化であるクレアを討たねば!

そんな思いを抱いていたんだが、そんな思いは脳みそにガツンとくる衝撃でかき消される。

 

 

「うっ……グッ! ぐああぁぁああっ!!」

「正気を保て! 邪の力に飲み込まれるな!」

 

 

なんでこんなことになったか。

それは別に気が狂ってるとか、中二病になったとか、そういうわけじゃない。

俺は確かに記憶喪失だったんだ。

本当です。

俺はナナシみたいに裏の人格とかいう中二要素は持ってない。

 

じゃあなんでこんな藻掻き苦しんでいるかって言うとだな……

このポーション、マズい。

いや、とんでもなくまずい、マッズ!?

なんだこの尋常ならざるまずさは!?(食レポ)

えぐみと苦みが混在しているのかなんだかよくわからないほどに強烈にマッッズッ!!

マジマッズイ!

不味いにもほどがあんぞ!?

次元を超越したまずさを体験していると、次の瞬間、アイリスとの思い出以外の記憶も俺の脳内を記憶が駆け回る。

 

それはネロイド確保のバイトで草むらに隠れたヤツを捕まえようとして、反撃を食らい、伸びてしまった日のこと。

それは麺を啜っているときにアクアが初心者殺しをマジックで召喚して思わず吹き出し、鼻の中にしばらく汁と麺が居続けた感覚があった日のこと。

それは爆裂散歩をしていたらカエルに囲まれ、なんとか討伐し、囮になって粘液まみれのめぐみんを背負ってお風呂に行ったらダクネスの親父さんと会ってしまい、気まずかった日のこと……

 

ハッ……!?!?

もしかして、今のが走馬灯……ってやつか!?

俺、マズすぎて走馬灯見かけたんだが!?

というかこれが走馬灯だとして、記憶のチョイス一体どうなってるんだよっ!

もっとこう、めぐみんと甘酸っぱい関係になったり、ダクネスが一緒に大人になろうとか行ってきたシーンだったり、ゆんゆんがカズマさんの子供がほしいって言ってきた時だったり、そう言う青春っぽいいい感じのチョイスしてくれよ!

 

 

「おっ、気がついたか、小童」

「おいなんてもの俺に飲ませてくれてんだよこの悪魔!」

「我が輩、悪魔故」

「マズさのあまり死にかけるっていう貴重な体験しかけたんだが!?」

「なるほど、味の改善余地あり、と」

「改善の余地しかないわ! これ以上のまずさを俺は人生で一度も体験したことねぇよ!」

「記憶の方は?」

「一応戻った……あっ」

 

 

俺は記憶を取り戻した。

しかし同時に罪も思い出してしまった。

 

……屋敷の前に到着して、俺は土下座した。




支配の呪言:効果は文字通り。バニルには効いていない。

次回予告

今日はいい天気、いい爆裂日和。
そんなことを思いつつ今日も銀髪仮面盗賊団の傘下組織をまとめる首領として何かできないかというフラストレーションを爆裂魔法に乗せる。
…………そろそろ、我々も本腰を入れて活動しなくては。
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