一ヶ月もの間無断外出していたカズマ。
死ぬほど苦い薬を飲んだカズマ。
全力で土下座したカズマ。
なんやかんやあって無事屋敷の中に入れてもらえたカズマ。
<めぐみん>
それは、隣国エルロードに出向き、その後なんやかんやあってからアクセルに帰還してしばらく経った日のこと。
カズマは反省して屋敷の家事を三日ほど全力で、そのごは徐々に、だらだらと……
一ヶ月くらいたった頃にはいつも通りのまるでだらしのない男、つまりマダオになっていました。
つくづく思うのですがどうして私という人間はこのマダオのことをここまで好きになってしまったのでしょうか。
我ながら甚だ疑問です。
そんな平和な屋敷に一通の手紙。
手紙の送り主はドネリー家。
ダクネスに「家格が下のくせに私の家を貧乏貴族だのなんだのと言ってくる傲慢な成金貴族」と言わしめるほど性格が終わってるお嬢様がいる成り上がり貴族の家である。
そんな貴族から近隣の土地にモンスターが出現したから調査も含めて討伐をお願いしたいとのこと。
私はいつもなら先頭を切ってズイズイと歩くところですが今日はクエストに支障が出ないよう慎ましく帽子を深くかぶりカズマの後ろをついて歩く。
「なあめぐみん、一体どうしちまったんだ? いっつも爆裂のことにしか頭にないくせに最近のお前はずいぶん静かだぞ? ……いや、とってもいいことだけどな!」
「おい、私のことを爆裂一筋のバカ呼ばわりするのはやめてもらおうか! いえ爆裂魔法一筋なのは認めますが言い方に悪意があって酷いですよ!」
「ではどうしたというのだ? 以前ならば私かアクアか、屋敷のものを誘って爆裂魔法を放ちにいくのが日課であったろう。ここ一、二週間はまったくそれがないぞ。しかも爆裂魔法を撃てるかもしれない今日に限ってしおらしいし、一体どうしてしまったというのだ?」
「私にだって友人がいるんです! その人たちを爆裂散歩へ連れ出したので、私は割といつも通りやらせてもらってますよ?」
「へー、まさかライバルだの何だの言ってたゆんゆんのことをついに友達と……」
「お、おい! 私の友達をあのぼっちと断定するのをやめてもらおうじゃないか! それにゆんゆんはライバルなので友達ではありませんよ! そういっておいた方がからかい甲斐がありますしね」
最近定期的に夜這いもどきを繰り返しているカズマはともかくとして、ダクネスも発情してる割に案外周りのことが見えてますね。
なんとかごまかしましたが実はというとこの屋敷、因縁があるのです。
というのも以前盗賊団の真似事でこの屋敷に襲撃を仕掛けようとしてた際に、この屋敷のお嬢様がモンスターに襲われかけているのを見まして……
それで私が一発爆裂魔法を撃ち込んでやって助けたのですが、この屋敷の貴族は助けてもらってありがとうの一つも言えないどころか、帰ってきた返事は「助けてなんていっておりませんの」みたいな高圧的なものでした。
それを言い放った張本人が目の前にいるのです。
久しぶりの依頼なのに、思わず依頼主との対面が気まずいという事態になるとは思ってもみませんでした。
「私、同じ穴のドネリー家の当主をしております、カレンと申しま……あっ」
「あっ、どうも」
「えっと、カレンさんでしたっけ? ちょーーっとこの魔法使いの仲間とお話ししないといけないことがありますので少しばかりお待ちくださいませんか?」
「え、ええ、どうぞお構いなく……」
私とカレンとかいう悪徳貴族の香りをプンプン醸し出す令嬢の気まずそうな様子を見たカズマが私の手を引き、カレンの声が聞こえないところまでやってくる。
べ、別に私はやましいことは何一つしていないのですよ?
確かに貴族の屋敷に襲撃を仕掛けようとしたことは世間から見たら悪党の所業ですが、あの至高なる思想を掲げている銀髪仮面盗賊団の手となり足となるということ自体は国家の王女様公認なのですから怒られることはありません!
ただ、それを証明する材料がないので今は反論したり正直に言ったりできないだけです。
そう言うことでカズマに伝えることを伝えると。
「なんだよ、結局お前悪いことしてないじゃないか。だったら胸張って堂々としてればいいんだよ、ほら、エルロードで王子相手にキレた時くらい正々堂々とな」
「しかしですよカズマ、流石にこの屋敷、きな臭いとは思いませんか? あのときの一回だけじゃなく今回もモンスターが出るとは……本格的な調査が必要かもしれません」
「そうか? 別に俺はやることやって報酬もらえればそれでいいと思うが……」
「いいや、調査が必要だな」
「誰ですか! 姿を現せ!」
私は驚いた風な声を出してそんな台詞を言う。
まあ驚いた風というのは声を聞いたときに一瞬で誰だかわかったおかげで驚いてはいないということなのです。
……ほ、本当ですよ!
紅魔族随一の天才たるもの、常時戦場を意識しているので不意打ちなど不意打ちにあらずなのです。
むしろ不意打ち上等です!
だから心拍数が上昇してるとか、ビクッと一瞬反応したとか、そういうのは見間違えというか勘違いというやつですから!
「な、ナナシさんじゃないっすか! どうしてこんなところに……」
「いや、つい先日、汝が屋敷に潜入しようって言ってた話がいつの間にかなくなっておった故、どこかで振り替えしないのかなと尾行させてもらっていたら絶好の侵入先に巡り会えたと、そう思うて声をかけてみたわけだ」
「おおっ! 潜入調査ですか!」
「どう思うか、銀髪仮面盗賊団参加組織の頭としては」
「いいですね、絶好の盗賊日和です! 早速下っ端クリスや副団長ゆんゆんを呼んで調査を開始しましょう!」
「ちょっと待て待て!? 今の今まで尾行されてたことに関しても驚きなのに、それに加えてめぐみんが盗賊団参加組織のリーダーでゆんゆんが副団長!? そんでクリスがその下っ端!?」
「ちなみに某は参加組織の相談役になっておる」
「いろいろな意味で情報過多なんだが!?」
「ですが私、カズマにいろいろそういうこと報告してましたよ?」
「あれか? 世迷い言かと思って聞き流してたことが実は全部本当だって!? どんなすれ違いだよ!」
まったくこの男は……私が真面目に話していたことを世迷い言というとは。
まあ私自身世界各地に散らばっているという諜報員、及び団員の人数や名簿の把握はできていないですし、今でも夢幻の類いなのではないかと自分自身が疑っているので堂々と人のことを言えるわけではないのですが。
「というわけで、だ。今晩より襲撃しようと思う。予告状はすでに送りつけておいた」
「いや、どういうわけでだよ!」
「クリスとはこちらが連絡をつけておく故、とりあえず昼間はモンスター討伐に励むとよい」
「おおっ、それは感謝しますよ! あの下っ端は身軽すぎていけません。神出鬼没というのはかっこいいですが組織に身を置くものとして報告や連絡の一報くらいは欲しいものですね」
「では後程。『ライトオブリフレクション』」
そう言って師匠は気配と景色を見事に同化させて立ち去った。
ふっふっふ、今晩が楽しみすぎて、眠れない長き夜になりそうですね!
<カズマ>
なんかめぐみんやナナシさんが屋敷へ潜入するのは確定事項らしい。
……というかどうして傘下組織にナナシさんとかクリスが籍を置いてるんだよ。
お前ら銀髪仮面盗賊団の団長と副団長だろ!?
何いつの間にかできていた大規模傘下組織のメンバーに下っ端扱いされるとかいう面白い状況になってるんだよ……
そんなこと思いつつダクネスたちの方に戻ると熾烈な口論が繰り広げられていた。
「どういうことなのかしら! 巷を騒がせているというあの盗賊団の予告状が届いたですって!? まさか我が屋敷を襲撃に来るだなんて!」
「貴族の責務を果たさない悪徳貴族を見てエリス様がお怒りになったのだ!」
「もちろんこの私も怒ってるわ! どうして私がお金なくなってお金借りようとした時にアクシズ教には借せないって言ったのかしら! そこのところきっちりお話ししてもらおうじゃないの!」
「宗教家たちはだまらっしゃい! そんなうさんくさい神様を信仰したところでお金は増えませんことよ! そう、私のように現実を直視してお金の動きを追いかけるべきですのよ!」
「アクシズ教の女神はともかくとして我が家が信仰してると知っていながらエリス様を愚弄するとは何事だ!」
「ねえダクネス? 私のことは? エリスのことを怒ってくれてるのはいいんだけど私のこともちゃんと怒って? …………なんで顔を背けるの!?」
いや、自覚ないのかアクア?
それともただのバカなのか?
……うん、ただの馬鹿だったわこいつ。
アクシズ教は詐欺まがいの宗教勧誘を行い、さらには普段の素行も悪い。
そんなやつに金を貸せるかってんだ。
「ですが大丈夫ですわよ! 何て言ったって今の私にはエルロードで盗賊団に襲撃されたものの見事撤退に追い込んだというパーティーご一行様が契約に基づきなんとかしてくれるはずですもの! おーっほっほっほ!」
「なんか悪役令嬢の高笑いに聞こえるんだがカレンさん!」
「おや、お話は終わりましたの? この田舎の貧乏くさいご令嬢を連れて依頼をこなしてくれるとありがたいのですが……ついでに契約金額に色をおつけいたしますので盗賊からの護衛も……」
「……はい」
いや、俺たちVS俺たちみたいな構図なんだが!?
依頼終わってからの報酬が一体どれだけのものになっているか楽しみだが、それ以上にせっかくエルロードでいい感じになった名声がここで変な感じにならないか心配だ。
そんなことを思いながら今日の依頼「屋敷周辺にいる魔物の討伐」をこなそうと俺たち4人は屋敷の外に出て……
いつの間にか俺はエリス様がいる天界の例の場所にいた。
いや、違うんですエリス様!
俺は死にたがりって訳じゃないんですよ!
ただ、俺って一応レベルが初心者レベルからは脱してるベテラン冒険者って言っても過言じゃないレベルじゃないですか。
……何でそこでため息つくんですかエリス様!
いやだって!
アニメとかマンガだったら前後左右以外の場所から攻撃が来ると言ったら上からじゃないですか!
ドラゴンみたいな飛行可能なモンスターとか姫様ランナーみたいな跳躍力がぱないモンスターとか、そう言うやつかなって思っちゃうのはしょうがないじゃないですか!
なのに実際は今まで遭遇したことのないパターン、下からですよ!?
いくら何でもおかしいでしょう!?
……えっ、ヒト地獄ってモンスターは軒下に巣を作り、人を捕食するモンスターだっていうのは異世界、特に王都や紅魔の里では常識ですって?
何その怖い名前のモンスター!?
蟻地獄みたいな見た目だけど、食べるのはおもに人だからヒト地獄?
異世界怖っ!!
次回ありそうなこと
そろそろ銀髪仮面盗賊団の正体が明らかになる!?
その意外な正体を目の当たりとしためぐみんたち傘下組織のメンバー。
最終的になんやかんやあってエクスプロージョンするんだろうなぁ……