めぐみん盗賊団の盗賊クリスに代わって来てくれたのは銀髪仮面盗賊団団長、副団長。
ランダムに魔物を召喚する神器を悪しき貴族の手から遠ざけるように頑張れめぐみん!
<めぐみん>
時刻は23時。
アイリスはいい子なので夢の世界へと誘われ脱落しました。
戦線離脱したぐっすりアイリスをテレポートで安全な場所まで送るゆんゆん、つまり今この場所にいるのは私と……途中合流してくれた助手さんだけだ。
ああ、なんで私の胸はこんなにも高鳴っているのでしょう。
この気持ちは……憧れ、に近いものでしょうか。
「今から俺が雑魚どもを引っ張ってくる。それを狙い撃つんだ」
「で、ですが敵を引きつけるのは危険です! それに我が爆裂魔法は数々の強敵を貪り尽くし、糧としてきており……つまり経験に経験を重ね洗練された人類史上最高火力の我が奥義の巻き添えになってしまうかもしれないのですよ!」
「フッ、この俺がたかが魔物相手に後れをとるとでも? 今宵も今宵とて体調がいいこの盗賊団の助手を妨げることは何者もできない! 立ちはだかる数多の敵はただの塵芥に等しいだろう!」
「ふおおおっ! かっこいい! 実にかっこいいです!」
私の目に入ってくるのは夜を駆ける銀の鬣をたなびかせる
突進して行く先は昏きモンスターの巣窟。
私には輪郭も判断できないほどに闇に溶け込む、しかし悍ましさを理解してしまうほど凶悪な化け物ども。
しかし彼にはその外形が見えるのか、縦横無尽に攻撃の隙を摺り抜ける漆黒の風となり吹き荒れる。
魔物と魔物、攻撃と攻撃を巧みに回避し、そのついでにと金属を編み作られたであろう縄に高火力の焔を纏わせ、バインドでどんどん絡め取っていく。
その様は、魔物にとっては翻弄する
その狡猾さを俯瞰していると敵ではない私でさえ戦き身震いしてしまう。
貴族屋敷の外で静かに行われる百鬼夜行。
そこに私の鉄槌が爆裂する。
夜陰に乗じ悍ましくも蠢く怪異よ、謦咳に接せよ。
我は燃ゆる烏輪、神の使いにして陽光の化身なり。
その羽を
黎明の光で真実を照らし照らし照らし朝のひばり。
魑魅魍魎蔓延る温床を燃やし燃やし燃やす悪夢の終わり。
法外なる物の怪よ、これこそがこの世の理である!
眩き御光をその眼に焼き付けよ!
「『エクスプロージョン』ッッ!!」
<カズマ>
やばいやばいやばいやばい!!
今俺は調子に乗ったことを人生で一番後悔してる!
何がやばいって、満月の晩、そしてバニル仮面のおかげでテンションがハイになってた俺はめぐみんにかっこいいところ見せてやるって意気込んで魔物がそこらに潜む、高難易度のダンジョン攻略してた方が簡単じゃないかって思えるほどの危機へと身を投じてしまったんだ。
「ひいいいいいぃぃぃいいいいい!? 今掠った! 今俺の髪の毛掠った!」
「縺昴%縺ョ縺雁?縺輔s?溘??遘√◆縺。縺ィ縺?>縺薙→縺励↑繝シ縺?劭」
「何言ってるんだかわかんねーよ、怖すぎだわ!!」
というわけで俺は今、オークのような形容しがたい怪物に追いかけられている。
……どうしてだろう、何にも聞き取れないのに「そこのお兄さん? 私たちといいことしなーい♡」みたいなこと言ってる気がする。
見た目オークのモンスターが意味わからん言語で、なのになんとなく言いたいことわかるの怖すぎっ!
背筋がゾゾゾゾッってなったわ!
そんな状況で生存本能が覚醒しまくり、同時に過去のトラウマ、オーク軍団を壊滅させたあのときのことを思い出す。
「『ティンダー』ッ! 『ウインドブレス』ッ! 『バインド』ッ! ああああああ!! そろそろ! そろそろ爆裂魔法お願いしますめぐみんさぁああん! もう十分引きつけたでしょ俺! よく頑張った俺! だから……」
そこまで叫んで、爆裂魔法の魔法陣が空に浮かぶ。
……うん?
ちょっと待ってくれ!?
この位置、もし今撃ったら俺まで巻き添えになるんじゃ!?
前言撤回撃つなめぐみん!
そんな言葉が頭を反芻するばかりで口が「前言撤回……」の「前」を言い切る前に爆裂魔法による熱風の嵐が空間ごと異形を穿ち始めた。
<主人公ちゃん>
「くっくっく。助手君は銀髪仮面盗賊団の中でも最弱……」
「……助けてくれたことは感謝するけど、最弱とか言わないでくださいよ団長。ガチ泣きしますよ」
「まあまあ、しょーがないじゃない助手君、君がこの盗賊団の中で一番レベル低いんだから」
「いや、くりs……副団長だって俺とそんなに変わらないじゃないですか」
「私は唯一の盗賊職だよ! 盗賊団なのに半分が最弱職と言われてる冒険者なんだよ、私がこの盗賊団のアイデンティティーを担ってると言っても過言じゃないんだからね!」
というわけで盗賊団三人集合しました!
新人のバニルはほとんど顔が、というか仮面が割れているし、人手はめぐみんが代わりをしてくれているので今晩はお留守番です。
「それにしてもさっきのバケもん、一体何だったんだ? あんなやばい魔物召喚できるとか神器じゃないのにも関わらずやばすぎやしないか?」
「しかし爆裂魔法で一掃できた。証拠隠滅……ではなく、外からの脅威は取り除けた、というわけだ」
「おい、今証拠隠滅って言ったろ? もしかしなくてもあの魔道具作ったのってお前だったりとか?」
「そのようなことはしておらん、嘘をつくとチンチン五月蠅い魔道具に誓って違う」
「そっか、ならいいんだが……」
そう、カズマ君が言うようなことはしていませんよ?
強いて言えばですが、カレンちゃんが召喚した魔物を無限の資源として確保し、生物進化させるにはどうすればいいのかと、類似系統の魔物を合成素材として進化を促す実験をしたりしてたらできた副産物が繁殖し始めたり?
おかげで準魔王軍幹部級の魔物が大量生産できそうです、しませんが。
「さあ諸君、爆裂魔法の陽動のおかげで屋敷の警備は手薄、絶好の機会、というわけだが準備はいいな?」
「うん、もちろんだよ! とりあえず神器じゃないとしても人に害をなす使い方をしている貴族さんに痛い目見てもらうのも私たちの役目だよね!」
「エリス様、もしかしなくてもエリス教がうさんくさいとか言われたの根に持っての犯行っすね?」
「……チガウヨ」
「目的はモンスターの卵を改造したご禁制品の入手」
「それから金庫の中身をごっそり持って行って協会に寄付!」
……やっぱりクリスさん、盗賊団で活動してるときが一番生き生きしてるきがします。
昔やんちゃしてたとアクアちゃんから聞いていますが、元々お転婆で自由奔放してた方だったのでしょうか?
争いと不和の女神だったのでしょうか?
そんなことはおいていて、いざ屋敷に突入……しようとしたそのとき、屋敷の扉から飛び出てくる少女の陰。
走ってくるその人は私たちの存在に気づいて。
「そ、そこにいるのは誰ですの!? いえ、そんなことよりその立ち振る舞い、熟練の冒険者の類いだと推察いたします! どうか私を助けてくださらないかしら! 屋敷の中に凶暴なハズレモンスターが! それに外でも何か爆発音が!」
「……対価として、屋敷のものを差し出す覚悟があるか」
「な、何を言って……!?」
「覚悟なき者に未来は訪れぬ。問いに答えよ」
「あ、あるわ! あるから私の命を助けてちょうだい!」
「……いいだろう。契約は守る主義だ。二人とも、行くぞ」
後ろの方で「今ハズレモンスターとか言いませんでしたか副団長」「確かに言ってたね。この子、やっぱり黒っぽいね」みたいな話をしていますが、私はそれを無視して、カレンちゃんにそう言い残し屋敷の中に突入し始める。
ちなみにここまでアドリブである。
……いや、私の予定では誰にも知られずにこっそり屋敷に潜入して、それでお宝ゲットして現場から離脱する手はずだったのに、何だか想定外の事態で屋敷の中にもモンスターがいるらしいですね。
どうしてこうなった……(屋敷の壁を強化されたモンスターがぶち破り、中に侵入してきたため)
まあこのまま中に突入してモンスターを駆逐しつつ、最終的に魔道具を回収して我が物にすればオッケーって訳ですね!
ならば多少のイレギュラーな事態くらい目を瞑りましょう。
ちなみにカレンちゃん、そっちにはたこのような触手型モンスターがウヨってるので行かない方が無難ですよ?
次回予告かもしれない
モンスターを召喚する魔道具を使用していた証拠がダクネスの元に。
そんなこんなでアクセル郊外の貴族邸の魔物の謎は解決したのだが……
そのころ魔王軍の襲撃により紅魔の里が壊滅的な被害(三日もあれば修復可能)を受けていた。
紅魔族の運命は一体どうなるのであろうか……