閻魔あいちゃんの笑顔が見たい   作:アラウンドブルー

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 U-NEXTで地獄少女を見て書きたい衝動が抑えられなかった、後悔はしていない。



かりぬい
転生


 

「突然だけどお前さん、死んだから」

 

「知ってた」

 

「なら話は早いのう」

 

 

 こんな親の顔より見たやり取りをしているのは皆さんご存知、転生させてくれる神様と『ハイハイいつもの』って感じの現世で死んだ魂、俺こと【烏鷹 周(うだか しゅう)】だ。

 

 この後の展開は予想が着くだろう。

 

 

「(間違えて殺して)すまんな」

 

「ええんやで(引きつった笑顔)」

 

「知っとると思うが元いた世界に復活とかできんから」

 

「てことは……? そういうことっすよねぇ!?」

 

「大当たり〜! お前さん察し良いってよく言われてたじゃろ!」

 

「今どきの人なら誰だってわかるでしょ」

 

「それもそうじゃな。下界じゃ流行っとるからなあこういう展開」

 

「まあサッサとやる事やっちゃいましょ」

 

「おおそうじゃな。ほれ、チートじゃ。くれぐれも悪用するんじゃないぞ〜!」

 

「サンキュー爺さん! 人生2周目、行ってくる!」

 

 

 なんてことがあったとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 チートを貰ったこと、生まれ変わったことに気がついたのは7歳のなんでもない日だった。

 

 

 ふと、朧気ながら浮かんできたんです。前世の記憶が。

 

 

 思い出したのならまずは転生者の必須行動、自分の置かれている環境のチェックだ。

 

 と言ってもなあ、転生前の記憶と照らし合わせてみても前世と大して変わらないっぽいんだよなあ。住所は東京都の○○区で一等地ではない。異世界でもないだろう。

 

 今いる所は至って普通のマンションのリビング。時刻は夕方。キッチンでは母が料理してて、父はついさっき仕事から帰ってきて風呂に入ってる。

 

 今年は19XX年。……この時代ってサビ残当たり前じゃなかったっけ。親父よく定時にあがれたな……

 

 さて……チートなんてもんをくれたんだ。異世界転移だとか、隠れ潜む魔術師との戦闘か、はたまた更に昔、時代の転換点で世界が別ルートに進んで変な技術が発達、それを教える学校があったり、これから建つとか有り得るかもしれないな。

 

 

 ────よし、調査続行だ! 

 

 

 と、意気込んでみたものの、結論から言うと前世と何も変わらんわ。世界線が大きくズレるような事件は表向きは無い。これからは分からないが。

 

 ていうか、そもそも一般家庭で過ごしていくんならそんな大それたことに巻き込まれないでしょ……

 

 まず持ってるはずのチートが何なのか分からないし。

 

 チートを使ってみようとしたけど二十三区だからね。残念ながら裏山とか無いから、小学校の人気のないところで腕を振るって何か起こそうとしたり、武器を呼び出そうとしてみたけども……片鱗すら見えない。

 

 あの神様まさか付け忘れたんじゃ……

 

 悩んでも仕方ないかと割り切り、チートについて考えるのは置いておく。

 

 

 そして、粗方調査を終えたらそれ以降は特にアクションは起こさず順当に小学校、中学校を卒業。記憶を取り戻してから10年以上が経ち高校生になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「よっ! 周。期末どうだったよ?」

 

 

 今はテストが終わって帰宅途中。俺を見かけた友達────名前は直久という────が駆け寄ってきた。コイツとは高校に入ってからの仲で、よくつるんでる。

 

 ちなみに、俺の苗字と名前は前世と変わらず【烏鷹 周】だ。

 

 

「よゆーよゆー、理系がさっぱり分からんということ以外はな!」

 

「ははは、お前はそうだよな! 理系の点最下位でそれ以外はトップって中々いねえよなあ。小野田も顔しかめてたな」

 

「先生には悪いがこればっかりはしゃーない」

 

 

 人生2度目で頭脳チートしてると思ったでしょ? 理系以外はな! どうやら俺の頭脳は二度目の人生でも理系とは相性が悪いみたいだ……かなしい。まあ、今世に関しても色々言いたいことはあるんだが、それは追々。

 

 お互いテストの愚痴と腹立つ先生への悪口を言い終えるとそこからはくだらない雑談にシフトした。

 

 

「そういや周、お前知ってるか?」

 

「彼女の作り方?」

 

「それは勿論気になるけど、それより! 最近中学の妹がしょっちゅう話題にあげるんだよ」

 

「妹も弟もいないから何言いたいのか分からん。はよ言え」

 

 

 さっさと教えろと急かすと直久は軽く謝りながら言葉を続ける。

 

 

「それがさ、【地獄通信】ってサイトの事だよ」

 

 

「……What's?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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【悲報】転生したら地獄少女の世界だった件について。

 

 異世界転移とか、魔術師だとか呪術師が暗躍する世界かなとビクビクしていたけどよりにもよってこれかよ! 

 

 ま、まあ? F○t○だとか呪○廻○とかよりかは遥かに平和なのは救いか。あっちは一歩間違えたら即死亡だし。

 

 こっちの場合、基本怨みを抱かれなきゃ送られない仕組みだしね。

 

 言うて送った人も地獄に行くって事と地獄少女が黒髪美少女くらいしか知らないし覚えていないんだけど。

 

 ま! 俺は至って普通に生活しているから地獄少女をお目にかかることは一生ないだろう。

 

 勝ったな(確信)

 

 

 ────なんて、フラグを立てたのがいけなかったのだろうか。

 

 

 いつも通り夕食を終え、風呂に入ってゲームして気づいたら24時を過ぎていた。もう少し遅く起きていられるが、明日も学校。しっかり睡眠時間は取らなければ。しっかしゲームボーイカラーモドキがこんな面白いなんて……令和人にとってはレトロゲーだけど、それが良い。

 

 

「寝なければ……」

 

 

 ゲームとテレビの電源を切って、ベッドに入る。目を瞑って明日の数学と科学の授業に文句を言いながら次第に眠りに入る。

 

 

 

 

 

 ────部屋が、妙に湿っぽい。

 

 

 

 

 

 ぎぃ、ぎぃという音と、ゆったりとした水の流れる音が聞こえる。

 

 夢、なのか。だが頭が物理的に痛い。枕が消えている……? ベッドが硬い。

 

 明らかにおかしいと思い急いで目を開けると、暗雲立ちこめる空が一面に広がっていた。

 

 空にはぼんやりと光が差し込む、4枚の花弁のような雲の切れ目がある。

 

 

「……起きたのね」

 

 

 まるで絹のように柔らかく、か細い声が耳に入る。

 

 黒地に菊の花があしらわれた振袖に身を包んだ、美しくも可憐な少女が舟の櫓を漕いでいた。

 

 前髪が綺麗に切り揃えられた、濡れ羽色の長い髪。

 

 透き通るような白い肌。

 

 この世のどんな宝石よりも美しいと感じてしまう、朱い瞳。

 

 あどけなさの残るその少女にしばしの間目を奪われてしまうが我に返る。

 

 

「え……? 何、これは。夢……?」

 

 

 周囲は川のようだが見たことがない場所だ。遠くは真っ暗で何があるのか見えないし、川には幾つもの燈籠が流れている。

 

 

「……夢じゃないわ、これは現実。私は、【閻魔あい】…………あなたを、地獄に送っているところよ……」

 

 

 閻魔……あい…………? 地獄……? 

 

 

 待て、おい。

 

 

 まさか、それって……嘘だろ。つまり、この女の子は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地獄少女。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────何故……? 理解が追いつかない。俺が、また、死んだ……? 

 

 

「あっ、え……だれ、が…………?」

 

 

 まさか、直久……? そんな、怨まれるようなことはしていないはずなのに……

 

 

「……あなたが思ってる人ではないわ」

 

「え……?」

 

 

 空に映像が映し出される。

 

 ……知らないオッサンだ。

 

 

「……あなた、電車の中であの男の足を踏んだのよ。それで、怨まれた」

 

「────────は? ……え、あ……? …………そんな……そんな、ことって……」

 

 

 

 

 

 

 嘘だ。

 

 

 

 

 

 嘘だろ、おい。ふざけんな……そんな、そんな理由で俺は地獄に……? 足を踏んだってだけで、そんなことで? ずっと苦しむことに……? だって、地獄だぞ? 地獄に……俺が、行く? 

 

 2度目の人生は成人にすらなれずに終わっちまった。それどころか、地獄……? 針山、血の池、閻魔大王、灼熱、無間、畜生道etcetc……

 

 

 

 

 

 もう無い。未来が。

 

 

 

 

 

 俺が生まれ変わった意味、何だ? 

 

 

 嫌だ嫌だ嫌だ。

 

 

 行きたくない。地獄になんか、行きたくない。

 

 

 頭が痛い。

 

 

 腹が痛い。

 

 

 目も霞んできた。

 

 

 息をするのが苦しい。

 

 

 心臓がバクバク鳴っている。

 

 

「…………これから、どうなる、の?」

 

 

 息苦しさとガンガンする頭痛の中、何とか振り絞って地獄少女に俺の処遇について尋ねる。

 

 

「……着いたら、真っ直ぐ歩いていくだけ。そしたら裁かれるわ……」

 

「そっか……そう、か……………………あり、がとう…………」

 

 

 彼女に八つ当たりしても意味ないのは分かってる。叫んでみっともなく泣きたいけど、そんなことをしてももう後の祭りだ。

 

 もう全て、終わっちまった。でも、最後に見た光景がこの美しい女の子だったのはせめてもの救いか……そう、思うしかない。そう、無理やり納得するしかない。

 

 

「……仕事だから」

 

 

 その声は、微かに震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 永遠に夕暮れが続く世界。そこを地獄少女こと【閻魔あい】とその従者である【一目連】、【輪入道】、【骨女】(三藁と呼ぶ)は拠点としている。

 

 

 何もすることが無いあいは、縁側でただただ一面に咲き誇る彼岸花を眺めていた。

 

 そこに無機質な、心をざわつかせる通知音が鳴り響く。

 

 

「あい、あい。届いているよ」

 

「……うん。今行くよ、おばあちゃん」

 

 

 おばあちゃんと呼ばれる女性に声をかけられて、あいは家の中に戻る。

 

 薄暗い和室。家具は人間が暮らす最低限度以下しか無い中で、鎮座した分厚いPCが異様な存在感を放っている。 そのPCに仕事の依頼が来る。

 

 すなわち、地獄流し。

 

 

「…………」

 

 

 依頼人の元へ赴く前に、あいの従者の1人【一目連】に千里眼を使わせる。

 

 

『くそ……なんで接続切れた? 送信しただけじゃねえかよクソッ。あああああイライラするあのガキ! 俺の足踏みやがってよ!! ヘラヘラ謝りやがって』

 

 

 一目連が千里眼を止めて見た内容を伝える。

 

 

「……そう」

 

 

 大それた怨みでもなんでもない、ただ苛立ちを発散させるための依頼だ。ターゲットは平凡などこにでもいる少年。

 

 あまりにも少年が不憫でならないが、彼女の心は動かない。表情も変わらない。

 

 

 それでも、どこか辛そうだ。

 

 

 相手の場所は地獄通信にアクセスをした時点で割れている。直ぐに依頼人の元へ向かい、あいは赤い糸が結ばれた黒い藁人形を渡し、糸を解けば相手はすみやかに地獄へ流されることを説明する。

 

 そして地獄流しのルール、【人を呪わば穴二つ】ということも伝える。糸を解いて相手を地獄に流したら、自身も死後は永遠に地獄を彷徨うことになるということを。

 

 脅しでは無い。ただルールを説明しているだけ。

 

 だが、封印した心の奥底で、どうかあの少年を流させないでくれと祈る。

 

 

 その想いが男に伝わるはずもなく、糸は無情にも解かれてしまった。

 

 

 実はこの男、職と家族、家を失い、全てに絶望していた時に足を踏まれたのだ。踏んできた相手は自分とは違う未来ある少年。

 

 その場こそ抑えたが、現在住んでいるボロアパートに帰って安酒を煽ったところ、ムカつきが再燃し酒の勢いと共に地獄通信にアクセスし、今に至る。

 

 狭く薄暗いアパートの一室で狂ったように笑う男の胸元には契約の刻印が刻まれていた。

 

 契約が締結されると、あいは夕暮れの里で身を清め、淡々とおばあちゃんが用意した長襦袢を着る。

 

 そして、その上から仕事着である漆黒の振袖を身に纏う。

 

 従者の1人、輪入道が本来の妖怪としての姿に変身。牛車になり、あいを乗せ出陣する。

 

 着いた先はマンションの一室。ターゲットは丁度寝始めたところだ。

 

 気持ちよさそうに眠る少年を見ながら、あいは地獄流しの権能を使用する。

 

 するとたちまち少年は三途の川を渡る小さな手漕ぎ舟に乗せられた。

 

 地獄へ流す前に行う、反省を促すためのお仕置きはしない。いくらなんでもそれは可哀想だからと。彼女なりの優しさだ。

 

 後はあの鳥居を越えた先まで漕いでいくだけ……

 

 

「胸糞悪いにも程があるよな」

 

「若者の未来を取り上げるのも俺たちの仕事、か」

 

「ほんっと、嫌になるねえ人間ってのはさ……」

 

 

 三藁が流れていく舟を河岸から眺めている。

 

 やがて舟は三途の川に屹立する鳥居を越えた。

 

 

「この怨み、地獄に流します……」

 

 

 悲しい鈴の音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「悪いけどお前、地獄からも拒否だから」

 

「は?」

 

 

 目の前に座る威風堂々とした大きな人、閻魔大王様? からそんなことを告げられる。

 

 なんだそれ両○勘○かよ。意味分からんわ。

 

 

「普通にこっちの世界で死んだなら受け入れられるけどさ、地獄流しなんていう権能で無理矢理連れてきたわけだから。ほら、分かるじゃん?」

 

「えぇ……」

 

「ていうか別世界に転生させられる神に目つけられたくないし。なんで別の輪廻の輪に乗せられるん?」

 

「知らねーよ、そんなの」

 

 

 なんてやり取りをした。実際はこんなフランクじゃないけど。

 

 

「でもおいそれと現世に返す訳にもいかないから、地獄仲間と話し合って決めたぞい」

 

「めっちゃ仲良しそう」

 

「そんなんじゃないから。この世とあの世の狭間、つまりお前には地獄流しの手伝いを当分の間してもらうわ」

 

 

 なんか地獄流しの手伝いをすることになった。

 

 マジかよ……あんな便所のネズミのクソにも劣る怨みを聞き入れて地獄に流さなきゃいけないの? 流石にキツいわ。

 

 だが、

 

 

「あ、いいっすよ(快諾)」

 

 

 別に良いんだけどね。あんな可愛い女の子と一緒に働けるとかメリットでしか無いわ。口数少なそうだけど、2人で一緒にとかデメリットよりメリットが勝ってる。

 

 

「決断早いのう。あと残念ながら使い魔は既に3人おるからな。2人で仲良くとかは無理」

 

 

「あ、そう……」

 

 

 ナチュラルに心読まれた。今の俺は魂だけだから丸わかりか。

 

 まあそりゃそうだよな。一人でそんな仕事続けるとか無理だわな。

 

 

「あとお前にかかってた鎖みたいなの、解いておいたから」

 

「えっ、なにそれは……」

 

「これからはだいぶ生きやすくなると思うぞい。あ、死んでるから意味ねーか! ガハハハ」

 

 

 なんて地獄ジョークをぶつけられたが、鎖? なにそれ知らん怖っ……

 

 

「あー笑った笑った……ふむ、分からんのか? お前の魂にポン付けされた妙なのがあったけど機能しないように縛られてたからな。断ち切って魂と融合させといたから。手足を動かすように使えると思うぞい」

 

 

 え? それって……ハァァァアアアア!? それ一度死んだ時に貰ったチートだろ絶対! 2回死んでようやく使えるのかよ! ファッキュー神様、これからは足向けて寝ないけど中指は立てさせてもらうわ。

 

 その後大王様から地獄流しの仕組みをレクチャーしてもらった。

 

 ざっとまとめてみると

 

 

 ・契約が締結されたら地獄に流すことは絶対

 ・上記を破った場合自身が地獄に流されてしまう

 ・自分の意志で人を害するのはNG

 ・地獄流しは1人1回まで。

 ・対象者も契約者も永遠に地獄をさまようことになる

 

 

 要点としてはこのくらいか。

 

 む、惨い……契約者の方は代行とはいえ人1人を殺害しているから分からなくもないが、これってターゲットが全くの無実で流されるって場合もあるんだろ? 

 

 そこんところに突っ込んでみたが、これがルールなのだと。

 

 大王様曰く、

 

 

「木からリンゴが落ちる。人が生まれ、やがて死ぬ。これらと同じ、法則と言ってもいいの」

 

 

 との事。

 

 うーむ、そこまで言われてしまうと何も言い返せない。ていうかこれ地獄少女大丈夫か? 精神ゴリゴリ削られるだろ。 

 

 他に二、三軽く質疑応答をして出発の準備が整った。

 

 

「まっ、てことでその力はくれ悪じゃぞー」

 

 

 略すな。

 

 話が済んだということで、俺の身体は地獄から退去させられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 目を開けると、そこは夕暮れ時の里山だった。

 

 周りは山々に囲まれていて、辺り一面に彼岸花が咲き乱れている。

 

 そして遠くにはポツンと、文化遺産になっていそうな藁葺き屋根? が一軒建っている。

 

 幻想的と言うよりも、どこか懐かしさ、郷愁を感じる風景。『ずっとこのままなら良いのに』そう思わずにはいられない、ホッとする古き良き日本の原風景。

 

 

「……誰?」

 

 

 しばらく無心で花畑を眺めていると背後から声をかけられた。

 

 船の上で聴いた声だ。誰だかはもうわかる。

 

 ゆっくり振り返るとそこには、服装こそ三途の川で見た和服ではなく黒いセーラー服ではあるがそれ以外は同じ、地獄少女がいた。

 

 俺の顔を見ると表情こそ変化は無いが、大きな目がより開かれる。

 

 

「……なんで…………」

 

 

 一言、消え入りそうな声が漏れ出た。ここで事情を説明しても良いが、

 

 

「ええっと……とりあえず、どこか話せる場所ありません?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 そして地獄少女の家? で従者の皆さんと障子から影越しに見える、糸車を回しているおばあさんに事情を説明した。

 

 最初は流したはずの人間が何事も無かったかのように現れたからか、従者の3人にはだいぶ警戒されたが何とか理解して貰えた。

 

 

「まさか地獄からお断り食らう人間がいるなんてね……」

 

「俺たちはもう数百年この稼業を営んでいるが、お前さんみてえのは初めてだ」

 

「20年も先の未来で、しかも別世界から転生して来ただぁ? そんなヤツ、見た事も聞いたこともねえ」

 

 

 妙齢の美女、渋カッコイイご老人、イケメンの青年は三者三様に驚いていたが、地獄少女は無表情のままだ。いや、パチパチとまばたきをする回数が多い。ドライアイなんじゃないかってくらいに。

 

 おばあさんは分からないが、糸車を回す速度は全く変わらないことから特に動じていないのだろう。これがプロか。

 

 ていうかこの家にお邪魔した時も『いらっしゃい』とまるで祖母の家を訪ねた時のように迎えてくれた。

 

 ご挨拶しようとしたら地獄少女に止められたから顔は見れていない。さすがに失礼じゃ? と思ったけど本人は気にして無さそうだし良いのかな……

 

 

「そういうことなので、えー……これから、よろしくお願いします!」

 

 

 誠心誠意、頭を下げる。

 

 

「だってよ、お嬢?」

 

「……別に、拒否権なんてないもの。好きにすればいいわ…………」

 

 

 ホッ、良かった……普通に受け入れてくれた。

 

 ていうかお嬢って呼ばれているのね。

 

 

「でも、アンタは良いのかい? 勝手に流されて、勝手にアタシらの一員にされて……アンタにも拒否権が無いのは分かってるんだけどさ」

 

 

 お姉さんが気を遣ってくれる。やさしい。

 

 まあ確かに、あんな訳の分からない怨まれ方をされて二度目の現世とお別れ。でも地獄は受け入れたくないから代わりに勝手に仕事を斡旋されて……文句の10個や100個出てもおかしくない。

 

 ただ、『別に良い』。自分でもここまで割り切りが良いことに驚いてはいるが、本当に特段問題は感じていないんだよな。

 

 むしろ、ようやくしっくり来たって感覚。

 

 

「まあ、アンタがそう言うんならそれで良いんだろうけどさ……」

 

 

 溜息混じりにそう言われた。いやほんと、すみません。

 

 微妙な雰囲気になってしまったな……皆黙ってしまって聞こえてくるのは糸車を回す音だけ。どうしたものかと悩んでいると、青年が声を上げた。

 

 

「んじゃ、自己紹介といこうか。オレは【一目連】。こんな成りだが、お嬢との付き合いは2番目に長い」

 

「おっと、それじゃあ次に。【輪入道】だ。この中じゃ一番の古株だ」

 

「アタシは【骨女】。よろしくね」

 

 

 3人が自己紹介してくれた。ていうか、輪入道!? 有名な妖怪じゃん! 一目連は、確か神様だったよな。似たような名前の『目目連』ってのがいたはず。骨女も妖怪だし……やっぱみんな人間じゃないんだな。

 

 

「……【閻魔あい】」

 

 

 最後に地獄少女が一言。舟の上でも聞いたがそれが本名なのか。『閻魔』と『あい』ってなんともアンバランスな。

 

 

「気悪くしないでおくれよ? お嬢って無口だからさ」

 

 

 いや全然。むしろ様になってるから大丈夫。

 

 

「では、改めて。烏鷹周です。よろしくお願いします」

 

「おいおい、もっと気楽に行こうぜ」

 

「そうだよ? まあアンタがそれの方が楽って言うなら構わないけど」

 

 

 そう言うのは一目連と骨女だ。まあ確かに、これから一緒に行動することになる訳だから、あまり礼儀正し過ぎるのもアレか。

 

 

「えっと、それじゃあ。これから……よろしく」

 

 

 少しぎこちないが再度挨拶すると三人は笑いかけてくれた。閻魔あいは変わらず無表情でこちらを見つめているが。

 

 こうして俺の第3? の人生? が始まった。

 





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