かびごんさん、☆10ありがとうございます。
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地獄少女のサントラを6枚買ったんですけど、三鼎の草喰だけ1万円以上したのなんで……?
原作は引き続き、第24話【夕暮れの里】です。
あいちゃんはこんなこと思わないとか言わないで。
暗い…………暗いな………………
ここは…………どこだ…………?
真っ暗で…………何も見えない…………
もしかして…………また死んだのかな………………
確か…………あの2人を護ろうとして………………
助かったかな…………
なら………………良いか……………………
いや……………………やっぱ嫌だ……………………
輪入道…………
一目連…………
骨女…………
そして、お嬢………………
4人に会えなくなるのは、嫌だ…………
何より…………
お嬢………………
まだ………………笑った顔が見れていない………………
最後に見たお嬢は………………
怒ってた…………
泣いてた…………
そんな顔は…………見たくなかったな………………
…………
………………
…………………………なんだ、アレは…………?
ぼんやりと…………見えてきた………………アレは……………………
⛩
「ダメだな……思いつく所は全部巡ってはみたんだけど……」
現世から夕暮れの里へ戻ってきた俺は、先に帰っていた3人に報告する。
お嬢の姿はつぐみちゃんと再会した日の翌日から丸一日以上見ていない。
不調なお嬢がどこかへフラッといなくなってしまったので、心配した俺たちは4人で手分けして探したのだが見つけられなかった。
「……仕方ねえさ、お前さんはお嬢との付き合いが短すぎる。俺らでダメだったんだ、気にするな」
輪入道が縁側でタバコをふかしている。
「そう言ってくれると助かるよ。────はぁ、俺達との繋がりも感じとれないようにしてどこ行ったんだよ……」
そう、今はお嬢との繋がりが感じられないのだ。断ち切られた訳では無いと感覚で分かるのだが、例えるならGPS信号がオフになっているイメージ。そのため、居場所を感知することができない。
一目連でも見つけられなかったということは、彼の『目』にも映らないようにしているのだろう。ならば当然、俺の『投影』や各種探査系の妖術も役に立たない。
「全く、何してんのかねぇ……」
お嬢の一節切を握っている骨女がそう零す。
「お嬢もさ、年頃だから。ホラ、男でも……」
一目連が暗いムードを払拭すべく茶化そうとしたが、言い切る前に骨女は一節切を彼の顔目掛けて投げつけた。
「あだっ!」
「冗談言ってる場合かい!」
「投げることはねえだろ! いってえ……」
「そうだぞ骨女。今のは良くない」
「大天狗も言ってやってくれ! この暴力女に」
「え、えぇ……アタシが悪いのかい?」
俺が一目連側についたことに骨女は困惑している。
「お嬢の楽器を投げるなんて壊れたらどうすんのって話」
「オレの心配じゃねえのかよ……」
一目連の顔のことは至極どうでもいいが、楽器が万が一にでも使い物にならなくなったらいかんでしょ。
それに────
「お嬢に……男の影だと……! ゆ゛る゛せ゛ん゛!!」
「そっちかよ」
「アンタもバカなこと言ってんじゃないよ!」
ドゴッ!
「いっで!! 骨むき出しはやめろよな!」
骨女のやつ、ご丁寧に拳だけ骨そのものにして思いっきり頭を殴りやがった。たんこぶ出来たらどうするんだ。
ま、治癒の妖術くらい使えるんだけど。
「────仕事するでもなく、ここんとこ気づいたらぷいっと消えちまってる……」
俺、一目連、骨女が騒いでいる中、輪入道だけは重い雰囲気のまま、タバコの煙と共につぶやく。
「……悔しいよな」
俺がポツリと呟くと3人の誰かが……いや、きっと3人ともが反応する。
「俺たち全員、お嬢のことを大切に思っている。なのに、こういう時に力になれず、手をこまねいているだけってのはさ……」
「大天狗……」
3人の過去は知らない。でも、数百年もの間お嬢に付き従っているということは少なくない恩があるのと、それ以上にお嬢のことが好きだからなんだろう。俺はまだ1年ぽっちだが、それでも3人に負けないくらいお嬢のことは大好きだ。
いつも仏頂面だけど、嬉しいことがあるとほんのりと浮かべるあの微笑み。
感情がないように見える鉄面皮の裏で、理不尽な目に遭っている人を憂うやさしい心。
キッカケは、一目惚れだったのかもしれない。
俺がまだ人間だった頃、地獄へ向かう舟でお嬢に会ったあの時が全ての始まり。
目が離せなかった。心を奪われる感覚というのはこういうことだと、死に行く直前で理解した。
2度目の人生が呆気なく終わったことには確かにショックを受けた。だけど、最後に見れた光景がお嬢────閻魔あいの姿だったから、生まれ変わった意味はあったのだと納得できて地獄へ行けた。もっとも、出禁になったんだけど。
それからだ。
1年間、お嬢を見た。
そして思った。
────一度で良いから、抜けるような笑顔を浮かべるお嬢を見てみたい。苦しんでいるのなら支えたい。
そう思い始めるのに、大した時間はかからなかった。
だから、今こうして何もできずにいる自分が情けなくて仕方がない。
「……人だろうと、人ならざる俺たちだろうと、踏み入って欲しくねえ境界ってのはある。今のお嬢は、その境界の向こう側にいるんだろうよ。……お前さんの気持ちは、痛いほど分かるがな」
「輪入道……」
しんみりとした空気が流れ、暫く無言の間が続いた。
こういった時でも、この夕暮れの里だけは変わらない。感傷に浸っていると、
「おや、帰ってきた」
「「「え!?」」」
輪入道が強い気配を感じとり、その方向へ顔を向けた。俺と2人も感じる気配の方へ目をやるが、そこにはお嬢ではなくあの人面蜘蛛が屋根から糸を垂らしてぶら下がっていた。
「なんだ」
「アッチか……」
落胆する一目連と骨女。あんなのでも一応、地獄の偉い人(?)なのに扱いは悪い。もっとも、残念ではないしむしろ当然である。さっさと帰って、どうぞ。
────────いや、待てよ。
何でアイツは、こんな強い気配を漂わせて俺たちの前に現れた? いつもはひっそりと、気づいたらお嬢や俺たちを監視しているようなアイツが。何故、今日に限って……?
あの蜘蛛を観察する。よく見ると、3つの目玉みたいな模様の中の虹彩? のような点が忙しなく動いている。
なんだ、焦っているのか? それとも、俺たちに何かを伝えようとしている……?
…………まさか!?
輪入道も同じ答えに辿り着いたようで、目を合わせる。
「お前たち、お嬢の居場所が分かったかもしれん!」
焦った様子で輪入道がそう言った。
「はあ!?」
「どういうことだい!?」
一目連と骨女はなんの事か分かっていない様子だ。
「あの蜘蛛の焦りよう、恐らくお嬢が何かとんでもないことをしようとしているからだ! その相手は、今までの行動からして柴田親子! しかも大分まずい状況!」
「大天狗の言う通りだ! おい! お前さんならあの親子の居場所が分かるんじゃねえのか!?」
「それが分かれば苦労しない……! さっきも彼らの家に行ったがもぬけの殻だったし、目印でも無いと────あっ」
そうだ、つぐみちゃんにあげたあの彼岸花。アレがあるじゃないか。
アレは夕暮れの里のもので俺の妖力を流し込んでいる。ソイツを頼りにすればイケるかもしれない。
探査系の妖術を全開にしながら考える。なるほど、つぐみちゃんが俺のことを覚えていたのはそういう理由だったのか。
ようやく分かった。あの時はそれどころじゃなかったし、さっきまではお嬢を探すことに集中していたからな。
時間にして約10秒、つぐみちゃんの居場所を感じ取れた。
感じ取った位置情報を3人にも感覚共有で伝える。すると輪入道が本来の姿、牛車形態に変身した。
「お前たち、早く乗れ!」
言われるまでもなく、俺たちは急いで牛車にかけ乗る。
急がないと、柴田親子が危ない。
────────いや、お嬢の身が危ない。
⛩
【
山間のひなびた村。東京から朝早く車で出発しても到着する頃は夕暮れ時になってしまうような場所にその村はある。
桜や紅葉の時期には美しい景色が見られるため各地から観光客がやってくるが、雪が降ってしまうとそんな景色が見れなくなってしまい、辺りにはスキー場などは無く温泉も平均レベルのため、一転して閑散としてしまう。
そんな場所に柴田親子は訪れていた。
きっかけは、つぐみが見た桜の写真集からだ。
閻魔あいとのリンクが強まり垣間見た過去の記憶。
小さな滝が流れる河原。滝口近くには美しい桜の木が1本、凛と咲いていて、河原ではつぐみと同い年くらいの少年と少女が遊んでいる光景。少年の顔はどこか見覚えはあったが、少女の方は知っている。少し幼いが、地獄少女だ。
こんな事、今までは無かった。困惑していると、すぐ側に閻魔あいが現れ、
『仙太郎を知っているの?』
と尋ねられた。誰の事か分からなかった。聞き返そうとするも、閻魔あいは既にいなくなっていた。
それから数日後、つぐみはたまたま本屋に並んでいた桜の写真集を手に取った。垣間見た桜の風景が頭から離れなかったからで、深い理由は無い。
しかしページを捲っていると偶然か必然か、つぐみの見た景色と全く同じ写真が撮られていた。その撮影地が六道郷。
つぐみは、『真実を知らないまま終わらせたくない』という理由から、一度は娘を案じ地獄少女を追うのは辞めると宣言した
そして、2人は【
遥か昔、この辺りでは『七つ送り』という風習があったという。
それは、7年に1度行われた『無病息災』『五穀豊穣』を願う儀式だったが、供物として山神へ7歳になる女子を生贄として捧げていたらしい。
この七童寺は、生贄となり山を彷徨う幼子の魂を弔うために建立されたという。
その発起人は六道郷を出て飴屋として成功を収めた者で、店の屋号は【柴田屋】
初代店主は【柴田仙太郎】だった。
2人は理解した。何故、閻魔あいとつぐみの精神が繋がってしまったのか。
すぐ近くで聞いていた閻魔あいは全てを思い出した。裏切られ、生贄にされ、絶望が憎悪に変わり、怒りと悲しみの赴くまま全てを焼き尽くした記憶を。
柴田親子は寺を後にし、写真集の場所へと向かった。
────桜吹雪が舞った。
今の季節は冬。有り得ない事態に2人は驚くが、辺りを見回すとつぐみが垣間見た記憶────閻魔あいと少年が遊んでいる情景を再び、今度は
仲睦まじい様子で、幼い閻魔あいは少年のことを『仙太郎』と呼んだ。
「地獄少女と仙太郎……2人は、幼なじみだったのか…………」
「────来たのね」
2人の前に、閻魔あいが現れた。
漆黒の振袖に身を包み、宙から彼らを見下ろすその表情は懐かしさを感じているようでもあり、深い悲しみを湛えているようでもあり、仇敵を見るようでもあった。
400年という長い時間で積み重ねられた彼女の複雑な心境が窺える。
ただならぬ気配を感じた
「まだ残っていた……忌まわしい血は絶えていなかった…………その血が私を惑わせた……」
忌まわしい血と罵られ、2人は動揺を隠せない。彼女はその様子を見て、この期に及んでまだ知らないふりをするのかと思い憎悪を滾らせる。
強まった気配に当てられたつぐみは彼女の記憶の断片を見た。
狭まった視界に石や土が降ってくる。
『やめて、お願い、仙太郎』という少女の慟哭が聞こえる。
だが、そんな声は無視され次第に視界は闇に閉ざされていった。
「埋められた……埋められたの……? 仙太郎さんに……」
つぐみは聞き返さずにはいられなかった。先程見た光景。楽しそうに遊んでいた。だから、今見た記憶が信じられなかった。
閻魔あいの憎しみの念は、つぐみの投げかけた疑問を契機に濁流の如く溢れ出した。
彼女の表情は憎悪に染まり、2人を射殺さんとばかりに強く睨みつける。
「もう一度殺そうと言うの……? 時を超えてまた、あの時のように……! 私は全てを受け止めたというのに……! 私は殺されたりしない……!!」
憎しみに支配され、我を失った彼女は地獄少女としての力を引き出す。
「消えてしまえ……!!」
色とりどりの、美しき菊の花が咲き乱れる。地獄流しの時に対象を地獄へ送る時のものだ。
今、彼女は自身の権能を用いて2人を地獄に送ろうとしている。
絶対的な力の差を2人は本能で感じとり、身体を動かせない。
だが、そこに火炎を帯びた牛車が現れた。輪入道だ。
屋形の中には骨女が、外には屋根の軒先に掴まっている一目連が、そして棟には大天狗が片膝をついている。
「やっぱりここか……!」
「ギリギリ間に合った!」
「ダメだお嬢!」
「止めるんだよ! 感情で人を殺めちゃいけない!」
────お嬢が地獄に流されるぞ
3人の意思を代弁して輪入道はそう訴えるが、憎しみに支配されている彼女には届かない。
「私はそれでも構わない……!」
彼らの方には見向きもせず、手のひらから地獄の力を柴田親子に向かって打ち出す。暗黒の奔流が、無力な人間に襲いかかる────!
「輪入道ッ!!」
「分かっている!」
しかし、柴田親子に当たる直前、輪入道はその身を盾にして閻魔あいの攻撃から二人を守った。だが、その威力は凄まじいもので、輪入道を大きく吹き飛ばしてしまう。
「逃げろ!」
「走るんだ! 早く!」
先に牛車から降りていた一目連、大天狗、骨女は閻魔あいから守るべく彼らの前に躍り出る。
「なっ、君……!」
「周おにいちゃん!?」
見覚えのある少年が現れた。短い間だったが、つぐみと友好的な関係を築いた者。
「何してる! 急げ!」
人間態に戻り、走ってこちらに向かって来ている輪入道が声を荒らげる。すると、2人は我に返り漸く走り出す。
だが、そんな2人を閻魔あいが見逃すはずが無かった。
再びあいは攻撃を仕掛ける。次こそ、確実に殺すために。
しかし────────
⛩
輪入道に乗って柴田親子がいる所に急行したは良いが、既に事は始まってしまっていた。
お嬢の様子が普段と全く違う。あれほど感情を顕にしているなんて。
いつか見たいと思っていた、感情を表に出したお嬢を。
だが、これは違う。
怒り、憎しみ、悲しみ。ありとあらゆる負の感情がむき出しになっている。
何故、あの親子にあれほどの殺意を抱いている?
疑問は尽きないが、今はとにかくつぐみちゃん達を逃がさなければ。
周りに咲いている菊の花、契約をした訳でもないのに流そうっていうのか。
────そんなこと、やらせるものか
「走るんだ! 早く!」
見知った顔が現れたからなのか2人は呆気にとられているが、続く輪入道の一声で走り出した。だが、お嬢は追撃を止めようとしない。
俺たちのことなど一切眼中に無く、あの二人だけに暗黒のエネルギーを飛ばしている。怒りに我を忘れているためか、照準は甘いが威力は桁外れだ。掠っただけでもまずい。
「消えろ!」
打ち出した攻撃は、逃げる彼らの背に吸い寄せられるかのように向かっている。
────ヤバい、当たる!
急ぎ射線上に転移。出し惜しみなんてしている場合では無いため、大天狗本来の姿に戻る。大きな翼が生え、左手には羽団扇を実態化させる。
「はぁっ!」
妖力を全力で羽団扇に流し込み、大きく扇ぐ。それにより制御、強化された妖術が発動する。
使用するのは護りに重きを置いた術、つむじ風の障壁を正面に展開して迎え撃つ。
それによってお嬢の攻撃は霧散したが、本来なら残り続けられるはずの障壁も消えてしまった。
「(これは……!)止めるんだ! お嬢! 2人はただの人間だ! 何故こんなことをする!?」
「…………っ!!」
今のぶつかり合いで分かった。あの黒いエネルギー、単なるエネルギーなんかじゃない。生きた人間の魂を地獄に引きずり下ろす力だ。輪入道が無事なのは、妖怪だからか。
何とかして止めるべく、お嬢の前に立つ。
────目が合った。
朱い瞳が揺らいだ。
だが、それも束の間、今まで以上にお嬢の顔は憎悪に歪む。
「私を惑わす……! 私を否定する……! 私を殺した忌まわしき者の血筋……! あなた……お前も! 邪魔するなら…………っ、死ね!」
────ズキンと、心が痛む。
もうなりふり構わずといった様子で、今まで以上の出力で黒いエネルギーを打ち出してきた。俺諸共あの親子を飲み込むつもりだ。
「させるかァ!」
先程よりも強度を上げたつむじ風の障壁を再度展開する。
だが、
「なっ……!?」
俺が全力で発動した障壁は1秒と持たず、たやすく突き破られた。
お嬢の憎悪を体現したかのような────
どす黒いエネルギーが────
目の前に近づいてきて────────
「ガァッ!!」
「大天狗!!」
「いやあぁぁぁぁぁぁっ!!」
つぐみちゃんの絶叫を聞きながら、俺は吹き飛ばされた。
⛩
全て、思い出した。
思い出してしまった。あの頃のことを。
400年以上経った今でも、あの時味わった痛み、苦しみ、悲しみ、憎しみは忘れていない。
ただ、心の奥底にしまい込んでいただけだった。忘れたフリして、今まで過ごしていただけだった。
だけどあの子、柴田つぐみに出会ってから変わった。懐かしい気配、気のせいだと思ってた。おばあちゃんにも笑われた。
でも、気のせいじゃなかった。六道郷にある七童寺、建てた人間が【柴田仙太郎】だと知った時、全てが繋がった。
そうだったんだ……
私を埋めた、私を裏切ったあの男。逃がしてしまってたんだ。そして、その血は今に至るまで続いていた。
私の行く先々で姿を見せる理由。柴田一が私を止めようとする理由。分からなかった。
でも、今なら分かる。
────私をもう一度殺そうとしているんだ。
仙太郎の魂がこの時代に転生していてもおかしくない。
仙太郎の思念があの親子に宿っていてもおかしくない。
私を裏切って、私を殺して、こんな役目を押し付けて、惑わせて、そしてまた殺そうというの?
ふざけるな。
死なない。私は死なない。
────内に秘めていた憎悪が溢れ出す。
あの忌まわしい血を継ぐ者は、消してやる。
例えそれで私が地獄に落ちることになったとしても、私を殺させはしない。
仙太郎と遊んだ思い出の河原で自身の権能を使い、あの親子を地獄に送ろうとした。
────だけど、彼が立ち塞がって私の攻撃を打ち払った。
なんで?
なんで、あなたがアイツらを庇うの?
どうして、そんな目で私を見るの?
1年間、私はあなたを見ていた。
抜けるような笑顔を。
時折感傷に浸る姿を。
凄いことをしている様子を。
悔しそうにしているあなたを。
少年のようで大人。理知的のようで感情的。妖怪でありながら人間。
チグハグだけど、いびつじゃない。
あなたは輪入道達のように、静かに付き従ってくるわけじゃない。
隣を歩いてくれて、時には手を取り引っ張ってくれる。でも、鬱陶しくない。太陽のように明るくはない。月のように冷たくもない。
あってくれて有り難いような、穏やかな灯り。
止まりかけた私の心は、緩やかにだけど動き始めた。
楽しいと思うこと。知りたいと思うこと。忘れていた感情が蘇るのを日に日に感じていた。
なのに────────
なんであなたが、私の敵を庇うの?
────憎悪が揺らめく。
そっか……そうなんだ…………
あなたも、アイツらの仲間なのね。
私に近づいたのも、この日のためだった。
私を再び絶望に叩き落とす為に、敢えて私に付き纏ってたんだ。
────違う、そんなわけない
なら、お前も…………
────やめて!
死ね。
私の攻撃は、彼の作りだした風の障壁を容易く突き破り、そのまま彼に直撃して大きく吹き飛ばした。
さっきから聞こえてくる誰かは彼の名前を呼んでいる。あの男の血を継いでいる少女は悲鳴を上げている。
でも、そんなことはどうでも良い。もう邪魔をする者はいなくなった。
あとは、お前たちを殺す。
────────まだ、私の前に立つのね。
頭から血がとめどなく流れ、荒い息をしているにも関わらず、彼は尚もあの親子を護ろうとしている。彼の優しげで、凛とした瞳からは光が失われていない。必ず護るという、強い意志を感じる。
…………もう良い。
────────お前たちは、消えろ。
地獄送りの権能を全開にして打ち出す。彼は翼をより大きく広げて2人を包んで護ろうとしているが、そんなもの関係なく3人諸共滝壺へと沈んで行った。
桜の木に雷が落ちた。
私への、地獄からの怒りの表れだろうか。メラメラと燃えている。
「私は構わない…………」
涙がこぼれる。
あの頃の思い出と、これまでの彼との思い出が走馬灯のように蘇る。
だけど、
「────────この怨み、地獄へ流すがいい!!」
浮かび上がった情景を私は振り払った。
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