閻魔あいちゃんの笑顔が見たい   作:アラウンドブルー

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 馬超さん、☆9ありがとうございます。


 今回はみんな大好き地獄少年登場回です。かなり長くなったので前中後編でお届けします。

 原作は1期第20話、【地獄少女対地獄少年】です。



地獄少年-其之壱

 

「うおおおッ! 怖ぇ!!」

 

 

 ここは北海道。人里離れた冬の雪山。

 

 大天狗は現在、ヒグマと戦っている。

 

 なぜ雪山に、なぜヒグマと、と思うだろうが理由は一つ。能力の慣熟訓練だ。

 

 能力を自覚してまだ1年、何処までできるかが分かっていないため時たまこうして過酷な環境下に身を置いて鍛える事がある。

 

 そうした環境下では危険な野生生物や妖怪と幾度となく出会い、経験を積んだ。

 

 もっとも妖怪に関しては、人に害を与える者は地獄に落とされているので敵対することはなかったが。

 

 

「ブオ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ッ!!」

 

 

 獰猛な咆哮と共に鋭利な爪を備えた剛腕が振るわれる。

 

 一般人なら相対しただけで戦意喪失する速度と破壊力だが、生憎大天狗は一般人ではない。

 

 妖力を身体に巡らせ、背中を大きく反らし交わす。その体勢のまま手を地面につき、バネのように跳ねヒグマの顔目掛けて足を突き出す。

 

 

「ふんっ!!」

 

「ヴギャァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ッ!!」

 

「ぐっ、くっそこっちにも衝撃が……!」

 

 

 大天狗の攻撃を食らったヒグマは絶叫を上げるが、その顔はさながら装甲のごとき強度。如何に身体強化をしていても致命傷を与える程ではなく、大天狗の脚が痺れた。

 

 鼻息を荒くし、尚も大天狗目掛けて突進を仕掛けるヒグマ。その巨体から繰り出される速度は最大でおよそ時速60km。激突すれば、タダでは済まない。

 

 しかし、

 

 

「後ろだ」

 

 

 短距離転移でヒグマの後ろへ回り込む。

 

 

「ギャア゙ッ!?」

 

「いやほんと、悪く思ってるからさ……《向こうに沢山木の実が生っているから、あっちへお行き》」

 

 

 声に妖術を乗せて、ヒグマに幻覚を見せた。するとたちまち殺気は消え失せ、大天狗とは反対の方向へのそのそと歩いて行った。

 

 

「────あー、怖かった……あの爪、あのデカさ。人間時代なら出会った瞬間に気絶してるだろうな……」

 

 

 緊張が解け、一息つく大天狗。元々ヒグマとやり合うつもりなど毛頭なかったのだ。気づいた時には縄張りに入り込んでいて襲われた。

 

 つまり100%彼の落ち度。

 

 

「しっかし、あれだけ怒り狂っててもちゃんと幻覚効くんだな。いや、むしろ怒り狂ってるから効くのか……? 流石にこればっかりは人間で試すわけにはいかないからなあ……」

 

 

 いや動物でもダメなんだけどさ、と誰に言う訳でも無く一人呟く。

 

 

「……なんでバトル漫画みたいなことしてるんだ俺。てかもう真っ暗じゃん……帰ろ帰ろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ただいま……あれ? 3人とも珍しいね」

 

 

 北海道の雪山から帰ると、輪入道達3人が人間の姿で玄関にいた。

 

 普段は藁人形になっているため、こうして里で彼らを見ることはあまりない。

 

 

「おう、ちょっとあの親子を調べにな」

 

「……ああ、柴田親子ね。俺も誘ってくれりゃ良かったのに」

 

「アンタ誘おうにもどっか行ってたろ? 邪魔しちゃ悪いと思ってさ」

 

「いやあ、冬眠していない熊はおっかなかった……」

 

「熊!? お前何やってんだよ……」

 

「まっ、それは置いておいて。何か分かった?」

 

 

 驚いている一目連を他所に、柴田親子について尋ねる。

 

 

「そうさね……」

 

「あの男が娘を通してお嬢に語りかけていたな。最も、あのお嬢を見るに聞こえていないようだが」

 

「ふぅん、やっぱりつぐみちゃんが感知していたんだ……」

 

 

 以前お嬢とばあちゃんが話していた内容とこれまでの事からそうではないかと推測したが、当たっていたみたいだ。

 

 

「やっぱりって……アンタ、知ってたのかい!?」

 

「あ、いやそういう訳じゃなくて……ほら、オッサンと女の子の精神がリンクするとか正直アレでしょ?」

 

 

 骨女から指摘が飛んでくる。

 

 お嬢とばあちゃんの会話内容をわざわざ話したりはしない。だからあえて黙っていた訳だが、いらん不信感を与えてしまったかもしれない。

 

 

「アレって……」

 

「……まあ深くは聞かないでやるよ。お前はここに来て1年ちょっとだが、信頼できるってのは分かっている」

 

 

 一目連からの厚い信頼が泣けるぜ。

 

 

「で、つぐみちゃんがなんでお嬢と精神がリンクしたかだけど……なにか心当たりある?」

 

 

 話を戻して、お嬢の方を見る。

 

 

「……知らない」

 

 

 そう言ってお嬢は舌で唇を濡らし、持っている笛? 尺八? (後に聞くに、一節切と言う和楽器らしい)を吹こうとしている。コツがいるのか、木製楽器特有の音と空気が吹き抜ける音が混ざって中々上手く鳴らせていない。

 

 うん、かわいいね。

 

 

「じゃあ、お嬢も知らないうちにあの子に……」

 

「なぁんだ。ということは、コッチからアッチには伝わっても、アッチからコッチには伝わらないってことだね。良かったよ。さっきのあの男────」

 

 

 骨女が何かを言い欠けるも、輪入道が咳払いをして止める。そして、顎で天井を指した。

 

 そこには、蜘蛛がいた。

 

 ここに時たま現れる、腹部に3つの目玉のような柄が浮かんでいる不気味な人面蜘蛛。

 

 この里に現れる以上、ただの蜘蛛では無い。3人曰く、地獄のお偉いさんでお嬢や俺たちを監視する者だそうだ。

 

 骨女が言おうとしたことは、あの蜘蛛に聞かれたらマズイ内容。あの男のこれまでの行動から察するに、何をお嬢に伝えようとしていたのかは想像がつく。

 

 

「となると次は……」

 

 

 以前、3人に話したお嬢とつぐみちゃんとの縁。その心当たりが無いか尋ねようとしたが、柔らかく綺麗な音色が響いた。

 

 

「……鳴った♪」

 

 

 かわいい。思わずパチパチと拍手をした。

 

 

「……今は聞かない方が良いか」

 

 

 せっかくお嬢が楽しんでいるんだし。3人もこれ以上の追求はやめる様子だ。

 

 ふと、お嬢が一節切を吹くのをやめてこちらに顔を向けて来た。

 

 

「……怪我、してない?」

 

「……?」

 

「お前のことだぞ」

 

 

 一目連に肘で小突かれる。

 

 

「……ああ、全然大丈夫。多少のかすり傷ならすぐ治せるからね。心配してくれてありがと」

 

「……そう」

 

 

 お嬢は再び一節切に目を向けて、旋律を奏で始めた。

 

 

「……ちょいと、外出るか」

 

 

 輪入道が提案した。今のお嬢は音楽に集中したいだろうし、断る理由はない。静かに家から出た。

 

 

「────やはり、お前さんの言う通り2人には何らかの接点があるんじゃねぇかな」

 

 

 輪入道が、目線は花畑に向けたまま切り出した。

 

 

「……偶然、一般人の女の子と精神が繋がるなんてこと、縁が無いと思う方がおかしいもんな」

 

 

 お嬢に聞こえないように、また家から綺麗な音色が聴こえるため、声のトーンは落として答える。

 

 

「生前、柴田家と深い縁があったと見るべきか……」

 

 

 血縁関係、婚姻関係。パッと思いつくのはこの2つ。

 

 憶測でしかないが、頭の中をグルグルと駆け巡る。

 

 

「……?」

 

 

 輪入道が振り返る。気づけば、心地よい音色が止んでいた。俺も振り向くとお嬢が家から出て来ていた。

 

 

「……依頼よ、着いて来て」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 閻魔あいは依頼人の前に姿を現した。

 

 6畳程度の控え室で座っているタンクトップを着た男【エスパー☆ワタナベ】が今回の依頼人だ。

 

 この依頼人は超能力者としてテレビ出演をしていたが、直近に出演した番組で【ジル・ドゥ・ロンフェール】という最近評判の超能力少年によってお茶の間に醜態を晒してしまった。

 

 現在、彼はリベンジマッチとしてテレビ局に呼ばれているが局側、もっと言うとジル側としては自分への怨みから地獄少女を呼び出して彼女と対決をしたいという思惑がある。

 

 つまり、ワタナベは地獄少女を呼び出すための餌というわけだ。

 

 そうとは知らないワタナベは夜に呼び出され、長時間待たされ、更には嫌がらせのような差し入れを持ち込まれた。

 

 挙句の果てには、ADの長嶋からジルの舐めた態度を聞かされ、彼の苛立ちは限界を迎えようとしている。

 

 時刻は23:50。再びADがワタナベの元を訪れた。

 

 

『ねえワタナベさん、知ってる? 地獄通信ってサイト』

 

『な、なんだよそれ』

 

『知らないの? 0時丁度にアクセスして呪いたい相手の名前を書き込むと、地獄少女が来て怨みを晴らしてくれるって噂。アンタそれだけジルさんに怒ってるなら、もう地獄少女に頼んじゃえば?』

 

『はあ!? じゃあリベンジマッチはどうなるんだよ!?』

 

『いやまあ、ジルさん全然来ないしそっちの方が面白いかなってディレクターが……』

 

『ふ、ふざけんなよオイ! 何時間待たされてると思ってんだ!』

 

 

 憤るワタナベだが、そんな彼を無視してADはテーブルに置いてあるノートパソコンを開いて地獄通信にアクセスする。

 

 

『ありゃ、今じゃやっぱダメみたいですねぇ。このページ開いとくから、0:00になったら更新ボタン押してみてくださいね。そういうことで、よろしく〜』

 

 

 小馬鹿にした態度のままADは控え室から出ていった。

 

 これまでの流れはジルと組んでいる番組ディレクター・亜紀の指示だ。ジルへの怒りを増幅させるためのもの。

 

 地獄通信に彼が依頼するかは賭けではあるが、ジルは超能力によって自分へ向けられている怨みが相当強まっていると認識している。そのため、ほぼ確実に書き込んでくれると確信している。

 

 0:00丁度。再読込ボタンを押下すると地獄通信に繋がった。

 

 

『ほ、ほんとだ。本当に繋がっちゃった……』

 

 

 ワタナベは驚き、依頼をするか悩むがそれも一瞬。半分やけでジルの名前を書き込んで送信ボタンを押下した。

 

 すると、目の前に閻魔あいが現れた。

 

 あいは、黒い藁人形を彼に渡し、地獄流しのルールを説明する。

 

 契約が完了したら死後、自身も地獄に落ちることになると告げると、復讐をすると意気込んでいたワタナベは瞬く間に顔色が変わり冷や汗をかき出した。

 

 

「……怖い?」

 

 

 怯え、声にならない声を上げているワタナベ。そこに、凛とした声が響いた。

 

 

「怖くて当然だ!」

 

 

 その声と同時に、控え室の壁が取り払われる。

 

 既にカメラは回されていた。スタジオの壇上からジル・ドゥ・ロンフェールが見下ろしていた。

 

 

「ようこそ! 会えて嬉しいよ、閻魔あい」

 

「……あなたは?」

 

 

 あいの背後でワタナベは何が起こっているのか理解ができず、置いてけぼりを食らっている。

 

 あいはこういった事態でも動じない。自身に会うために地獄通信を利用した者は過去、稀にだが存在したからだ。

 

 

「私はジル・ドゥ・ロンフェール。【地獄から来たジル】という意味だ」

 

 

 本物の地獄少女に来て貰えるとは光栄だよ、と慇懃無礼な態度を隠そうとしない。

 

 ワタナベはようやく自分がダシに使われていたことに気づき怒りの抗議をするも、ジルはどこかから取り出したおでんの大根を口に投げ入れ黙らせた。

 

 

「大根タレントに大根は本当によく似合うよ」

 

 

 そして、テレビで話題の自分とネットで話題の地獄少女との生死を賭けた地獄対決をあいに申し込んだ。

 

 受けて立つと言わんばかりにあいは蒼と紅の藁人形を取り出し、実体化させる。

 

 彼女の両脇に、一目連と骨女が現れた。

 

 その時、ディレクターの亜紀が誰と話しているのかジルに問いかける。

 

 モニターには、ジルとワタナベ以外写っていない。

 

 閻魔あいとその仲間は人ならざる者。そのため、映像に映らなくすることなど容易い。

 

 骨女と一目連は映像をジャックし、地面に張っているケーブルを蛇のごとく動かしてみせた。それによりスタジオは混乱に陥りスタッフは全員逃げ出した。

 

 一人呆然としていた亜紀は、足にケーブルが絡みつき宙吊りとなって気を失ってしまった。

 

 

「助かるよ。じゃあ、君たちも!」

 

 

 厄介払いをしてくれたことに感謝しつつ、自身の能力で一目連と骨女をいつの間にか用意していた磔刑台へ磔にした。両腕両脚は枷で厳重に固定され、2人は抜け出すことが出来ない。

 

 

「やっと僕たちだけになったね」

 

 

 亜紀は気絶し、ワタナベは怯え縮こまっている。一目連と骨女は戦闘不能。

 

 ジルは、数時間前にアポ無しで取材をしに来た柴田一からの『復讐は良くない』という伝言を伝え、自身は地獄から舞い戻ってきた生まれながらの能力者であると言った。

 

 そこから語られる、彼の過去。

 

 幼い頃、自身を気味悪がり殺した両親を地獄から戻ってきて証拠を一切残さずに完全殺人を行った過去。

 

 まるで自慢話をするように語り聞かせているが、同時にそんな彼の様子は何処か哀愁を感じさせる雰囲気が漂っていた。

 

 

「────この能力のせいで辛い思いばかりをしてきた。僕が他人を地獄に落とすのは、憎しみで自分の気持ちを制御できないときだって君ならわかるだろ?」

 

 

 あいに顔を近づけ、まるで人形を扱うかのような手つきで髪を撫でながらジルは言う。

 

 

 彼の発言に、いつかの自分を垣間見るあい。

 

 

 

 

 

 怒り、悲しみ、涙に暮れた、あの日の自分。

 

 

 

 

 

「分かるだろ? 君なら……」

 

 

 あいの顔を掴み、分かるだろ? とジルは語気を荒げなおも迫る。しかし彼女は答えない。

 

 

「……何とか言えよ」

 

 

 何も言わないあいに不満を持ったのか、ジルは一転して顔から表情が抜け落ち、不気味なほどに声の抑揚が無くなった。

 

 彼女から一歩離れ、手を突き出す。それは、能力を発動する予備動作。

 

 

「言えよ!」

 

 

 怒りに支配され、その力を閻魔あいにぶつけようとしたその時────────

 

 

 

 

 鮮血が舞った。

 





 お読みいただきありがとうございました。

 高評価、お気に入り登録、ご感想よろしくお願いします。

 因みにDSソフト【朱蘰】、PS2ソフト【澪縁】購入しました。まだ少ししかプレイできていませんが、ストーリーによっては拙作に組み込むかも?
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