チヨの幼馴染Tになれるなら、オワタ式ファイナルなんてなんぼのもんじゃい! 作:ansin
ジュニア級最後のG1マイルレース、朝日杯フューチュリティステークス。
舞台は阪神レース場、芝1600メートルの右回り。
お父さん、お母さん…見てますか?私サクラチヨノオーは、遂にG1に挑みます。ジュニア級とはいえG1です。現地の阪神レース場は、レース3時間前だと言うのに早くも大盛況を迎えていました。それに翌週に控えている阪神ジュベナイルフィリーズの影響もあるかもですが…
年末近くだと言うのに陽炎が立ち昇りそうな熱気の中、私達はタクシーを下りてレース場の控室に向かう。スタッフの方々が私達を取り囲んで、人混みから守ってくれたから良かったが……とんでもない人口密度である。
「前日ホテルに泊まって大正解だったね~」
「そうですね…」
満員電車もビックリな人混み。その中にG1出走ウマ娘の私が紛れていたらと思うと、ぞっとする。人の波に押し潰されて、冗談じゃなく死んでしまうかもしれない。控室に入った私は、いよいよ緊張感の高まりを感じた。
私は制服を脱ぎ、勝負服に手をかける。冬のレースに合わない着物だが、その桜はこの先爆発的なデビューのような春を匂わせた。
私がマークするのはグラスワンダー。今日一番の敵が彼女だと話し合って、そこら辺は抜かりない。グラスワンダーの末脚、差しの作戦、スパートをかけるタイミング、癖――その全てを頭に叩き込んだ。後は後悔のないよう、全力全開でターフを駆け抜けるだけだ。私は息を整え、集中力を高め続けた。
いよいよ始まる。私は阪神レース場のパドックにやって来ていた。数万人の大観衆が見守るパドックに、ジュニア級マイル距離G1を虎視眈々と狙う18人が立つ。ウマ娘達がパドックに集まってくると、鋭く研ぎ澄まされた闘志に当てられて観客達が静まり返る。これがジュニア級の覇気なのか、という声がどこからか聞こえた気がした。
(……ジュニア級とか、クラシック級とか、関係ない。私達は目の前の勝利をもぎ取るためにここにいる)
全国で誕生したウマ娘の中で実力を認められ、選りすぐられたトレセン学園生。その才能の奔流に呑まれてなお折れなかったジュニア級の精鋭達だけが、この舞台に立っている。
そして、その中でもひときわ目立つ2人のウマ娘がいる。サクラチヨノオーとグラスワンダー、他のウマ娘はその2人から目を離せないし離さない。
『7番、サクラチヨノオー。2番人気です』
『彼女のレースにも期待がかかります!』
私の名前が呼ばれたので、一歩踏み出す。パドックに設置された台に乗り、注目を浴びる形になる。折角の浴衣姿の勝負服なので、その場で1回転するようアピールした。これならファンも喜ぶことは間違いなしだった。
「こんなに見惚れてしまったウマ娘はチヨちゃんが初めてだ」
「どうした急に」
「前回のレースから更なる成長をしていることに加え、あの闘志、あの勝負服。言葉もない。俺の1番人気はサクラチヨノオー一人だ」
「本当にどうしちまったんだおい」
パドックでのお披露目が終わると、すぐに本バ場入場が始まる。
「……トレーナーさん、行ってきます!」
「あぁ。作戦は話した通りだ。……行け。後悔のないようにな」
言葉に背中を押され、私は遂にターフに足を踏み入れた。すぐさまG1専用ファンファーレが流れ出し、割れんばかりの大歓声が中山レース場を包み込む。地響きに似たそれが収まると、実況がはきはきとした喋りで語り始めた。
『暮れの阪神レース場、何と集まった観客は10万人! 有マ記念に全く引けを取らない人数がジュニア級G1に詰めかけました!』
次々とゲートインするウマ娘達。そして最後に、グラスワンダーとサクラチヨノオーがゲートインする。あぁ…本当に始まってしまう、G1が。
芝を踏み締めて、足の裏に良好な感覚が伝わってくる。……うん、トレーナーの調整のおかげで絶好調そのものだ。
数回深呼吸して、眉間に力を込める。観客席の喧騒がどこか遠くに遮断されたかのような感覚に陥る。思考が澄み切っている。緊張感は吹き飛んで、闘争心だけが心を焦がしている。
『さぁ、全てのウマ娘のゲートインが完了しました。ジュニア級チャンピオンに輝くのは誰か! 阪神レース場、芝1600メートル――朝日杯! いよいよ出走です!』
ターフが静寂に包まれる。いよいよ激闘の2分間が幕を開ける。18人の中で1番になれるのは1人だけ。2着以下は負けなのだ。先日の雪の影響で、芝は重バ場。身体の芯まで凍ってしまいそうな風が吹く中…
――ガシャコン、とゲートが開いた。
『さぁ、各ウマ娘一斉にスタート!』
運命のレースが始まったのだ。反射的にスタートを切り、背中を弾かれるように前傾姿勢になって加速する。私は風を切って第1コーナーに向かい、周囲を確認する。
「(やっぱりマークされている…)」
スタート直後、ライバルたちとの距離が異様に少なく感じられた。下手をすればぶつかるかもしれない位置にいるが、そこは当たらない。全員がいざとなればいつでもブロックしたりプレッシャーをかけたりすることができる位置だ。
グラスワンダーさんもそうだろう。私は彼女に追いつかれないようペースをぐっと上げ、限界寸前の脚を回転させて彼女を引き離しにかかった。しかし、彼女は歯を食いしばって食らいついてくる。
「――ぐうっ!!」
意地の張り合いか、とてつもない闘志が私の背中に突きつけられる。まるで刃だ。このままでは差される思ってしまうほどの威圧感。初めて味わう後ろからの恐ろしさに戸惑ってしまう。
しかしそれは時間とともに薄れてきた。たったマイルの1600mだと侮っていたら大間違いだ。周りは自分のペースに乗せられて、コーナー前でほとんどが脱落していった。こちらはスタミナも脚にも余裕がある。まつで振るい落とされるように、トップ集団ががらりと変わった。
「!」
私のすぐ後ろに、グラスワンダーさんがぴたりと張り付いていた。勝負所は、第4コーナーかホームストレート…!そのまま競り合ったまま、第4コーナーを曲がっていく。2人の意地の張り合い。ここまで来れば遠慮は不要、明らかなハイペースを維持したまま最終直線に差し掛かる。
『最終コーナーを抜けて直線に入ります!! 後続は既に3バ身の差がついている!! これは2人だけの勝負になるか!?』
やっぱりここだ。グラスワンダーはコーナーで私の陰に隠れるように、脚を溜めている。空気抵抗を受けないようにスリップストリームに入り、ホームストレートに入った瞬間差しに入ったのだ。でも、私だって、こんな所で…!!
ぐん…!
「!?」
ここで唐突に、何かの違和感を感じた。別にどこか、身体に異変とかがあったわけじゃない。寧ろ、自分ではない誰か、まるで
『残り400メートルを切って、先頭の2人が並んだ!! グラスワンダーとサクラチヨノオー、横一直線!!』
グラスワンダーがスリップストリームから抜け出し、私を抜かしにかかる。しかしそのタイミング、謎の力によって背中を押され限界の速度を一段階引き上げた。抜かそうとした瞬間に速度を上げられれば、相手は混乱してしまう。まだ本気ではなかったのか、こちらを油断させる作戦として焦りを作り出せる。
『残り200メートルを通過して、サクラチヨノオーが前に出た!! しかしグラスワンダー懸命の末脚!! リードは僅かに半バ身差!!』
お互い、全身全霊のラストスパート。倒れそうなほど前傾姿勢になる。そして…
『ゴォォオルゥ!! 勝ったのは、サクラチヨノオーだ!!』
記念すべき、最初のライバルに勝利したのだった。
「そ、そんな…」
年末最後のG1レース、その勝利をとられたリギルの東条トレーナーは呆気にとられた。まさか、僅か1年足らずの新人トレーナーに勝利されるとは思いもしなかった。
しかし現実がこれだ。こればかりはトレーナーの力量か担当の子の底力、またはその両方を素直に賞賛するべきだろう。彼女自身は不思議な現象は信じなかったが、あの謎の加速…もとい担当の根性は恐れ入ったと次に向けて意欲を高めた。
・・・
「(このままだと差される!どうすれば…!)」
ホームストレートに入り、絶妙なタイミングで抜きにかかったグラスワンダーに焦っていた。このままでは負けてしまう!己の命が潰えてしまう。もうなりふり構ってられない!!心眼、発動!!
「ふぐぐ!!いけぇチヨノオー!!」
「トレーナーさん?な、何を??」
隣であっきゅんが変な目で見ているけど、気にするもんか!アプリ版で培ったレース背景を思い出しながら、俺は心眼を発動する!
やはり、と俺は笑った。ウマ娘のレースは元の世界の競馬と同じ!ならば、中継されているテレビの上にウマの位置情報がある。そのバーに手を掛け、"チヨの番号が書かれた丸"をググッと右のゴール位置まで「力づくで動かした」。周りからは虚空を掴んでいる意味不明な行動だったが…
「!」
その行動が本当にレースに参加中のチヨノオーに影響したかはわからないが、ぐんぐんとチヨはグラスワンダーに近づいていきそのまま追い抜いてゴールへ飛び込んだ。
もしそうだとするなら……もう過ぎてしまったが、チヨならこんな影響なんかを受けなくても勝てたかもしれない。罪悪感というか、少しモヤモヤした気持ちになったが初のG1に勝てたチヨの笑顔が見れたという事でヨシとしよう。これが三女神にバレたら次は実力で再戦すればいい。
チヨノオーのルートは?
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天皇賞秋の変則三冠ルート
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菊花賞に挑戦ルート
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宝塚の人気上昇ルート
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いっそのことティアラ路線