チヨの幼馴染Tになれるなら、オワタ式ファイナルなんてなんぼのもんじゃい! 作:ansin
年始クラシックがなんぼのもんじゃい!
今年も残すところあと数日。サービス業を除く大体の職種は仕事納めで年末年始はゆっくりなどと世間で言われている時期だ。
トレセン学園においても今日が今年最後の出勤日――というわけではない。俺みたいに用事がある者はともかく、人によっては既に年末年始の休暇に突入しているのだ。
結局は実家に帰ることもなく借りているアパートでだらんとしていた俺だが、実家は都内からちょっと離れた所にあるので帰ろうと思えばいつでも帰れる。まあこの時期になれば帰省ラッシュで人混みに巻き込まれるのが嫌だった。そう思い自宅でゆっくり休んで疲労を抜いた俺は、今年初となるチヨノオーやアキュートとの顔合わせを行っていた。
「新年あけましておめでとう。年末はよく休めたか?」
「「あけましておめでとうございます!」」
新年ということで軽いトレーニングをしようと二人を練習用のコースに集めた俺は、ごほんと咳ばらいをする。そして重大な発表を行う――前に懐からポチ袋を取り出した。
「あ、その前にこれ、お年玉な」
新年といったらまずはお年玉だよな。朝日杯での賞金があるため万札を束で入れておこうかと思ったが、二人の年齢を考慮して5000円ずつである。普通の学生からすれば5000円は大金の類だ。まぁデビューしている彼女らの報奨金には届かないかもしれないが、お金を稼ぐ手段があまりにも少ない学生のうちは貴重な機会だろう。
「お年玉!いえいえそんなお金は…」
「いーんだよ学生のうちは、少しは貰っとけ」
「わぁ…ありがとうねぇ」
笑顔を浮かべて喜んでくれる。そんな純粋な反応をしてくれるだけで、用意した甲斐があったというものだ。絵的にはあっきゅんが年上と思ってはいけない。代わりに向こうからは飴玉貰えたけど。
「さて、チームとしてこれからクラシックに突入するわけだが、ここから更にライバルが強くなってくる。戦力を揃えたいところだが…」
「それって、新学期に新しい子でもスカウトをするのかね?」
「新学期…新しい子…後輩…」
「新しい子なぁ……そうしたいのはやまやまだが、その辺の話は今のところ特にない。というか、俺が面倒を見切れん」
メリットとデメリットを天秤にかけた結果、現状維持を取ることにしたのだ。流石に現状では新しいウマ娘を担当するのは無理だと判断し、理事長にも難しいと相談した上でだ。新人にチームを持たせることの困難さは、この業界に入れば誰でも意識する。
「そうですか、しょぼーん」
逆にチヨは現状で自分の後輩が来てくれないことに少しだけ残念がっていた。やっぱり、切磋琢磨する仲間がいるってのは大きい。しかし、それならばマルゼンスキーと対戦してからでも遅くはない。後輩なんてレースで活躍すれば自然と集まるものだ。
出走するレースの傾向や年齢が同じウマ娘同士なら、ライバル関係として張り合う方向に持っていったが、二人は距離適性は同じだがバ場適性が真逆だ。芝とダート、なので互いにぶつかり合うというのはない。それでも2人の相性が良いため、こうして互いに良い影響を与え合っている。
「でもトレーナーさん。チームの運営については詳しくないけど、トレーナーさんが大変になるんじゃないの?」
「あー……心配してくれてありがとうな、あっきゅん。でも大丈夫だ。チームが安定するまではたづなさんが指導とサポートをしてくれるから、むしろ楽になるかもしれん」
これから世話になるというのもあるが、たづなさんから『何かあれば気軽にご相談ください』と言われたのだ。チームの面倒を見てもらう関係上、ある程度親しくしておいて損はないだろう。理事長の側近であるたづなさんと親しくしておけば、ある程度の融通が効くし向こうも新人がいきなり格上チームのメンバー1人をG1で勝利したこちらをそう易々と手放さないはずだ。
「理事長秘書だし、書類仕事とかもばっちりだと思うんだ。何かあればすぐに相談できるってのは心強い」
この2人の事だ。俺が大変だと伝えてしまうと、書類仕事を手伝いたいと言いそうだしな。その気持ちは嬉しいけど、チヨもあっきゅんも怪我なくしっかりとトレーニングに励んでくれた方が俺は嬉しい。
クラシックでぶつかる可能性があると警戒しているウマ娘達は、俺の目が節穴でなければかなりの強敵だ。例えチートを有しても、元の世界でもGⅠレースに出れるトップクラスの才能がある。
普段からチームとして2人一緒にトレーニングをしているが、これからはより競わせ、それぞれの長所に特化した方向でのトレーニングも重要になってくる。そうなってくると、俺の判断を気にせず無理ない自主練できる時間も必要だ。それにライバルとは言え、競い合う練習をすればお互いの調子もあがるのでリギル以外断る理由がない。あとは俺が2人の身体とメンタルのケアを頑張ればいい。そこまで考えた俺は、懐を漁って人数分の鍵を取り出した。
なんとか掃除して部室が使用できる状態であれば、これまでのようにトレーナー用の共用スペースで仕事をする必要もなくなるし、パソコンや資料も置いておける。盗むやつはいないと思いたいが、万が一に備えて戸締りなど防犯はしっかりしておかなければならない。
「もし万が一でも鍵をなくしたり、開けられない状況だったらたづなさんに連絡するように、いいね?」
「「はーい!」」
新年、クラシック最初の対決が目の前まで迫っていた。
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