チヨの幼馴染Tになれるなら、オワタ式ファイナルなんてなんぼのもんじゃい! 作:ansin
因みに今回はリギル全員に勝つことが目的なので、既存の育成目標は完全に無視しております。過剰表現の部分はお許しください。
ヒヤシンスステークス。
2月、東京レース場。今回はいよいよワンダーアキュートのメイクデビュー以来の初レースとなる。しっかりと睡眠、休養を取ってヒヤシンスステークスに備えた。そして今日、いよいよ新年初のレースが始まろうとしている。
たかがオープン戦と侮ってはいけない。ここでクラシック戦線で通用するかを占う大事な一戦となる。勿論、それは他も同様に思っていることだろう。この半年は余計なレースには出ず、練習に注ぎ込んだ。
2月下旬で12月や1月に比べれば春が近づいてくるような、少しずつ気温が高くなっている時期だがそれでも寒い。身体を温めるつもりで軽い柔軟をこなし、いつでも動けるよう指示しておいた。
『ヒヤシンスステークスで、エルコンドルパサーに1着で勝利せよ』
ヒヤシンスステークスのフルゲートは16人だが、今回は少し人数が少ない13人での発走となる。スケジュール的に合わなかったのかそれとも別のレースのために、出場を取り止めたのかは定かではないが、もう一つの理由があるとするならば…
「グラスの仇は取ってあげマース!」
リギルの期待のエース、エルコンドルパサーがいるからだ。将来の凱旋賞に挑むスペシャルウィークのライバル、その高いポテンシャルに一部は勝負を避けたかもしれない。その効果もあってか、例年より観客が多く見られた。この雰囲気に呑まれないといいが、気負って体が固まると可動域が狭くなりフォームに影響する。
「最後に可動域のチェック、しとこうか?」
控室にて、緊張で体が強張らない様許可を得て肩たたきでチェックしたのだが…
「チヨ、申し訳ないけど少し外へ出てもらって構わないか?」
「えっ、いいですけど…」
よし、チヨノオーを避難させることに成功した。これから彼女に対する"るーちーん"は絵的にちょっとな…
「もっと強くて大丈夫よぉ。気合が入るよう、ビシバシお願いねぇ」
やはりというべきか、ヒト種の弱い力ではまだ足りない。ええいままよと、力を振り絞ってビシバシと肩たたきを続けた。
「おっほ!♡くぅ!♡おひょ!♡おひゃぁあああーーーー!!!♡」
いつもの"るーちーん"を完了させた後、あっきゅんは恍惚な表情を浮かべていた。しかし例えどんな顔であっても、その眼には今まで以上に闘志が湧いている。そして…
「ふほっ♡ふはぁ♡ふんがーーー!!!!」
その勢いのまま、控室を飛び出しレース場へと走っていった。後から控室の外にいたチヨに、中から聞こえてきたあっきゅんが出した陽悦な声の正体は何かと、暗い瞳のまま質問されたけどお兄さんは肩たたきをしただけだぞッ☆
☆
レースの結果は、圧巻。その一言に尽きた。
「マジで…ファル子と競走したあの時より更に良いだろ……」
レース場の観客席に見届けていた俺はゴール板を駆け抜け、観客席に向けて笑顔で手を振るあっきゅんを見つめる。正直負ける可能性も少しはあるんじゃないかと考えていた。"るーちーん"で緊張が和らいだとはいえ、精神状態が途中で呑まれるんじゃないかと危惧していた。
けれど、蓋を開けてみれば。
2.5バ身差の快勝。常にワンダーアキュートは先行に位置し、逃げのウマ娘達にプレッシャーを与えつつ、磐石なレース運びを終始展開。勿論、エルコンドルパサーも負けじと後に続く。
しかし最終コーナーに入る少し前にスパートを掛け先頭に踊り出ると、タイミング的に僅かに出遅れたエルコンドルパサーを置き去りにしてそのままゴールイン。エルコンドルパサーの固有スキルは非常に強力…だが、そのスキルは映像記録とさせて勉強という名目であっきゅんにインプットは完了済みだった。能力的にこちらが上であったため、まさしく次世代のダート強者と言わんばかりの威圧をそのまま体現していた。
こんなレースを見せられたら、前世であり得るダート三冠の称号、それを取ってもおかしくないほどの強さに。
「トレーナーさん…!私、勝ったよぉ…!」
「すごい走りでしたよ!!」
「ああ。見事な走りだった」
一緒に応援していたチヨノオーはアキュートの手を取り、俺はそれを眺めて褒めたたえる。
「トレーナーさんが励ましてくれたおかげよぉ。すごく安心して走る事が出来て、こんなに清々しく走るのは久しぶりな気がして」
「そう言ってくれるとこちらも嬉しいな。トレーナー冥利に尽きる」
初めてのレースの勝利は、その後にかなり影響する。しかも今回は、あのエルコンドルパサーを勝利したのだ。最強候補の一角を落とした、そのプラスアルファも貰ったことで、あっきゅんの更なる飛躍に繋がる。
「じゃ、折角だし…勝利した記念にスイーツ食べ放題でも行くか?」
「えぇ!?いいんですか!?」「えぇ!?いいのぉ!?」
二人は驚いていたが、こんなレースを見せつけられてはご褒美なしとは言えない。それにアフターケアもトレーナーとしてのしっかりとした仕事だ。
心残りがあるとするならば、新人一年目のチームトレーナーにまさかの2連敗の黒星をつけられたリギルの方だが、このレースで更に世間の注目を浴びられるのは間違いない。先の2戦は新人だが、次は中核クラスのウマ娘を差し向けてくる。
しかし焦る必要はない。その時はその時だ…と3人一緒に、最寄りのスイーツ店に行くこととなったのであった。
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