チヨの幼馴染Tになれるなら、オワタ式ファイナルなんてなんぼのもんじゃい! 作:ansin
だが幸い、私にはシンデレラグレイとアプリとようつべがある!
レースBGM:PRAYER(頭文字D8)
日本ダービー…
最早多くは語らない。
英国のダービーステークスを元に創設されたクラシック競走、三冠競走の2走目である。このレースを含め、先の皐月賞と秋の菊花賞を制覇したウマ娘は"三冠ウマ娘"という栄えある称号を手にすることができる。
最高峰であるG1レースというだけあってか会場は当然のように盛り上がっており、何より未だ
「行ってこい!チヨ!」
「トレーナー…」
もうここまで来たら何も言うことはない。文字通りの以心伝心、それがチヨノオーには伝わった。勝っても負けても一生に一度のダービー、今までの苦労がここで報われるかどうかが勝負だ。会場前まで食べていたあっきゅんからの
「こんなことを言っては何だが、俺たちはもう応援と祈ること、信じることしかできない。だから…暴れてこい、2冠の無敗ウマ娘として…!」
「がんばるんだよ~!相手をビシッビシ決めておいで~!」
会場内の熱気に押されているのか、
「はい!いってきます!」
そういってパドックへ向かうチヨ。パドックでは、何か引き締まった顔を見る。恐らく、観客席のどこかでマルゼンスキーを見かけたのだろう。確かにダービーは彼女にとって叶えたい夢だが、ここがゴールではない。
「やっと会えましたね、
ふと視線を戻す。そこには、永遠のライバルともいえる二人がいた。二人三脚で友であったメジロアルダン。そして、皐月賞のリベンジに燃えるヤエノムテキ。メジロアルダンもヤエノムテキも"今"しかない。自分と同格の想いを背負っている。
「もう多くは語りません。マルゼンさんから託された私の想い、それが一番だとこのダービーで証明して見せます!」
「「!!」」
その言葉で何かしらの圧を感じた二人。まだクラシックに入ったばかりだというのに、自分たちとは一段も二段も違う別格の圧に心の中ではたじろいだ。これが、あの新人トレーナーと練習したチヨノオーなのか。野生と科学の融合、その集大成を見ているような気分だった。
『さぁ運命の時です!各ウマ娘、それぞれの想いを胸に、ゲートへ入ります!!』
スタート前の沈黙、俺とあっきゅんは固唾を飲んで見守る。
『さあ、全てのウマ娘ゲートイン完了しました。一生に一度の夢の舞台日本ダービー。今、スタートです』
冷静沈着な声と同時にバン、というゲートが開く音と共にウマ娘達が飛び出す。
『サクラチヨノオー、皐月賞と同じ完璧なスタート!それに続くように、内側のウマ娘達は綺麗なスタートとなりました!さあ、ハナを奪うのはアドバンスモア!勢いよく飛び出しました!』
皐月賞と同様にロケットスタートを決めたサクラチヨノオーは中団前め3番手の位置取りをし、それにメジロアルダンが続く。ヤエノムテキは後方に位置どった。やはり史実通りの展開だ。
俺は目の前を駆けていくウマ娘たちから一切目を離さずに見つめる。
史実と違うのは大人数である24からいつも通りのフルゲート18人に減ったことだろう。しかし群れに埋もれてしまっては逆転するチャンスは失う。差しウマ娘の中団に埋もれてはいけない。それはチヨも読んでいた。
「(確実に埋もれないポジションは、前と後ろ…! ヤエノさんはパワーがあるから大外からチャンスを作れる。対する私にはない。先頭と2番手は予想以上に
ここで3番手に着いて様子を見守るチヨ。その後ろには、っこれでもかと存在感がはっきりしているメジロアルダンがついてきていた。
・・・
「予想通り。チヨちゃんとアルダンさんは先行、ヤエノさんは中団。ただ、少し縦長やね」
「いや、先頭のアドバンスモアは大逃げのつもりだろうけど、あの様子だと絶対に大ケヤキ前で失速する。仕掛けどころはそこだ、そこで後続が一気に詰めてくる」
先頭から順に第一コーナーを周り、第二コーナーへと差し掛かる。殆ど膠着状態のままレースは進んでいく。縦長の展開になっているが、第三コーナーを周り始めると同時に徐々に後続と先団との距離が詰まっていく。
・・・
3コーナー。レース後半になったところでも、チヨは焦らず先頭の要素を見守っていた。これまで代表的な逃げウマ娘とは戦ったことはないが、明らかに先頭がスタミナの落ちていることを確信した。
唯我トレーナーのいう通りだ。ホームストレートまでスタミナが持たないウマ娘はどんなにあがいても下位に落ちる。確実に抜ける。脳内のアドレナミンどっぱどぱなハイテンションがチヨの脚を加速させる。
「チッ…!」
後続が差を詰めてきたところで、中団で様子を見ていたヤエノムテキは舌打ちする。少し先には、自分と同じく外で脚を溜めて抜き去る準備をしていたサクラチヨノオーがいたのだから。2バ身差くらい離れているのに、目の前にいるような錯覚に陥る。そして、ふと抜き去ろうと容易に脚を出した途端…
「『お先に失礼』します、ヤエノさんッ!!」
『大ケヤキを通過して、最終コーナーからサクラチヨノオーが飛び出した!!』
実況の声音と同時に観客席からの地鳴りが起きそうなほどの大歓声が響き渡る。地を裂くような大歓声。ホームストレートにてラストスパートをかける展開、勝者は一体誰に微笑むのかというワクワクが盛り上がる。
「(まだ脚が、ここから…!)」
「!!」
まだ終わりではない。内側からメジロアルダンが、最短距離で迫っていた。ここまでは関係者全員が予感していた。チヨも俺も、アルダンも。その先の展開が違うだけだ、差すか逃げられるかの違いだ。
史実とはわずかに違う展開。射程距離に捕らわれたチヨを、メジロアルダンは完全に
「(捉えた…!)」
最早手が、彼女に触れるところまで来た。サクラチヨノオーを抜かんと、彼女の左後ろを陣取り一気に抜き去ろうとしたところで…
フッ
「……………………えっ?」
アルダンは困惑した。
目の前にいた、サクラチヨノオーが消えた。
いや。厳密にいえば、桜の嵐に紛れて消えたように見えた。彼女が、ウマ娘自体が花弁のようにありえない変化を、幻影を見た。
ふと、一枚に花弁がメジロアルダンの眼を通り過ぎる。
そこには、更に先を。少し小さくなった、いつの間にか2バ身程離れていたサクラチヨノオーの姿が見えた。
一体何があったのか、メジロアルダンは理解が追い付かなかった。
その刹那、観客席にいた俺はニヤッと笑った。
ホームストレートに入ろうとした直前、チヨは静かにラストスパートに入っていた。まるで
残り300m。追いついたと思っていたアルダンが見ていたのは、正しく"幻"。
これが後に、領域と呼ばれる都市伝説を体現させる予感を覚えたのは唯我とサクラチヨノオーだけだろう。
今こそ、桜の大輪。満開の花を咲かせる時であった。
それを確信した俺は、静かに言った…。
「いけっ、チヨノオー…!」
「はぁあああああああああ!!!!!」
楽しい、楽しい、楽しいッ!!
今までにない高揚と興奮に身が包まれる。この歩みを止めたくない。負けたくないから、ぶっちぎりで勝ちたい!あの二人に!!
これは、私のダービーだ!私が主役だ!!
チヨは、叫ぶ。
「私とマルゼンさんの…ダービーなんだぁぁあああ!!!!」
『ゴォオール!!ダービーを制したのは、サクラチヨノオー!!ライバルに打ち勝ち、無敗での2冠達成でっす!!!』
実況の興奮気味の声音と同時に、観客席からの地鳴りかと思わんばかりの大歓声が鳴り響く。チヨは、自分は既にゴール板を過ぎたことに気づいてゆっくりと歩調を緩め、膝に手を付く。
自分の視線には誰もおらず、ふと後ろを見ると自分以外の17人のウマ娘がいた。
自分が目指していた目標を、口にしていた夢を現実に変えたのだから…。
そんな高揚感を覚えながら、観客席の最前列で応援していた唯我とアキュートを見つけたとき、力強く手に取って共に感動を味わったのは言うまでもなかった。
ドゥラメンテぇ…
一言でええから喋ってくれ…
やっているのを見たい奇妙なトレーニング方法は?
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