チヨの幼馴染Tになれるなら、オワタ式ファイナルなんてなんぼのもんじゃい! 作:ansin
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ダービーが終了して数週間後、世間では初夏に入ろうとしている。
チヨは、デビューから無敗で皐月賞とダービーの二冠を達成した。これは当然、日本全国に大きく知れ渡り並のファンならば菊花賞のクラシック三冠を、しかも無敗の三冠を夢見ただろう。
だがそれは、今朝のニュースでもろに崩れ去ることになる。
精密検査の結果、筋肉疲労による脚全体の負担が想像以上であったことから長距離は危険と判断し、慎重な姿勢と更なるレベルアップのため天皇賞秋の出走に変更することになった。
これもこれで大きく新聞に報道されることになる。記者会見の場では数えきれないほどの報道陣とカメラ、直射されるフラッシュがこれでもかと眩しい。
「三冠を取れず、誠に申し訳ありません」
ファンの期待を裏切った代償、担当であるチヨの管理を怠った責任として会見の場で精一杯の謝罪をした。
アンチや罵倒はさておき、世間の評価は様々だ。『無敗の三冠、見たかったな~』『菊花賞の長距離ダメなの?』といった残念がるコメントもあるが、『チヨちゃんのためなら仕方ないね』『療養してまた元気な姿みたいな』『新人で無敗二冠はよくやった方だよ』と事情を理解し、こちらの健闘を褒め称えるコメントが多かった気がする。
しかし、それと並行して世間のウマ娘界はあの二人の活躍が盛り上がっていた。
そう、
オグリはクラシック出走は叶わなかったものの、ペガサス
対するタマモクロスは中距離を軸に、天皇賞春を含め連戦連勝を重ねていく。特に視察として訪れた宝塚記念で怒涛の7連勝を制した。あのマイルCSや天皇賞秋を5バ身差で圧勝し、函館記念でレコード勝ちした1番人気のアキツテイオーを抑えての勝利だ。もしチヨが怪我無く出走していたら、下手したら負けていたかもしれない。
「チヨノオー」
「「!」」
やはりというべきか。ここで運よく同じく視察に来ていた
「…やっぱ考えることは一緒ですか」
「まぁそんなとこだ」
不愛想な性格は相変わらずだが、一応二冠を達成したこちらを認めているだろう。その後はなんともいえない空気で別れることになったが、話さなくてもわかる。
だがスズカの件はどうするか。
沈黙の日曜日。競馬ファンなら忘れるはずがない出来事。
ぶっちぎりで逃げていたサイレンススズカの突然のアクシデント。粉砕骨折は今も関係者ですら原因不明なのだ。願わくば、スズカには天皇賞は走らないでほしい。だがどう説明する。骨折するから走るな、と言われても気にしないだろう。それどころか俺が怪しまれる。
そして、ある日。
「…珍しい面子だな」
チヨに釣られ、久々ともいえる散歩だがこの日は違った。
「チヨノオーさんのトレーナー、本日はよろしくなの」
チヨだけでなく、他のウマ娘もいる。まず挨拶してくれたのは、逃げのアイネスフウジン。その後ろには、練習で世話になっているファインモーションとメジロマックイーン、キングヘイローがいた。
どうやら、前々から3人はある飲食店に行きたいと言っていたらしい…
いやいや、後ろに3人から連想するは超高級レストランじゃないか? 最悪、今日はスーツでドレスコード的にはOKかもしれないが、アイネスとチヨは普通のままだ。それどころか、金銭的にもヤバい気がする。
だが、その不安は案内される飲食店ですっかり吹っ飛んだ。
「ついたなの」
「え…ここ?」
そのお店は全国チェーン店でもある、どこにでもありそうな牛丼屋である。外見も内装も見たところ何もおかしいところは一切ない普通の牛丼屋さんだった。因みにたまにだがチヨと一緒に食事を奢っているのはここだけの秘密だ。こんなのに喜ぶのだろうか。
「ここの店に、ドレスコードはいるのかしら?」
「…へっ?」
チヨは呆気にとられる。そうか。そういうことか。わかったぞ。
「出てくる人達スーツ着てるよ」
「あれはただのサラリーマン…服装は自由でいいの」
「そうなんだ。さすがアイネスさん」
「頼りになるじゃない」
「なんか不安になってきたの…」
その逆だ。このお金持ちウマ娘たちに、庶民の普通のレストランは味わってもらうためだ。それで粗相させないよう俺がトレーナー目線で呼ばれたってわけね。まぁ流石に変なことは…
「4名なのですけど、案内していただけます?」
「ああ!マックイーンちゃん待った待った! 空いてる席に勝手に座っていいの」
「な…なるほど」
前言撤回。これ相当苦労する。ここまで世間知らずなことって…
「メニューいただいてもいいかしら?」
「キングヘイローさん、メニューは目の前にあるから取っていいですよ?」
今度はキングの出方をチヨが指摘する。早々に指摘されたことに顔を赤くする二人。この姿は新鮮だないいぞいいぞ。庶民派チェーン店の作法に苦しみがいい。
「みんな注文の仕方分かる?」
「私は勉強して来たから大丈夫!」
いよいよ注文の時だ。これは簡単だろ。ベルの代わりに、店員を呼んで注文するだけ。これだけのことだ。これだけのこと。
「並み…大盛り…えっと…」
「裏メニューで王者盛りっていうのもあるわよ。男の男性でも苦労する量だけど」
「まさに!キングのためにあるメニュー!」
「大丈夫ですの…?」
「困難に打ち勝ってこそ王者!名実共にいただくわ!」
それ多分オグリかスぺ専用もとい通常サイズだろうな。さて、注文だがそれよりも先にカウンターにいたリーマンに先を越されたようだ。
「ナミツユダクネギヌキタマデ」
「「「!?」」」
おぉーっと。ここで常連リーマンの注文が炸裂。庶民なら聞こえて当然だが、お嬢様たちはどうやら呪文か何かと一斉に焦りだす。
「今のは何!?」
「肉の焼き加減的なものでは…?」
「わ…わかった!私に任せて!並3丁!王者1丁!」
「それ店員さんが厨房に通すやつなの!」
「マシマシカラメ!」
「それは一部のラーメン屋さんのやつ!」
「…もう俺が全員分の注文するわ」
仕方なく、俺が全員分を注文する。予想通り、キングの分はこれでもかと大量に牛肉が盛られた特上の裏メニューだ。見るだけで胃もたれ思想だが、レースに影響出てもおかしくない量だぞ?
「これ卵はどうしますの?」
「溶いてかけるか、すき焼きみたいに浸けたりとか」
古来から、牛丼と卵の相性は抜群。この美味しさを体験しないのは勿体ない。お嬢様方は習った食べ方でその味わいを嚙み締めていた。まぁこれでどこのチェーン店に行っても自分で注文できることはいいことだろう。さて支払いだが…
「「カードで」」
「ああ!俺がまとめて払いますー!」
それみよがしに一部のお金持ちしか手に持つことできないブラックカード見せなさんなて。結局この日は、お嬢様方が納得するまで庶民は食べ歩きツアーに付き合いきりになったのであった…。因みに太り気味はギリギリ回避した。
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