チヨの幼馴染Tになれるなら、オワタ式ファイナルなんてなんぼのもんじゃい! 作:ansin
ヴェニュスパーク…
前世でウマ娘を知っている者なら、知らないはずがない。
プロジェクトL'Arcのシナリオではクラシック級凱旋門賞最大のライバルとして君臨。その時点ではパラメータが高水準にまとまっている上に、こちら側は「
最終目標のシニア級凱旋門賞に至っては、UG超え+金スキル複数持ちとチャンミも真っ青の仕上がりでトレーナーの前に立ちはだかる。しかし差し脚質の宿命か、たまにモブロックをまともに食らって掲示板外に沈んだりするのもご愛嬌。
モンジューがブロワイエの世界ならありえない話なのだが、弟子として存在している以上自然にこちらの強敵になるのは間違いないだろう。場合によってはモンジューよりも速いのだから。
「気が付いたようだな」
「!!」
また、いつもの空間だ。
いつもの三女神に呼び出された。夏休みの合宿といえど変わらない。
「また会ったな」
「貴殿は我らと契約している身、たとえ地の果てでも夢の中でもあの世でも追いかけるぞ」
物凄い執念を感じたが、神様の世界では俺を監視する以外そこまでやることがないのだろうか。
「さて、察しの良い貴殿ならもう解っていると思うが…」
次の目標はもう決まっている。G1秋の祭典「天皇賞秋」。菊花賞と同時期に開催され、クラシックだけではないシニアクラスのベテランも参戦する。ここでの勝敗が、今後のレース人生を大きく左右されるといってもおかしくない。だが…
「精々足を掬われないk「ちょっと待ってくれ」ん?」
要件を言い終え、この場から去ろうとしている三女神に俺は待ったをかける。今回ばかりは、どうしても気になることを質問しなければならなかった。
「なんだ? 貴殿から質問とは珍しいな」
「…サイレンススズカについてだ」
「「「!」」」
ここで初めて、彼女たちの顔つきが変わった。大方チヨの事とか契約についてだと思っていたが…まさか、他のウマ娘に関することだとは思ってもみなかった顔を見せた。
少なくとも俺も今やトレーナーの端くれだ。確かに担当が一番大切だが、だからといって他に目が向いてないことはない。
「聞きたいことは一つだけ。前世の事は知ってるだろ? 聞いた話では前世での結果が、この世界とリンクしているというのは本当か?」
「………………… 何が言いたい?」
俺は舌打ちする。ここまでくれば、あとは神様パワーとかで俺の思考から質問の意図を理解できるというのにどこまで鈍いのだ。
そう、
当時は、その場にいた全員が何が起こったのか理解できなかった。
一番驚いたのは紛れもなくあの人だ。突然脚を気にするような仕草からスピードダウンして、最終的にコーナーの途中で止まった。あれほど大逃げで独走していたにも関わらず。
だからこそ、自分というイレギュラーが絡んだこの世界でどうなるかを見届ける義務があるのだ。現実と同じ、いやそれ以上の
「意外だな、そこまで考えているのは余裕か?」
「論点をずらすな。俺の質問に答えろ」
真剣に問う理由はもう一つある。この世界が前世との繋がりで結果が見えているとしたら…それはひょっとしたら、
「…今の貴殿に答える必要はない」
「そんな悠長にするわけないだろ? 天皇賞までもう2か月は切ってるんだぞ…!」
露骨に逸らす辺り不信感マシマシだ。これはとことん追求してやりたいところだが…!
「こっちの質問に答えろ! まさかもう彼女に
「別のウマ娘を気にする前に己を心配しろ、以上だ」
「待ておい…!」
ふと目が覚めると、合宿所の寝室に戻っていた。
・・・
「あまり夜更かしはよくないぞ、チヨ」
「あっ」
夢から眠れないと悟った自分が海岸へ向かうと、何の因果かチヨとそこで出会った。普通ならドラマチックな展開だが、チヨの姿は普通ではなかった。その顔は今の俺と同じく、寂しい顔をしていた。
「トレーナーも、寝られないんですね」
「まぁ、変な夢で覚めちまったよ」
横いいか、と一声を了承して隣に座る。
「…アルダンの事か?」
チヨの心の中で悩み事を看過する。
メジロアルダン、チヨの同室の友でもあり
「はい…」
「そんなに心配するなよ。アルダンだって、必死に頑張っているだろ? ダービーの後でこっちが啖呵切ったのに。そんなところを見られたら笑われちまうぜ」
これからはより多くの実力者がライバルとなってくる。今更後戻りなんてできない。そこはチヨもわかっていた。ただ…
「やっぱり、スズカさんの走りは忘れられないです」
マルゼンスキーと同じ逃げを得意としているスズカに、いつの間にか自分もその魅了に引き込まれていった。今まではマルゼンスキー一筋だったが、ここからは例えどんな相手でもどんな走りをしても自分以上の存在であると感じてしまう。だがそれは向こうとて同じ。
「確かに手強い。正直、俺たちの手が通用するかどうかはわからない」
「…はい」
「だからこそぶつかる」
「!」
レースの世界は負けて終わりじゃない。それこそ、チヨがマルゼンスキーと走るのは一回きりじゃない。少なくとも、ひょっとしたらクラシック三冠で立ちはだかってくる可能性もあったのだ。結果的にはこちらにその挑む道筋に自信をもたらすことができた。
「ぶつかってぶつかって、その先の限界を俺は知りたい。その限界が何なのかを知りたい」
「トレーナー…」
その為にまず…
「毎日王冠、出てみないか?」
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