チヨの幼馴染Tになれるなら、オワタ式ファイナルなんてなんぼのもんじゃい! 作:ansin
大晦日と三が日はどうしてもPCに触れる機会が少なく、スマホでちょこちょこ更新していました。
地震やら家事やら衝撃的なスタートの新年ですが、それらに負けずこの小説を頑張って更新しようと思っている所存です。どうか応援よろしくお願いします!
8月が過ぎても、日本列島はまだまだ暑い。
合宿場の残り全ての練習を終え、これから年末の中山までのレースに向けて調整することになる。年を終えるまでの4か月、この間にとんでもんく大きいレースが目白押しだ。天皇賞秋・秋華賞・菊花賞・ジャパンカップ・有馬記念…実力者であるならばこの5レースを狙ってくる。
チヨノオーが今年狙うのは天皇賞秋、来年はジャパンカップ。それ以前に、前哨戦ともいえる毎日王冠に挑むつもりだ。毎日王冠は例年天皇賞秋やマイルチャンピオンシップ等の前哨戦として好メンバーが集まるレベルの高いレースとして知られている。
「エアグルーヴ先輩、去年の秋の天皇賞でスズカさんに勝ってますよね?」
「去年のスズカと今年のスズカはまるで別人だ…」
チヨノオーと練習している間、同場所で練習に励んでいるリギルのメンバーの声が聞こえた。同じく参戦するエルコンドルパサーが質問をするが、珍しく弱気になっているエアグルーヴ。それほどまでにサイレンススズカは脅威とも言っていい、彼女かごく僅かな逃げウマ娘しか許されない作戦"大逃げ"があるのだから…
さて、いよいよメンバーが発表されたわけだが。
……………………………。
「おいおいおい、なんなんだよ今年の毎日王冠は…」
2番 サイレンススズカ
4番 エルコンドルパサー
6番 グラスワンダー
8番 オグリキャップ
9番 サクラチヨノオー
……これ事実上、天皇賞オールスターなのではと錯覚してしまうほどの豪華メンバーだ。いやアニメでも本来なら同時対決なんて有り得なかったナイスネイチャやエイシンフラッシュ、メジロライアンといい勝負なんじゃないか?
しかも事もあろうに、それ以上に怪物であるオグリキャップも参加するというのだ。史実よりも明らかに豪華すぎる出走メンバーに度肝を抜く。大外に選ばれてスタートは不利かもしれないが…そんな不安を抱えながらのレース当日。
『今年の毎日王冠はGⅡとしては、異例の大観衆で溢れかえっております!』
『注目はチームスピカのサイレンススズカですね。スピカは今絶好調ですから、チームリギルや他も黙ってはいられませんよ』
当日は本当に混雑した。これはG2レース、最高峰のG1より一つ下だというのに…明らかにG1の集まり並みに多くの観客が会場に集まっていた。観客だけでなく報道陣も、通常の記者会見以上に多く集まっている。
『さぁ、展開は分かり切っております!注目は、有力ウマ娘4人がサイレンススズカについていけるのかどうか!』
アナウンス通り、今回の作戦は大逃げのスズカにどこまで詰め寄れるかがポイントだ。スズカの性格上、後ろなんて気にせず前だけを見て走る。それこそ後ろを置いてけぼりにするほどに、周りのことを一切気にしないのがスタンスだ。
そのスタンスに目を付けた。周りを気にせず走れるのは、
「トレーナー、いってきます!」
「あぁ、行ってこい!」
ゲートに向かうチヨの背中を見て息をのむ。これまでなんとか無敗を貫いていたが、今度こそはと今この瞬間に何度も思った。いや、それでもいい。チヨはこんなところで終わるウマ娘ではない。そもそもダービーを過ぎた時点で走っているこの事象は自分にとって未知との遭遇だ。
『ゲートが開き、各ウマ娘がスタートしました!!』
一瞬の静まりから、ゲートが放たれる音。その瞬間、G1レースかと錯覚しそうな巨大な歓声がレース場を支配した。その一瞬に驚いて僅かにスタートが出遅れた娘もいたくらいに。
『先頭を走るのは当然サイレンススズカ! 続くオグリキャップ、サクラチヨノオーがサイレンススズカをマーク!エルコンドルパサーも控えている!』
状況は予想通り、スズカが圧倒的に離し後続がそれを追いかける展開となった。
『さぁどこで仕掛けるのか! 5馬身差で逃げるサイレンススズカ!』
ここで驚いたのは、グラスワンダーが差し勝負をしていることだ。この時点で3人集団が前後二つ形成されているわけだが、先行策であるならばチヨの様に前集団が定石だろう。そして、レースはもう大ケヤキのところまできた。
依然として先頭はスズカ、そこにチヨとエルとオグリが続いている状態。しかし、スズカの大逃げに集中しすぎたせいなのかいつにも増してチヨの表情が険しかった。ゴール前のストレート、サイレンススズカの独壇場。チヨに続いてオグリも、ゴールに近づいていくと同時にエルコンドルパサーもジリジリ離される。
『サイレンススズカだ!サイレンススズカだ! 二番手のエルコンドルパサーも離れている! 他のウマ娘も5バ身ほど大きく差が開き苦しい!!』
…もうダメだ。あそこまで差が開いたら、逆転なんてできない。
自分の担当が、今まで突き放していったモブのように置いて行かれた。ワンチャンス、もしかしたら大逃げに対応できるかと思った。だが現実は、そこまで甘くはなかった…。
『異次元の逃亡者、サイレンススズカ! 今1着でゴール!!!』
・・・
1着 サイレンススズカ
>2バ身
2着 エルコンドルパサー
>4バ身
3着 オグリキャップ
>クビ
4着 サクラチヨノオー
>クビ
5着 グラスワンダー
ゴール板を死ぬ気で駆け抜け、振り返ってこのような掲示板を見た絶望は、二度と忘れないかもしれない。
初めての
最終コーナー、ここで勝負を仕掛けようとしても…一番警戒していたスズカさんは全くスピードを殺すことなく駆け抜けていった。
どれ程足に力を貯めても、爆発的なパワーで地を蹴っても…いや、それはオグリさんもエルさんもグラスさんも思っていたことだった。自分たちとは真逆。一つ地を蹴った後は、まるで雲の上を走っているような軽い足取りで逃げて行った。
そこからは彼女のステージ、そこにたどり着くこそすら許されなかった。
出し切っても、初めての負け。トレーナー、がっかりしているだろうなぁ。
せっかくここまでものすごくいいペースで勝ち星を挙げてきたのに…
「お疲れさん、よく走ったよ」
そう言いながら、自分の顔に向かってタオルを投げつけられる。
「お互いに上を思い知ったな。俺もお前も…いい勉強になったな」
「うっ…ぐすっ…」
「チヨちゃん、よしよし」
トレーナーの意図はここで理解した。自分の恥ずかしいなく姿を見られたくないがためにタオルを投げてくれたこと、すかさずアキュートさんが近づいて頭を撫でられたこと。
しかし、まだ終わったわけじゃない。
スズカさんや他のライバルの実力というのが少しは分かったかもしれない。今回の体験を元に、次の天皇賞でリベンジを果たそうと知らぬ内に自分の心の灯が燃え上がっていた。
だが…ダービーと同じような衝撃が、ライブ後に発生してしまった。
「スズカ、お前、脚を病院で診てもらえ」
トレーナーがスピカの皆さんに近づき、その一言を言い放ったのです。
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