チヨの幼馴染Tになれるなら、オワタ式ファイナルなんてなんぼのもんじゃい! 作:ansin
アンケートで応募したトレーニングをやります。どうぞ。
「チヨノオーさん、年末って何か用事はありますか?」
世間は既に秋を過ぎ去り、冬に入ろうとしている。これから年末年始、果ては新年に向けて各々は準備をしている。そんな中、アグネスデジタルさんが話しかけてきた。
「デジタルさん、どうしたんですか?」
「"お祭り"があるんですけど、よければ一緒にどうでしょうか?」
どうやら何かの祭りとやらに誘おうと声をかけてくれたよう。この時期といえば、色々なイベントが存在する。その中でもクリスマスや年末年始、ウマ娘のレースといえば有馬記念とかだろうか。その他にも、例えば雪の降る地方であるならば雪まつりなんてのもある。
チヨノオー自身、今までこういった経験はそこまでといっていいほどなかった。あるとするならば実家でクリスマスパーティーか、そのまま新年で過ごすことが多かった。アルダンさんからはメジロ家関係で事ある毎に何度かパーティーに誘われたことがあったけど、メジロ家が異常なのである。
「暮れのお祭りですか…?」
「えぇ!すごく楽しみですとも!」
「デジタル、何チヨに半分噓の勧誘をしているんだ?」
「ドキッ!」
「トレーナー」
そうこう話していると、トレーナーさんが向こうから声をかけてくれた。それにしてもさっきの言葉はどういうことだろうとチヨは首を傾げる。
「危なかったなチヨ。デジタルの言葉を翻訳すると、コミックマーケット売り場&買い出し要員の勧誘だったんだぞ?」
コミックマーケット。通称コミケ。
コミックマーケット準備会が主催する世界最大の同人誌即売会であり、その歴史は70年代後半から始まって実に100回を超えている。コミックマーケットは回を重ねるごとに大規模化し、それに伴い世間一般にもその存在が知られた。今ではサークル参加者数は約3万5000スペース、一般参加者数は60万人にも参加しており世界からも興味を持ったオタクたちがこの日のために日本を訪れるほどだ。
「ウソではありません!祭りは祭りなんですよ!」
確かに年に2回のオタク達による祭典。参加者が多くいるがゆえに、一度くらいは興味を持つだろう。
だが一度でも参加した者は、口を揃えて言う。
あれは祭りではない。戦争なのだと。
年に2回、お盆休みと年末…東京ビッグサイトはその時は戦場と化すのだ。
今では国内のみならず海外からも注目を集めており、一般だけでなくメーカーなどの企業もユーザーが興味を引いてくれて、売り上げも伸ばしてくれる格好のイベントなのだ。駅前のコンビニ店員さんの根性なんてそれこそアスリートクラスと称されるほどの…
物事を迅速に対応するスピード。
終了まで維持できるスタミナ。
人ごみに抗えるパワー。
狙った宝物を逃さない根性。
計画的に物事を進める賢さ。
全ての能力を発揮しなければ、敗残兵はたちまち地に伏せてしまう。
「コミケっていうんですよね?…実は、前々から、興味、あったり…?」
「マジなのか? 言っておくが、かなり疲れるイベントだぞ本気で。参加するのだったら、相当気合い入れないと大変なことになるんだぞ? 少なくとも、正月は寝正月になるほど休息する羽目になるからな」
「そ、そこまでなのですかデジタルさん?」
「えっ!?ま、まぁそんな感じだったり…」
「初心者に真実を濁すのは余計に悪いぞデジタル。個人的な見解だが、長距離レースをするくらいは疲れる」
「!…というか、トレーナーも?」
「そういった
『(自分から何回か行ったことは黙っておこう。…そういえば、チヨがデビューして忙しくなってからは行っていないな…)』
そういえば、それ関連でたづなさんから何かしらの依頼を思い出した唯我。当然これは彼女らを守るための仕事なので、放置するわけにもいかない。
基本、コミケで売られているものは多岐に渡る。メーカーからは限定グッズや再販がほとんど。対する一般はガイドラインに沿った二次創作のグッズやアニメやゲームの同人誌だ。最も厄介なのは同人誌だ。いくらガイドラインに沿っているからと言っても…
「だが確かに、最近の二次創作関連を調べるのは賛成だな。たづなさんからも言われたが、この手の処理は早めにしたほうがいい」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ。同人誌っていうのはほとんどが作者の空想や妄想だ。そんなガイドラインに従っていない奴も当然いる。よく考えてみろ…自分のあられもないアニメ画像だったりどっかの誰かとカップリングする薄い本なんて出されたら…」
「!!!」
その瞬間、チヨの脳内は桃源郷のように広がっただろう。
『えっ? カップリング? 誰とですか? ヤエノさん?アルダンさん? も、もしかしてマルゼンさんとですか!? こ、これが百合と言うもの…でもこういうのもグヘへ』
「おーい妄想から戻ってこいチヨー」
「ハッ! で、でも!たまにはこういうイベントに参加してもいいかなーって思っていたんです! 自分の中での興味を広げるいいきっかけになれると思いますし!」
デジタルも言っていたが、こういう祭りは一人では大変だ。それに皆と行動して楽しむのもイベントの醍醐味だ。
「…わかったよ。普段の練習に影響が出ないよう、スケジュールを調整するよ。ただし無理はしないこと、いいな?」
年末、チーム《レグルス》の初めてのコミケトレーニングが決まったのである。
~当日~
「こ、これが。コミケですか…!」
「おやまぁ。人多いねぇ、電車の中でもおしくらまんじゅうで」
「だから言ったろ、すげえ疲れるイベントだって…」
この苦難といえるイベントは会場に入る前から始まっている。
まずは公共交通機関である電車はほとんどがおしくらまんじゅう、すし詰め状態でこの時点でいくらウマ娘でも少しは体力を減らされた。例え朝練で早く起きられたとしても、歴戦の猛者は始発から平気なのである。そこから会場に到着するや否や、その人の多さに二人は驚愕していた。そこで、なんとか合流できたデジタルから説明を受ける。
「でわでわ、今のうちに分担を説明しておきましょう」
「「分担?」」
そう言って、デジタルは二人に会場の地図をそれぞれ手渡す。しかしただの地図ではない。そこには各サークルの事や販売している同人誌、そこまでの道しるべやルートが事細かく書かれた。
「一旦解散してこの地図の通りにサークルを回ってください。チヨノオーさんとアキュートさんは東の1~3、トレーナーさんは4~6を回ってください。ただし気を付けてください、この赤ペンのルートを通らないと壁サークルに分断されて身動きが取れなくなりますし…」
「お前って、こういう時に限って知性と情熱を発揮するんだな…」
そんなこんなでデジタルからありがたい注意事項を聞いていると…
「只今より、コミックマーケットを開催いたします」
アナウンスと会場からの割れんばかりの拍手は、戦闘開始の合図だった。
「走らないでください!!」
「新刊の購入は一人3冊までとさせていただきます!!」
「限定グッズは完売しました!!」
会場に入るや否や、唯我は兎も角初参加の二人は驚くばかりだ。なんとか自分を落ち着かせようと、邪魔にならないところで買い物するリストと睨めっこするが、怒号も飛び交う戦場であたふたする。客観的に見れば、二人は本人だとバレないよう変装していることもあってコミケ初心者にしか見えないのは僥倖か。
対する唯我は買い物と同時に、二人の尊厳が失っていないかとパトロールを開始する。主にデジタルが判別したサークルの内容を参考に密かにチェックする。この辺りはURA本部でも厳しく審査しているので、大会本部も協力しているだろう。一方のチヨは…
「あぁ、すみません…!私むこうにっ…!!」
『突然とても強い人の波に飲まれ、身動き取れなくなってしまうことがあります。波に身を任せたら最後。もう元の場所には戻れません』
またある時は…
「トイレ、多いなぁ…」
『欲しい新刊を求めて限界まで我慢した後にあのトイレの列に並ぶ、なんて考えだだけでも恐ろしい。漏らしてしまえば戦場で撃たれたも同然。皆様にはぜひ生きて帰ってきてほしいので、早めにトイレに行ってください』
数時間後…
「すみませんトレーナー…さっき、やっと西館ってところから帰ってきたんです。その間にトイレに行こうとしたら余計に時間がぁ…」
「まぁよくここまで生還できたものだし、及第点はなんとか超えたな。午後は皆で色んな所をゆっくり見て回ろうよ」
チヨの疲れている姿を見て、何があったのか一目で察せる。
参加者の動きに流されたまま西館に辿り着いてしまい、仕方ないからメーカーさんから買おうとしたら早朝組で既に全滅。我慢ができなくなり、途中で寄ったトイレが最悪のタイミングだった。
「というか、アキュートさんは…平気なんですね…」
「………おやまぁ。」
「…アキュートさん?」
「そのままそっとさせておけチヨ」
「は、はい??」
初コミケトレーニング、失敗?
キタサン「祭りですか!?行きます!」
唯我「お前は座っとれ」
やっているのを見たい奇妙なトレーニング方法は?
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