目が覚めるとベッドの上だった。外は暗くすっかり夜になってしまったらしい
傍らには椅子に座ったブリットが船を漕いでいた
……あれ? 何で俺寝てんだ?
確かどうやってかは知らないけどラ○トセ○バーでトロルを倒して……あの後気を失ったのか
あの時は体が勝手に動いたようだったな。俺の意思には関係なく。もしかしてラ○トセ○バーの力か?
「む……ん? お、ナナ起きたのか」
ボキボキと全身を鳴らすブリット。かなり凝ってるみたいだ
「なあ。俺どれくらい寝てたんだ?」
「そんなに長い間は寝ていないぞ。さっき日が落ちたばかりだ」
トロルに襲われた時点で夕方だったから……確かに長い間気絶していたわけではないようだ
「ブリットが此処まで運んでくれたのか?」
「手が空いてる奴が俺しかいなくてな」
肩をすくめてブリットは答えた。ただ泊まるだけとは言え色々作業があったのだろう。雑用を手伝うという約束で便乗させて貰っているのに初日から反故にするのは問題があるのではないだろうか……
それにブリットだって疲れているはずだし
「……手間取らせて悪いな……」
体を起こし頭を下げる。申し訳ない気持ちで一杯だった
「戦いなれてもいない奴がトロルに襲われたら気絶するのも仕方ない。生き延びただけでも誉められる事さ。気にするなよ」
そう言うとブリットは俺の頭を撫で始めた。人に撫でられるのは久々なような気がする。元の世界ではそれなりの年齢だったのだろうか
「そうだ。スナフが気がついたら会いに来て欲しいと言ってたぞ。立てるか?」
そうだ! スナフさんにも謝らなければ。急いでベッドから出る……何か体が重く感じる。危険な目にもあったわけだし疲れているんだろう
「大丈夫。スナフさんは何処に?」
「案内しよう。俺も聞きたい事がある」
ラ○トセ○バー擬きの事か。聞いた所で何も答えられないんだけど
スナフさんはこの宿の一番奥まった部屋にいた
「やあ。ナナさん。気付いたようですね」
「スナフさん! すいませんでした! 働かなければならないときに眠ってしまって……本当にすいません!」
全力で謝罪する。スナフさんはちょっと驚いたようだったが直ぐに笑い出した
「ハハハ……生真面目な方ですね。謝る必要はありませんよ。貴女がトロルを倒してくれなければ少なからず被害は出ていたでしょうし」
良かった……特に気にしている様子はないようだ
怒っていないとすると何の用事なんだろうか。他に思い当たる節は一つしかない
「ナナさん。貴女の持っている武器についてお聞きしたい事があるのですが」
やはりラ○トセ○バー擬きの事だったか。しかし答えられる情報なんてないぞ
「あれは拾った物なので……詳しい事は分からないんです」
「拾った? 何処で拾ったのですか?」
「ゾーリンさんの村近くの森の中です」
そう言うとスナフさんは考え込み始めた。もしかするとラ○トセ○バー擬きについて何か知っているのかもしれない
「あの……私はあの剣について何も知らないんです。何か知っているのなら教えていただけませんか?」
正直に言うとスナフさんは頷いて口を開いた
「あれは光魔剣と呼ばれる物です。今から700年程前に開発された武器ですが現在は使われていません」
使われてないって何か問題でもあるんだろうか? あるんだろうな
「特殊な武器で扱い難かったようです。扱いに関して詳しい事はブリットから聞いてください」
そう言えばラ○トセ○バーも扱いづらいという設定があったな。確か……
「光魔剣は刀身が炎の魔力で構成されていてな普通の剣より切断力は高い。重さも柄の分しかなくてな、その特性上力の無い人間でも問題なく戦えたんだが……軽過ぎるせいで刃があるって実感を持ちづらい。扱いに慣れてない奴が自分を傷つけちまうことがよくあったらしいんだ」
長所は短所にもなるという事か。成る程、普通の剣とも違う感覚が必要になるだろうし剣に慣れている兵士等からも評判が悪かったのかも知れないな
「……しかしお前良く使えたな」
そんな剣俺に使いこなせる訳がないのはブリットも分かっているのだろう。訝しげな表情だ
「いや……何というか……体が勝手に動いたんだ」
「自分で倒したって感覚が無かったみたいだからな……どうなってんだ」
俺が聞きたいくらいだ。ラ○トセ○バーもとい光魔剣(そのまんまなネーミングだよな)の力だと思っていたが……違うのか
「光魔剣はまだ分かっていない部分もあるそうです。調べてみては如何でしょうか」
調べるといってもどうすりゃいいのか
「レガの街……これからナナさんが行く街はこの地域では2番目に大きな街です。図書館もありますし魔法使いも住んでいますから得る物はあるでしょう」
そんなに大きな街なのか。でも図書館か……でも俺は文字を読めるかな。言葉は理解出来ていたが
「おいおいスナフ。ナナが本を読めなかったら意味ないだろう?」
「そうだな。ナナさん、このリスト、読めますか?」
スナフさんから紙切れを受け取り目を通す……おおっ! 読めるぞ! 初めて見る文字なのに!
「えと……リング豆、トロ芋、ジャング、ハモン……読めてます」
良かった。これなら本が読める。もしかしたら帰る方法も探せるかもしれない
「……読めてます……か。良かったです。疲れているでしょうし今日はもう休んだ方がいいでしょう」
「は、はい!? お休みなさいスナフさん、ブリット」
スナフさんとブリットが真剣な表情をしている。なんだ? 何か変な事を言ったか?
退室してから気付いた。読めてますって言い方はしはおかしかったな……と。まあ、後の祭りなんだけど