野宿から2日後の昼辺り、遠くに壁が見えた。モンスターや獣を避ける為の備えだろうか
「ブリット! あれが、レガの街か!?」
ブリットの腕を引っ張り壁を指さす、予定では今日レガの街に着くはずだった
「はしゃぐな。全く、疲れてるかと思ったら心配は要らないようだな……お前の言う通りあれがレガの街だ」
壁は目算で10M程の高さだ。壁の向こうには建物も幾つか見える、確かに大きな規模の街のようだ
「凄いな、広そうだなあ」
ワクワクしてくる、色々不安はあるはずだが今は忘れていた
「街に着いたらお別れだな、道中楽しかったぜ」
「あ……そうか」
ブリットの言葉で一気に現実に引き戻された。そうだ、コイツともお別れなんだっけ
「つってもリューオン商会の本店がレガの街にあるからな、その気になれば何時でも会えるが」
ずっこけた。なんだ、会えなくなるわけじゃないのか
「ククク……なんだ? 俺と別れるのがそんなに寂しいか?」
奴は楽しそうに笑っている。何時もからかわれている俺からすれば腹立たしい事この上ない
「そんな訳あるかっ!」
だから意地を張って否定しておいた、まあ、ブリットからすれば俺の心の内なんて手に取るように分かるんだろうけど
「停まれ」
街に出入り口である立派な門の前で鎧を身に付けた男達に制止を呼び掛けられた
「荷物に禁制の品が入っていないか点検をするんだ。結構時間がかかるから少し休めるぞ」
なんだ、スンナリ入れるわけじゃないのか
「禁制の品って何があるんだ?」
「幻覚作用を引き起こすコーグという植物やニワノコという鶏卵に良く似た魔物等がある」
卵に似たモンスターなんているのか、少し見てみたい気もする
「ニワノコは非常に凶暴でな、特に噛む力が非常に強い。お前の細い体じゃ一瞬で噛み砕かれるぞ」
俺の考えを察したのか割と真剣な表情で釘を指すブリット。結構恐ろしい生物だなニワノコ
「分かったよ。見掛けても遠くから眺めるだけにする」
「それがいいな」
まだ点検には時間がかかるみたいだ。何時もの休憩だと何かやることがあるのだけど今は完全にフリーなわけで
「暇だなあ」
ソラプスは車に繋がっているからアイツらと遊ぶ事は出来ない。ブリットともそうだけどソラプスとも一応お別れするのだからもう一度くらい遊びたんだけどな
ブリットもスナフさんに呼ばれたらしく慌てて車の方に走っていった
所在なく座り込んでいると視線がゴーレム犬を捉えた
近付いてみる、ゴーレム犬も俺に気がついたようだが特に逃げる気配はない
手を叩いてみると俺の方に歩み寄ってくる。コイツも暇を持て余してたようだ
「よしよし」
頭を撫でてみる。滑らかな手触りだ
ゴーレム犬はフンフンと鼻を慣らしながら体を擦り付ける。かなり人懐っこい奴だ。元々人が生み出した生物なわけだから当然なのかも知れない
「お前ずーーーっと! 一匹で居たのか? そりゃ寂しかったろう」
頭を撫でてやると尻尾を千切れんばかりに振り回しすゴーレム犬。体が石で出来てるだけで行動は犬と何も変わらないのか
「俺が遊んでやるからな」
その辺に落ちてた手頃な石を遠くに投げる。ゴーレム犬は一目散に駆け出し石を拾ってきた
「よし、いい子だなお前」
誉めて誉めてと言わんばかりに俺を見上げるゴーレム犬。ヤバい、可愛いぞコイツ
「俺が自分の家持ってたら連れて行けるんだけどなあ……」
家どころか食い扶持を稼ぐすべすら無い今の俺には無理な話しか
よし、何時か家を手に入れたらコイツを絶対連れて行こう
そう決意してると遠くから声を掛けられた
「おーい! そろそろ終わるから戻って来い!」
「分かった! なあ、ゴーレム、また、遊びに来るから……な? ごめんな甲斐性ない奴で……」
甘えた声で鳴くゴーレム犬を宥め俺はキャラバンの列に戻る。名残惜しさを感じ振り返るとゴーレム犬はもう居なかった