このヒロインにもルートを!※更新停止※   作:来世から本気をだす

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7話、交渉

 

昼間、俺たちは村長宅へ訪れ客間で交渉を進めていた。

 

「見たこともない魔道具の数々・・・想像以上じゃ」

 

ゆったりとした雰囲気を漂わせる。近所の優しいご老人の様な村長は対面のソファーに座り一枚一枚カタログと資料を読んでいく。

 

記憶を失う前の俺に感謝だな。

昨夜。ドレインタッチを食らった後、交渉の攻め口となるネタはないかと考えた。

 

そこで俺はウィズ魔道具店の取り扱っているバラエティ豊かな品に目をつけた。

 

部屋の隅に置かれていた、ウィズの私物の山と思っていた物。

その大半が本来、店に置かれるはずだった商品だったのだ。

 

明らかに店に置く物の選択を間違えている。

 

「かき氷じゃなく、こっちの品を店に置け!」と言いたい気持ちをこらえて、昨夜は呆れながら寝ずに商品を吟味した。

 

 

「お隣にいるお嬢さんより建設的な話ができそうじゃのう」

 

「まだまだ、これらはほんの一部でして村長様のご期待に応えれるものを、ご用意させていただきます」

 

「頼もしい限りじゃ、君となら野菜の取引をしても良いかもしれん」

 

手元の資料から俺に視線を移し笑みをうかべる村長

 

 

 

「ありがとうございます!」

 

なんとか商才アリとして認めて貰えたようだ。

それに対して隣で商才なしと遠回しに言われ落ち込むウィズ。

 

「取引が初めてのカズマさんに負けるなんて…」

 

俺は横目で彼女を見る。

落ち込むウィズには悪いが店の商品を交渉材料にした時点で俺は勝ちを確信していた。

 

多種多様な商品を考案していた記憶を失う前の俺に感謝だな。

 

営業がてらに聞き込みをした際、サムイド―は野菜の畜産を中心として生活していると耳にしていた。

 

その情報を元に農業関連をピックアップしておいたのだ。

 

そのおかげで村長さんを食いつかせる事に成功した。

 

今、村長さんが見てるのも記憶を失う前に俺が案を出し、商品化させていたビニールハウスなどの農業関連のカタログ。

 

前の俺のおかげで交渉に出せる手札が沢山ある。

 

村長は資料を食い入るように眺める。

 

 

(・・・まあ、商品が無くても多少、自信はあったがな)

 

俺には妙な自信があった。

 

あの雪平原の時から妙に頭が冴えるのだ。

不思議だが思いだしたい事を思いだせる。

 

おかげでバイトの為に本屋でチラ見したビジネス書籍やドラマなどの役者を参考にしている。

 

今やっている交渉は所詮、役者の猿真似でしかないのだが、至らない部分を本の知識で補強してるので、それなりの商人として完成度が高いと思う。

 

しかし・・・俺って、こんな記憶力良かったか?

 

俺が首を傾げていると村長は資料を指さしながら問いかけてくる。

 

「カズマさんとやら。このビニールハウスは、なぜ二重にしておるのじゃ?暖は魔道具で作るわけじゃし・・・こちらの資料に載っている一枚張りとの差異がよくわからんのだが・・・」

 

「そちらはですね、室内の保温効果を上げるために・・・」

 

腑に落ちないが今はそんな事は後回しだ。

こんな知識も、昔遊びに行った近所の農家のおっちゃんが語った世間話のようなウンチク。

 

だが、今は使える。

 

利用できるものは何でも使って・・・

 

(そういえば、俺をひいたトラックのヤ○ザって、おっちゃんに似てるような・・・)

 

いや・・・車のライトが眩しかったし見間違いだろう。

 

「どうしたのじゃ?急に黙ってしまったが・・・なにかあったかのう?」

「あ、いえいえ。なんでも、ありません!」

 

ダメだ!ダメだ!

 

今は交渉に集中しないと・・・

 

それに予想外な嬉しい事も起きだ。もっと気合いを入れるんだ。

俺は今一度、営業スマイルを作り直し村長に話す。

 

 

「しかし、私どもの商品に前々から興味がおありとは嬉しい限りです」

 

 

村長は元々、ウィズ魔道具店と取引に前向きだったのだ。

 

「なに村の若いのが時々、アクセルに野菜を売りに行くのでな。元々、そなたらに取引を持ち掛ける予定じゃったのだが・・・お隣のお嬢さんではのう・・・」

 

やさしい憐みの視線をむける村長

 

「・・・そちらに関しては今後、私が教育していきます」

「ひ、ひどいです!?私が店長なんですよ!」

 

 

「「はぁ・・・」」

 

 

俺と村長の深いため息が部屋に染みわたる。

このため息もあの交渉を見た後だと深みが増す。

 

俺は最初、ウィズに交渉を任せた。

俺自身がウィズの交渉能力に気になったからだ。

 

 

内容は残念に尽きる

 

 

ウィズは村長と交渉を始めてすぐ、大した策もなしに野菜の案件に乗りだしたのだ。

 

横で聞いていれば、まず野菜を褒め「この美味しさを多くの人に広めたい!」と夢を語る。

 

どのように売っていくなど建設的な会話もなく値段交渉も村長の言い値で済ませようとしてる始末。

 

カモだ。

 

詐欺師が今のウィズような人から金をふんだくるのは、よくある状況だが、これはそれを超える。

 

自ら詐欺られに行っている。

カモがネギを背負って鍋に入りに来てる状態だ。

 

予想だが、今まで提示した値段をそのまま呑んで相当ボッタくられたのではなかろうか?

 

そんなカモネギなウィズの交渉でも、村長は野菜を褒められて嬉しかったのだろう。

村長からすれば言い値で交渉できる、これほど美味しい状況はないはずなのだが今回含め、2度も断っている。

 

野菜を褒めてくれたウィズと取引したいが、商人としての頼りなさが邪魔をしていると見てわかる。

 

 

(純粋にウィズを心配してくれたのだろな)

 

 

断り方も未熟な孫をあやす様ように、やんわりと優しく断るもんだから俺は恥ずかしくて顔が赤くなってしまった。

 

先日の「商才を見せろ」と言うのもウィズに商人として成長して貰ってから改めて交渉しようと言う親心ではなかろうか?

 

俺の見立てでしかないが、この村長かなり良い人だ。

 

 

「お心遣い誠に感謝します。これでも彼女なりの本気でして・・・」

 

しょぼくれてるウィズを横目でみながら精一杯のお辞儀をする。

 

「うむ。儂も、それを理解しているからこそ君たちに売りたいのだ。」

 

先ほどよりも真剣に真っすぐと俺たちを見てくる村長。

 

よかった・・・

 

俺は内心で「ホッ・・・」っと息を吐く

 

このまま交渉を続ければ上手くまとまりそうだ。

村長は渡した資料の続きが気になるのか再び資料とにらめっこを始めている。

 

一息つける余裕が生まれてきたので周囲を見渡すと、ウィズは自分の膝で密かに「の」を書いている。

 

顔には出してないが、俺と村長のやりとりで結構、やさぐれてしまったようだ。

 

 

(ちょっとフォローしてやるか・・・)

 

 

俺は身体をよせ、ウィズだけ聞こえる様に、耳元でこっそりと

 

「ウィズ、良かったじゃないか。交渉は上手くいきそうだぞ。」

「何も役に立つ事がで出来ませんでした・・・」

 

小さく「ははっ・・・」と乾いた笑いを見せてくる。

こんな小さな所作も可愛いのは罪だぜ、ウィズ・・・

 

俺はフッと小さく笑う。

 

「熱意は伝わっているぞ。この場を作ったのはウィズの野菜に対する熱意のおかげだぜ」

 

「・・・カズマさん」

 

少し瞳が潤んで、こちらを向いてくるウィズ

フォローは上手くいったかな?

 

確かに野菜に対する熱意以外はダメダメだったが、この村長みたいなタイプは「熱意」が一番重要だ。

 

回りくどいやり方をしていたら一度目の交渉でウィズに、わざわざチャンスを与えるような事はしない。

 

横目で見る俺を、見つめるウィズ。

 

「・・・ふん、若いのう。」

 

「「えっ?」」

 

突然、資料を見たまま声を発してきた村長はチラッと視線を俺達に向ける。

 

 

「おぬしらは夫婦か?」

 

 

「えっ、そう見えます!?実は『カズマさんと、そんな関係じゃありません!!』はぁ・・・はい、ワタクシは、ただの従業員です。」

 

そんなに強く否定しなくても、いいじゃないか・・・

俺の心は、ただいまゲリラ豪雨が吹き荒れております。

 

 

(泣きたい・・・)

 

 

「ははっ、照れんでいい!・・・そうか、色恋沙汰など田舎のジジイが口を挟むもんではないな」

 

「村長さん!私は!その・・あの・・・あ~もう!!」

 

村長の茶化しを顔を真っ赤にして否定しているウィズ。

 

このパターン。

数十とやったゲームだったら、ウィズの照れ隠しだと思うんだが・・・

 

リアルの女性の感情ってマジでわかんねぇ・・・

 

モノローグ。

 

(ウィズのモノローグを俺に見せてくれ!!)

 

ゲームだったら彼女の下の方に(・・・)が出てくんじゃん!

 

不親切設計すぎるんだよ。

 

アクア(神)の馬鹿野郎!!

 

(はぁ~!?私のせいにするんじゃないわよ。エリスに文句いいなさい!!)

 

・・・はぁ。

 

ウィズのモノローグは目を凝らしても見えないのに一瞬、馬鹿のモノローグが見えた気がする。

 

交渉の疲れで幻覚が見えたんだろう・・・

 

ここに来てから俺の頭は何処か、おかしい気がする・・・

 

馬鹿のせいで俺は、コメカミを押さえて悩んでいると村長は

 

「いつもなら彼女の様な心意気がしれただけで断ることもないのだが・・・今年は野菜の数が限られていのう。失敗しても追加を渡す事ができないのじゃ。ぜひとも成功してもらって今後、君たちと良い関係を構築したい」

 

どお言う事だろうか?

 

頼みに来たのは俺達の方なのだが、逆に頼まれているような流れ。

 

野菜の取引以外に村長には何か考えがあるのだろうか?

 

俺が不思議に思っていると

 

 

ドン!ドン!ドン!!

 

 

玄関の扉が壊れるんじゃないかと思うほど戸が叩かれる。

 

村長は、どこか知っていたように憂鬱な表情で足取り重く玄関口に向かっていく

 

「ソンチョー!!これを見て、カエルが!」

 

「・・・やはり来たか」

 

あれは・・・写真か?

子供が何枚かの写真を村長に見せながらわーわーと叫ぶ。

 

そんな飛び込んで来た子供をウィズは知ってる様子だ。

 

そして、慌てた子供が来ることを最初から知っていたかのように落ち着き。

 

悲痛な表情を浮かべる。

 

「急いで他の村人にも知らせてくるのじゃ」

 

「わ、わかった!」

 

戸も閉めず走り去っていく子供。

村長は席に戻っると、神妙な面持ちで俺達に向かって告げる

 

「ウィズ殿は昔、高位の冒険者だと聞いている。テレポートを使えるかね?」

 

「はい。使えますが・・・」

 

「最悪の事態は避けそうだな・・・一つお願いを聞いてはくれないだろうか?もちろん対価は払う。」

 

ウィズは村長の重い雰囲気に負けてたじろぐ。俺も言葉の意味が読み取れない。

 

余程、重大な何かだとは思ったが・・・

 

そして村長の発言は俺達の予想を遙かに上回るものだった。

 

「儂らの野菜を譲ろう。代わりにサムイドーの民を全員、アクセルに送ってはくれないか?なにせ・・・」

 

 

『この村は、もうすぐ滅びるのでな』

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