このヒロインにもルートを!※更新停止※   作:来世から本気をだす

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10話、君のためなら

 

「これだけの魔法陣を数分で描けるなんて流石ウィズだな」

繊細な魔法陣に驚嘆するカズマ。

ウィズは軽くカズマに苦笑する。

「村人全員ですからね。多少の細工はしないと詠唱だけではキビシくて」

雪の積もった畑に描かれた魔法陣。

村人全員が荷を持っても余裕を持って入れるほどの大きさをした円の中央に黒いローブを羽織ったウィズがいた。

魔力を滾らせ体からこぼれ出す魔力光。

その姿は先ほどまでの頼りなさそうな雰囲気はなく神秘を纏った妖精のようである。

 

 

ウィズは目をわずかに開き半眼で村人を眺めた。

両手を広げると神々しく光りだす魔法陣は血脈の如く脈動する。

「…準備が整いました。カズマさん村の人たちが円の外に出ていないか見てきてくれませんか?」

「おう!任せろ」

カズマは村人たちをかき分けて突き進んでいく。

ウィズはさらに魔力を滾らせると陣はより強く輝きだす。

その圧巻の光景に村人の多くは息をのんだ。

「なまら凄いぞウィズ!かき氷を売っているウィズとは別人みたいだ」

「ぐっっっふっ!?」

よろめくウィズ。

目を輝かせながら言い放つミーアの言葉で魔法陣の光が消散する。

子供の純粋無垢な感想と言うのは残酷だ。

「だめですよミーアちゃん、そのことウィズさんは気にしているんですから」

ミーアに向かって人差し指を口の前に立てるエイミー。

その言葉に村人たちも皆、軽く頷いているのが余計にウィズの心をえぐる。

ウィズはプルプルと震え若干涙目になりながらも声を張り上げる。

「みなさん、行きますよ!!」

 

再び脈動し始める魔法陣。

包み込むように光が村人の周りを回り始める。

「これからアクセルの正門前にテレポートします。慌てずに門番さんの指示に従ってください」

村人にウィズの目つきはさらに鋭さを増し、右手を天に向けた。

 

「・・・ミーアさん、カズマさんに伝言をお願いします。」

「へっ?」

突然の頼みにウィズの顔をみると、先ほどまでの力強さと圧倒感を感じさせる魔術師の表情はなく、哀愁を漂わせて笑みをミーアに向けていた。

「いつか必ずアクセルに戻ります。それまで皆さんをよろしくお願いしますと伝えてください」

「お、おい、ウィズ!?」

「あと私、カズマさんの事が…。やっぱり…。これは自分の口でいいますね」

ニコッとミーアにほほ笑むと視線を天へと戻し高らかにスキル名を唱えた

 

<テレポート>

 

「みなさん…ごめんなさい。必ず村を守って見せますから」

あたりが光で包まれる。

光の粒子と共に薄れていく村人たちは叫ぶようにウィズに声をかけるが、その言葉は届かない。

視界を奪うほど光は強まり次の瞬間、天へと駆け上る。

村人たちはサムイドーから姿を消した。

 

 

「ふう・・・よし。」

 

「ヨシじゃ無い」

 

<狙撃>

 

「へっ!?あむ・・・む~~~~!?!?」

 

「げっ・・・魔力消費するのかよ・・・やっぱし弓じゃないと駄目か・・・」

 

緑色の固形物が口の中に飛来すると激しい痛みが発生する。

右往左往と水を求め慌てふためくウィズ。

それはカズマが手のひらで練り固めた練りわさびの塊をデコピンで狙撃したのであった。

 

 

 

 

 

 

「村長には話を付けておいたから、避難した村の人たちの心配はいらねぇぞって…今は聞く余裕がないか」

 

<クリエイト・ウォーター>

 

ため息まじりに唱えられる詠唱。

ウィズの手に持ったコップにカズマの手から水が注がれる。

その水をウィズはゴクゴクと勢いよく飲み干していく。

これで三杯目だ。

未だに引かない口の痛みが彼女の顔を歪め目じりに雫を溜めさせる。

カズマは少しやり過ぎたかな?と思いながらも突き放すかのような冷淡な視線をやめる事はない。

恨めしそうに目を細めウィズに言い放つ。

 

「ウィズ~よくもスッポかしてくれたな?」

言葉を聞いた瞬間、今思い出しました!と言わんばかりにウィズは目を大きく開く。

痛みで開かない口から「う~~」と唸り声をあげ、まるで何かを壊してしまった子供の様に罰が悪そうな顔をする。

手に持ったコップの水をもうひとくち。口に含み洗い流すようにゴクリと喉に奥に押し込むと絞り出すかのように言葉を発した。

 

「…どうしてカズマさんがここに?」

 

捨てられた子猫の様だ。

彼女はサムイド―に残る事を選んだ。

”自分に優しくしてくれた村人たちの故郷を守りたい”そんな子供の我がままの様な一念のみで選んだ選択。

襲ってくるカエルの量。どのような策を講じればよいのか。生きて帰れるのか。

混じりけがない純粋無垢の様なウィズの心は後の事など一切考えていない。

ただ、ひたすらに”守りたい”と言う想いに突き動かされていた。

 

しかし。

 

これはつまり、カズマとのデートの事など些細な事だと足蹴にした事になる。

カズマはこれが悔しくてたまらない。

 

「潜伏スキルを使いながら、魔法陣の外に出ていたんだよ」

 

カズマは後頭部をかきながら苦虫をかみ潰した様な表情で言い放つ。

雪平原での死の淵以来、カズマはウィズの事を思い続け舐めまわすように観察してきた。

側から見れば、それはもう不審者だ。

しかし、だからこそ。

彼女の考える事が容易に想定できたのだ。

 

ここに残る事が出来たのだ。

 

今のカズマはスッポカされて俺よりカエルかよ!?と言うお子ちゃまの様な劣等感。

だが、ウィズの愚かにも見える融通の利かない優しいところに、より惚れこんでしまっている高揚感。

そんな馬鹿な自分を咎める諦めにも似た残念感。

それでも彼女を、ここで独りぼっちにさせなかった安心感。

次々に湧き上がる感情が渦巻きあい深いため息となって口から漏れ出る。

 

(俺ってホント馬鹿だわ。)

 

『はぁ~~…サッサとカエルを狩りにいくぞ』

 

ウィズは真顔になり、おもむろにカズマの額と自分の額に手を当てる。

「大変です。高熱です」

「そりゃ、体温が低いリッチーが俺を触ったら高熱判定だろう・・・」

カズマは呆れて顔が引きつる。

何を馬鹿な事を言うんだよとカズマは思うが、ウィズの表情は真剣そのものだ。

 

「だって、この状況でカズマさんが「狩りに行くぞ」ってありえませんから・・・」

「なんだと!?俺だって格好つけたい時があるんだよ」

ペタペタとカズマの額を触れるウィズの手が止まる。

「格好つけたい・・・?」

ウィズは目をパチクリさせながら呆然とする。

それを見たカズマは一瞬かたまり「しまった!?」と言いながら盛大に赤面した。

 

「・・・成り行きで転生者になっちまったからさ。本当は村の為とか平和の為に頑張んなきゃいけないんだろうけど。未だに現実味が湧いてこねぇんだよ・・・。だから好きな人にいいところを見せるとかの方が恥ずかしながら、やる気が湧くんだよ。俺、ただのニー・・・学生だし。」

苦し紛れに最後のプライドで学生と言い直す。

カズマは、これでもかなり虚勢を張っていた。

なにせ一週間前は部屋でゴロゴロしながら、突然現れたゴキブリに阿鼻叫喚する。ただの男だ。

本当は一目散に逃げたいのだ。

だが、ここにはウィズがいる。

弱気でおよび腰になりそうな体を薄っぺらいプライドで無理やり縛り付け。震え立たせているのだ。

カズマは不敵に笑って見せる。これは男としての意地で見栄だ。

 

「それだけの理由で・・・?」

そんな最後の意地もウィズの視線の先にある物で崩れ去る。

カズマの顔を見ていたウィズの目線は下を向く。カズマは釣られる様に視線を追うと、そこには子鹿の如く震えている足があった。

 

「・・・ああ!そうだよ!?そりゃ、どっかの英雄や転生者の様に格好良く解決してみたいが生憎、俺はただのニートだ!好きな人の前で、まだ何一つ良いところを見せれないニートだ!」

 

今のカズマに恥も外聞もない。

真っ赤になった顔で思いつく限りの事を機関銃の如くウィズに言い放つ。

脈略のない言葉の数々。

その怒鳴り声の様な叫びに、ウィズは、ただただ静かに立ち尽くす。

 

「そんな俺でも意地を張りたい時があるんだよ」

 

『ウィズには笑っていて欲しいんだよ』

 

いつの間にか雪雲は薄くなっていた。

雲の隙間から差し込むオレンジの夕焼けが彼らを照らす。

カズマは思いの丈をすべて言い切った。

「はぁ…はぁ…」と荒い息を整えていくうちに我に返る。

勢いで言ってしまった本音。

小っ恥ずかしくて痒くなる鼻頭を人差し指で擦った。

お互いに次の言葉をためらい見つめあう数秒、あたりが静寂で包まれる。

すると、ウィズは…

「・・・プッ。はははっ。カズマさん、やっぱり…おかしいです。いつもなら直ぐに逃げようって言うのに」

その場に張り詰めていた緊張の糸が切れる。

ウィズの頬は徐々にゆるみ、軽快な笑い声が口から溢れて来る。

あまりの可笑しさに目じりに雫が溜り、人差し指で拭う。

そんなウィズを見たカズマは釣られて笑い声が漏れ出して来る。

「はは…ははは!俺も、そう思う。ここに残ったって事は多少なり策はあるのか?」

 

誰もいない町に、二人の笑い声が響く。

お互いが可笑しくてたまらない。

こんな時間がもっと続けばいいのにと、思いながら二人は軽快に言葉を紡ぐ。

 

 

「そうですね…捨て身で私ごと村を氷ずけにしようかと思っていたのですが、やっぱり辞めました。だってカズマさんが居ますもの。カズマさんは何か策があります?」

 

「そうだな~。一つ試したいことがある。盛大にいくぞ!」

 

「はい!」

 

 

まるで放課後の公園で遊ぶ子供の様な彼らに恐れや不安はすでにない。

先ほどまであった陰鬱な空気は雪雲と一緒にオレンジの空へと消散していった。

 

 

 

<君のためなら・・・。>




最近、執筆速度が鈍化していて申し訳ありません。
また誤字脱字のご指摘、誠に感謝しております。
出来る限り推敲を重ねているのですが、自身の未熟さを痛感するばかりです。
誤字脱字を減らせれる様に努めてまいりますが、読者様のご指摘を今後も頂けると大変ありがたいです。
あと、いつの間にかUA五千に到達していました。
読者様、誠にありがとうございます。
次はUA一万を目指して精進したいと思います。
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