このヒロインにもルートを!※更新停止※   作:来世から本気をだす

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15話、朝焼けの勝利

(夜明けか…)

背後を光に照らされて、輪郭が見えて来た黒い山々。

連なる山脈の隙間から、太陽がひょっこりと顔を覗かせて来る。

身体に染みる朝日は、この大地の夜闇を払い。暗闇に隠れていた激戦の爪痕をあらわにしていく。

俺は照らされた雪平原に、震えるような感動を覚えた。

見るも無残なクレーターまみれの雪平原。だが憎い奴ら(カエル)の影は何処にもない。

やったんだ、俺たちは…

あの数のカエルを全て倒したんだ!

痺れるような勝利の余韻。俺は思わず天を仰いだ。

そして、オレンジの朝焼けに向かって高らかに叫んでやった。

 

「よっしゃ~~~!!!」

 

 

俺達の勝利だ!

身体がむず痒くなるような高揚感!

このやり場のない感情。とりあえず、あの太陽に向かってガッツポーズを決めてみる。

(なにバカみたいに、叫んでいるのよ)

チィ…モドキめ。

人がせっかく、いい気分で叫んでいるのに。

脳内に響く憎たらしい声。そして脳裏によぎる青髪。

アクアもどきだ。

虫でも見るかのような蔑んだジト目でみてきやがる。

(憎たらしいってなによ!)

(文句があるならお前のマスターとやらに言え。その姿で指摘されると無性に腹が立つんだ)

ほら見てみろ、お前をみていると知らず知らずの内に拳を握っているんだよ。

チラリと自分の右手を見てみれば、プルプルと震える拳が、今にも殴れと叫んでいる。

 

 

…気分を変えよう。

俺は今、最高に気分がいいのだ。こんな、どうでもいい事でイライラしていたら時間がもったいない。

俺は一息「ふぅ」と吐いて荒ぶる右拳を鎮めた。

(そんな事よりヒキニート。いつまでそんな馬鹿づらを晒しているつもり?)

(……仕方ねぇだろ、寒いんだよ)

確かに今の俺は凄くマヌケな姿である。半身がカエルの口内だ。

しかし、半裸で雪平原に突っ立っているわけにもいかないだろ?

一回、凍死もしているんだ。

寒さをしのぐために使った苦肉の策であるが、流石の俺も後悔している。

腐った生ごみのような臭いがするのだ。

はやくウィズにテレポートして貰おう。この鼻がひん曲がる粘液を洗い流したい。

 

 

「ウィズ、そろそろアクセルに行こうぜ。風呂から上がったら、さっそくデートでも…」

 

俺は浮かれる気持ちのまま、背後にいる彼女に顔を向けてみたが。

次の瞬間。湧き上がる熱い高揚感が一瞬で冷めてしまった。

…しまった。

俺の口元の表情筋がヒクっき始める。笑って誤魔化せと言わんばかりに。

目に入ってくる情報の全てが「やらかした」と脳に訴えて来る。

バカに構っていたせいで、完全に失念していた。

振り向いた先。

そこにはカエルの粘液まみれで、ネロネロのテカテカなウィズが、ジト目をしながら睨んできていた。

見るからに・・・不機嫌そう。

(よく考えれば…そりゃ、カエルに喰われるなんて作戦は怒るよな…)

もはや、あと祭りでしかないが…どうしよう。

 

 

 

「あの〜…ウィズ様?」

俺は爆破物の解体処理を挑むか如く、震える手をウィズに振ってみる。

俺は未だに、彼女から人として認識されているのであろうか?

やってしまった内容が内容だけに。

ゴミや虫などと同列の存在として、認識されている可能性がある。

今のウィズは未知だ。

会ってから、まだこんな表情の彼女を俺は知らない。

恐る恐る話しかけてみると、ウィズはいつもの甘く優しい声で返事をしてくれた。

 

「なんですか変態さん」

かはっ!?

今、目には見えない鋭利な刃が、心臓を貫いたぞ。

変態と言う言葉の刃が、俺の心をぶちぬいたのだ。

あまりのショックに視界が潤んできやがる。

しかし、そんな俺を彼女は天使の様な微笑みで見つめて来る。

その目には光(ハイライト)がない。

澄み切った深淵の黒だ。

 

 

「ウィズ様…そうとう怒っていらっしゃいます?」

「いえ、まったく。カズマさんがカエルの口の中で、さり気なく私の胸やお尻を触った事なんて、これぽっちも怒っていませんよ」

訪れる絶望の静寂。

たった数秒ではあるが、俺を絶望に叩き落すには充分すぎる時間だった。

 

(うわ…サイテー。ヒキニートって生まれてきた価値あるの?)

(不可抗力だ!)

脳裏に響いてくるモドキの軽蔑。

決して意図したわけで触った訳ではないのだ。

粘液でヌルッと滑っただけなのだ。

(でも、触れて嬉しかったんでしょ?)

(・・・・)

考えるな。考えるな。考えるな・・・

考えれば読まれる。弱みを握られる。今だけは悟りをひらけ俺!無になるんだ!!

(沈黙は肯定よ?このクズ)

(ちくしょ~~~!)

 

 

「申し訳ございません」

「ふん、知りません」

全力の土下座だ。

俺はカエルの口から飛び出して、ウィズの眼前で雪に、何度も頭突きをかます。

必死に謝り倒しているのだが、彼女は俺を見てくれない。

明後日の方向にプィと顔を背けて、視線を合わせてくれないのだ。

 

(プププ…ウィズに嫌われてザマァないわね)

今、お前に構っている余裕はねぇんだよ。

こんだけ頑張ったのにウィズに、嫌われるとかあんまりだ!

まだウィズと甘い思い出の一つも作れてない。

始まる前に終わるなんて、そりゃねぇぜ!

(あなた…そばで見ているのが悲しくなるほど、頭が逝っているわね)

(うるさい!!)

こうなったらヤケだ!

俺は震える声で叫んだ。

 

「ウィズ、何でもするから許してください!」

 

「……何でも?」

そこで初めて、ウィズがこちらに顔を向けた。

「はい、焼き土下座でも何でもしますので!どうか…どうか、へっくしゅん!!」

(哀れね…本当に誠心誠意、気持ちを込めて謝っているの?)

くそ…このモドキめ。ニヤニヤと笑いやがって。

もう一回、言うけどな…寒いんだよ。

痛みを通り越して、手足の感覚がなくなって来た。

でも、頑張れ俺!

もはや、俺に残されたカードは誠心誠意を示すほかない。

文字道理、死ぬ気で謝り倒すしかないんだ!

 

「ウィズ、申し訳ございませんでした!!」

 

「…ばか」

えっ?ウィズが…言ったのか?

ボソリと声が聞こえた。聞き間違えじゃないかと思うほど小さな声で。

俺は土下座しながらチラリと彼女の顔をのぞいてみれば、ブスっとはしているものの、先ほどとは違い、どことなく優しさが感じられる。

 

「はぁ、では…記憶が戻っても時々でいいので、お店を手伝ってください」

「そ、そんなことでいいのか!?」

俺は飛び跳ねる様に立ち上がり、ウィズの両手を握りこむ。

彼女のわずかに赤らんだ頬。

ウィズと一緒に居られるなんて願ったり叶ったりだ!

俺は再び湧いてくる高揚感に身震いしていると、彼女は不安そうに上目遣いで、俺の顔を覗き込んで来た。

 

「めぐみんさんに何を言われても、必ず来てくださいね?」

「OK!言われなくても毎日、出社するさ!」

「絶対ですよ?約束ですからね?」

「任せとけ!」

 

 

(あら~カズマさんたら、そんな安受けしちゃっていいのかしら?)

あぁ?どう言う事だよ?

ニンマリと笑みを浮かべているモドキ。

いちいちムカつくな…

(別に~困るのはカズマさんなわけだし面白そうだから、これからも近くでじっくり観察させてもらうわ)

はいはい。そうですか。ご自由にどうぞ。

モドキには、出来る限りなげやりに言い放つ。

俺のプライベート剥奪宣言をしてくるのだから、これぐらいしないと気が収まらない。

いざとなれば全力でR18のどエロい事を考えてやろうか。

(ちょっと、やめなさいよね!?)

慌てふためくモドキ。嫌なら覗くな。

(ヒキニートの癖に…それに私に対する感謝の念が足りないんじゃないの!?私のおかげで何度も生き返れているんだから、もっと感謝しなさいよね?)

…まぁ、確かにコイツ無しでは、成しえる事の出来なかった偉業だ。

感謝の言葉ぐらい考えてやってもいいか。う~ん…あざっす!

(踏みつけられたいの!)

じゃ…さんきゅー

(もっと崇めなさいよ!!)

贅沢な奴だ。

俺の精一杯の言葉なのに。

それじゃ、なんて言えば言いんだ?

(それはもちろん、〇〇さま~~って!…アレ?)

…おい。確かカエルを殲滅したら、喋れるようになるんじゃなかったのか?

(そのはずなんだけど…生き残りがまだいるのかしら…)

おいおい…流石に、これ以上は無理だぞ。

もう手足に力がはいらない。立っているのがやっとだ。

 

そう、思っていると───

 

殺気…?

肌がビリつくような違和感。

俺は念のために発動させていた敵感知スキルに、さらに魔力を注ぐ。

すると、先ほどまでなかった無数の反応。いつのまにか俺達を取り囲んでいたのだ。

しかし、周りを見渡しても、どこにも対象が見当たらない。

どう言う事だ?

 

「カズマさん、上です!」

ウィズが勢いよく空に向かって指をさす。

俺は指の先を追うように視線を向けると、そこには無数のワイバーンが俺たちの頭上を旋回していたのだ。

そして群れの中の一匹に、敵感知スキルが激しく反応している。

この反応。無作為の捕食行動をしていた、カエルとは違う。

俺達に向けられた明確な敵意だ。

 

「また邪魔をしてくれましたね。今度こそ許しませんよ!」

一回り大きいワイバーンの背を、千里眼スキルで見ると…

そこには不健康そうな小太りのおっさんが、跨っていたのであった。

 

「かなり拍子抜けなんだけど…ウィズ…知り合い?」

「さぁ…?」

 

 

<朝焼けの勝利、新たなる影(おっさん)>

 

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