このヒロインにもルートを!※更新停止※ 作:来世から本気をだす
◇モドキとカズマ◇
一斉に飛びかかろうとしている、未知の化け物ども。
見ている風景がゆっくり流れ、過去の記憶がフラッシュバックしてくる。
(異世界に来て何度目の走馬灯だよ…)
次々に湧いては、消えていく記憶の断片。
なのに…
(ね…ねぇねぇ、カズマさん?)
(なんだよモドキ。今、忙しいのだが?)
脳裏に響いてくる、オドオドとした青髪の声。
今、お前に構っていられる余裕はないんだ。あと数秒で俺とウィズはカエルの腹の中。
この刹那の間に、なんとしても策を講じなければならない。(べ、べつに大した事じゃないのよ)
(モドキ、大した事じゃないなら黙っとけ)
はぁ~…ウィズが喰われてしまう。(でも、いま話さないと後が怖くて…)
あのな…今、生き残れないと後なんてないだろ…
まぁ、俺は別にいい。死んでも生き返れる。
でも、ウィズは違う。リッチーの彼女に<リザレクション>は使えない。(でも、でも…)
彼女と生き別れるなんて、まっぴらごめんだ。(あの~)
さぁ、考えろ。(その~)
焼き付きそうな脳を更にフル回転させろ!
なにか策を…逆転の一手を捻りだ(ねぇってば!!)
(なんだよ!?今、文字道理、死にそうなほど忙しいのだが!?)
あとコンマ数秒でゲームオーバーだからな?
そこのところを分かって言っているのか駄女神!
走馬灯の最中に話しかけて来る馬鹿は、異世界を巡り歩いたとしても、お前ぐらいしか居ないぞ?たぶん。
あまりに煩いので、真っ暗な思考の海に意識を傾けて、モドキを罵る。
しかし、コイツの顔を見た瞬間。俺はモドキを過小評価していたのだと反省した。
決して警戒を怠っていた訳ではない。
この世界に来てからポンコツリッチーに会ったし、ウィズから様々な問題児たちとの冒険談も聞いた。多少のトラブル程度は寛容になった。
記憶を失う前の俺も似たような感じだろうな…
それでも“アクアだけは侮るな”と身体が警告していたのはこの事か?
モドキは、滝のように汗を流し。視線を決して俺に合わせない。
テヘペロ顔になったかと思えば、財布の隅に追いやられた潰れたレシートのように、ひしゃげた顔になる。そして、スッーと音を立てながら唇を甘噛みして息を吸う。
胸の前で組んだ二本の人差し指。先端をくっ付けて手を近づけたり離したり…
俺は条件反射のように、自然と次の言葉がでた。
(おい。なにをしでかした?)
(・・・・・・助けたら怒らない?)
(事と次第による)
長い沈黙のあとに、ようやく俺と目を合わせたかと思えば、チワワの様なつぶらな瞳で見つめて来るモドキ。
(あのね…私って神様なのよ)
(それは知っている)
あんな凄く強そうなエリスさんを、テレポートで男子風呂に突き落とす程の実力者だもんな。神と言われても何も違和感をもたない。
(それでね、私って分類でいうと自然の化身というか…本来の姿が大きいのよ)
(うんうん・・・はぁ?)
いきなり何、言っているんだコイツ?
(だからデッカいのよ。今はマスターの影響でこんな、ちんちくりんの姿も出来るのだけど本体はもっと大きいのよ。でね、ちょっとした事で魔力が漏れちゃうのよね)
(ちょっとした事って、どんな事だ?)
(その~くしゃみをしたり、マスターと喧嘩したり。あと~その~…イチャイチャしているカズマさんに“ちょっかい”を出したりとか?)
かわいくニコッと笑みを浮かべるモドキ。
そして極み付けは「ごめんね?」と俺に手を合わせて拝んでくる。
こんな絶体絶命の時なのに、いろんな事に違和感が湧いてくる。
そう言えばコイツ。チャーリーが現れてから、急に静かになったよな…
無駄に冴えるだけで、とくに役にも立たない頭が訴えてくる。
『チャーリーの言動の矛盾』
チャーリーは言っていた。
国家レベルの魔力反応に、誘発されない限り人類を襲わないと…
カエルが村に向かい始めたのは、マナタイトを使う前だぞ。
それにウィズの話しでしか知らないが、アクセル襲撃時に、こんな高価なマナタイトを使う出来事はあったのか?
駆け巡る記憶の断片は、俺のキモを徐々に冷やしていく。
もの凄く、ものすっっっごく…嫌な予感がしてきたぞ。
俺は震えそうな声で彼女に問う。
(なぁ、モドキ…漏らした魔力って、どのぐらいの量なんだ?)
(・・・高級なマナタイト10個分ぐらい?)
(この駄女神が!!!!!)
(ひっ~~~!ごめんなさい!!!)
ウィズで見慣れたはずの泣きべそ顔。あぁ~~最悪だ。
◇モドキの正体◇
バインドで簀巻きになったアクアモドキ。
よく考えれば、ここは俺の精神世界だ。願えば叶い、考えれば何でも作り出せる。
俺は寝っ転がったモドキの背中を踏みつける。するとモドキは涙目で盛大に異を唱えてきた。
(か、神様を踏みつけるなんて正気!?罰が当たるわよ。)
芋虫みたいにウネウネと動くモドキ。はっん!鼻で笑ってやるよ。
(よく聞け!コンマ3秒で俺達を助けろ。じゃなきゃ、このままカエルに喰われてやる。そして天界で、お前の罪を言いふらしてやるよ)
(待って、待って、待って!査定に響くじゃない。わかったから!!)
・・・
・・
・
唐突に揺れる大地。立っているのも困難なほどの上下左右の揺れ。
カエル共は蜘蛛を散らす様に逃げ惑い、トロールは地面に這いつくばっている。
ウィズに関しては、俺の腰に抱き着き泣きべそをかいているな…
「なにをしたキサマ!?」
「カズマさん、これはいったい!?」
「さあ?俺にもよく分からん。でも、あのバカが”何か”をしでかそうとしている事だけはわかる」
「「「GAaaaaaaaaa!!!!!!!!」」」
そして視界は、一面がオレンジの空へと変貌した。
左右をみれば遥か遠くの山が見え、下をみれば朝焼けに焼けた大地が一望できるのだ。
なによりも見て驚愕したものは…背後だ。
そびえ立つ山?いや、生き物。
脈動する巨大な岩の塊。
もっと視線を挙げてみれば、鋭い牙に鋭利な眼光。
パッとみて…俺は元居た世界の、特撮の怪獣を思い出す。
(ガ〇ラ?)
鳴くキャベツやバカげたカエルを見たせいだろうか…直立二足歩行の巨大な“亀“が現れても特に恐怖感が湧いてこない。
それどころかコイツから漂う魔力?
いや、雰囲気に近いモノから”呆れ”の感情が先行して表に出てきてしまう。
信じたくはないが本家かモドキか、それともその両方か?
多分、関わりがあるぞコイツ。
俺とウィズは、この得体のしれない、何かの手の平の上にいた。
「か、か、カズマさん!?宝島が立ち上がっています!」
ウィズは腰を抜かしながら上を見上げている…うん、可愛いな。
彼女は”宝島”だと、よく分からない事を呟いた。
「宝島ってなんだ?俺は二本の足で立つ亀なんて、数種類のゲームでしか知らねぇぞ?」
「で、でも。私、こんな大きい亀は宝島ぐらいしか知りませんよ!」
ウィズはアワアワと慌てふためきながら、このバカげた生物の事を語る。
彼女いわく、宝島とは俗称で正式には”玄武”と言う神獣らしい。
神とつく奴に碌な奴がいないな…。まぁ、それは置いておこう。
たまに人前に出てきては鉱石やレアアイテムを背負って、日向ぼっこをしている。冒険者にとってありがたい生き物なんだとか。
(雑!?私の説明、雑すぎない!?)
脳裏に響いてくるバカの声。
(やっぱし、お前かモドキ)
(どう!私の本体は凄いでしょ!カッコいいでしょ!!神々しいでしょう!!!)
「あわわわ!?カズマさん凄い揺れです」
胸を張る二足歩行の巨大な亀。
ウィズは普段、温厚な神獣が直立二足歩行で暴れ回っている事にビビりまくっている。
揺れるたびに、ヒィーやキャーと叫びが止まらない。
(そんなにコイツが怖いか?)
確かにデカい。高さをビルの階層で表したら20階あたりだろうか?
だが、俺からしてみれば某怪獣のパチモンだ。
ところどころの細部が違う。そして、なによりマヌケづらだ。
(あんた最低ね!?)
(あっ、そう言えば思考を読み取れるんだったな)
俺は頬を引きつりながら眼を閉じる。
思考の海に潜ってみれば、真っ暗な空間で簀巻きになりながらも、同じように自慢げにふんぞり返っている青髪がいた。
(モドキ。これは、どお言う事か説明しやがれ。)
俺は目を細めてモドキを問い詰める。しかし、モドキは口を尖らせながらプイっと明後日の方向を向いた。
(だ~か~ら~!説明できないんだってば!!マスターに「私の威厳が崩れるからカエルの出所をみつけるまで、誰かに聞かれても喋ったらダメだからね?特にエリスとカズマさんには注意して。役人からカエル狩りの罰を命じられたけど、エルロードに行きたいから拾った神器を使ったなんて、絶対に言っちゃダメだからね」って神器で縛られているのよ。あ~も~最悪!…アレ、もしかして、言えちゃった?)
目をパチクリさせながら口を手で押さえても、もう遅い。
言える事が想定外だったのだろう。モドキの口から滝の如く出て来た真実。
彼女は何もない真っ暗な空間なのに、あたりをキョロキョロと視線を動かして次の言葉を探す。そして最後には「本当にごめんね?」ってテヘペロ顔で言ってくる。
「はぁ…はは…はぁは」
「カズマさん。どうしたのですか?急に壊れたおもちゃみたいに笑い始めて…怖いですよ?」
他の事を忘れても、身体が決してアクアを忘れなかった理由がわかったぜ。
俺は噴火の如く湧き上がる感情。肺いっぱいに空気を吸い、言葉にのせる。
「「「「「この駄目神どもが!!!!」」」」」
俺の渾身の叫びが、この大地に響き渡る。
(ふざけんなよマジで!?今回の事件に、なにか関係あるとは薄々、思っていたが原因のド本命じゃねぇか!?じゃあ、なにか?俺とウィズはお前たちの尻拭いに四苦八苦していたってことか!?)
怒りが際限なく湧いてくる。だが、イマジナリーモドキは玩具コーナーのおもちゃを買ってもらえない子供のように駄々をこねまくる。
(だって、だって、だって!私、悪くないもん!マスターが私を召喚するのが悪いんだもん!!辺境で一生懸命、カエルを駆除しているのに、私の側でイチャイチャしているカズマにムカついただけだもん!ちょっと脅かしてやろうと、小突いたらカエルが集まり始めて…ヒキニートがアクセルに帰らないのが悪いんだもん!!!)
こ、この…クソ亀!
「今すぐに刻んで、すっぽん鍋にしてやろうか!」
「カズマさん、神獣に向かって、なんて事を言うんですか!?」
◇玄武とあっけない終幕?◇
「粉砕!玉砕!大喝采!私を怒らせた罪は重いわよ!」
先ほどまでの反省はどこへやら…
落ち込んだ雰囲気など二歩、歩いただけでケロっとしているモドキ。コイツはニワトリより単純なんじゃなかろうか?
そんな俺の悪感情をまるで「聞こえていませんよ~!」と耳を塞ぎながら言っているかの如く、豪快にカエルを蹂躙していく。
カエルは蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い、巨大な玄武から隠れるように雪平原から少し離れた森に逃げ込んだ。
それでも環境などお構いなしに、玄武は木ごとカエルを蹂躙していく。
命の危機を感じたほどの強敵が、まるでウソのようにプチプチと踏み潰されていく。 その圧倒的な力はまるで積み木遊びを覚えた子供のようだ。 なんとも空しい…
(そろそろ辞めようぜ。森が、かわいそうだ…)
俺はモドキに問いかける。最初こそ壮観だった。
木々を蹴飛ばし、雪平原を荒地に変える。
存在そのものが天変地異だ。
でも、そろそろ無残な姿に変わる森や大地をみて。(誰かに訴えられるんじゃね?)って恐怖心が湧いて来た。
それなのにモドキは真っ暗な精神世界で、やれやれと肩をすくめ深いため息をはく。
(大丈夫よ。私が通った場所は、木々や花草が生えて自然豊かな森になるんだから。ここら辺の野菜も美味しかったでしょ?私のお陰なんだから!)
これ見よがしに後光を放つモドキ。
幾ら輝いても、ありがたみなんて何一つわかないからな?
そんな俺の態度が、モドキのカンに触ったのか、後光が消えムスっと不貞腐れる。というか…
(なぁモドキ。ここの野菜の美味しさは、大昔からだぞ?そんな昔からサムイド―に居ついていたのか?)
俺の疑問にモドキは、嬉しそうにニヤつきながら答える。
(当然!私はエリスやマスターより年上よ?あそこに見える活火山のウォルム山は私の寝床の一つなの!噴火しないように、各地のマグマだまりを渡り巡っては、マナを蓄えるの。それでね、私が泳いだ地中はマナの通り道になって、道筋が龍脈って呼ばれる物になったりするのよ。まぁ、私以外の自然神も違う形で似たような事をしているんだけどね)
鼻高々に自らの偉業を解説するモドキ。再び後光が復活するのが少しイラっとくる。
(俺にはマナとか龍脈なんて、ゲームの説明文程度にしか解らねぇが、とりあえずお前が若作りをしているって事は、よく分かったわ)
(なんですって!?)
目を吊り上げ、今にも噛みつきそうに歯を見せて来るモドキ。
でも、そうだろ?
(若作りと言われたことが、そんなに気に喰わないのか?)
この言動と見た目でアクアより、年上なのだと言うんだから若作りそのものだろ。
俺はもう一度、モドキの姿を足のつま先から頭のてっぺんまで見直す。
うん、若作りだ。
俺より年上だと言うのに、そんなキャピキャピしたアクアと同じ、若者の格好をしているんだもの、若作りと言う言葉が適切じゃないか?
俺の憂さ晴らし代わりの嫌味たっぷりな思考回路。
さすがに怒ると思ったのだが、モドキの反応は薄い。
モドキは呆れたように肩を落とす。
(あのね…マスターも、それなりの歳よ。人間で言うなら20代くらいかしら?)
(嘘だろ…あの言動で?)
恐ろしい事をいってくるモドキ。冗談と言ってくれ。俺、今ちょっと引いたぞ。
ブルッと身体が震えた俺など、気にせずにモドキは続きを語る。
(それに私がマスターと、そっくりになったのもマスターのせいだからね?)
(はぁ?なんでそんな紛らわしい事をしたんだ、あのバカ)
(事故よ。マスターは高レアな使い魔を引き当てたかったのよ。召喚時に「女神たる私が最高の触媒なのよ!来てSSR!!いや、UR!!!」って、あと先を考えず自分を差し出すから召喚事故が起きたの。結果、マスターを金型にして容姿に性格さらに記憶まで何もかも、そっくりな、私が召喚されたわけ)
(マジで?)
モドキは目を細めて俺を訝しがってくる。突きつけられた事実。俺は言葉が詰まった。
本家はやらかす度合いの格が違う。
(あ~、その…ウチの馬鹿がご迷惑をかけました。)
(よろしい。あと記憶までコピーされちゃったからマスターを罵ると、私に向かって言っているように聞こえてくるのよ。そこらへん気をつけてね?多少は我慢してあげるから。私もマスターにムカついている事があるし)
片目でウィンクするモドキ。
あの駄女神はホントとんでもない事をしでかしてくれたな…
(そうなの。だから縛りも解けた事だし、サッサとあのデブを倒してマスターの元に行きましょう。)
モドキは意味ありげに明後日の方向を向いた。
俺も意識を現実に戻し、玄武の視線の先を追う。
すると、不自然に一本だけ残された木が一本。
千里眼スキルを使ってみれば、幹の端からデッカい図体の一部がはみ出している。なんとも滑稽だな。
◇決まれ、俺のショートフック◇
「カズマさん…先ほどから表情が七変化していますけど、大丈夫ですか?」
腰に抱き着いていたウィズが、顔を引きつりながら心配そうに見つめて来る。
…そう言えばモドキと話している時の俺って、その場に居ないイマジナリーフレンドと会話している痛い子ちゃんなのか…うん。自重しよう。
(ぷーくすくす。ヒキニートが馬鹿ずらを晒してる~。って、なんてもの見せるのよ馬鹿!)
馬鹿にして来るモドキ。俺は咄嗟にすっぽん料理をイメージする。
これ以上、コケにして来るようだったら次は、お前が鍋で煮込まれている姿をイメージしてやるからな?
(わ、わかったわよ!だから亀料理なんて、スプラッター的なこと考えないで!?)
「カズマさん、本当に大丈夫ですか!?」
あーーーっ、うるさい!
目をつぶれば簀巻きになっているモドキがウネウネとしながら叫ぶし、目を開けばウィズが俺の身体を揺さぶりながら叫んでくる。
身が持たないわ!
現実も空想もワーワー、キャーキャーと叫ばれては対応しきれねぇからな!?
ただでさえ、おかしくなっている頭をフル回転させていたんだ。
頭痛の痛みが限界に達しそうだ。
(モドキ!さっさとチャーリーを倒してしまえ!)
俺は痛みの余りたまらずモドキに催促をする。すると、簀巻きになっているモドキはヤレヤレと肩をすくめ目をつぶった。
(わかっているわよ…もう。せっかちなんだから。さて、そろそろメインディッシュとしましょうか)
(…発言が悪の総統そのものだぞ。それにそんなバレバレの殺気を向けたら…)
巨大な玄武の視線は唯一、破壊を逃れた木を凝視する。
放たれる強烈な殺気。
向けられた殺気に気づいたのか、チャーリー木の陰から飛び出し、自身の周囲に円形状の魔法陣を描き始めた。
「ほら見ろ、バレたじゃねぇか!あいつテレポートで逃げる気だぞ」
(かまわないわ、これでトドメですもの!)
巨大な玄武が重心を落とし、目つきが鋭くなる。
そして蛍のような光の粒が大地から無数に湧き上がり、玄武の身体に吸い込まれていく。
うん。ヤバいなこれ。
玄武が取った、この一瞬の動作でオーバーキルだと、すぐに解った。
敵感知スキルが俺に、異常反応を訴えている。
吸い込まれていく光の粒子の一つ一つが、中級魔法レベルの魔力量の反応がする。
この馬鹿…あとはチャーリーを倒すだけなのに、どんな大技をだすつもりなんだ?
(おいモドキ…加減しろよ?無駄に魔力込めているだろ…)
(ふふふ…いまいち評価してくれないカズマさんに見せてあげる、これが神の実力と言うモノよ!)
淡く輝く玄武。手足の末端から光が徐々に口へと集まっていく。
見ているだけでキモが凍り付きそうなほどの魔力量。
熟練の冒険者だったウィズは、その凶悪さがより理解できるのか顔が真っ青だ。
そして玄武の身体から輝きがなくなり、目つきがいっそう鋭くなる。
玄武の口から超ド級の何かが放たれそうになった、その時。
「カズマさん!カズマさん!!カズマさん!!!」
強烈な力で俺の身体を揺さぶってくるウィズ。
俺の顔とチャーリーを交互にみながら尋常じゃないほどの慌てようだ。
「ウィズ、どうしたんだよ。チャーリーは、この巨大生物が倒してくれるぞ?」
「それが不味いんです!この方角の先は!?」
この方角の先・・・?あっ。サムイド―じゃん。
千里眼スキルに、より魔力を込め視点を遥か彼方へと移すと守るべき村が、そこにはあった。
(消え去りなさい!!)
脳裏に響いてくるモドキの声。玄武は体を背後に少しのけ反り、口元から火が零れ落ちる。
俺は瞬時に目をつぶり、簀巻きで正座をしながら目をつぶるモドキに向かって…
(歯を食いしばれモドキ!!!)
(へっ?ごほっ!?)
俺の右拳がモドキの顎に突き刺さる。
脇を締めコンパクトに折りたたまれた腕から、腰の捻りと共にムチのように放たれるショートフック。
モドキの顔は明後日の方向を向き、身体は綺麗な弧を描きながら吹き飛ぶ。
目を開けて見れば巨大な玄武も、わずかながら顔の向きが右へと動いた。
そして次の瞬間。
<<<ゴッド・エクスプローション>>>
口から吐き出され大火球。
わずかに残った森を蒸発させて、通り過ぎ去る雪の地面を溶かしていく。
直径が15メートルはありそうな紅蓮の火球はどこまでも真っすぐに進んでいき。
そして遥か彼方の山にぶつかると、もう一つの太陽が現れたかと思うような大爆発を起こし山が消滅した。
(なにすんのよ馬鹿!?いきなり神様を殴るなんて!)
簀巻きのモドキは、頬を赤く腫らしながらウネウネと立ち上がった。
(馬鹿はお前だ!まわりを確認してから撃ちやがれ、疫病神!)
(だれが疫病神ですって!いい加減立場を分からせてあげるわ、ヒキニート!)
(上等だ、駄女神!かかって来やがれ!?)
モドキの頭突きと嚙みつきに、俺は頬をつねって拳骨をかます。
そこからは取っ組み合いの喧嘩だ。
あぁ…俺はウィズと一緒に過ごしたいだけなのに。
結局、チャーリーには逃げられるし、モドキって言う厄介ごとは増えるし…
いつになったら俺の平穏は訪れるのであろうか…
<サムイド―編 終>
「…カズマさん」
「うん、どうしたウィズ?」
ウィズは、死んだ魚のような目で訴えてくる。
「サムイド―が燃えています」
「(えっ)」
つい、俺とモドキの声が揃う。
玄武の一撃はたとえ直撃しなくも、通り過ぎただけで激しい熱風を周囲にまき散らす。
俺はサムイドーに向かって千里眼スキルを発動してみれば、ところどころ屋根が燃え黒い煙と赤い火柱をたてていた。
(おい…モドキ)
(わ、わかっているわ…大丈夫、落ち着いて。私はマスターのスキルも使えるの)
「「(・・・・・)」」
モドキは滝のような汗を流し、ウィズは壊れたおもちゃのように笑っている。
もはや、この場に居る誰もが何と励ましあえばいいのか分からない。
「サムイド―に全速前進だ!走れ、モドキ!!」
(わぁ~~~~ん!!!なんで私までマスターみたいなオチになるのよ!?)
「知るか~~~~!?」
ドタドタと地響きをならしながらサムイド―へと駆け進む俺達。
あぁ~~…本当にいつになったら、俺とウィズの平穏は訪れるのだろうか。
次回からアクセル編を開始します。