このヒロインにもルートを!※更新停止※   作:来世から本気をだす

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前話に続き独自設定が多めです…。


19話、そろそろ、お仕置きのお時間です(中編)

 

◇告白?◇

「ふぅ~疲れた。聞き出すだけでも結構、時間を喰っちまったな…」

日が高くのぼり、腹の虫がお昼時を告げて来る。

当初の目的であるウィズとのデートから、だいぶズレてしまった。だが、ここからは挽回の時間だ。そろそろ目の前にいる青髪のミノムシを駆除してしまおう。

「おい、アクア。言い残す言葉はあるか?」

俺は手に握っているロープをアクアに見せつけた。

「えっ?」

アクアは目をパチクリさせる。なにを意外そうな顔をしていやがる?

「自分が入る為に水槽を用意していたんだろ?その殊勝な心掛けを汲んでやる。お望み通り頭から逝かせてやるよ」

アクアの目の前で、ロープを握る手から親指の力を抜く。そして次は人差し指。

「う、ウソでしょ、カズマさん…いや、カズマ様!ここは見せ所ですよ。寛大な心をみせて私に胸キュンされる場面ですよ!ヒロインのこの私に!<チン!>なんで、そこで鳴るのよ!?」

「そりゃ…アクアはヒロインじゃないし「さも、当たり前のように言わないで!?」」

頬を引きつり震え始めるアクアは、俺の手元から鳴るベルに盛大に異議を唱えて来る。

ここまでの事を“やらかし“ているのにお咎めなしとでも、思っていたのだろうか?

相当ナメられているな、前の俺…

 

「どうしちゃったの、カズマさん…いつものカズマさんなら、なんだかんだ言いながらも許してくれるじゃない?一緒に返済を手伝ってくれるじゃない!!…えっ?もしかしてお城から帰ってこなかったのって、そういう事?本気で愛想を尽かされた私!?」

アクアは、自分の立ち位置を真に悟ったのか絶望に染まっていく。

物事には限度と言うモノがある。とくにコイツは絶対にやってはいけない事をしでかした。

 

「ウィズの姿で犯罪に手を染めるなど、言語道断だ。丸一日、沈めた後は“警察に突き出す”。明日から牢屋の中だ。さぁ、言い残すことはあるか?」

「そ、そんな…」

俺の問いに、アクアの表情は固まった。

まばたき一つなく、真っすぐに見つめて来る瞳。

その瞳には光がない。

底が見えない深い深い深淵に続くような暗い群青色の瞳だ。

「ねぇ…カズマさん。いまから、私がヒロインに返り咲く方法って「あるわけねぇだろ」」

俺の発言にアクアの顔はいっそう絶望に染まる。

そして、目を潤ませプルプルと震える口から絞り出された言葉。

 

「カズマさん…見捨てないで…結婚してもいいから。ねぇ?」

「断わる」

「うわわわわわわ~~~~!?!?!?(泣)」

俺は女神の一世一代の告白(命乞い)をコンマ5秒で断った。

「ご奉仕しますから!尽くしますから!!私たちの元に帰って来てください!そして一緒に借金を返済してください旦那様!?」

「知るかボケェ。お前のルートだけは死んでも行かねぇから」

「お願いよ!獄中生活なんて絶対にイヤ!それに、カズマさんの事、ずっと待っていたのよ!?カズマさんの幸運がどうしても必要なの。もう一度エルロードに行ってひと稼ぎしましょうよ!?」

「一人で逝っていろ、駄女神が!?」

奈落の借金地獄に引き込む気マンマンの瞳で、告白してくる奴の元になど誰が帰るかよ。

それに俺にはウィズと言う心に決めた人が居るんだ。

駄女神など相手にしている時間はない。

 

 

◇お仕置き◇

「カズマさん、冗談にならないわ。絵面が最悪だもの!?どこかから怒られるわよ!」

「あっ、そうですか」

「そんな冷ややかな目でみないで!?ひゃう!?」

アクアは水面を直視する。

ゆっくりと近づいてくる水面。

あと1分もしないうちに黒い亡者共とご対面だ。

特徴的な長い青髪の毛先はすでに水の中。食らいつく歯もなく切り裂く爪もない、大小さまざまなオタマジャクシは、ひたすら髪にまとわりつきヌメヌメと蹂躙の限りを尽くす。

そして群がるオタマジャクシが跳ね上げた飛沫。

ヌメついた飛沫がアクアの頬を伝った瞬間。

アクアの顔は、くしゃくしゃに潰れたレシートのように顔を歪め。

 

「ゆるして~~~~!!」

赤子のように泣き始める。完全にガチ泣きだ。

そしてボロボロと零れ落ちていく涙に、オタマジャクシが我先に群がり跳ねる。

なんてシュールな光景だろうか。

「カズマさん!許して!?謝るから!反省するから!!」

「嘘つけ。…いや。お前の事だ。しばらく反省はするだろうな。だが大金が入ったら、すぐにでもギャンブルに使う気だろ。今のお前の眼は、そう言う眼だ。負けが込み過ぎてドブの方が綺麗にみえる、死んだ魚の眼だ。次はなんだ?ウマか?それともボートか?」

「そ、そんなことしないわよ!<チン!>ちゃんと貯金するから!<チン!>あ~!誰かそのチンチンと鳴るベルを止めて~!?」

 

動揺するアクアにベルは、これでもかと激しく鳴る。

思った通りだ。この見かけは宝石のように美しい瞳。

普通の人なら、この容姿と瞳に騙されるであろう。

しかし、その奥に眠るドロッドロに汚れたナニカは、ダメ人間がもつ汚れそのものだ。

モドキにはなくアクアにはある汚れ。

きっと、モドキと別れてからギャンブル沼に浸かってしまったのだろう。あぁ、可哀そうに。 (カズマさん、妙に詳しいのね。専門家みたい。)

気配を感じると、いつの間にか隣にはモドキがいた。ジト目で俺を見つめてくる。

また勝手に人の頭を覗きやがって。

まぁ、いい。答えは簡単だ。

なぜ俺が、そこまで詳しいかって? 毎朝、歯を磨く時に鏡に映るからだ。

(自分がダメ人間って自覚はあるの…)

失礼だな。モドキが蔑んだ瞳で指摘をして来るが無視だ。無視。

自分がダメ人間である事なんて、百も承知。引きこもり始めてから半年経ったあの日だ。 PC画面のまえでプライドを捨てボトラーに落ちた、あの時から充分に自覚しているさ。

だからこそ解る。

この腐った性根は簡単には治らないと。

「アクア、4〜5年ぐらい不味い飯を食って反省してこい。覚えていたら迎えに行ってやるから」

俺はアクアに満面の笑みを向けると、威嚇とばかりに犬歯を見せてくる。

「牢屋なんて、絶対にイヤ!玄武、お願いあなたからもカズマさんを説得して!?主のピンチよ」

助けを求めるアクア。だが、モドキは口元を歪めて明らかに不満気だ。

 

「え~、このまま入れ替わって、だらけた生活を送るのもアリかな?って思い始めているんですけど…ダメ?」

「ダメに決まっているでしょ!?」

アクアは縛られた身体を限界までウネウネと動かす。

そんなアクアに抗議の眼差しを向けられたモドキは、肩を落として俺に視線を向けて来た。

「カズマさん?今更なんだけど、マスターのこと許してあげられない?」

「無理」

可愛くおねだりをして来るモドキに俺は即答した。

「そこを何とか、お願い!一応、あんなのでもマスターだから…」

「ねぇ、カズマさん。“一応”とか言われたんですけど。私が主なのに“あんなの”呼ばわりされたんですけど!?」

「マスターも、もっと反省の色をみせて!楽して儲けようとするから、こんな事になるんですよ。ダメダメマスターって自覚はあるんですか?」

「うぅ~、ぐやじい!!カズマさん、ぐやじいよ~!!本当だったら今頃、羨望の眼差しを一身に受けて、感謝の言葉の雨を受けていたはずなのよ。国教がアクシズ教に代わっているはずだったのよ!?なのに…なのに…なんでこうなるのよ~!」

俺に言われてもな…。

あとアクシズ教が国教になる事だけは、俺が絶対にさせないからな?

ほくそ笑むモドキにアクアは、悔し涙を浮かべる。

「ほら、マスター。いい加減にプライドを捨てて、心の底から謝罪してください」

モドキはアクアを諭す。

こんな状態になっても、まだ捨てきれないメンツがあるのかコイツ…

アクアは、モドキの言葉に苦そうな表情を浮かべると、俺とモドキをチラチラと交互に視線を向け。

「うぅ~~。申し訳ありません、カズマ様。私の浅はかな行動でカズマ様のお金を使い込んでしまいました。すぐには返せませんが、少しずつ返済していきます…」

アクアは唇を噛みしめ、謝罪の言葉を口にした。

びみょ~に、いつもと雰囲気が違うな…。これがアクアの本気の謝罪なのだろうか?

 

「お願いします…」

ガラでもない弱々しい声。

アクアの瞳は先ほどまでの汚れが消え、ウルウルと涙を溜めながら輝くものへと変わっていた。

「お願いよカズマさん、マスターを許してあげられない?」

「でもな…」

「「お願いします」」

重なる二人の声。俺は数秒の熟考をする。

まだまだ、腹の底から湧き上がる文句はあるが…

 

「ホントか?」

「ホントよ!」

「ホントにホントか?」

「ホントにホントだから、お~ね~が~い~し~ま~ず~」

「カズマさん、許してあげられないかな。失ったお金の返済は私も手伝うから。それにベルも鳴らないでしょ?」

確かにアクアの言葉に、ベルは反応を見せない。

本当にアクアが反省していると言う事だ。

訪れる沈黙。俺は…

 

 

『…チィ、はぁ…このまま落としたら、デートが楽しめそうもないな』

 

俺は奥歯をかみしめ、むせ返りそうな鬱憤を呑みこんだ。

「「カズマさん!!」」

我ながら甘いと重々と承知している。だが、柄じゃないな。

俺はロープをたぐり、アクアの体を少しずつ引き上げていく。

「が~ず~ま~ざ~ん!?」

鼻提灯まで作りやがって。

器用な奴だな…泣いているのか、喜んでいるのかハッキリしろ。

吊るされたアクアはボロボロと涙を流しながら、綻んだ笑みをみせてきた。

お仕置きしきれない自分が情けない。あ~ぁ。あまあまだな、俺は…

だが…なんとなく、肩の荷が下りた気がした。

どこか、ほっとしている自分がいる。

煮え切らない結果となってしまったが、これが俺達らしい気がするのだ。

(ふふ、カズマさんは、そうでないとね?)

モドキ…恥ずかしいから内心を覗くんじゃねぇ。

唐突に念話で語りかけて来るモドキ。

横目で隣をみてみると、そこには満足げに笑みを浮かべる彼女がいた。

(いいじゃない。お金なら本当に私が手伝ってあげるから。5年もすれば甲羅に角質(鉱石)が溜まるわ。30年もすれば20億ぐらいすぐ貯まるわよ)

モドキはウインクをする。俺を気遣ってくれるのはありがたいが…

30年は気が遠くなる…神様からすれば一瞬なのだろうか?

 

「カズマさん!はやく降ろしてよ~」

先ほどまでの緊張感はどこへやら、アクアはケロッと何事もなかったように、涼しい顔をして俺に催促をしてくる。

「はぁ。しょうがねぇな…おい、アクア!今回はモドキに免じて「こんちわ~す。出前お持ちしやした~」」

 

…出前?

ウィズ魔道具店の裏庭に透き通った活きの良い声が響きわたる。

声のする方向に視線を向けると、魔道具店の裏口からだ。

俺は隣にいるモドキに目を配ると、小刻みに顔を横に振っている。次にアクアに目を向けると…“滝のように汗を流している”

「おい、アクア…お前が注文したのか?」

「あはは…今朝、注文していたのよ。一緒に食べる?美味しいわよ」

アクアは乾いた笑い声で視線を合わせようとしない。

金がねぇと言っていたのに出前とは…ずいぶんと余裕だな、この野郎。

 

俺のボルテージがゆっくりと上昇し始めたその時、ガチャっとノブが回る。

「あ、いたいた。失礼します。ご依頼主のウィズ様はいらっしゃいますか?」

この駄女神め…ウィズの名前を使って注文しやがったな。

いや…そうか。考えてみれば当然だ。

借金取りから逃げ回っているせいで、自分の名前が使えないのか。

そこでサムイド―に居るウィズに、白羽の矢が立ったんだな?

それも金がねぇってコイツは言っていた。

空腹に耐えきれず頼んでしまったが金がない。

だから、頭の悪そうな金策をウィズの姿でやっていたのか…

古びた木の戸が開かれる。現れたのは、風呂敷を片手に白の割烹着を着た20代ぐらいの男性であった。

「あ~、すまん。ウィズの連れだが…ウィズは不在だ。俺も持ち合わせがないから、受け取る事ができないんだが…」

「そうですか。まいったな…生ものですし返品となると処分するしかないんですよ」

苦い顔をする料理人。

「なんか悪いな…後日支払いだったら俺が受け取るぞ?」

というか支払わせてくれ。なにせ元パーティーの不始末。

注文した本人が俺の後ろで呑気に吊るされているのに、商品を受け取らないと言うのは罪悪感がハンパない。

俺の発言に料理人は数秒、難しい顔をしながら悩むと。

 

「そうですか?…ウィズ様はお得意様ですし、そのご友人でしたら…じゃあ、お任せしてしまってもよろしいでしょうか?」

「ああ、いいぞ…(…お得意様?年がら年中金欠病に悩まされていそうなウィズが?)」

「では、こちらがご注文の品。霜降りガニの海鮮ちらしと特上寿司です。お吸い物は回遊マグロのつみれを入れていますので、お熱いうちお召し上がりください。今後とも料亭“新しい風”をよろしくお願いします」

 

「「なぁ!?」」

風呂敷から現れるいかにも高そうな2段の重箱。そして竹筒。

俺は恐る恐る重箱の蓋をあけると…眩しさを感じそうになる海鮮の数々が、そこにはあった。

「か、カズマさん…このお店って朝、屋敷に向かう時に話した、と~~ってもお高いお店よ!?」

「言われなくても分かるわ…おい、アクア。お得意様って、このお兄さんは言っているが…まさか、ウィズの金でずっと美味いもんを食っていたなんて事は…流石にしていない…よな?」

「ま、マスター?まさか、そんな頭の悪い事は…」

俺とモドキの厳しい追及の眼に、アクアは…

 

 

「…せっかくリスクを負うなら、美味しい物を食べたくない?きゃ!?」

<ドポーン!!>

にぱっと輝いた笑みを作るアクアは、激しい水しぶきをあげながら水槽へと落ちて“逝った”。

俺は最後の良心(ロープ)を右手から離したのだ。

 

「マスター。哀れよ、哀れすぎるわ…」

モドキは盛大に天を仰ぐ。

頬を伝う一筋の涙をみると、思わず同情してしまう…まぁ、俺も流しているんだがな。

『助けてカズマさん!?オタマジャクシが!?オタマジャクシが!?』

水槽から聞こえてくる断末魔。この際だ。

金食い虫の古いアクアの事は、もう忘れよう。

明日からは強くて色々と便利なニューアクア様だ。

「明日からよろしく頼むぜ、モドキ…いや、アクア!」

「現実逃避しないで、カズマさん」




読んでいただき誠にありがとうございます。
いつの間にか目標にしていたUA一万に到達していました。
原作のアニメ3期の効果ですかね?
次はUA1万5千を目指して精進していきます。
引き続き、このヒロインにもルートを!も楽しんでいただけたらと思います。
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