このヒロインにもルートを!※更新停止※ 作:来世から本気をだす
◇告白?◇
「ふぅ~疲れた。聞き出すだけでも結構、時間を喰っちまったな…」
日が高くのぼり、腹の虫がお昼時を告げて来る。
当初の目的であるウィズとのデートから、だいぶズレてしまった。だが、ここからは挽回の時間だ。そろそろ目の前にいる青髪のミノムシを駆除してしまおう。
「おい、アクア。言い残す言葉はあるか?」
俺は手に握っているロープをアクアに見せつけた。
「えっ?」
アクアは目をパチクリさせる。なにを意外そうな顔をしていやがる?
「自分が入る為に水槽を用意していたんだろ?その殊勝な心掛けを汲んでやる。お望み通り頭から逝かせてやるよ」
アクアの目の前で、ロープを握る手から親指の力を抜く。そして次は人差し指。
「う、ウソでしょ、カズマさん…いや、カズマ様!ここは見せ所ですよ。寛大な心をみせて私に胸キュンされる場面ですよ!ヒロインのこの私に!<チン!>なんで、そこで鳴るのよ!?」
「そりゃ…アクアはヒロインじゃないし「さも、当たり前のように言わないで!?」」
頬を引きつり震え始めるアクアは、俺の手元から鳴るベルに盛大に異議を唱えて来る。
ここまでの事を“やらかし“ているのにお咎めなしとでも、思っていたのだろうか?
相当ナメられているな、前の俺…
「どうしちゃったの、カズマさん…いつものカズマさんなら、なんだかんだ言いながらも許してくれるじゃない?一緒に返済を手伝ってくれるじゃない!!…えっ?もしかしてお城から帰ってこなかったのって、そういう事?本気で愛想を尽かされた私!?」
アクアは、自分の立ち位置を真に悟ったのか絶望に染まっていく。
物事には限度と言うモノがある。とくにコイツは絶対にやってはいけない事をしでかした。
「ウィズの姿で犯罪に手を染めるなど、言語道断だ。丸一日、沈めた後は“警察に突き出す”。明日から牢屋の中だ。さぁ、言い残すことはあるか?」
「そ、そんな…」
俺の問いに、アクアの表情は固まった。
まばたき一つなく、真っすぐに見つめて来る瞳。
その瞳には光がない。
底が見えない深い深い深淵に続くような暗い群青色の瞳だ。
「ねぇ…カズマさん。いまから、私がヒロインに返り咲く方法って「あるわけねぇだろ」」
俺の発言にアクアの顔はいっそう絶望に染まる。
そして、目を潤ませプルプルと震える口から絞り出された言葉。
「カズマさん…見捨てないで…結婚してもいいから。ねぇ?」
「断わる」
「うわわわわわわ~~~~!?!?!?(泣)」
俺は女神の一世一代の告白(命乞い)をコンマ5秒で断った。
「ご奉仕しますから!尽くしますから!!私たちの元に帰って来てください!そして一緒に借金を返済してください旦那様!?」
「知るかボケェ。お前のルートだけは死んでも行かねぇから」
「お願いよ!獄中生活なんて絶対にイヤ!それに、カズマさんの事、ずっと待っていたのよ!?カズマさんの幸運がどうしても必要なの。もう一度エルロードに行ってひと稼ぎしましょうよ!?」
「一人で逝っていろ、駄女神が!?」
奈落の借金地獄に引き込む気マンマンの瞳で、告白してくる奴の元になど誰が帰るかよ。
それに俺にはウィズと言う心に決めた人が居るんだ。
駄女神など相手にしている時間はない。
◇お仕置き◇
「カズマさん、冗談にならないわ。絵面が最悪だもの!?どこかから怒られるわよ!」
「あっ、そうですか」
「そんな冷ややかな目でみないで!?ひゃう!?」
アクアは水面を直視する。
ゆっくりと近づいてくる水面。
あと1分もしないうちに黒い亡者共とご対面だ。
特徴的な長い青髪の毛先はすでに水の中。食らいつく歯もなく切り裂く爪もない、大小さまざまなオタマジャクシは、ひたすら髪にまとわりつきヌメヌメと蹂躙の限りを尽くす。
そして群がるオタマジャクシが跳ね上げた飛沫。
ヌメついた飛沫がアクアの頬を伝った瞬間。
アクアの顔は、くしゃくしゃに潰れたレシートのように顔を歪め。
「ゆるして~~~~!!」
赤子のように泣き始める。完全にガチ泣きだ。
そしてボロボロと零れ落ちていく涙に、オタマジャクシが我先に群がり跳ねる。
なんてシュールな光景だろうか。
「カズマさん!許して!?謝るから!反省するから!!」
「嘘つけ。…いや。お前の事だ。しばらく反省はするだろうな。だが大金が入ったら、すぐにでもギャンブルに使う気だろ。今のお前の眼は、そう言う眼だ。負けが込み過ぎてドブの方が綺麗にみえる、死んだ魚の眼だ。次はなんだ?ウマか?それともボートか?」
「そ、そんなことしないわよ!<チン!>ちゃんと貯金するから!<チン!>あ~!誰かそのチンチンと鳴るベルを止めて~!?」
動揺するアクアにベルは、これでもかと激しく鳴る。
思った通りだ。この見かけは宝石のように美しい瞳。
普通の人なら、この容姿と瞳に騙されるであろう。
しかし、その奥に眠るドロッドロに汚れたナニカは、ダメ人間がもつ汚れそのものだ。
モドキにはなくアクアにはある汚れ。
きっと、モドキと別れてからギャンブル沼に浸かってしまったのだろう。あぁ、可哀そうに。 (カズマさん、妙に詳しいのね。専門家みたい。)
気配を感じると、いつの間にか隣にはモドキがいた。ジト目で俺を見つめてくる。
また勝手に人の頭を覗きやがって。
まぁ、いい。答えは簡単だ。
なぜ俺が、そこまで詳しいかって? 毎朝、歯を磨く時に鏡に映るからだ。
(自分がダメ人間って自覚はあるの…)
失礼だな。モドキが蔑んだ瞳で指摘をして来るが無視だ。無視。
自分がダメ人間である事なんて、百も承知。引きこもり始めてから半年経ったあの日だ。 PC画面のまえでプライドを捨てボトラーに落ちた、あの時から充分に自覚しているさ。
だからこそ解る。
この腐った性根は簡単には治らないと。
「アクア、4〜5年ぐらい不味い飯を食って反省してこい。覚えていたら迎えに行ってやるから」
俺はアクアに満面の笑みを向けると、威嚇とばかりに犬歯を見せてくる。
「牢屋なんて、絶対にイヤ!玄武、お願いあなたからもカズマさんを説得して!?主のピンチよ」
助けを求めるアクア。だが、モドキは口元を歪めて明らかに不満気だ。
「え~、このまま入れ替わって、だらけた生活を送るのもアリかな?って思い始めているんですけど…ダメ?」
「ダメに決まっているでしょ!?」
アクアは縛られた身体を限界までウネウネと動かす。
そんなアクアに抗議の眼差しを向けられたモドキは、肩を落として俺に視線を向けて来た。
「カズマさん?今更なんだけど、マスターのこと許してあげられない?」
「無理」
可愛くおねだりをして来るモドキに俺は即答した。
「そこを何とか、お願い!一応、あんなのでもマスターだから…」
「ねぇ、カズマさん。“一応”とか言われたんですけど。私が主なのに“あんなの”呼ばわりされたんですけど!?」
「マスターも、もっと反省の色をみせて!楽して儲けようとするから、こんな事になるんですよ。ダメダメマスターって自覚はあるんですか?」
「うぅ~、ぐやじい!!カズマさん、ぐやじいよ~!!本当だったら今頃、羨望の眼差しを一身に受けて、感謝の言葉の雨を受けていたはずなのよ。国教がアクシズ教に代わっているはずだったのよ!?なのに…なのに…なんでこうなるのよ~!」
俺に言われてもな…。
あとアクシズ教が国教になる事だけは、俺が絶対にさせないからな?
ほくそ笑むモドキにアクアは、悔し涙を浮かべる。
「ほら、マスター。いい加減にプライドを捨てて、心の底から謝罪してください」
モドキはアクアを諭す。
こんな状態になっても、まだ捨てきれないメンツがあるのかコイツ…
アクアは、モドキの言葉に苦そうな表情を浮かべると、俺とモドキをチラチラと交互に視線を向け。
「うぅ~~。申し訳ありません、カズマ様。私の浅はかな行動でカズマ様のお金を使い込んでしまいました。すぐには返せませんが、少しずつ返済していきます…」
アクアは唇を噛みしめ、謝罪の言葉を口にした。
びみょ~に、いつもと雰囲気が違うな…。これがアクアの本気の謝罪なのだろうか?
「お願いします…」
ガラでもない弱々しい声。
アクアの瞳は先ほどまでの汚れが消え、ウルウルと涙を溜めながら輝くものへと変わっていた。
「お願いよカズマさん、マスターを許してあげられない?」
「でもな…」
「「お願いします」」
重なる二人の声。俺は数秒の熟考をする。
まだまだ、腹の底から湧き上がる文句はあるが…
「ホントか?」
「ホントよ!」
「ホントにホントか?」
「ホントにホントだから、お~ね~が~い~し~ま~ず~」
「カズマさん、許してあげられないかな。失ったお金の返済は私も手伝うから。それにベルも鳴らないでしょ?」
確かにアクアの言葉に、ベルは反応を見せない。
本当にアクアが反省していると言う事だ。
訪れる沈黙。俺は…
『…チィ、はぁ…このまま落としたら、デートが楽しめそうもないな』
俺は奥歯をかみしめ、むせ返りそうな鬱憤を呑みこんだ。
「「カズマさん!!」」
我ながら甘いと重々と承知している。だが、柄じゃないな。
俺はロープをたぐり、アクアの体を少しずつ引き上げていく。
「が~ず~ま~ざ~ん!?」
鼻提灯まで作りやがって。
器用な奴だな…泣いているのか、喜んでいるのかハッキリしろ。
吊るされたアクアはボロボロと涙を流しながら、綻んだ笑みをみせてきた。
お仕置きしきれない自分が情けない。あ~ぁ。あまあまだな、俺は…
だが…なんとなく、肩の荷が下りた気がした。
どこか、ほっとしている自分がいる。
煮え切らない結果となってしまったが、これが俺達らしい気がするのだ。
(ふふ、カズマさんは、そうでないとね?)
モドキ…恥ずかしいから内心を覗くんじゃねぇ。
唐突に念話で語りかけて来るモドキ。
横目で隣をみてみると、そこには満足げに笑みを浮かべる彼女がいた。
(いいじゃない。お金なら本当に私が手伝ってあげるから。5年もすれば甲羅に角質(鉱石)が溜まるわ。30年もすれば20億ぐらいすぐ貯まるわよ)
モドキはウインクをする。俺を気遣ってくれるのはありがたいが…
30年は気が遠くなる…神様からすれば一瞬なのだろうか?
「カズマさん!はやく降ろしてよ~」
先ほどまでの緊張感はどこへやら、アクアはケロッと何事もなかったように、涼しい顔をして俺に催促をしてくる。
「はぁ。しょうがねぇな…おい、アクア!今回はモドキに免じて「こんちわ~す。出前お持ちしやした~」」
…出前?
ウィズ魔道具店の裏庭に透き通った活きの良い声が響きわたる。
声のする方向に視線を向けると、魔道具店の裏口からだ。
俺は隣にいるモドキに目を配ると、小刻みに顔を横に振っている。次にアクアに目を向けると…“滝のように汗を流している”
「おい、アクア…お前が注文したのか?」
「あはは…今朝、注文していたのよ。一緒に食べる?美味しいわよ」
アクアは乾いた笑い声で視線を合わせようとしない。
金がねぇと言っていたのに出前とは…ずいぶんと余裕だな、この野郎。
俺のボルテージがゆっくりと上昇し始めたその時、ガチャっとノブが回る。
「あ、いたいた。失礼します。ご依頼主のウィズ様はいらっしゃいますか?」
この駄女神め…ウィズの名前を使って注文しやがったな。
いや…そうか。考えてみれば当然だ。
借金取りから逃げ回っているせいで、自分の名前が使えないのか。
そこでサムイド―に居るウィズに、白羽の矢が立ったんだな?
それも金がねぇってコイツは言っていた。
空腹に耐えきれず頼んでしまったが金がない。
だから、頭の悪そうな金策をウィズの姿でやっていたのか…
古びた木の戸が開かれる。現れたのは、風呂敷を片手に白の割烹着を着た20代ぐらいの男性であった。
「あ~、すまん。ウィズの連れだが…ウィズは不在だ。俺も持ち合わせがないから、受け取る事ができないんだが…」
「そうですか。まいったな…生ものですし返品となると処分するしかないんですよ」
苦い顔をする料理人。
「なんか悪いな…後日支払いだったら俺が受け取るぞ?」
というか支払わせてくれ。なにせ元パーティーの不始末。
注文した本人が俺の後ろで呑気に吊るされているのに、商品を受け取らないと言うのは罪悪感がハンパない。
俺の発言に料理人は数秒、難しい顔をしながら悩むと。
「そうですか?…ウィズ様はお得意様ですし、そのご友人でしたら…じゃあ、お任せしてしまってもよろしいでしょうか?」
「ああ、いいぞ…(…お得意様?年がら年中金欠病に悩まされていそうなウィズが?)」
「では、こちらがご注文の品。霜降りガニの海鮮ちらしと特上寿司です。お吸い物は回遊マグロのつみれを入れていますので、お熱いうちお召し上がりください。今後とも料亭“新しい風”をよろしくお願いします」
「「なぁ!?」」
風呂敷から現れるいかにも高そうな2段の重箱。そして竹筒。
俺は恐る恐る重箱の蓋をあけると…眩しさを感じそうになる海鮮の数々が、そこにはあった。
「か、カズマさん…このお店って朝、屋敷に向かう時に話した、と~~ってもお高いお店よ!?」
「言われなくても分かるわ…おい、アクア。お得意様って、このお兄さんは言っているが…まさか、ウィズの金でずっと美味いもんを食っていたなんて事は…流石にしていない…よな?」
「ま、マスター?まさか、そんな頭の悪い事は…」
俺とモドキの厳しい追及の眼に、アクアは…
「…せっかくリスクを負うなら、美味しい物を食べたくない?きゃ!?」
<ドポーン!!>
にぱっと輝いた笑みを作るアクアは、激しい水しぶきをあげながら水槽へと落ちて“逝った”。
俺は最後の良心(ロープ)を右手から離したのだ。
「マスター。哀れよ、哀れすぎるわ…」
モドキは盛大に天を仰ぐ。
頬を伝う一筋の涙をみると、思わず同情してしまう…まぁ、俺も流しているんだがな。
『助けてカズマさん!?オタマジャクシが!?オタマジャクシが!?』
水槽から聞こえてくる断末魔。この際だ。
金食い虫の古いアクアの事は、もう忘れよう。
明日からは強くて色々と便利なニューアクア様だ。
「明日からよろしく頼むぜ、モドキ…いや、アクア!」
「現実逃避しないで、カズマさん」
読んでいただき誠にありがとうございます。
いつの間にか目標にしていたUA一万に到達していました。
原作のアニメ3期の効果ですかね?
次はUA1万5千を目指して精進していきます。
引き続き、このヒロインにもルートを!も楽しんでいただけたらと思います。