このヒロインにもルートを!※更新停止※ 作:来世から本気をだす
出来るだけ早いうちに、続きを投稿したいと思います。
※補足※
突然ですが、記憶喪失のカズマがウィズと出会う、ちょっと前の出来事を1~2話入れさせていただきます。
◇暑い日には、やっぱりコレだね!◇
肌が、ジットリと汗ばむアクセルの夜。
滅入るような暑さに、町民のほとんどはウィザードが経営する氷屋から、氷柱などを買い。
火を使った旧式のランプなど使用せず、魔石式の魔道ランプの灯りで夜を過ごす。
しかし、それは多少なりとも生活基盤が整っている一般町民の話。
その日暮らしが基本の冒険者達は、そんな贅沢をするお金などない。
年中、金欠病の冒険者たちは夜の花。
酒と涼しさと灯りを求めて、ギルドに集う。
「ねぇ、ダクネス…グラスが空いているよ?ルナさ~ん、クリムゾンビア2つ持ってきて~!」
クリスの注文に「は~い!」と女性の声がギルドに響き、奥の厨房からガチャガチャとグラスの音が鳴る。
まわりの冒険者たちは汗を拭い。
笑い声と共に冷えた酒やシュワシュワを酌み交わし、新しいクエストが張り出されることを今か今かと遠巻きに眺めながら一杯、二杯とジョッキが空になっていく。
変りばえのない、夏の冒険者ギルドの日常光景だ。
「はい、お待たせしました!クリムゾンビア2つです」
「ありがとう、ルナさん!」
冒険者ギルドの看板娘、ルナは器用に人混みをすり抜けて運んでくる。
その動きは慌ただしいが、笑顔を絶やさずに対応してくるルナにクリスはついつい顔が綻んだ。
そして、今にも泡が零れそうなジョッキをダクネスに差し出し、クリスは自分の懐から持参した高そうな紙袋をテーブルの上へと持ち出した。
「さっさ!飲んで、飲んで!あと、これ王都で手に入れた枝豆なんだけど、頂いちゃってよ。遠慮なんかは、いらないからさ」
「うむ、ありがとう…」
ダクネスは入口から駆け抜ける夏の夜風に吹かれながら、ぶっきらぼうに頷く。細い眼でクリスを見つめるその姿は、硬く結ばれた唇と険しい表情が特徴的だ。
「だが奢られてばかりじゃ」
「いいの、いいの!いくらでも飲んでくれて構わないよ!10杯でも20杯でも奢ってあげるさ」
クリスは満面の笑みで景気よく接待し続ける。
決してダクネスのグラスが、空にならないように注意を払いながら満たし続けるのだ。
「はぁ、クリス…魂胆は読めているぞ。私を酔い潰させるつもりだろう。だが、ここに来る前にアルコールの耐性スキルを獲得しておいた。今の私を幾らおだてても酔いつぶれる事はないぞ」
「なっ…早く言ってよ?!あ~…なけなしのお金が…」
ダクネスはひきった半笑いを浮かべ、クリスを見下ろすようにして笑った。
一方、クリスはテーブルにつっぷすと、財布を取り出し中を確認して、もう一度テーブルに倒れ込んだ。
「うぅ~、これを外してくれないかな?謝るからさ…ねぇ?」
涙目のクリスは、上目遣いでダクネスに懇願する。
訴えかける瞳は、徐々にクリス自身の足首へと移っていく。
ダクネスも自然と視線の先を追うと、足首には例の魔道具がしっかりと装着されていた。
「ふん、自業自得だ。城には盗みに入るなと言っておいただろ。そろそろ足を洗ったらどうだ?」
「それはダメ!子供達の笑顔は私の生きがいなんだから…辞めるわけにはいかないよ」
「まったく…最近、警備が強化され始めているんだ。慈善活動も大概にしろよ」
「クエスト報酬のほとんどを寄付する、ダクネスがそれを言う?」
ダクネスはクリムゾンビアを一口、口に含みため息をつく。
そして、クリスも笑顔を浮かべつつも、チラッと足首の魔道具を見て、困惑した表情でため息を吐いた。
お互いに譲れない物があるのだ。
女神エリスのもう一つの姿、クリス。
それは巷で噂の銀髪盗賊団の頭。
彼女は悪徳貴族から違法に貯め込んだ資産を盗みだし、孤児院の貧しい子供たちに、ささやかな恵みを与える。
子供たちに人気の義賊である。
そんな彼女の秘密を知る人物が2人いる。
一人目は銀髪盗賊団の助手にして、ひょんなことからクリスの正体がエリスだと見抜いたサトウ カズマである。
何度も死ぬせいでエリスと親交が深かった彼は、お得意の口八丁手八丁でクリスの失言を引き出し、秘密を暴いたのである。
そして、もう一人。
全てとまではいかないが、クリスが銀髪盗賊団の頭と言うところまで知っているのが、クリスの親友のダクネスである。
王城に忍び込んだクリスとカズマは、バッタリとダクネスと会ってしまったのだ。
親友であること、義賊であること、まわりにバレたらカズマ諸共処刑されること。
そんな理由でダクネスは、銀髪盗賊団の活動に目をつぶっているのだが…
クリスは先日、大きな失敗をしてしまった。
王家が報酬代わりに配っていた、魔道技術大国ノイズの遺物。
各地の貴族や富豪、権力者などに散らばり続ける、強力な魔道具の存在を重く見たエリスは、大元である王城に忍び込んで全てを封印しようとしたのだが、なんと言う偶然か城にはカズマ達が居たのだ。
そして城の警備についていたダクネスに捕まって、魔道具を付けられてしまったのである。
「ぷは~…こうなったらヤケシュワだよ。上手くいっていたハズなのに…なんで、薄暗い保管庫なんかに隠れていたのさ?」
クリスは飲み干したクリムゾンビアのジョッキを机に置き、ぶつぶつと呟いた。
「そ、それは…カズマが保管庫に眠るいかがわしい本を狙っていたのでな。盗みを理由に魔道具を付けてアクセルに連れて帰ろうと思って…。つい、クリスをカズマと勘違いしてしまったのだ」
険しい表情で視線を鋭くするクリスに、ダクネスは頬を赤らめ、視線を逸らしながら言い訳する。
「だからって、いきなり飛び掛かってきて付けるのは、どうかと思うよ?それに解除コードを<ごしゅじんさま、イヤらしい私を虐めてください>にするのは、おかしいんじゃないかな?魔道具を使ってカズマ君と、どんなプレイを楽しむつもりだったのさ」
「ぷぷぷ、プレイだなんて?!わ、私はただ…攻めている側が、徐々に責められると言う展開に興味があって…」
クリスの困惑な表情にダクネスは狼狽える。
真っ赤になった頬と共に照れ笑いを浮かべ、クリスの言葉にただただ動揺しながらぎこちなく反応するばかり。
しかし、それが何処となく嬉しそうでもあり。
この一連の流れが、彼女の欲を満たすのだからつける薬がない。
「もう、その特殊な性癖をのぞけば至ってまともなのに…。だいたい、昔から思っていたけど、どこで覚えてくるのさ、そんな特殊な事を…」
クリスは呆れた表情でダクネスを見つめた。
その眉間には微かな皺が寄り、リスの如く頬をぷくっと膨らませる。
そんなクリスにダクネスは、真っ赤な顔をしながら消え入りそうな声で、か細く…
「…………本」
「本?」
クリスは首をかしげながら、「本?」と問い返すと、更に高揚するダクネス。
赤を通り越して、ピンクになりそうな彼女にクリスは再び深いため息をついた。
「王都やアクセルで、そんな過激な表現って解禁されていたっけ?」
黙ったまま、左右に頭を振るダクネスに、クリスの疑問は深まっていく。
「たしか、シンフォニア家が王女様の目が届かぬように、全面的に禁止にしたような…。まって…。もしかして、保管庫に明かりもつけないで、隠れていたのって…「クリス、それ以上の追及は警察行きだぞ?」」
色がなくなった真顔のダクネス。
一見、無表情のような、その顔は脅迫的で、もの言わせぬ圧が込められていた。
「うぅ~~、<ゴクゴクゴク!>ぷは?!ルナさん、もう一杯!今日は記憶が飛ぶくらい飲んでやる!!」
(残念…ざんねん過ぎるよ…ダクネス)
一人、心の中でダバダバと涙を流すクリスであった。
◇真夏の怪談◇
「ねぇ、カズマ君には黙っていてあげるからさ、外してくれないかな?」
「飲み過ぎだぞ、クリス?それに私は脅迫には屈しない。伝えるならつたえればいい。ただし、その時はダスティネス家に二人とも軟禁させてもらうがな」
「うぅ~~、ダクネスの頑固者!」
半ば酔っ払ったクリスは、机に腕枕をひきながら、子供のように頬を膨らませてダクネスを見上げる。頬は赤みがかかり、とろんとした目が彼女の酔いの深さを物語っている。
そんなクリスにダクネスはジョッキを片手に薄笑いを浮かべた。
「ふん、いくらでも罵るがいい。クリスには、いい薬だ。最近の銀髪盗賊団は無茶な盗みばかりしていると噂で聞く。しばらくは、私の目の届くところで反省するといい。逃げ出してもいいが、無断で王都に行くような、長距離テレポートをした際は、魔力を封じさせてもらうからな?」
「むっ~~~?!ダクネスのドM!変態!わからずや!」
「あぁ~、足りない。足りないな。カズマに比べれば、そよ風のようなものだ」
クリスの罵詈雑言にも、ダクネスは全く動じる様子もなく、ゆっくりとクリムゾンビアを飲み干した。その目は微笑んでいるようで、まるでクリスを子供の様にあしらっている。
そんな涼し気なダクネスの背後に、真っ赤な目をランランと輝かした。
一人の少女の影が現れた。
「ほぉ~…、そんなに刺激が欲しいですか。ならば我が究極の一撃にて、町が吹っ飛ぶぐらいの刺激を今から与えてあげましょうか?」
「ぶっーーーー。め、めぐみん?!いつから、そこに?!」
「今しがた来たんですよ。カズマが居ないと氷を作ってくれる人が居ませんからね」
ダクネスの背後には、目を細めながら不機嫌そうに見下ろす、爆裂魔法使いがそこにはいた。
「えっ…めぐみん、私も氷を作れるよ。わざわざギルドに来なくても言ってくれれば、痛い!なんで、いきなり足を踏むの?!」
「空気を読んでください!それだから、いつまでも影の薄いボッチなんですよ」
「今の話にボッチは関係ないでしょ…あと!私、ぼっちじゃないからね!?」
フワッとさり気なく、めぐみんの背後から現れるゆんゆん。
影の薄い彼女は、踏まれた足の痛みに必死にこらえながら、涙目でめぐみんの襟首に掴みかかる。それに対して、めぐみんは冷ややかな視線を向け、最後には「ふっ」と鼻で笑い飛ばしたのであった。
「こんばんは、めぐみんとゆんゆん」
「こんばんは、クリスと欲しがりさん?」
「はぅ?!それは私の事かめぐみん!」
現れた友人にクリスは、空になったジョッキを掲げる。
そんな余裕の態度を見せるクリスとは対照的に、どこか挙動不審で、羞恥心がこもった表情でプルプルと赤らめるダクネス。
ダクネスは、慎重に言葉を選びながら、気まずそうにめぐみんに話し始めた。
「めぐみん…今朝はすまなかった。だから、ここで爆裂魔法はやめくれるか?我々のパーティーに請求される、賠償金額でカズマは二度と帰って来なくなる」
「さぁ…どうしましょうか。ダクネスの態度しだいですね」
めぐみんは腕を組み、目を細めてダクネスをじっと見下ろす。
震えるダクネスに、めぐみんの瞳には怒りの炎が宿っている。
そんな彼女たちのやり取りに、クリスはゆんゆんに忍び寄り、小声で問いかけた。
「ゆんゆん、どうしたのさ…めぐみんが、ずいぶんとご機嫌斜めのように見えるけど…」
「ように見えるじゃなくて、ご機嫌斜めなんですよ。今朝、ダクネスさんにめぐみんのプライドが粉々に砕かれたんで…」
「プライド?」
首を傾げるクリスに、ゆんゆんはバツが悪そうに口元を手で隠しながら…
「実はですね、ここ最近、カズマさんが帰って来ない事で、めぐみんが意地を張っちゃっているんです。それで、ダクネスさんとの二人だけでクエストをこなしているんですが…ロクな作戦を立てる事が、出来ていないらしいのですよ…」
「へぇ~、そう言えば朝も大きな爆発音がしたもんね。どんな作戦を取っているの?」
「それが、威力を抑えた爆裂魔法で“囮ごと”焼き払う戦法らしいです…」
ひときわ表情が険しくなるゆんゆん。
クリスは先ほどまでの、ほがらかな酔いがスッーと、風に吹かれるように抜けて行ってしまった。
「…ちょっと待って。…もしかしなくても、その囮ってダクネスだよね?なんでダクネスがピンピンしているのさ⁈」
「だ、だからめぐみんが、あんなに怒っているんです。ダクネスさんが、知らぬ間に爆裂魔法に慣れてしまったみたいなんですよ」
「な、なれ…、慣れで済む問題?脳筋すぎない?!」
クリスは目を見開き、驚きの表情を隠せない。
あまりの衝撃にジョッキを落としそうになるが、辛うじて持ち直した。
だが、話しを呑みこんだクリスの表情は凍りつく。
これが真夏の定番。
怪談話と言うものなのであろうか?
しかし、ゆんゆんの怪談は終わりを迎えてはいなかった。
「それで、めぐみんは爆裂魔法を受けても元気なダクネスさんの事が、気に食わなかったらしくて…。ダクネスさんに知らせず、少しずつ威力を上げていたらしいのですが…。今朝、最大火力を涼しい顔で耐えきったようです」
「もう一回、言うよ。なんでピンピンしているのさ⁈」
「単純にめぐみんより、ダクネスさんの耐久力の方が圧倒的に上としか…」
『聞こえていますよ、二人とも!そんなに味わいたいのですか、我が至高の一撃を!』
「「ご、ごめんなさい?!」」
◇やけ食い◇
積み上げられた空の皿。
少しでも経験値を稼ごうとやけ食いするめぐみんは、5枚目となる皿を積み上げると同時に、不機嫌そうに叫んだ。
「おかわり!」
静かなギルドに、めぐみんの怒りを帯びた声が駆け巡る。
必死に影を薄くしようとする、まわりの冒険者たち。
めぐみんの隣では、ダクネスが静かにジョッキを傾け、クリスは、困惑した表情で視線を逸らす。そして、ゆんゆんは震えながらもめぐみんの向かいで、ワタワタと助けを求める視線を振りまくばかり。
4人掛けのテーブルに相席する友人たちは、ひき笑いを漏らしながら、顔を見合わせるのであった。
「お待たせしました、カエル肉の竜田揚げです」
「遅いですよ、あと数秒遅ければ、このギルドごと爆裂させていました」
「ひっ!」
めぐみんの気迫に、ルナは慌てて持ってきた皿をテーブルに置き、逃げるようにあとずさる。
「まったく…」
そして、めぐみんはカエルの竜田揚げを一口頬張り、不満気に呟く。
「なにか文句、ありますか?」
「「「いえ、別に…」」」
めぐみんの気迫に押され、ギルド内は一層静まりかえる。
誰も彼女に異を唱えることなど、出来るはずもない。
めぐみんが撃つと言ったら、冗談抜きで撃つからだ。
そんな、爆発物のような彼女に声をかけられる人など、一人しかいない。
「ねぇ、ゆんゆん。めぐみんに声をかけてあげてよ…」
「わたしですか?!」
ゆんゆんの耳元に、クリスがそっと囁く。
「そうだよ、ライバルを自称していたでしょ?ガツンと言ってあげなよ」
「そ、そんな…むりですよ………えっ?」
クリスに諭されたゆんゆんは、ふと気づく。
いつの間にか周囲から、羨望の眼差しを向けられていることに。
「むむむ、むりですよ?!」
「できる!ゆんゆんなら出来るよ」
クリスは励ますように微笑む。
ダクネスも、懇願するような視線を向け、周囲の冒険者たちは、息を呑んで成り行きを見守っている。そして、めぐみんは、ふんっと鼻を鳴らした。
「自称、ライバルよ。なにか言いたげですね?」
めぐみんはカエル肉を口にしながら、眉間にしわを寄せて問いかける。
「さっ、ゆんゆん!今こそ、活躍の場だよ!」
「そ、そんな~」
泣き言をつぶやくゆんゆんは、クリスに背中を叩かれる。
ボッチの宿命と言うべきか…
体育のペアを作る時しかり、運よくペアを組めても、病欠気味のペアが本番の当日に休んで、壇上に一人立たされる時しかり。
目立ちたくない時に、一番目立ってしまうのである。
「頑張って、ゆんゆん!」
クリスの応援を皮切りに、周囲の冒険者たちがここぞとばかりに便乗し始めた。
「そうだ!爆裂の事しか考えてない、頭がおかしい子に言ってやれ!」
「ゆんゆん!かわいいよ~」
「いい加減、睡眠妨害なんだわ。ガツンと説教をしてやれ!」
本人を取り残して、会場はヒートアップしていく。
ゆんゆんは、周囲にヘルプの視線を振りまいても、返ってくるのは煽り立ててくる声援の声ばかり。
緊張で膝が震え、視線をさまよわせる。
最後の頼みの綱として、ダクネスに視線を向けてみたが…
気まずそうに明後日の方向へと、視線をそらされてしまった。
「野次馬はあとでわからせるとして…さあ、我がライバルよ?なにを聞かせてくれるんですか」
不敵な笑みを浮かべるめぐみんは、ゆんゆんを挑発するように見つめた。
もう、逃げられない。
ライバルを自称するボッチは意を決して喋りかける。
「…め、めぐみん!元気を出して。唯一の”取り柄”が効かないぐらいで落ち込んでも仕方がないよ!」
サッとギルド内の空気が冷たくなった。
まるで、今しがたの騒ぎが嘘だったかのように、皆が無言で手元のグラスを口に運ぶのだ。
「えっ…。え?み、みなさん?」
誰も返答してくれる者などいない。
これもボッチの性と言うべきか…
目に見えた地雷を、ここぞとばかりに踏んでしまうのである。
押し黙る冒険者たちをよそに、ワナワナと震えているめぐみん。
「いちいち…カンに触ることを言いますね。このボッチは!!!」
「きゃ?!」
机を踏み台にしてめぐみんは、ゆんゆんに飛びかかったのである。
「毒を吐くのは、この口ですか!この口ですか!!」
「ひ、ひたい!めぐみん!ひたいよ(痛い)」
馬乗りになっためぐみんは、ゆんゆんの頬を容赦なくつねり始めた。
あわせて前後へと揺さぶり、頬はみるみるうちに赤くなっていった。
「私の全力全壊の最高に近い一撃を受けてなお、ダクネスは爆心地で平然とたたずんでいるんですよ。あまつさえ、魔力切れで倒れている私に、物足りなそうな顔で「め、めぐみん…遠慮しているのか?私はまだまだ余裕だから、もっと威力を上げていいぞ。その…刺激が足りなくて…」と言われた私の気持ちがわかるのですか?!」
「お、落ち着いてめぐみん~~!」
顔を歪めながら必死に抗議の声を上げるが、めぐみんの手は緩まる気配はない。
抵抗も虚しく、めぐみんの猛攻は続いていくのである。
なんと哀れなボッチである。
◇スティール◇
「ダクネス…太りました?」
「な、何をいきなり言いだすのだ、めぐみん!」
ダクネスの顔が瞬時に赤く染まった。
「杖を奪われた、八つ当たりですよ」
頬杖をつきながら、つまらなそうにカエルの竜田揚げを口に頬張るめぐみん。
騒動は静まり各自の席で料理を注文しなおすこととなったのだが、災いを引き起こした張本人の目には鬱憤と諦めが混じっている。
争いは思わぬ形で決着となった。
めぐみんの杖が消失したのだ。
さて、いったいどこの盗賊が盗んだのであろうか?
流石の爆裂娘でも杖無しでは、無詠唱で放つことは厳しい。
数秒の隙が出来てしまう。
その隙はアクセルの町では致命的なのだ。
冒険者たちはめぐみんの異常性を熟知している。
そして他の術を持たないことも知っている。
彼女に対する警戒は解かれてはいないが、いざとなれば徒党を組んで詠唱を妨害すればいい。
取るに足らない危険として警戒を下げたのだ。
ボッチの尊い犠牲は無駄ではなかったのである。
そんな、低評価のレッテルを張られためぐみんは、ふつふつとボルテージを上昇させていく。
爆裂しかないと、信じきっている周囲に苛立ちながらも現実問題、爆裂しかない。
めぐみんは険しい表情を作りながら、怒りの矛先を定めた。
それは、ニマニマとしながら枝豆を頬張る盗賊少女である。
「あ~美味しい。一仕事あとのシュワシュワは格段に美味しく感じるよ」
同じテーブルを囲む銀髪の盗賊は軽快にジョッキを煽る。
「む~…白々しいですね。ちゃんと後で返してくださいよ」
クリスは一瞬、何のことか分からないふりをして、いたずらっぽくウィンクする。
「う~ん。帰る時には店の入り口に置かれているんじゃないかな?」
「傘じゃないんですよ!」
唸るめぐみんの反応に、クリスはケラケラと笑い声を上げた。彼女の笑顔は、どこか悪戯っぽさを感じさせるが、めぐみんの怒りを濁すには十分だった。周囲の客たちも、その様子に目を向けて微笑んでいる。
「それにしても…ダクネス?めぐみんの言う事も、あながち間違ってないんじゃない?」
「失礼な……」
気まずそうに顔を引きつるダクネスの額に、一筋の汗が流れる。
普段のクリスなら、親友にむかって決して言わないであろう発言も。
足首の魔道具、親友の痴態、めぐみんの大暴れと度重なるイベントに加え、そんなアクシデントを記憶から洗い流す様に飲み続けたシュワシュワ。
今のクリスは酩酊に一歩手前の、深酔い状態なのである。
「だって、こんなに暑いのに冬から服装が変わってないんだもん。なに?暑さも快楽に変えられるわけ?ヒクッ」
酔いがまわってトロンと垂れた目でダクネスを舐めるように見回す。
その目に釣られるように紅魔族の二人も、ダクネスに視線が集中する。
「わ、私をなんだと思っている」
「爆裂魔法すら快楽に変える変態さん」
「……否定できないのが辛いな」
「そういえば…ここ最近、別々にお風呂に入りますよね。寝巻も厚手の服に変わりましたし…」
ダクネスはクリスとめぐみんの視線に堪え切れずくるしそうに、そっぽを向く。
確かにクリスの言っている事は正しい。
席を囲むめぐみんやゆんゆんに加え、周囲の冒険者は一人残らず薄手の夏服である。
しかし、ダクネスは違う。
これから、ひと狩り行くのかと言いたげな、何時もの黄色い服にゴツい鎧を身に纏っているのだ。
「それとも…爆裂魔法に耐えられる秘密でもあるのかな?」
クリスの言葉にダクネスはビクッと一瞬、震えた。
「ク…クリス、だいぶ酔っているようだな?そろそろ引き上げ「へぇ〜ほぉー、それはいい事を聞きました」」
ダクネスの一瞬、見せた不審な挙動を逃すめぐみんではない。
格好のネタを前にした紅魔族の問題児は、目を鮮やかに輝かせ叫んだ。
「クリス。ダクネスの鎧を引っぺがすのに協力してください。隠された贅肉を晒してあげましょう!!」
勢いよく立ち上がっためぐみんに対し、ギルドの冒険者たちは一斉に反応した。
なにせ、ここは冒険者ギルド。
多少、女性もいるが大半の冒険者が、酒に酔った筋骨隆々の野郎ども。
獣の群れのど真ん中に、めぐみんが今から豪勢な餌を放りこむと言うのだ。
そして…
「おお、いいね!<バインド!>」
残念なことに深酔いしてしまった、クリスも加勢に加わってしまう。
「あ、おい、クリス!な?!」
彼女自慢の鉄ワイヤーが、軽やかに手から放り投げられ、空中を舞いながらダクネスに向かって伸びていった。その鉄の蛇は、一瞬で彼女の目的に到達し、ダクネスの身体を一気に縛り上げる。
「さぁ、その緩んだお腹を見せてもらいましょうか?」
「や、やめろ~、はなせ~!」
地面に崩れ落ちるダクネスを目の前にして、めぐみんは手をワキワキさせながら近づいていく。その横で、かた唾を飲む野次馬野郎ども。
「めぐみん、ダメだって!悪ノリしすぎだよ?!」
ゆんゆんは急いでめぐみんに駆け寄り、その肩を掴んで制止をかけた。めぐみんの小柄な体がぐっと止まる。
「大丈夫ですよ、上着を奪うだけです。まぁ、お腹ぐらいはちょっとめくるかもしれませんが。それにダクネスの顔を見てください」
「えっ?あ…」
めぐみんはゆんゆんの顔を見て、ニヒルな笑みを浮かべ、フイッと顎でダクネスの方へと視線を飛ばす。釣られてゆんゆんもダクネスを見る。
「くっ、例えこの身が汚されても心までは!」
「ねぇ、ダクネス…ヨダレたれているよ」
「…クリス。出来ればもう少しキツくしばって貰いたいのだが…」
「開き直らないでよ?!」
表面上は抵抗している素振りを見せるダクネス。
だが、口元から垂れる液体のせいで台無しである。
めぐみんは、ゆっくりとダクネスの背後に回りこみ、両腕をダクネスの腰に回し、しっかりと抑え込んだ。
「ふふ…それじゃ、覚悟はいいですねダクネス」 。
「うぅ…やっぱり、やめないか?その…私でも羞恥心というものが…「じゃ、秘密とやらを教えてくれますか?」そ、それは…」
ダクネスの耳元で甘く囁かれる悪魔の交渉に、一層溢れるヨダレ。
「交渉決裂ですね…。お願いしますクリス先生!」
「オッケー、それじゃあ逝ってみようか!<スティール!!>」
※更新停止とチラシ裏移動の経緯※
未だに読んでいただいている方、長らく放置してしまい申し訳ありません。
誠に勝手ながら私の不手際でプロット集を消失してしまい、復旧の目途がたたづ更新停止をお伝えする運びとなりました。
加えて私の実力不足から消失する前のプロットとチグハグになる可能性が高く、完成度が低いため今作品を習作扱いとしてチラシ裏に移動しました。
現在、二章の初めから書き直しor一からの出直しを検討して執筆しております。
ご期待を裏切ってしまい申し訳ありません。
最低限、完結はできる様に続けていければと思います。