このヒロインにもルートを!※更新停止※   作:来世から本気をだす

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4話、焦るニート。

 

◇商いに失敗した夜◇

 

「村は主に獣人たちが野菜の畜産をして自給自足の生活をしている。残りはちょっとした商業や林業があるが目立つほどではない。情報源は週一の新聞・・・」

(バニルといったい何があったんだよ…)

俺は小声でぶつぶつと手に持ったメモを読んでいる。

決して経営戦略やマーケティングの事を考えている訳ではない。

フリだ。

考えているフリ。

俺はリビングを犬の様にあてもなく歩きまわり、暖炉の前で火を見つめる彼女の背中を遠巻きにチラチラと覗いている。

 

「売れませんでした・・・」

 

(ひっ!?)

な、なんだ・・・ウィズの独り言か。

先ほどからワザと、ウィズに聞こえるか聞こえないか程度の声で、独り言をつぶやいている。

今は考え事をしていますとアピールして、話しかけづらい雰囲気を作っているつもりだ。

とうの本人は、時おり「はぁ・・・」とか「ふっ・・・」とため息をついて、うわの空。

 

(なにを思い悩んでいるんだ?)

俺の言葉を聞いてはいないだろう。

あぁ~本当は声をかけてやれば良いのだが。

この会話のない今の状況は正直…助かる。

今はとても俺が話せる精神状態じゃない。

 

 

◇情けない自分◇

(やっちまった・・・・)

 

聞くんじゃなかった。地雷を踏んじまった。

もはや後祭りでしかないが。

まさかバニルの事がこんなにタブーな案件だったとは。

 

昼間は地獄をみた。

ウィズが泣き出してしまったのだ。

最初、「バニルさんは、バニルさんは…」とつぶやき。両拳を握りしめて髪が逆立つんじゃないかと思うぐらい怒りをみせ、徐々に悔しそうに表情が歪み、最後はポロポロと大粒の雫が頬をつたい始めた。

 

俺は怒ったり泣き出したりするウィズに気押されて”バニルとなにが?”など聞くことも出来なかった。

彼女が落ち着いた後、改めて理由をきいても「ごめんなさい」と、ぎこちない笑みを向けられ立ち入る隙をあたえてくれない。

 

だが。

 

もっと問題なのは、この後だ。

俺は、とんでもない馬鹿なムーブをかましてしまった。

ウィズが泣き止んで早々、場の空気の重さに耐えかねて"逃げて"しまったのだ。

あるまじき行動だ。

思いだしただけで嫌悪感が湧いてくる。あの時の俺はまさに滑稽の一言に尽きる。

早口で「え、営業いってくる!」と返事も待たずに脱兎の如く逃げだした。

 

店が見えなくなった辺りで路地裏に駆け込み、ようやく冷静さを取り戻した。同時に頭を壁に叩きつけたくなるような後悔が襲ってきた。

 

でも、仕方がないだろ!?

 

俺はネトゲばっか、やっている”ニート”だぞ!

誰だって、慰めの言葉や気の利いたセリフを言えばいいと思うだろうがな…実際に目の当たりにして出来るわけがないだろ!!

 

 

 

あの時のウィズの顔。

しばらく泣いて冷静さを取り戻した時の顔だ…

俺に気をつかって涙を袖でゴシゴシと拭い、少し腫れた目もとで無理やり笑みを作る姿。

固まってなにも言えない自分が物凄く情けなく、恥ずかしく何とも言えない感情になってしまった。

 

幼馴染を寝取られた瞬間をみた時と一緒だ。

とにかくその場から離れたかった。

 

ひとしきり路地裏で後悔した後は営業(現実逃避)に没頭した。

 

小さな事でも利益につながる事がないか?

ちょっとでも彼女が喜ぶ事はないか?

無作為に調べて住民にアプローチしまくった。

なにも考えずに「営業に行ってくる」と言い残して逃げ出したものだから、言ったことぐらいは守ろうと。

結局、とくに成果も上げられずに日が暮れてロッジに帰ってきたのだが・・・

 

(めちゃくちゃ気まずい!)

 

軽い挨拶ぐらいで夕食中も会話は無く、お互いにチラチラと様子をのぞき見ている。

なってみて思うが漫画とか小説の転生者ってマジで凄いわ…

息をするようにカッコいいセリフを吐いてヒロインの悩みをちょちょいと解決してポンポンとフラグを建てるんだから…

 

 

それに比べて俺は…

頭を抱えウィズの近くをウロチョロ、ウロチョロ。

いくら悩み歩くも彼女を喜ばせる策の一つも思い浮かばねぇ。

でも止まったらマグロのように死んでしまいたくなる。

 

 

俺は、ただバニルの事を聞いただけなのだが…なぜだ!?

 

 

 

これが人生経験不足と言うモノなのか!?

フラグを建てるどころか、まだアプローチも出来てない有り様。

いくら転生者になろうとニートの本質は一朝一夕では変わらないのか!?

 

 

藁にもすがりたい。

 

あぁ・・・誰か~。

 

(先輩方…転生者の誰でもいいので好きな子のフラグを建てるコツとか教えてくれませんかね…)

 

 

当たり前だが返答は来なかった

世界を超えても、世の中は無常である

 

 

 

◇ビビってる場合じゃねぇだろ!?◇

 

「はぁ・・・」

(ひっ!?!?)

背後から聞こえて来た、ウィズのため息。

振り返ると今度は、俺を横目で見ていた。

 

どうすればいい?

いったい何を話せばいいんだ?

本当は彼女の一挙手一投足にビクビクして、自問自答している場合じゃないんだ。

 

(ビビっている場合じゃねぇだろ!?)

俺は己の両頬を力一杯に、ひっぱたいた。

(はぁ・・・はぁ・・・お、おちつけ、俺!)

とりあえず止まろう。俺は回遊魚じゃない。止まっても死にはしない。

ゆっくりと歩みを止めて部屋を見渡す。

次はとりあえず椅子にでも座ろう。

 

「はぁ・・・」

俺は近くにあった椅子に腰かけ、肺の空気が全部抜けるような深いため息を吐く。

よし・・・止まれた。

とにかく冷静になるんだ。

こんな時はアレだ・・・あの格好をしてみよう。

 

日本にいた頃、何度も観た人型決戦兵器の主人公の親父のポーズだ。

目の前のテーブルに両肘を付け両手を顔の前で組み俯瞰するような視線する。

ゲン〇ウのポーズだ。

鷹の如く高いところから見下ろすつもりで物事を俯瞰するんだ。

・・・

・・

(ふう・・・)

だんだんと落ち着いてくる。冷静になった頭で俺は視線だけを動かし部屋をもう一度、見渡す。

目標(ウィズ)は暖炉の前で体育座りをしながらしょげている。

これは予想通りだ。

ウィズは泣き止んだ後に「お昼時ならきっと!」と店に残ったがやっぱり俺の想像通りの結果に終わったようだ。

 

これだけだったら叱られた子犬みたいで、もうしばらく見ていたい気もする。

あぁ・・・かわいい。

 

 

いかん!

 

いかん、いかん!見惚れている場合ではない。

落ち着きすぎた。気を抜けば一時間ぐらいここから堪能してしまいそうだ。

 

 

「カズマさん」

「ひゃい!?」

不意に声をかけられたので、驚いて声が裏返ってしまった。

「な、なんだ?ウィズ。」

見れば、いまだ暖炉から目を離さず背中越しで声をかけてくる。

 

「あ、あの…。その、カズマさんにお願いがあって…」

「お願い?・・・なんでも言ってくれ!ウィズのお願いなら何でも聞いてやる。やっぱりアクアか!かき氷なんて提案したバカを、とりあえず泣かせればいいか!?金が必要なら銀行強盗でも・・・」

名誉挽回、汚名返上のチャンスは向こうから来た。

昼間は藪をつついた結果、ヘビ…いや悪魔が飛び出てきたが。

このチャンス・・・逃してなるものか!

俺は壁に掛かった防寒着をとり、急いで神をぶん殴りに行こうとすると。

 

「ま、待ってください!そんな大層な事じゃないんです。その・・・」

ウィズはチラッと振り返る。暖炉の火で火照ったのか少し赤い顔で

 

「私の隣に座ってくれませんか?」

 

「へっ?」

 

 

 

<焦るニート。思い悩むリッチー。>

 




3話からだいぶ期間が空いてしまい申し訳ございません。
近いうちに3.5話と5話を投稿したいと思います。
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