このヒロインにもルートを!※更新停止※ 作:来世から本気をだす
出来るだけ控えてるつもりなのですが今回の話は
・このすば!七巻の重要な部分に軽く触れています。
・ファンタスティックスデイズのキャラが出ています。
・独自設定が多量に含まれています。
なので、ネタバレを嫌う方『読み飛ばし推奨』とさせて頂きます。
お越し頂いたのに誠に申し訳ありません。
一応、この話は読まなくても次話は読めるように作っているつもりです。
来週末には次話を投稿する予定なのでお待ち下さいませ。
一人。
また一人とひきつった顔をしながら、ウィズから離れていく。
崩れそうな笑顔を必死に保ち、彼女は再び通りかかる獣人に声をかけていく。
しかし、誰一人として店に立ち寄る者などいない。
(なにやっているんだろ私・・・)
落ち込めば落ち込むほど。
周囲の喧噪は聞こえなくなり、自分の心の声が徐々に大きく聞こえてくる。
静かに泣きそうになるウィズ。
決して売れないからではない。
先ほどカズマに怒鳴り散らしてしまったからだ。
完全なる八つ当たり。
本当は、そんなことするつもりは微塵も彼女にはなかった。
しかし、バニルと喧嘩した日のことを思い出すと、煮えたぎる怒りの感情が湧いてくる。
人をなんだと思っているのかと。
あの日から、ウィズはバニル抜きで頑張った。
時にはアクアを頼り、新しい挑戦もしてみた。
この数日は色んな事を試してみた。
でも、結果はご覧のありさま。
ウィズは自分の才能のなさを痛感する。
バニルに頼らなければ何も成せてない自分が余計に腹立たしくて悲しくなるのだ。
そんなバニルに対してなのか、不甲斐ない自分に対してなのか分らない。
やり場のない鬱憤をカズマにぶちまけてしまったのだ。
(カズマさんまで・・・)
奥歯を噛み締める。
ウィズは不安な気持ちを強引に押さえ込むつもりで拳を作り握りしめた。
雪平原で死にかけていたカズマ。
彼にとって、ウィズとの出会いは絶望の淵から掬い上げてくれた女神であったが。
それはウィズに、とっても似たような状況であったのだ。
彼女は、初めからかき氷が売れないと薄々、気づいていた。
幾らリッチーとは言え、元は冒険者。
ウィズも人並みの感性と常識を持ち合わせている。
氷を雪が降る寒空の中で売ることなど不可能に近い。
普通に暖かい物を売った方が買われるであろうと。
しかし、”普通”では駄目だった。
ここに来た本来の目的は別にある。
”それは村長から野菜を買い付ける事”
その目的の為にはサムイドーでウィズの実力を示す必要があった。
誰が売っても買われるような物ではダメだ。
ウィズが売ったから買われる。と言う取引相手を納得させる結果が必要なのだ。
しかし、それが、どれだけ難しく。無理難題であるか・・・
負け戦を予感する。でも、逃げられない。
時間も、お金も、策も。思いつく限りを使い切り、これが最後の賭けになっていた。
そんな状況はウィズの心を真っ暗にさせる。
憂鬱な気持ちでサムイドーに向かって歩いていた時だ。
カズマに出会った。
それも、いきなり告白された。
ウィズにとって人生、初めての告白は嬉しい戸惑いを生み、彼女の真っ暗な心に淡い火を灯した。
カズマを背負いロッジに帰る最中、
『カズマさん・・・本当に来てくれるなんて・・・』
クスッと口元が緩み笑みがこぼれる。
先ほどまでの不安で暗い気持ちは、不思議なほど無くなっていた。
代わりに湧いてきたのは淡い期待。
思い出すのは数ヶ月前の花嫁騒動。
カズマのパーティーの一人、ダクネスがアルダープと望まぬ婚姻を迫られていると知るとカズマは見事に式をぶち壊した。
花嫁を式で買収したのだ。
誓いのキスの寸前。
大衆の真っ只中。
新郎の目の前でだ。
ダスティネス家が抱えていた借金20億を稼ぎだし、豚のような新郎(アルダープ)に叩きつけたのだ。
戸惑うダクネスに向かって
『豚から、お前を買ったんだよ!今から、お前は俺の所有物だ!』
事件が終わってから聞いた噂話だ。
多少の脚色があるのだろうとウィズは思ったが、それでも憧れた。羨ましく感じてしまった。
童話のお姫様の様に奪われてみたいと。
アクセルに伝わる、どこかの誰かが語った子供を寝かしつけるお話だ。
とある、お姫様が悪しき公爵に望まぬ結婚を迫られ城に幽閉されると、どこからともなく現れた泥棒がお姫様を盗み出す夢物語。
アクセルの多くの子供が一度は憧れ大人になると、そんなことは起きないと気づく物語。
しかし、そんな夢物語の様なことが起きてしまった。
友人のカズマが、それを成してしまった。
そして、救い出されたダクネスが嬉しそうにしてる姿を見て思いは更に強くなった。
自分もダクネス(童話)の様に彼に窮地を救われてみたいと。
話を聞いて以来、ウィズはカズマの事をたまに目で追ってしまう。
そんな事は自分には起きないと思いながら。
もし・・・
もしも、自分が窮地に落ちいたら・・・
身近な人を文句を言いながら、助けるカズマなら。
どんだけ絶望的な状況でも、最後は丸く収めてしまうカズマなら。
彼のパーティーから聞かされる冒険談、そしてアルカンレティアで共に行動し間近で見た、あのカズマなら。
彼は来てくれるのではないかと。
窮地から救い出してくれるかもしれないと。
ダクネスの様に助け出される自分を想像するウィズ。
そして彼は来た。
むず痒い感情が湧いてくる。
彼と一緒なら不思議な自信が湧いてくる。
だが
その火(希望)は淡く小さかった。
蝋燭の火の様に小さく。吹けば、すぐに消えそうな火(希望)
そして、その火を八つ当たりと言う愚かな手段で、自ら吹き消してしまった。
◇◇◇
(もう、カズマさんしか頼れる人が居なかったのに私の馬鹿…)
「かき氷一つください!」
「えっ・・・?」
不意に声をかけられるが番台からは誰も見えない
ウィズは、不思議に思いながら番台から身を乗り出す。
すると
「ミーアさん!」
「久しぶりだなウィズ!」
黄緑のオーバーオール着た、ふさふさした狐耳の子供が、そこに居た。
ウィズが、サムイドーの野菜を知るキッカケになった子供、ミーアである。
「どうして、ここに?」
「友達だからな!カエル騒動で相当なやんでいたから心配で来てみたんだけど・・・この前、言っていた解決策って・・・」
ミーアは細い目で周囲を見渡した後、店先のかき氷器に目が行く
「かき氷、売れてる?」
「そ、それは…」
言いよどむウィズを見てひきっつた笑顔で
「ソンチョウに認めてもらおうと、お店をはじめたんだろ?でも、かき氷じゃなまらムリだと思うぞ?」
「でも、実力を認めて貰うのに普通のモノを売っていては…」
ミーアはジト目でウィズを見る
その冷たい視線でウィズは肩を落として、う~んと唸りはじめると、どこからか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「無駄な遊びなどサッサとやめて男を連れて村長の下に行くが吉。元ダメ店主よ。実力をみせる手段は指定されてないのだ。氷なんぞ売っても評価が下がるだけだぞ?」
「ミーアちゃん、かき氷を食べるのは、お家に帰ってからですよ~」
横合いから声をかけられたウィズ。ミーアから視線を外すと、見知った人物がそこにいた。
「エイミーさんと…なんですか”元”従業員のバ二ルさん?寂しくなって、お店に戻りたくなりましたか?」
見知った顔に会えて心が晴れやかになったのも一瞬、今一番見たくない仮面も現れたのである。
おっとりとした雰囲気の獣人ミーアとほくそ笑んでニタニタと笑みをこぼすバニルである。
「久しぶりだな、新しい従業員にも逃げられた元店主よ。あれだけ見栄をきったのだ、さぞかし繁盛してると思い見物に来てやったのだが…はてはて?誰も居ないではないか!」
高笑いをするバニルにウィズは苦虫をかみつぶした様な表情で
「くうううっ!!い、今からです!絶対に売って村長さんに認めて貰うんです!」
悔しがるウィズ。そんな彼女にエイミーは、あさっての方向を見ながら答えにくそうに告げる。
「さすがにかき氷は…売れない…かな?と思いますよ」
「ミーアは肉まんや串焼きがたべたいぞ!かき氷なんかより肉がいい!(しゃりしゃり)」
「ミーアちゃん!?外でかき氷を食べたらおなか壊しちゃいますよ!」
「ぐふっ!?…そんな…」
シャリシャリと氷で口いっぱいにして、ウィズに告げたその素直な子供の感想は、グサッ!と鋭利な刃物で突かれる様にウィズのメンタルを破壊する。
ウィズは、フラフラとよろけ壁に片手をつき落ち込むとバニルは
「ははは!実に美味!素直に我輩の提案を聞いておればいいものを。今からでも遅くないぞ?提案にのらないか?」
「ぜったい嫌です!」
見下すバニルを威嚇するように、ウィズはにらみ返す
「私一人でも、村長さんを認めさせてみせます!」
「ミーアは、むりだと思うぞ!」
「む、無理ではないでしょうか…」
「見通す悪魔の名を賭けてもいい、不可能だ!」
「ひどい!?」
ミーア、エイミー、バニル。性格や年齢もバラバラなのに答えは一致する。
その一体感を前にウィズは店の壁を見つめながら「の」の字を書き始めた
「それで元店主はこれから、どうするつもりだ?」
痛いところを突かれたウィズは「の」の字を書く指が止まる。
「それは…」
今後の方針などなにも考えていなかった。
だって終わりなのだから。
”もう希望は残ってない。夢から覚める時間なのだ”
カズマ(希望)を頼りたくても、これ以上迷惑をかけたくないと言う思いがウィズの心を支配する。
元々はウィズだけの問題。
このあと待ち受けるのは
店を捨てて指名手配されながら全国を逃げ回るか。
いつ終わるかも分らない様な借金を背負うか。
バニルに頭を下げて夜の店に売られるか。
「私は・・・どうしたらいいんですか・・・」
彼女は今の今まで失敗の後のことから目を背け続けていたが、もう逃げられないと悟る。
ウィズは振り返る。目を潤ませながら。
<パシャ!>
バニルの手元が眩しく光る。
それは、この世界でも高価で珍しい魔道具。
カメラだ。
ウィズは一瞬、何が起きたのか分らず呆然と立ち尽くしていると。
「プッ・・・!?フハハハハ!その間抜けずら最高に愉快!行き遅れ店主を好むマニアが。そこそこ居るのでな。そやつらに高値で売ってきてやろう。タイトルはそうだな・・・熟<カースド・クリスタル・プリズン>おっと」
ウィズの高速詠唱から放たれる水晶の様な氷の槍は、避けたバニルの足下に突き刺さると氷岩を作り出す。
<エクス・プロ「「ま、まって、ウィズさん!」」
「こんなところで、そんな魔法なんて使ったら、なまら困るさ!」
「そうです、落ち着いてください」
突き出した手に魔力が集まりだした瞬間、腕に掴みかかりながら止めに入るエイミーと慌てて、あとを追うようにウィズの足に抱きつくミーア。
いくら人通りが少なくても、ここは村のど真ん中。
サムイドーの半壊を恐れて二人がかりでウィズの暴走を止める。
そんな様子の彼女たちを見てより一層、笑い声がデカくなるバニルにウィズは冷徹な笑みを向ける。
「・・・今後、街の外に出るときは背中に気をつけた方がいいですよバニルさん」
目が全く笑ってない笑み。
その笑みは泣く子も黙りそうな冷酷な笑顔。今のウィズは過去の異名、そのものであった。
そんなウィズの禍々しい圧をまるでそよ風の如く受け流す。
冷ややかな目で、腕を組みながら
「ふん、ウジウジばかりしおって。あの男を頼る度胸も無い貴様に遅れを取るほど我輩は落ちぶれておらんわ!」
「・・・頼る?何か変わるんですか?いたずらにカズマさんを困らせるだけじゃないですか!彼が、この手の話が嫌いなのはバニルさんも知っていますでしょ!!」
彼女は知っている。
何度も仲間のピンチを救ってきたカズマを。
自分も助けて欲しい感情と彼に迷惑をかけたくない感情が、ぶつかり合ってウィズの心をぐちゃぐちゃにさせる。
溢れ出した思いは感情任せの情けない叫びとなってバニルに当たり散らす。
同時に彼女の鬼神の様な威圧も消散していった。
戸惑いながら黙って見守るエイミーとミーア
呆れた様子のバニル
そんな彼らに吹けば消えそうな声でウィズは呟く。
『カズマさんに嫌われたくないんです』
ウィズはこの感情が分からない。
なんで、ここまで嫌われたくないのか。
分からないが嫌われると思うと言いようもない不安に襲われるのだ。
その場に時が止まったかの様な静寂が訪れる。
止まるっていた時間は数秒。
とても長く感じられる数秒。
ウィズにどう声をかけていいのかと、それぞれが目でやりとりをする。
そして静寂を破ったのは、その場の最年少のミーアだった。
「バニル…ウィズが泣きそうだぞ…?」
いまだウィズの足にしがみついているミーア。
バニルは横目で助けを求めるように見てくるミーアの視線に苦い顔をする。
バニルは「はぁ・・・仕方がない」と浅いため息を吐くと
「昔から思っていたが、その強情さはホント嫌になる。仕置きは終わりだ」
「…?」
言葉の意味を飲み込めないウィズ。
そんな呆然とするウィズをよそにバニルは他人に聞こえないぐらいの声で「悪魔の爪は用済みになったしな・・・」と独りごちた。
「ダメ店主よ、さっさとロッジに帰るがいい。そして奴とイチャイチャするが吉。先ほど死にそうな顔の奴と喋ってな。色ぼけ男の未来を見通した。あの色ぼけ男は夕方には帰って来る」
「えっ?」
突然のバニルの発言に頬を染めるウィズを、気にも止めずまくし立てるように高らかに宣言する。
「元同僚のよしみで見通す悪魔の助言を一つ与えてやろう。次、村長に会う前にあの男に全て話せ。そうすれば”カエル騒動”は治まる」
「ほんとですか!?」
「ああ、ただし!少しでも取り繕ったり遠慮して奴に逃げられたら貴様は終わる。言っておくが二通りの未来が見えるぐらい不安定な未来だ。」
掴みかかるかと思えるほどの勢いでバニルに近寄る。
何故なら、その目の凄さを間近で見てきたからだ。
不安が残るような言い方だが、それでも解決の糸口が見えた。
しかし、同時に不安と疑問も湧き出す。
その見通す目の力は自分には効かないはずだと。
「バニルさん・・・本当ですか?私には見通す目の力は・・・」
言いよどむ。
あの日、リッチーになってから、その力はほとんどウィズに通じない。
「新たな従業員に感謝するのだな。奴の未来からダメ店主の未来を逆算したのだ」
バニルの発言にウィズは「カズマさんが・・・」とポツリと呟き呆然とする。
「なまら良かったなウィズ!」
「ウィズさん、カズマさんに話すべきです!」
降って湧いたような解決策に喜ぶミーアとエイミー。
自分の事のように喜ぶ友人を見てウィズは徐々に顔が綻んでくる。
『カズマが自分を助けてくれる。』バニルの予言を心の中で反芻するように繰り返すと彼女の表情に不安や悲しみはなく、にへらとした笑みが現れていた。
「ふはははっ!見通す悪魔の名にかけて、もう一度宣言してやろう。あの男はカエル騒動を治める。そして、”これ以上にない至上の歓喜と幸福を享受する者も誕生するであろと!”」
バニルはこれ以上ない程のニヤリ顔をする。
その自信満々の高らかに宣言する姿にウィズはカズマに打ち明ける覚悟を決めるのであった。
サブストーリーまで読んで頂き誠にありがとうございます。
私事は表に出さないように努めているのですが6話で個人的に目標にしていたUA三千に到達できました。
読者様。
誠にありがとうございます。
特にお気に入りや、誤字脱字を指摘してくださる読者様。
読み込んで頂き、いつも頭が上がりません。
本当に感謝しています。
未熟者ですが、ひと時でも読者様が楽しめる時間を作れるように努めて参ります。
お時間を頂きありがとうございました。
次はUA五千を目指して精進していきたいと思います。