原作「アトリエシリーズ」を掲げた二次創作。
題材はシリーズが通し番号で16作目(A16)、シャリーのアトリエでございます。
シリーズの看板とも言える(個人的意見)『ロロナ』でもなく、
主人公勢で一番人気の(人気投票並感)『ソフィー』でもなく、
最大風速記録中な(私見)『ライザ』でもなければ、復刻を果たした『マリー』でもなく。
どうにも微妙な順位(人気投票並感)、微妙な評価(○マゾンレビュー並感)を与えられている不遇(?)な主人公ことシャリー達を主役にすべく、このたび筆を執ってみた次第にございます。
なお『序章』については、ほぼ原作導入の文字起こしと設定紹介になります。
同じ題材の二次創作が溢れている作品ならばいざ知らず、ここハーメルン様にてキーワード:「シャリーのアトリエ」で検索しましたところ、該当作品僅か1件という結果が出ました故。
とはいえ原作コピペにならないよう、様々変化は加えております。
既プレイの方はどの辺りがどのように改変されているかに気を向けつつお楽しみ頂ければ。
自己満足という言葉を紙面に叩きつけたような代物となる予定ですが、どうか寛大な御心の下、お付き合いいただければ幸いに存じます。
アトリエ二次もっと増えれ
序章-1 青空を臨む月
乾いていく水源──
枯れていく草木──
飢えていく生き物たち──
青き海は黄砂へと姿を変え、
海に生きる生命は帰る場所を失った
それでも照り続ける陽の光は
大地に残ったわずかな水分すらも、
無慈悲に干上がらせていく
そうやって、ゆっくりと、
しかし確かに色褪せていく──
『黄昏の世界』
「──こんなにも遠くまで、砂漠は続いていたのね…」
どこまでも、どこまでも続く雄大なる砂の『海』を、一路突き進むは一隻の船。
真白な『水平線』に溢れた呟きの主は、その船窓より見える景色を物憂げに見つめていた少女。
見渡す限り一面に広がる、乾き切った砂原。
粒の細かすぎる砂で形成されるそれらは、決してその上に人の脚が立つことを許さず。
そうして『海』を渡れば、随所に見ゆるかつて在った生命の名残。
あるいはかつて在った営みの残骸。
それはゆっくりと、しかし確かに『それ』が『世界』を呑み込み、『侵略』してきた証。
──『黄昏の海』。
広がる砂漠を眼前に控えた小さな村に生を受けた少女──シャリステラは、初めて瞳に映した『災厄』の実態に、知れずたおやかな手を握りしめていた。
「…船酔いはしてないか?」
「あ、コルテス兄さま。…大丈夫、波も穏やかなようだし」
どこか気負うような表情を浮かべていた少女が、掛けられた一言に一転して微笑みを作る。
そんな彼女に兄と呼ばれた青年──コルテスもまた、微かに頬を緩めて少女の傍に腰掛けた。
「そうだな…だが、黄昏の海はいきなり表情を変える。気を抜きすぎるなよ、シャリー」
「ええ、わかってるわ」
返答だけは事務的に、しかし青年に呼ばれた
己の役目を鑑みて、けれどやっぱり形だけになりましたと言わんばかりなその様に、青年は滲む笑いを堪えながら目を逸らした。
「っ、また親父からお小言をくらうぞ? 『長の名代として相応しい振る舞いを…』ってな」
「あら、それなら兄さまこそ、わたしの事は『シャリステラ様』と呼ぶようにって、毎日のようにテオ爺から言われているじゃない」
「う…それはその、なんだ…そう呼ぶ度にお前が寂しそうな顔するから思わず、だな…」
歯切れ悪く
しかしある瞬間を境にその顔は引き締められ、幾分か熱を下げた問いがその口から告げられた。
「…ねえ、兄さま。今向かっている『ステラード』って、どんな街なの?」
「っ、シャリー?」
一瞬虚を突かれたように顔を向けたコルテスの目に、静かな光を宿すシャリステラの瞳が映る。
そこにあったのは微かな興味の色と、それを強く塗り潰さんと湛えられた使命感。
「昔、兄さまが村を離れていたとき、拠点にしていたのがステラードなのよね? 村に居た頃には話題にし辛かったし、出発したばかりのときは聞く時間が取れなかったけれど……」
「…ああ、今なら話が出来るか。そうだな、あの街は──」
そうして、コルテスの口から彼らの目的地である街の情報が語られる。
曰く、この砂に沈む一帯において唯一、豊かな『水脈』を持つ街であること。
湛えられたその安全かつ豊富な水を求め、多くの人間が集まる街であること。
遥か遠い大陸より訪れた交易船を迎えることもある、活気に満ちた街であることなどが。
「──こんなところだな。…あれから何年も経って、色々と変わっている部分はあるだろうから、あくまで参考程度でしかないが…」
「ううん、ありがとう、兄さま」
与えられた情報を脳裏に、シャリステラは意識を思考の中に沈める。
中でも特に彼女の関心を引いたのは、『街』なる社会形態そのものであった。
「(都会の光は、まるで宝石のようだと、子供の頃にお父様が話してくれたっけ)」
周囲の人間全てが遠縁の一族であるという小さな村に生まれて、そこから足を踏み出すことなく育った彼女には、人が数え切れぬ程に集まるという光景自体が想像すら及ばぬ未知のモノ。
「(まさか、それをこの目で見られる日が来るなんて…)」
それらを幼き日の記憶と結びつけ、脳裏に描き出すは些か希望に偏った想像図。
知れず胸の裡から沸き上がった興奮に、しかし彼女はそれを追い出さんと頭を振った。
「(ううん、浮かれてはダメ。…わたしは、『使命』を果たすためにそこに向かうのだから)」
「…シャリー」
彼女が己の中で意識を切り替える瞬間を感じ取り、コルテスは口を開く。
「近くの村は既に砂漠に呑み込まれたが、『ルギオン村』は…
そうして彼は故郷の名を呟き、一呼吸の後に力強く言葉を続けた。
「焦らずに、
「…そうね。ステラードなら、きっと
互いの視線を合わせ、その意識に浮かんでいるだろう故郷の姿に、二人は頷き合う。
「…使命を果たすその日まで、どうかわたしを支えてくださいね。兄さま」
「ああ、勿論だ。シャリー」
そうして暫し、眉宇を引き締めたままコルテスの顔を見上げていたシャリステラは、やがて糸を切ったかのようにその顔を綻ばせた。
相対する彼もまた釣られるように相好を崩すと、眼前で揺れる彼女の黒髪へと手を伸ばし──
「……うぉっほん!」
「「っ!?」」
ほど近くにて響いた咳払いに、二人の身体は弾かれたが如くビクリと跳ねる。
どちらがともいわず揃った動きで振り向いた先に立っていたのは、やや苦笑いを浮かべて彼らを見下ろす初老の男性。
「…お、親父」
「…テオ爺」
「ご安心くだされ嬢様、そのためのワシら『父子』」
言外に意味を込め、ただし表情には微笑ましさを滲ませて、口髭をさすりつつ彼は告げる。
「この腕も胴も、すべて嬢様を支えるための柱であり壁、何も心配なさることはありますまいて」
一族のご意見番であり、この船の操舵手兼船大工であり、コルテスの実父であり…族長の娘たるシャリステラの目付け役でもあるこの老父──テオクーガを「忘れてくれるな」と。
「え、あの、違うのよ、テオ爺? 決して忘れていたとかそんなんじゃ…」
「いえいえ良いのです、嬢様。愚息がお役に立てているようで何より何より」
「お、親父、こっちに来てたってことは人手が必要なんだろ? そう言ってくれれば俺も…」
「ああ…いや、構わん、そもそも大した量ではないのだ。ワシ一人でも問題は──」
父親の仕草に力仕事の気配を感じ、立ち上がったコルテスをテオクーガが手で制す。
そうして振り返った彼が踏み出した瞬間──落雷が如く唐突に『それ』は起きた。
「──ぐぉっ!?」
「「っ!?」」
老父の喉から放たれた突然の大声に、先の焼き直しとばかりに身を強張らせる二人。
しかし立ち止まった彼の手が力無く虚空を掻く様子に、その額からジワリと溢れ出した脂汗に、湧き上がった確信に近い推測が彼らの意識を引き戻す。
「テオ爺、もしかして、腰…!」
「…寄りかかられる柱が先に折れてどうするんだ、親父?」
「や、やかましいぞ、コルテス…い、イタタタ…ッ!」
腰に走る電流。
魔女の一撃。
それは古今東西の老父老婆を悩ます衝撃。
中空に浮かべた腰を下ろすことも、下ろせる場所へと動くことも出来ずに、声にならない呻きを漏らすテオクーガに慌てて駆け寄るは若者二人。
「兄さま! 今はそんなことよりテオ爺を!」
「あ、ああ、わかってる。…椅子まで引っ張るぞ、親父」
「う、うむ、すまんのお…アダダダ…!」
「──ぬう…しかし困ったことになった」
寄る年波に抗わんと、がっしり鍛え上げられた老父の身体に若者達が苦闘すること数分後。
漸く腰を下ろす場所を得られたテオクーガは、未だ痛むらしい腰を青い顔で摩りつつ呟いた。
「これから近くの陸地で補給をする予定だったのじゃが…」
「…え? あっ」
「ああ、さっき言いかけてたのはそういうことか」
不意に船窓へと視線を向けた老父に、合点がいったと頷くコルテス。
釣られて窓を覗いたシャリステラの目には、流れゆく砂原に混じる『緑』が映っていた。
──不毛荒漠の砂漠にも、『切れ目』は存在する。
たとえ『黄昏の海』といえど、踏みしめられる大地が、まばらにでも草木の生えた『採取地』が皆無であるとは意味しない。
まして『水源』を有する街、ステラードに続く旅路ともなれば、目的地に近づくほどにそうした土地に巡り合える公算は高くなる。
「…街に着くまでに補給は必要か」
「『海』の中で立ち往生になるわけにいかんからな。…辿り着ける保証があれば良かったが」
『砂航艇』による『航海』も無補給で続けられるものではない以上、本来ならそのような幸運に頼る必要のない航路を描くべきである。
しかし今回、彼ら一行はそれを事前に用意し得ない『事情』を抱えていた。
「最後に村の人間がこの船でステラードに向かったのが何十年も前なんだったか? 砂漠の広さも大きく変わってるだろうし、今じゃ指標にもならないよな…」
「…街の位置だけでも記録に残っておっただけ有難く思うほかあるまい」
果たして多少なり運を天に任せ進んだ航路は、過たず補給可能な土地へと辿り着き。
一旦停泊、作業に移ろうとした矢先の『腰への一撃』。…間が悪いと言うほかなかった。
「…テオ爺がいなければ、補給は難しい?」
「いや……俺一人では少し時間がかかるってぐらいだが…」
「わ、わたしもっ、手伝うから…」
「…気持ちは嬉しいが、力仕事だからな」
決意を込めてそう口にするシャリステラに、コルテスの苦笑いの混じった視線が向けられる。
年齢、性別としては相応と言っていい、しかし表すなら「折れそうな」となるだろう細腕に。
「そこに限って言えば、シャリーは本当に『へなちょこ』だからなぁ」
「へ、へなちょこって言わないでっ! コルテス兄さまっ」
からかう様な響きを込めた彼の言葉に、自覚はあるが故か彼女の反論には今一つ力が足らず。
不本意を示しつつ下がっていくシャリステラの頭に、温度を変えたコルテスの呟きが落ちる。
「……シャリーは、シャリーにしかできないことをやればいい。気にするな」
「兄さま…」
自らの非力さ──この場合は文字通りの意味だが──に苛まれつつ彼女は考える。
自身にできること。
自身の手が及ぶこと。
決して大きな事であれとは望まない。…求めない。
自分が今ここに、この一行の中に居ることの意味を。
村長の娘……長の名代としてではない、『自分』という存在の価値が、何か、なにか──
「…………そうだ」
「シャリー?」
「嬢様?」
短くはない思考の底から復帰した彼女の呟きに、首を傾げる二人。
そんな彼らが視界に入っているのか否か、船室の
其処に鎮座するは、船の内装として些か不似合いな、とある物体。
やけに大きな釜戸、それに見合った寸法、奇怪な色の液体を湛え泡立つ──
「
見る者が見れば『錬金釜』と、『錬金術』が為だと即答するだろう設備の前に立ち。
自身の身長程の掻き混ぜ棒を手に、若き錬金術士シャリステラは力強く言い放つのだった。
※原作既プレイの方へ
何か雰囲気が違ってないかって? ええ、変化させてますよ。二次創作ですから。
※原作未プレイの方へ
アトリエシリーズでは『錬金術
『錬金術
既に色々と改変入ってます。
ただし世界観説明については大体原作通りです。
アトリエ世界ってもっとほのぼのしてるものじゃないの? と思われたそこのあなた。
『シャリー』を擁する「黄昏の~」シリーズに限っては、わりかしこんな調子なのですよ。
この頃のガ○トさんに何があったんや
勿論、このまま原作沿いで続けては二次創作と銘打つ意味がありませんので、序章が終わり次第ストーリーにも大きく改変を加えていく予定です。あしからず。
……原作の展開が知りたい?
ならば黄昏シリーズ(『アーシャ』『エスカ&ロジー』『シャリー』)プレイしましょう。
アーランドシリーズ(『ロロナ』『トトリ』『メルル』)に異例の4作目となる『ルルア』が、
不思議なシリーズ(『ソフィー』『フィリス』『リディ―&スール』)に同じく4作目として、『ソフィー2』が出た辺り、そろそろ黄昏4作目が来るかもしれませんし、この機会に是非是非。
しかしプロローグが長くなりそうだ……。
既プレイの方ならお察しの通り、まだ半分もいってないのですよねー。