昏き海都は黄砂に沈む   作:非単一三角形

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 シャルロッテ視点。

 解釈の難しいあの御方の回。



第12話 海都の主

 

 

 ──ジェラール・ペリアンさん。

 

 ラウルさんが組長を務める『組合』と二分……は、してないんだろうけど、たまにいがみ合いをしちゃったりしつつ、このステラードを取り仕切っている『商会』の会長をやっている人。

 とにかく厳格な感じで、顔が怖くって……たまに広場でラウルさんと激しく口論してるところを見掛けたりもする、とにかく街の為を考えてる人……うん、あたしが知ってるのはこれくらい。

 

 …別にあたし、この人と特別縁があるとかじゃないんだよ?

 ただ、この人の息子くんと、まあ……幼馴染? ぐらいの感じで関わりがあったってだけで……

 まあ一応、面識があると言えばあるし、商会に買い物に行ったときとか、たまたま居合わせたら声を掛けられたりはするけど……

 

 

 だから、その、なんていうか──

 

 

「…最近はなかなか良い仕事をすると聞いている。修行を積んでいるようで何よりだ、シャリー」

「うぇっ!? は、はい、ありがとうございます……?」

 

「それで……娘、お前は?」

「わたしは、シャリステラ・アルゴーと言います。先日この街、ステラードに大きな被害を与えてしまったあの船の……責任者、です」

 

 

 …こ、こんなあっさり、会ってくれる時間を作れるなんて思ってなかったんだよ、うん。

 あたしはただ、顔見知りの店員さんにちょおっと頼んでみただけで……な、なんで昨日の今日でこんなことになってるのー!?

 

 

 

 ──ステラード広場の、実は結構ミルカのアトリエに近い所にある、ペリアン商会の店舗。

 そこに駄目で元々と思いながら話を持って行ったあたしに、店の奥から出て来たのは、まさかのペリアン会長その人。

 

 びっくりしながらもシャリーちゃんの話をして……そしたら、むしろ待ってたとばかりに時間をとってくれたんだよね。

 なんか、ペリアンさんとしても早いところ話をしたかったって……そ、そうだったんですね……

 

 

 そうして、指定された日時に訪れたあたしたちが通されたのは、そのカウンター奥の応接室。

 外から見たことはあっても、中に入るのは初めてだなあ、なんて思ってる内に、ペリアンさんが秘書のリンカさんと一緒に入ってきて……この状況。

 

 ……と、というか、何であたしここに居るの!? あたし、この話に必要でしたか!?

 それにシャリーちゃんも何でそんな堂々と話せるの!? あ、族長の娘だから? そっかあ。

 

 

「…ふん、ようやく顔を見せたというわけか。君の船が我々の街に多大な損害を与えてから随分と時間があったようだが、いったいどういう了見なのかね?」

「……謝罪が遅れてしまったことはお詫びします。竜に追われて船が破損してしまって──」

 

 

「そちらの事情など聞いていないのだよ」

 

 

 ひぃ!? …ぺ、ペリアンさん、やっぱりめちゃくちゃ怒ってる……!

 ど……どうするの、シャリーちゃん!? 謝罪って言ってもどうすればいいのか、あたし想像もつかないよ!?

 

 

「君の船によって、この街が損害を受けた。我々にとって重要なのは、それだけだ」

「…損害がどれほどになるのか、わたしには推測することしかできません。ですが、たとえ金銭に限定して頂いたとしても相応の補填は不可能だと認識しています」

 

「だろうな。到底個人が支払える域には収まらん。…そもそも有り得ない仮定だがね」

「……はい、わかっています」

 

 

 …………い、息が詰まるよお…!?

 

 というか、ペリアンさんだって、あたしが話をしに行ったときにはあれが事故だってわかってるみたいだったじゃないですか!

 だったら、シャリーちゃんにはどうしようもなかったんだってこともわかってるはずなのに……なんでそんなにシャリーちゃんを責めるんですかあ!

 

 

「……わたし個人の手には、力も、金銭もありません。この街に対してわたしが差し出せるものがあるとすれば、錬金術士としての腕だけです」

「…………」

 

「この腕に価値があるかどうか、それについては『組合』を通じて依頼して下さった街の方々から既に一定の評価を頂いています」

「……ああ、確かにこちらでも把握している」

 

「これを踏まえて、今後この街から望まれる限りの腕を振るう。これがわたしが提案できる補填の形です。御一考、いただけませんか?」

「ふむ。……錬金術、か」

 

 

 ……ペリアンさん、結構考え込んでる?

 さっきからシャリーちゃんをじっと見てるというか……なんとかなりそう…なのかな?

 

 

「……シャリー」

「へ……わひゃい!? 何でしょうか!?」

 

「君から見て、彼女の腕前はどうなのだ?」

「え、ええ!? あたしから、ですか!?」

 

 

 ここでまさかのあたし!? え、え、何これ、あたしの答え方次第でシャリーちゃんが……!?

 …うわ、シャリーちゃんも必死な目であたしを見て……!?

 う、うええ……!? ま、待ってよ、あたしそんな覚悟できてないですってぇ!?

 

「この街の錬金術士というなら、君とミルカ嬢がいるだろう。特に彼女と比較して、とりわけ街に益のある提案だと思うかね?」

「え、あ、ええと……シャリーちゃんはすごいですよ! あたしなんかより全然……そ、それに、ミルカとは錬金術の方式が違いますし!」

 

「っ、方式が違うとは?」

「その……ミルカのより古い、ええと……原点に近い錬金術ってヤツでして……」

 

 う、うう~……上手く説明できないよお!?

 前にミルカが言ってくれた解説、もっとしっかり覚えておくんだったなあ! こんなことなら!

 

 

「つまり彼女は『古式錬金術』の使い手ということかね?」

「…! は、はい! そうです、それです!」

 

 ……ペリアンさん、知ってたんだ…『古式』のこと。

 わ、さっきより深く考え込んでる感じ……あれ、案外評価高い?

 あんまり『古い』って言うと印象良くないかな~、なんて思ってたけど…そうでもないのかな?

 

 

「……リンカ!」

「「えっ」」

 

「はい、会長」

 

 

 考え込んでいたペリアンさんが突然立ち上がって、後ろに控えていたリンカさんを呼んだ。

 驚くあたしたちとは裏腹に、わかってましたとばかりに頷く姿が見えて。

 

「後は任せた…所用がある」

「わかりました」

 

「え…あ、あの──」

「シャリステラさん、でしたね」

 

「は、はい!」

「り、リンカさん、これっていったいどうなって……!」

 

 流れるように進む状況について行けてない様子のシャリーちゃん……と、あたし。

 応接室から出ていくペリアンさんに手を伸ばしかけたところで話しかけられて、肩を跳ねさせたシャリーちゃんの横で、あたしも説明を求めてリンカさんの顔を見る。

 

 

「シャルロッテさんから既に聞いておられるかもしれませんが、自分はペリアンの秘書、リンカと申します。ご用件はなんなりとお申し付けいただくよう申し付かっております」

 

「「…………え?」」

 

 

 ……あれ、待ってください、リンカさん?

 その……今、ペリアンさん、そんなこと言ってませんでしたよね?

 なのに「申し付かってる」って……ひょっとして、顔合わせの前から決まってたんですか!?

 

 

「…シャリステラさんが立たされている状況については、会長も把握されています」

 

「先日街で起きた騒動についても……被害者遺族の憤りを理解はするが、不合理極まりないと心を痛めておられました」

 

「今日の事は、会長としても待ち望んでいた機会と言えますから……シャリステラさんのお人柄をご自身の目で確認して、安堵されていたように自分は思いますよ」

 

 

「…そ、そうなんですか…?」

「全然わかんなかったですよ…」

 

 揃って首を傾げるあたしたちに、無表情なのにどこか面白がっている様子のリンカさん。

 いや、「会長は歯に衣着せないシャイな方ですから」なんて言われても……怒ってるようにしか見えませんでしたよ、あたしたちには!

 

 

「……さて、早速ですがシャリステラさんには、錬金術士として『商会』よりご依頼したい仕事がいくつかございます…いかがでしょう?」

「…っ! わかりました。やらせてください!」

 

「そして、シャルロッテさん」

「……へ? あたしにも何か仕事が!?」

 

「いえ、こちらは仕事ではありません。お手紙です」

「な、なあんだ、お手紙……え、お手紙? 誰からですか?」

 

 

 これまた前もって用意していたらしい依頼書をどっさりシャリーちゃんに渡したリンカさんが、そのままの流れであたしにも何かが入った封筒を差し出した。

 一瞬、仕事!? と身構えたあたしは続く言葉に一安心……しかけて疑問が湧き上がる。

 あたしに手紙? それもリンカさんを通して? そんなことしそうなの、誰が──

 

 

「ああ、アルか」

「はい、アルバートさんです」

「……アルバートさん、ですか?」

 

 

 リンカさんと頷き合うあたしに、首を傾げるシャリーちゃん。

 …そりゃそうだよね、会ったことないんだから。

 

「えっと…まあ、一言でいえばペリアンさんの息子さんだよ」

「……ああ、シャリーさんの幼馴染って言っていた…」

 

「みたいなもの、だけどね~。そんなに関わりがあったかって言われると……まあ、色々と奢ってもらったりはしてたけど」

「えっ。……ペリアンさんの息子さん、なんですよね?」

 

「うん。絵に描いたみたいな金持ちのボンボンだよ。ついでになよっちい感じの」

「え……? ……ええ?? ……ええぇっ!?」

 

 わあ、シャリーちゃん、見たことない顔してる。

 だよね。ペリアンさんに会った後だと驚くよね。でも全然似てないんだよ、あの二人。

 

 

「え、ええっと…………お手紙を出すってことは、今はこの街を離れているんですね?」

「まあね~。なんか、探検家の本に影響されたかなんかで、遺跡に興味を持ったらしくって」

 

「それなら、今は探検家に?」

「ん? う~ん…前時代文明の研究をするのが夢って言ってたから、そのあたりじゃないかな?」

 

「……でも、ペリアンさんの息子さんなら、『商会』を継ぐはずだったんじゃ……」

「あ~、あいつ前々から跡継ぎの勉強を嫌がってよく逃げ出してたからねー」

 

 

「…………あとつぎのべんきょうを、にげだす……?」

「あ、うん、そっか。シャリーちゃんからしたらその時点で信じられない行動なんだね」

 

 

 逃げ出してあたしの家とかに押し掛けてきては、リンカさんに捕まって連れ戻されたり、場合によってはペリアンさん本人に怒鳴られながら帰ってくこともあったっけなあ。

 そういえば、いい加減バカなこと言い出したからって、ペリアンさんに街から追い出されたって噂になってたけど……本当のところはどうなんですか、リンカさん?

 

「…そんなに前時代文明に興味があるなら好きにしろ、ただし何か形になるものを成し遂げるまで再びステラードの地を踏めると思うな……これがその時の会長のお言葉でしたね」

「うっわぁ……あんまり間違ってないですね、噂」

 

「それでも同行する人員等の手配は会長自ら為されましたから……あの方なりの親心だったかと」

「いや、それって逃げ場を潰したって言うんじゃ……」

 

 う~ん、哀れアル。

 

 まあ、でも、小さい頃からの夢が叶ったわけだし、本人的には幸せなんじゃないかな?

 ぼくの将来を勝手に決められてしまうことが心苦しいんだー、ってずっと言ってたわけだし。

 この手紙にだって…………うん、相変わらずだね。このポエムみたいな文章とか、特に。

 

 

「…なんて書いてあったんですか?」

「旅先で尊敬する探検家に出会えて、その場で弟子入りしたんだってさ。…ハリー・オルソンって名前の人らしいんだけど、知ってる?」

 

「……いえ、わたしは……」

「だよね、あたしも知らない。というか探検家っていう時点でうさんくさい」

 

「そ、そんなばっさり……」

 

 だってさー、探検家なんてどこまで本当に探検してるかわからないじゃん。

 前にアルが読んでた探検家の書いた本だって、中身は与太話みたいなのばっかりだったし。

 

 

「……シャリーさん、実はそのアルバートさんのこと、心配してたりします?」

「えっ? あたしが? あいつを? …いや別に?」

 

「本当ですか? 結構、気に掛けてるみたいに見えましたよ?」

 

 ……シャリーちゃん、もしかしなくてもちょっと楽しんでるよね?

 いやまあ、そういう話をしたいっていうのはわかるんだけど……アルじゃなあ。

 え? 何でって……だってあいつが研究に傾いた一番の理由ってさ──

 

 

「以前街で見掛けたっていう、()()()()()()()()()()()()()だよ?」

「…………あ、はい」

 





※原作既プレイの方へ

 原作ではまだお姫様意識の抜けない内での初顔合わせとなるため、冷静に見ると結構アレな発言しちゃってるステラちゃんですが、本作では既に5章中盤程度には覚悟決まってる状態なのです。
 やっぱり追い詰められると輝くタイプだと思うんですよね、彼女。限度はあるでしょうけど。


 タグ:「不在キャラ多数」 該当キャラその1、『アルバート・ペリアン』

 何故彼が不在なのか。
 彼がステラードを離れているとはどういうことなのか。
 彼が居ないことで果たしてどのような変化が起こるのか。
 改変とその背景については今後にご期待くださいませ。

 こいつにそんな興味無い? そう言わんでもろて。


※原作未プレイの方へ

 店頭に立ってる店員に話しかけたらいきなり会長(トップ)が出てくるのは原作通り。
 そんな馬鹿な、という意見もあるとは思いますが、あんまりそういうところを弄ると二次創作と銘打つ意味が無くなりますし、多少はね?

 「アルゴー」はルギオン村の氏族名的な何某のようです。
 原作中ではコルテスもアルゴーを名乗ることがありますし、おそらくテオクーガも同様。
 公式サイトでのキャラ名表記は単に「シャリステラ」なんですけどね。

 そして本作では不在キャラとなりましたアルバートくん。
 シャルロッテとは愛称で呼び合う仲であり、彼女の自宅にも普通に訪ねてきます。
 幼い頃から交流のある齢の近い(18と20)男女、互いに悪い感情は抱いていない……とまで揃ってますが、作中で二人が「そういう」気配を漂わせることは1ミリもありません。逆に凄い。

 まあ、機械人形(オートマタ)(女性型)一筋ですからね、彼。

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