アトリエシリーズの難易度設定は基本的に
ノーマル(普通)、ハード(難しい)、ベリーハード(非常に難しい)
という表記になってますが、『シャリー』の場合は
ハードコア(本格的)、ディスペアー(絶望)、ノーホープ(希望など無い)
という表記なんですよね。
……やっぱガ〇トさん的にもそういうイメージなんやなって。
これまでは気持ち原作沿いを心掛けていましたが、そろそろ自重を捨てていきます所存。
繰り返しになりますが本作は、やさしくないせかい、です。
「――おお、本当に……いえ、疑っていたというわけではありませぬ」
「しかし、だとすればシャリステラたちが……ああ、やはりそうですか」
「……いえ、この場で長話を乞う訳にも参りませんな。どれ──」
「皆の者! こちらは我らが村の為、水の都ステラードよりご足労くだされた御客人である!」
ステラードの南西、そこに横たわる『黄昏の海』の、その向こう。
広がりゆく黄砂の境にも近いその場所に、その村は確かに在った。
「──申し訳ない。叶うならば持て成しの席を用意したいところなのですが……」
「ええ、お察しの通り、我が村には既に余力と呼べるものがありませんでな」
「……いやはや、豪気な御方だ。…お恥ずかしいですが、お言葉に甘えさせて頂くとしましょう」
事前に聞いていた情報に比べてさらにもう一段、閑散とした印象を受ける村。
物珍しいものを見る慣れた視線も、今一つ温度に乏しいものばかりで。
「──ところで、此度滞在される日にちはどの程度を予定されておりますかな?」
「っ、ああ、いえ……その懸念も含まれていないではないのですが……」
「……そうですか。であれば一つ、願いを……いえ、警句をお聞き届けくだされ」
「どうか、決して…………
長を名乗り、自ら案内を務める、どこか覚えのある空気を纏う彼にしても。
「――いやはや如何にして……とは思っておりましたが、よもや『竜』の討伐とは……」
「しかし……まさか、到着早々にそのような……ううむ」
「…テオクーガに、コルテス……あの二人が、そうですか……」
「…………」
「今となっては、唯一人となった身でよくぞそこまでと、娘を称えることしかできませんな……」
そう言って力無く笑うその顔は、本来の年齢よりもずっと年老いて見えた。
「──錬金術士……ええ、私もその端くれではあります。尤も、村を救う手立てを外へ求める他に道を見出せぬ程度の、と枕に付きますが」
「……そう、ですか。あの子が、私の事をそのように……」
「ええ、確かに…娘の為に使ってやれた時間は多くはありませんでした。ですが……」
「……私は、あの子に村の希望を託しておりました。…それほどまでの苦難の道を歩かせることになるなど、遥か想像の外でしたが……」
「持って生まれた才で言えば、私と娘とでは比較にもなりませぬ。力量の差は即ち、重ねた年数の違いでしかない。あの子が生を受けた時期がもし……いえ、考えたとて栓無き事ですな」
長として、父親として。
その両方を手に出来る力も器も無かったのだと、彼はまた枯れ木のように笑った。
「──現状の調査、ですか。なるほど、当然のことですな」
「水源の様子、現在飲用他に利用されている水の採取……村人の健康状態の確認、ですか」
「…ええ、勿論わかっていますとも。どうしてもなるべく早く、と願う気持ちはありますが、事はそう単純ではないでしょうからな」
「…………いえ、まずは水源についてご確認くだされ。それで、あなたの疑問も晴れるはずだ」
「水源には、族長…つまり私以外が近づくことを固く禁じておりましたが、最早そのような慣例を守っていられる状況でもありますまい。…では、早速参りましょう」
接近を禁じていた場所、とやらに向かう道の途中。
村に対して漠然と持っていた『違和感』について口にすれば、彼は悩む素振りも無く頷いた。
「──ええ、お気づきの通りです。既に体力の無い病人、老人、子供から順に……」
「……なるほど、あの子からは流行り病と……いえ、間違ってはおりませぬ」
「あれはまさしくこの地を襲った病……
「…………その答えもまた、此処にあるのです」
「どうか御覧ください。この村の……真実を」
……目を疑う、という経験をしたのは決して初めてじゃない。
それこそ錬金術士との関わりの中で、現実かと疑う景色を目にすることは珍しくも無かったし。
けれど、こればかりは……流石に受け入れ難い光景で。
「──御覧の通りです。私は、『これ』から村の皆が使う水を調達しておりました」
「私の錬金術でも、どうにか……
「その為に日々の時間の殆どを費やし、結果として娘の事が蔑ろに……というのは言い訳ですな」
「…………いえ、申し訳ない。これでは、
「本当に私の腕が足りていたなら……
……多分、ステラードの水飲み場を作っているのと同じ装置。
同じように、滾々と水を噴き出す……筈のその場所から。
ドロドロと吐き出される、液体状の──
……これが、水?
これを、村の営みを支える飲用水に、していた?
そんな……他に手段は…? それこそ、ここの他に水源が見つかる可能性だって……
「──勿論、その可能性をこれまで考えなかったわけではありません」
「ですが……現実的な範囲は、ほぼ調べ尽くされておりましてな」
「かつては周囲に存在した同規模の集落も、姿を消して久しい」
「どうやら随分と昔から……この村が、この場所が、『最後』だったようなのです」
そ、れは……
だとしてもこんなの、どう見たって、もう──
「……御客人。あなたを、娘と近しい人物と見込んで、お尋ねしたいのですが……」
「娘は、今……心穏やかに過ごせていますでしょうか」
……っ!
この人、まさか…!
「生来の才が招いてしまった重圧から、僅かでも逃れられていれば良いのですが……」
「あの子には、本当に……長く、苦労をかけてきましたからな。叶うことならば――」
「娘は……シャリステラは、そちらに居場所を見つけてはおりませんか?」
「――おい、こいつは…………想像以上に不味いんじゃねえか?」
「…手遅れと呼ぶにはまだ早い、と思いたいところですね」
手渡した調査書を眺めて一拍。
それだけでも事態の深刻さは読み取れたのか、ラウルとソールは二人揃って眉をひそめた。
「何らかの限界を迎えた装置からは、このような汚染水が湧出する可能性がある……という情報が得られたことは紛れもない収穫ではありますが…」
「……この街の水も改めて調査をしておかねえとな。病人が出始めてからじゃ遅え」
「発覚が遅れていた場合を考えると、寒気がしてきますね」
「…つっても現状じゃ、予防も対処法もまるっきり白紙なわけだけどな……」
現地で得られた『病人』の症状と、その人数。
サンプルとして持ち帰った……『水』の現物について。
読み進めるたびに、頭の上に重しが降り注いでくるような思いをしてるんだろう。
調査書にまとめている間、同じような気分になったからよく分かる。
「シャリー嬢ちゃんにこの事は……これから、か」
「……まあ、既にこの現状ということなら、流石の『中央』も重い腰ではいられないでしょうし、一概に悪い報せというわけでもないかもしれません」
この知らせを首を長くして待っているだろう相手を思い浮かべて、吐いた息が三人分重なった。
……まったく、自分から言い出したとはいえ、こんなことを伝える立場になるとはね。
「……悪いな。あんたには面倒なことばかり頼んじまってる」
「ええ、今や我々にとっては替えの利かない人材です。ですので──」
「埋め合わせが必要であれば遠慮なく仰ってください、
「…………いいわよ、そんなの」
柄にもなくしおらしいことを言い出したソールに、首を横に振る。
「頼んどいた通り、『東の大陸』の調査結果を回してもらえれば、それで十分だからさ」
「――確かに初めの頃は、こんな面倒なことになってる街、さっさと飛んで逃げちゃおうかなー、なんて思ってなくもなかったんだけどねえ」
価値観か、はたまた他に手段を知らないからなのか。
その場所、その土地で生きていく以外に選択肢が無いってことの不便さと、誇らしさ。
やれ族長だ、町長だ、顔役だー…なんて連中を見ていると、そんな言葉がよく頭を過る。
「この街自体、旅の目的には役に立ちそうにないかなって、わりと早くにわかっちゃってたし…」
一応、ただ働きにならないようにと、あの竜の討伐で開いた航路の先、新しい土地の情報収集を頼みはしたけど、調べるんなら自分で調べに行ったって構わないわけで。
そもそも対象が対象なだけに、心得のない人間が集める情報なんて、大して期待もできないし。
だから尚の事……通り過ぎちゃってた方が『賢い』選択だったとは、今でも思うんだけど。
「……放っとけないのよねえ、どいつもこいつも」
何だかんだで、いつの間にやら深く関わるようになった三人娘の顔が頭に浮かぶ。
普段は明るく振る舞うくせに、やけに自分への自信に欠けるシャルロッテ。
ひたむきで、懸命で、けれど星の巡りが悪いとしか言う他ないシャリステラ。
大多数の人間に対して、近づくなとばかりに心に壁を作り上げているミルカ。
憧れられて悪い気はしないけど、もうあたしの背中にくっついてなくたって十分あんたはやっていけるわよ、シャルロッテ。
早く安心させてあげたくて手を貸したのに、益々放り出せなくなって……というかもしかして、村に居た頃から苦労漬けの人生だったんじゃないの、シャリステラ?
抱えてるものは何となく理解出来てきたけど、自分の手で建てた壁の背で、寂しそうに膝抱えて蹲ってたんじゃ世話ないわよ、ミルカ。
「まあ……これだけ関わっちゃったなら、仕方ないわよね」
見て、出会って、話して、一度でも手を伸ばしたからには。
繋いでしまった手を振り払うことなんて、あたしには出来そうもないから。
「こうなったら、とことんまで付き合ってやろうじゃない」
まったく……つくづく面倒な性分してるわね、あたしって。
「――あっ、ウィルベル師匠!」
目抜き通りまで出てきたところで、底抜けに明るい聞き慣れた声があたしを呼んだ。
今日のあの子は……あら、通りにある店で三人仲良くお茶でもしてたみたいね。
ブンブン振られる手が、だんだん犬の尻尾みたいに見えてくるのがなんというか。
……というか、本当にデカイわよね、この子。いや、どこがとは言わないけど。
「「……!」」
そしてその声を合図に、相席していたシャリステラとミルカが結構な勢いで振り返った。
……うん、まあ、慕われるのはホント悪い気分はしないし、
「おかえりなさい、
「おかえりなさい、
……天を仰いで。
額を覆って、地面を見つめて。
息を吐いて、深ぁく吸って、それから顔を上げて。
「…………ええ、ただいま、ステラにミルカ」
……ああ、もう、二人揃ってそんな嬉しそうな顔するんじゃないわよ。
こらそこ、「あ、遂に受け入れる感じなんですね」とか言うんじゃない!
…仕方ないじゃない。村のあんな現状を知っちゃったら、もう拒否なんて出来ないじゃない。
そして片方を受け入れるんなら、もう一人を放置するわけにもいかないじゃないのよ。
「どうせならあたしも……」って、わかったわかった、ただいま、ロッテ。
「やっぱり押しに弱いのね」って、うるさいわよ! やっぱりとか言うな!
あーもう…………あたしってば、ほんっっっとに甘いんだから。
──水源が涸れたのち、残った装置は水の代わりに『汚染された何か』を吐き出し続ける。
安心してください。
(作中で最も深い知見を持つ御仁のお墨付きな)原作設定ですよ!
長く他との交流を断っていた閉鎖的な村が外へと救済を求める。…それ即ち末期ということで。
手遅れに一歩踏み込んでるくらいならむしろ上等。
両膝どっぷり浸かってるくらいでも何ら不思議じゃないよねって。
というわけで、本作初のウィルベルさん視点でした。
何故彼女がルギオン村に? といった背景については次回。
※原作既プレイの方へ
自重は捨てた(二回目)。
族長の為人を思い切り捏造。ゲーム中に出てこないんだから仕方ない。
でも原作初期ステラの自己肯定感の低さからして、あんまり良い父娘関係じゃ無さそう感。
そこで長の責務に追われて娘のメンタルケアが足りてない系のお父さんに。これなら已む無し。
……コルテスさんとユリエさん?
元気になった妹たちの姿に草葉の陰で親指を立ててくれるでしょう、きっと。
※原作未プレイの方へ
(液体)+(紙)+(布)+(燃料)=【蒸留水】
油だろうが工業廃水だろうが(液体)であるならば、そこから水を捻り出すのが錬金術士です。
大量生産は不可、原料も必要ということで
ゲーム原作にてルギオン村を訪問する機会はありません。
キャラ同士の会話の中で村の実態を推測できる情報が幾つか出てくるのみです。
即ち今話冒頭は全てが全て捏造会話。
なるべく作中で判明する、匂わせられている要素は拾っていますが。