シャルロッテ視点復帰。
本作も終わりが近いです。
そこで、ここまでお付き合いくださった皆様に、本作最後となる警告をば。
本日の更新から数えて翌々日、第33話より終幕までを描くにあたって作者は
趣味に走ります。
ご寛恕頂ければ幸甚に存じます。
「――お加減はどうですか、師匠ー。ウィルベル師匠ぉー?」
「…………うん、そうね」
「……姉さまー。ウィルベル姉さまぁー?」
「…………うん、そうね」
「……こっちの呼び掛けが聞こえてないわけじゃないみたいだけど」
「……どうしようか?」
「……とりあえず調査のお仕事…も大体終わっちゃってるしなあ」
『東の大陸』にある集落、ファーヴ村で借りた宿の一室。そのベッドの上。
あちこち包帯を巻いたまま、ぼんやりと宙を見つめているウィルベル師匠の姿がそこにあった。
──視界の彼方に突然現れた、馬鹿みたいに大きな水柱に固唾を呑んだあの日。
師匠を信じて待とう、と呼び掛け合って過ごすこと数十分。水浸しの身体を引きずるようにして戻って来る師匠が見えたときには、三人揃って悲鳴を上げた。
契約はちゃんとできた…けどその代わりに、さっさと帰れ、とばかりに水被せて追っ払われたと苦笑気味に口にして、途端に師匠は糸が切れたように倒れてしまって。
大きな傷こそ無かったけど、打撲に骨折おまけに低体温症と大変な状態で……揃って泣きそうになりながら、『水の王』さまに恨み言をいいながらその場で応急処置。
そのまま近くの村まで担いでいって……調査隊が使う宿の一室を貸してもらった形だ。
そうして疲れ果てた様子の師匠の看病と、調査隊の仕事を並行して進めること数日。
ステラードに戻る予定の日まで十数日を残した今日、師匠はこうしてのんびりと身体を起こせる状態にまで回復していた。
……元々こっちで
「あ~…………ごめん、何というか、まだちょっと実感湧いてなくってさ」
「あっ、師匠。お元気そうで何よりです」
「うむ。……あんたたちの方は、この数日の調査で何かわかった?」
「えっ、えーと……」
ふと意識を戻してきた師匠にそう聞かれて、三人で顔を見合わせた。
……あたしたちがこの数日間で調査してきたのは、主にこの村の周辺にある水源の様子。
まだまだ水の湧く場所がたくさんあるってことは聞いてた通りだったけど、特別その周りに何かあったとか、そういう違いは見つけられてない。
「……街の周りとは比べものになんないぐらい草木が活き活きしてる感じがした、ぐらい?」
「まあ、ステラード近郊に比べて水も自然も豊富なのは確かね」
「ここにはまだ『黄昏』の影響が及んでいない、ということなんでしょうか」
「ふうん、そういう感じか……」
あたしたちの話を聞いた師匠は、そう呟いて……どこか遠くを見るように顔を上げた。
……あれ? でも目は瞑ったままだ。……いったい何を見ているんだろう?
「…調査隊の日取りには、まだ余裕があるのよね?」
「え、あ、はい。もう暫くは……」
「なら好都合ね。あんたたち、これから行くところがあるから、ついて来なさい」
「行くって、どこに……」
「どこに? 決まってるわ」
徐に立ち上がった師匠が、ふわりと飛びながら宿の扉に向かう。
戸惑うあたしたちに気づいたのか、一度小さく笑いながら立ち止まって。
「──『水涸れ』の
振り返った師匠の瞳は、
――『水の王』の記憶を使えば、『水涸れ』の元凶にまで辿りつける筈。
今ではもう遠い遠い昔、『黄昏』が始まった瞬間のことを『水の王』は認識している。
その後、ある時期から起きた
ウィルベル師匠がそう続けた言葉に、あたし達は揃って仰天した。
曰く……ステラードの周囲から多分ルギオン村の辺りまで、本来あるはずの水源の水が
そこから街や村にある湧水装置へと再分配される形で、各地に水が供給されていたとのこと。
それだけなら無茶苦茶な規模の水移動…で済むところだけど、『水の王』さまの感覚によれば、その
そこにあるだけの量以上の水を無理矢理に吸い上げようとしていて、それが水や大地を少しずつ蝕んでいる……らしい。
「それじゃ、そうして大地が蝕まれた結果が……あの『水』?」
「……ええ、多分ね」
ファーヴ村を出発して、南東に進むこと数時間。
道すがら話して貰った『水の王』の記憶からわかったのは、ルギオン村の人たちや……母さんが罹った疾病の原因になった『水』が、水源装置から湧き出すようになった理由。
これで、東の大陸に来た一番の目的は果たされた、と言っても良いのかもだけど……喜ぶ気にはとてもじゃないけどなれなかった。
だって、そんなの……そんなこと、どう考えたって
「──それでも暫くは……何十年って単位だけどね? 問題無く水は供給されていたわ」
「それは、どうしてですか?」
「それがどうやら、足りない分の水を……大地に与える害を『水の王』は
「……っ、それじゃあ……」
「勿論、いつまでもは保たない……というか、いつまで経ってもその『
「……『装置』」
決定的だったのは、師匠の説明の中に出てきたその一言。
呟いたミルカに目配せして、たぶん三人ともが辿り着いた結論を、あたしが口に出した。
「『黄昏』は
「……少なくとも『水の王』は、そう認識して……すっかり人間に失望し切っていたようね」
どこか遠くから
そのまま今度は地面をじっと見て、深く溜め息を吐いた。
「……丁度この場所の下、地下深くに、そうして水が一挙に集められている場所があるわ。たぶん大昔の人間が作った、そういう働きをする『何か』が、今でもそこにある筈よ」
「──なに、ここ……?」
「地下なのに……植物がいっぱい……」
大体の場所まで近づいた後で、師匠が空から入口を探すこと十数分。
そうして見つかった入り口から続いていたのは、地下へと続く長い長い通路だった。
「天井が高い……っていうか、床が……どうなってるの、これ?」
「……植物に覆われ過ぎて、元の遺跡の形状がわかりにくいわね」
「でも、すごくきれいな水……枯れ果てた大地の下に、こんな場所があるなんて…」
古い時代の錬金術で作られたらしい、不思議な材質の通路を抜けたその先。
目に飛び込んできたのは、見渡す限りに色々な植物が生い茂った遺跡の内部。
地上じゃ見たこともないような珍しい植物が、わっさりと生えた大きな鉢。
大きな木の根や苔の隙間から見える、不思議な輝きのガラス容器。
分厚い本がギッシリ詰まった本棚まで──え、本棚?
「…ここは…資料室?」
「……意外と綺麗な状態で残ってるわね」
苔に覆われながらも、しっかり中身が残っていた本棚から、ミルカが何冊か本を取り出した。
古びた本を一つ、二つ…ぱらぱらとページを捲る中で何か見つけたのか、ぴたっと手が止まる。
「ミルカ、何かわかりそう?」
「ちょっと待って。これは……」
一冊の本に集中して読み進め始めた様子を、三人で見守ること少し。
読みながら、だんだん難しい顔を浮かべるようになったミルカは、師匠の方を見て口を開いた。
「……さっきの話に出てきた『装置』、らしき物の情報があったわ。この辺り一帯に点在している『水源管理装置』と……その上位機体にあたる『水源浄化装置』の管理データよ」
「っ、じゃ、じゃあやっぱり『水の王』さまの言う通りの……」
「ええ。この遺跡……施設自体が、各地の水源の水と……
「……海水?」
「『黄昏の海』に、水が…?」
ミルカの言葉に、思わずステラと顔を見合わせた。
……確かに、あの『黄昏の海』が
「…そういえば、この地方の『黄昏の海』も変な場所だと思ってたのよね。元が海だったのなら、本来ある筈の精霊の力を感じられてもいい筈なのに……あそこには、
「……結果として
「っ、そっか…! だから……」
大昔にあった海が、人間が作った装置のせいで黄砂だらけの枯れた『海』になってしまった。
そういうことだとしたら『水の王』さまが怒っちゃってた理由も、なんとなく想像できるね。
……あたしたちにとっては、遥か昔の話だけどさ。
「それから……その二つとは別に、もう一つ項目があったんだけど…………」
「……ミルカ?」
「……とにかくこの先に、装置全体の……この施設全体の管理制御を行う部分があるみたい」
「……お、おお!? 遂に来た…って感じだね!」
「シャル、落ちついて。……実物を見るまでは、何とも言えないわ」
「う……で、でもその装置さえ何とかすれば、『水涸れ』を解決できるかもしれないんだよね!」
「…………そうねえ」
……ウィルベル師匠? え、どうしたんですか、その視線?
あれ、なんかあたし……変なことでも言いました?
「まあ、先に進みましょう。……考えるのは、装置の本体を見てからでいいわ」
………………なに、コレ?
「……読み違えじゃ、なかったのね」
……ミルカ? どういう、こと…?
「……さっきの資料にあった最後の項目は、施設全体の制御に関わる……『部品』の、『製造』に関してのデータ、だったわ」
「周囲にある機械で『製造』した『部品』を……中心の機械に組み込む。それが、この施設全体を機能させる為の機構よ」
「異常を感知したときには、『部品』に問題が起きたとして……また新しく『製造』する機能も、この辺りの機械が担ってるみたい」
や…めてよ、ミルカ。
『部品』とか、『製造』とか……そんな言葉、使わないでよ。
だって、これ……この、『人』は──!
「『
…………『人工生命体』?
じゃ……じゃあ、何で、こんなに……
「落ちつきなさい、シャリー。……少なくとも
……師匠。
「…『素体』、かあ。人間が生きたまま遺跡の一部になるってのも、どうかとは思ってたけど……だからって、その為の人間を
…………止めないと。
こんな装置、すぐに止めてしまわないと、だよね…?
「…ええ。そうすれば、街の装置から汚染された『水』が出ること"は"、止められるでしょうね」
…! やっぱり師匠もそう思いますよね!?
この装置が、
こんな……こんなムチャクチャな装置さえなければ……!!
そ、それにっ、この装置が動いてる分だけ、『水の王』さまが言う大地の被害もひどくなってくばっかりってことで──
「その代わり……
…………え。
あ、れ……そっか。ステラードの水も、この装置から来てるんだから、止めちゃったら……
「……全く無くなるわけじゃ、無いと思うよ」
っ、ステラ…?
「ステラードには今もある程度は普通の水が出てるよね? それならきっと、近くの水源が完全に枯れてるわけじゃないはずだよ」
「……そうね。装置が止まれば、それらからちゃんと水が湧いてくるはず、だけど……」
「供給量は今とは比べものにもならなくなるでしょうね」
ミルカ……! ウィルベル師匠……!
「確かに装置を止めれば、自然は昔の状態に戻る……戻ろうとはするはずよ」
「けど、それには長い……
「そもそも、もう何もかも『手遅れ』な可能性だって……決して低くはないでしょうね」
そんな……それじゃ、あたしたち……どうしたら……!?
「……このまま緩やかに、
「それとも……遠い未来の微かな可能性を願って、すっぱりと
「選べるのは二つに一つ。…………さて、どうしたものかしらね」
※原作既プレイの方へ
時の止まりし遺構?
ジオフロント?
本作シャリーたちにはそこに辿り着ける由が無いのです。
そこで『水の王』の記憶を辿れば、地域一帯の水源から水を吸入→各子機へと再分配、の流れの大元の位置を特定できると解釈。
これにより(原作アーシャ曰くの)水の集積地である地下薬草園に辿り着けるということに。
また、原作
当時の幼いリンカさんたちが使用できたなら、偶然に出来た地表の裂け目、というわけではないでしょうし、地下とはいえ場所がわかってさえいれば、これを発見することは可能でしょう。
加えて、地下薬草園内に存在する資料室に、各機構について読み解けるだけの資料があることを原作9章の会話にてオディーリアさんが保証してくれています。ありがてえ。
これで解説補足を入れてくれる方々が居なくとも必要な情報は開示されますね。
……というわけで本作シャリーたちは、このような形で真実に辿り着く事と相成りました。
当然ながら、色々と欠けや誤認識もありますが。
※原作未プレイの方へ
大型装置の『
……安心してください。原作設定ですよ!
当時の○ストさんに何があったんやマジで
本作では本作シャリーたちが手に入れ得ない情報が幾つか割愛されてしまっています。
より詳しい背景が知りたい方は原s(ry