昏き海都は黄砂に沈む   作:非単一三角形

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 原作でもシャリステラ側最序盤は結構辛い話が続きます。原作でも。
 大事なことなので(ry


 本作を書くにあたり作者はステラ編、ロッテ編両方でゲーム開始から真EDまでを再プレイし、大体の会話を書き込んだExcel表を用意しています。

 …その作業中に誤字を発見した時の、どうしていいかわからなさよ。
 無印からPlus、DX版を出す際にもあんまりこういうのは修正しないんですよね、ガス○さん。



第5話 希う月

 

 

「――んぐんぐ……むにゅ……もにゅもにゅ……」

 

 

 シャリーちゃんを含めた四人で囲むことになった早めの食卓。

 そこには、遠慮しようとしたミルカを笑顔で座らせた母さんに見守られながら、多分三日振りになる食事に口を動かすシャリーちゃんの姿があった。

 

「す、すみません…わたし、昔から食べるのが遅くて…」

「あらあら、良いのよ。そんなの気にしなくて。また焼いてくるわねー」

「短期間とはいえ絶食の後だもの。理にも適ってるわ」

 

 うん、勿論ミルカの言う通り、ゆっくり食べるべきだしむしろ良いんだけどね。

 ……でも、何だろう、このもそもそ食べてる感じ。

 何故か食料ウサギが延々と草を食んでる姿が頭に浮かぶなあ…

 

 

「…それにしても、聞いていたより怪我の具合は悪くなさそうね。起き抜けに『調合』を…いえ、そもそも錬金術士だったことにも驚いたけど」

「あ、はい。…その、あの錬金釜や道具って、シャル──シャリーさんの、なんですよね?」

「あ、うん、そうだよ! …使い辛かったりとかなかった?」

 

「いえ、そんなことは。…使い慣れていた道具とほとんど変わりませんでしたから」

「そっか…うん、それなら良かったよ。それじゃあたしも、もう一個…あむっ」

 

 答えながら、シャリーちゃんが『調合』した麦粉から焼いたパンをまた一つ頬張った。

 …う~ん。やっぱりあたしが作ったヤツより美味しい気がする。心なしか。

 

 シャリーちゃんがあたしと同じ錬金術士だったのもそうだけど、おんなじ道具におんなじ素材を使ってコレってことは、確実に腕前の差だよねえ…

 う~…あたしより年下に見えるのに。ちょっとへこんじゃうなあ…

 

 

「……シャルと同じ道具を使い慣れてるってことは、『古式』なのね」

「? 『古式』…ですか?」

「んぐ。あれ、シャリーちゃん知らないの?」

 

 ミルカの呟きに、シャリーちゃんが首を傾げる。

 一言に錬金術って言っても、古いのと新しいのがあって、その違いは、ええと…ミルカ任せた!

 

 

「…………錬金術は基本的にすべて失われた知識よ。ただ、繁栄していた期間は長かったの」

 

「シャルやあなたが使っているのは、黎明の頃から受け継がれる原点に近い錬金術」

 

「私も一応錬金術士だけど、使っているのはそれよりも後の時代に生まれた…新しい錬金術、よ」

 

 

「新しい……それで、そちらと区別して『古式』、なんですね?」

「ええ、そういうこと」

 

 一度呆れた目であたしを見たミルカが、それでもシャリーちゃんに向けた説明を始めてくれた。

 ……いやあ、だってあたしそこまで知らなかったし。なんならその説明も初耳だし……

 

 

「新しい錬金術は、より使いやすいように一般化されている。…だから、私にも覚えられる」

 

「対して『古式錬金術』は、持って生まれた才能に大きく左右されるの」

 

「それだけ純粋な錬金術に近い……そう、言われてるわ」

 

 

「才能……純粋な……」

「……ミルカ?」

 

 聞いた言葉を口元で反芻している様子のシャリーちゃん。

 けれどあたしは、何故だか俯き加減でそれを見ているミルカが気になった。

 

 

 ……ねぇ、ミルカ? 何でそんなに後ろめたいみたいな話し方してるの?

 あんたは、あの『中央』で錬金術を学んできた、一人前の立派な錬金術士じゃんか。

 それなのにどうしてさっき、()()だなんて──

 

 

「……それにしても、都会ってこんなに錬金術士が多いんですね。わたし、今まで生まれた村から出たことがなかったので知りませんでした」

 

「え? あ、あぁー……」

「……この街の錬金術士は私とシャルの二人だけ。偶然よ」

「えっ、そ、そうなんですか?」

 

 う、うん。今ここに錬金術士が三人も居るもんね。シャリーちゃんから見たらそうなるよね。

 でもこのステラードだって『中央』みたいな本当の都会からすれば田舎みたいなもんなんだよ?

 錬金術士はあたしとミルカの二人だけ…いや、万年閑古鳥なアトリエを抱えるあたしを除けば、まともな錬金術士なんて実質ミルカしか──

 

 

「…あ、いや、もう一人居るよ、ミルカ! ついこの前からだけどっ」

「シャル?」

 

「昨日今日のことで話そびれてたんだけど、新しくこの街に来た旅の錬金術士! あたし、会ったその場で弟子入りさせてもらったの!」

「……弟子入り?」

「……待って、聞いてない、シャル。どういうことか詳しく聞かせて。今すぐに」

 

 

 

▲ ▽ ▽

 

 

 

 ──それからあたしは、何だか急に圧が強くなったミルカに急かされる形で、命の恩人でもあるウィルベル師匠について話していった。

 

 その出会いと、弟子入りの動機に経緯。

 特に、危ない目に遭っていた(ミルカにすごい目で睨まれた)とこを颯爽と助けて貰ったこと。

 勿論、そのとき見せて貰えた力やそのカッコよさについては、身振り手振りも合わせて全力で!

 

 

「――あ…そういえば師匠は『古式』か新しい方か、どっちなんだろう?」

「…その話が本当なら『古式』じゃない? どうやってるのか私には見当もつかないもの」

 

「……ああ良かったっ! セーフっ!」

「そんなことも確認せずに弟子入りしたの? …相変わらずドジなんだから、まったく」

 

 ミルカに呆れたように言われながら、額に浮かんだ冷や汗を拭う。

 …あれだけ頼み込んで弟子にしてもらっておいて、方式が違ってどうにもなりませんじゃ、目も当てられないところだったよ。あっぶなあ~…

 

 

「旅の錬金術士に弟子入り……そんなこともあるんですね」

「シャリステラ──シャリーのところでは違ったの?」

 

 

「わたしの村では長の家系の中から錬金術の素質がある子供が次の長を務めるんです。だから師と呼ぶなら族長になりますけど……お忙しいので。主に村に伝わる書物から身につけるものでした」

 

 

「……長の家系?」

「えっ……じゃ、じゃあシャリーちゃん、次の長なの?」

 

 ミルカが、たぶん何気なく聞いた質問に、すごい答えが返って来た。

 ……ど、道理で初めの印象よりしっかりしてるというか……こうして見ると、ちょっとした仕草なんかも様になってるような──

 

「……今は、ですけどね。わたしの錬金術はまだまだで…もっと素質のある子が生まれてくるかもしれないから……」

「そ、そうなんだ…」

「……」

 

 笑っているのか、困っているのかわからない感じの声で、シャリーちゃんはそう言った。

 なんだか本人はやけに謙遜してる気がするけど、それって凄い事だよね?

 

「……それなら少なくとも今は、その村の中でシャリーちゃんが一番才能がある錬金術士だって、みんなから思われてるってことでしょ? すっごいなあ…」

「えっ? ……い、いえ、そんな。わたしなんて、まだ本当に大したことは……」

 

「それに、村に伝わる書物っていうのもなんかイイね! 凄そうな響き! ねえねえ、あたしにもちょっとぐらい見せてくれちゃったりなんて──」

 

 

 

「…ッ!? シャル!」

「え? …………あっ」

 

 

 急に響いたミルカの声に、意識を取られて。

 遅れて、思考し始めた頭が、すぅっと冷えていった。

 

 シャリーちゃんの村にあった書物。

 それを()()()()()()()としたなら……それが今、()()()()()のか。

 

 

 ――どこに、()()()のか。

 

 

「あ……えと……」

 

 …気づくのが一瞬遅いだろうと、あたしは自分の頭をひっぱたきたくなった。

 すぐに何か言わなきゃって思うのに、頭からも喉からも、なんにも言葉が出てこない。

 

 

 …ダメだ。

 こんなの、ダメだ。

 

 こんな……あたしがこんな、言葉を詰まらせてたら、シャリーちゃんに──

 

 

 

「…………()()()()無事だったのは、わたしだけ…なんですね?」

 

「…っ!」

「…シャリー、ちゃん」

 

 

 …お腹の奥が絞られるみたいな沈黙を破ってみせたのは、シャリーちゃん当人だった。

 

「何度か……ナディさんに聞こうとしても、はぐらかされ、ましたし…」

 

 綺麗な黒髪に目元は隠れて、そこから覗く唇はギュっと引き締められていて。

 机の上で組んだ両手は見ていて辛いぐらいに白く、小さな肩は微かに震えていて。

 

 

「…たぶん、そうな…と、おもって、は……した。わたしに……きづかせなっ…ぃと……!」

「っ!? ご、ごめんっ! その、あたしが、もっと早く……っ!」

 

 

 息を詰まらせて、どんどん途切れ途切れになっていく声。

 咄嗟に言い訳みたいな言葉が飛び出しかけたあたしに、けれどシャリーちゃんはゆるゆると首を横に振った。

 

「…目を覚ましてすぐ、それを聞かされていたら…きっと、受け止められませんでした。他の事に目を向けて、手を動かして……気を逸らす時間を貰えたからこそ、考えることが出来たんです」

 

 …ふと視線を感じて振り向いたら、ミルカと目が合った。

 その目が驚きながらも、どこか安心したように「私、必要無かったみたいね」と言っている。

 

 

「たくさん気を遣って頂いて、ありがとうございます。……もう、大丈夫です。わたしには――」

 

 ぐす、と一度だけしゃくりあげて、シャリーちゃんは顔を上げた。

 

 

「――使命が、あるから。それは、たとえわたし一人になってでも必ずやり遂げなくちゃいけないことだから。……立ち止まって、蹲っているわけにはいかないんです」

 

 

 握った左手を胸元に当てて、ぐっと姿勢を前に向けて。

 涙を堪えようとする深紫の瞳は、真っ直ぐに向かうべき先を見据えているようで。

 

 

「そうじゃないと……兄さまも、テオ爺も……みんなを、がっかりさせちゃうもの…っ」

 

 

 そんな姿に、あたしは場違いとは思いつつも、こう思ったんだ。

 

 

 ――かっこいいな、って。

 





※原作既プレイの方へ

 ロッテ1章、ステラ4章、8章共通会話あたりを混ぜ混ぜしつつ改変も忍ばせていくスタイル。

 本作現時点ではシャリステラの方が少しばかり錬金Lvが上なイメージ。
 むしろこれだけ環境や目的意識の異なる二人が同Lvな方が不自然なのですが。
 まあ、原作の場合はゲーム的な都合があるので仕方ないのでしょうけども。

 また割と原作ステラはオウム返しな台詞が多いです。これも恐らくゲーム的な都合かと。
 本作の中でどのぐらい彼女らしい発言として採用するべきか結構悩んでたりします。

 そしてゲーム最序盤に出た後、特に擦られることの無い彼女の食事遅い設定を拝借。
 お肉好きに関しては一度だけ、それもえらく謎のプッシュをされますけどね。

 …何で会話の横でモグモグしてるの? 「お肉おいしいよ?」じゃないのよ、ステラちゃん。


※原作未プレイの方へ

 釜に素材入れてぐるこんぐるこんする、従来プレイヤー的に『いつもの』なのが古式錬金術。
 なんかデカい機材いっぱい使って、それを科学的に再現してるっぽいのが新しい錬金術です。
 ファンタジー全開なのが前者、SF感滲ませてきてるのが後者、という認識でもいいかも。

 これも作者の知る限り、黄昏シリーズ以外には登場していない要素ですね。
 メカメカしい遺跡とかは他作にもあるのでクローズアップされてないだけかもしれませんが。

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