TSサキュバスの酒場娘【ダイジェスト版】   作:ぷに凝

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大暴露

レオンとシェリーラが戦っている。

それが私の目の前で繰り広げられた真実の全てだった。

 

「……なんで」

 

“ヒツジ亭”は裏切ってなんかいなかった。それがわかっただけで私は十分なのに。

 

なんでこんなことになるのか。

 

「いきなりメリリアさんに斬りかかるとは……正気を疑いますよ?レオンさん」

「“そうなる”まで状況を隠れて見てたのは誰だ?シェリーラ」

 

レオンとシェリーラはお互いに対峙し、武器を構えている。レオンは自前のショートソードを。そしてシェリーラは、一体どこから取り出したのか巨大な“バスターソード”を構えている。

 

「ちょ、二人とも何してんの!?喧嘩なんかしてる場合じゃないでしょ!!」

 

私は思わず叫んで二人を制止した。しかし、対峙する二人の険悪さは増すばかりだ。

 

「えぇ、その通りです。安心してくださいメリリアさん。すぐにレオンさんは排除します」

「排除って……まさか殺す気!?」

「当然でしょう。彼は今、あなたを殺そうとしたのですから」

「いや、いいって!大丈夫だから!ほら、死んでないから!ね!?」

 

私は両手を広げて、シェリーラに無事をアピールする。傷の一つも付いてない。ピチピチの美肌だ。

 

「……メリリアさん。あなたのその人の良さは美徳ですが、同時に欠点でもあります。あなたは人を信じ易過ぎる。たった今、刃を向けてきた相手を庇ってしまうほどに……」

「そこに付け入ったのが貴様だろう。シェリーラ」

「話になりませんね」

 

シェリーラはバスターソードを大上段に掲げ、そこに“魔力”を蓄積させた。

 

「“衝撃よ(インパクト)”!」

「くっ……!」

 

バスタソードを振り下ろす。と同時に振り放たれた衝撃波はガガガガガッ!と地面を抉りながらレオンに迫る。レオンはショートソードで衝撃波の側面を打ち据え、弾くようにして回避する。

 

しかし、体勢が崩れた。

 

「そこですッ!」

「……随分、強いな……!」

 

ガラ空きの脇腹に向けてシェリーラが剣を打ち込む。それに対してレオンはショートソードを刃に滑らせるようにして致命の一撃を回避した。しかし全て避け切ることはできず、袖口が僅かに切り刻まれた。

 

そして再び距離を取り、睨み合いを続ける二人。僅かにレオンが劣勢だ。

 

……っていうか、二人ともこんな強かったのか……。金玉がどうとか言ってた私がバカみたいじゃん。いや実際バカなんだけど。

 

「……そもそもシェリーラ。お前は聖天騎士の“第四位”と戦っていたんだろう。何故ここにいる」

「……正面から戦ったら命はありませんから。なんとか撒いてここまで来たんですよ」

「“撒いた”だと?それを許すほど甘い相手なのか?」

 

レオンが鋭くシェリーラを睨むが、シェリーラは怯むことなく剣先をレオンに向けた。

 

「それを言うならあなたこそ、今の発言は墓穴を掘ったんじゃないですか?レオンさん」

「……なんだと?」

「あなたはマリアベルと会ったこともないはずです。私が彼女と戦っていたことも、あの場にいなかったレオンさんは知っているはずがない……どこからその情報を仕入れたんですか?」

「……」

「黙るのは都合が悪いからでしょう?」

 

レオンが僅かに眉を顰め、シェリーラが目を細める。

 

……どうなんだろう。実際、どっちかの言ってることが嘘でどっちかは本当なのかな?そんなに単純じゃない気がする。

シェリーラにもレオンにも、隠し事はある。それは確かだ。だけどこの状況は、お互いの見えてない部分を疑り合って疑心暗鬼に陥っている……ように、私には見える。

 

このまま戦っても、どちらかが正しいかの答えなんてきっと出ない。平行線だ。

 

……そして多分、それを“望んでいる”人間がいる。

 

そこまで考えた私は、意を決して立ち上がった。

 

「……二人とも、喧嘩はそこまで。今はこんなことをしてる場合じゃないでしょ?」

「ですから、メリリアさんは行ってください。私はここでやるべきことがあります」

「……そうだな。メリリア、君だけは行くべきだ。こんなとこで足踏みしてる場合じゃない」

 

レオンの答えも、シェリーラの答えも変わらなかった。多分、今は二人とも互いのことしか見えてないんだ。他のことには聞く耳を持たなくなってる。

 

……ここで二人を止めるには、まず私を“見させる”必要がある。

 

考えろ私。二人が思わず気を引かずにはいられない言葉を。

 

……そうだ。

 

「……“隠し事がある”だの“本心が見えない”だの……人に、隠し事の一つや二つあって当然でしょうが……!!」

 

そう、そうだ。考える必要なんてない。ただ本当のことを言えばいいだけだ。

思わず”耳を疑う“ような秘密なら、私だって持ってるじゃないか。

 

「私はな!前世が男なんだよ!!」

「「!?」」

 

胸を張って、私は言い切った。

 

「なのに女として見られて興奮してんだよ!!」

「「!?!?」」

 

そう。私は男だ。そして変態趣向だ。

 

セクハラを受けるのは商売の一環だからとか、露出度高いのは体質的にしょうがないからとか色々言い訳したけどなぁ!!

 

結局のとこ、エロい目で見られると興奮するからだよ!!

 

「お前ら、私以上に“業が深い”秘密持ってんのか!?あるなら言ってみろよ!!」

「メ、メリリアさん?何を言って……」

「“論破”する自信あるぞ私は!!」

「……メリリア」

 

……よし!二人が私を見たな!作戦成功!

 

その代わりに色んなモン失ったけど!!

 

「……わかったらそんな下らない喧嘩なんかしてないで、さっさと馬車で逃げるよ!事情なんて後でいくらでも聞ける!」

「……」

「……」

「今は三人で生き残るのが大事でしょ?二人ともはやく戻ってこないと……」

 

今はとにかく、全てを後回しにしてでも逃げることが大事だ。だから……何を失うことになろうとも二人を連れ戻す。そのために……

 

「私の“性癖”を暴露するぞ」

 

どうだ。怖かろう。

 

私は怖い。どうか早く戻ってきてください。

 

 

「くっ……ふぅぅ……!」

「……メリリア。無茶をするな」

「なんでこの人は自分で自分を傷つけるのでしょうか……」

 

数分後、私の機転によって二人を馬車に乗せて発進することができた。

ただし、性癖を暴露しまくった私は蹲って血涙を流していた。そんな私をシェリーラとレオンが両隣から慰めてくれている。

 

……まさか“尻に異物を挿入して抜けなくなったまま働いて興奮した”まで言うことになるとは思わなかったが……私の尊厳がズタボロになるくらいなんだ。

 

シェリーラとレオンが喧嘩せずにここにいてくれてる。それだけで充分だ。

 

「……言っておきますが、何も解決はしていませんからね」

「当然だ。お前のことはまだ信用できない……メリリアに危害を加えるようなことがあれば、タダじゃおかない」

「それはお互い様でしょう」

 

まーだピリピリしてんよー、この二人。

 

二人とも私のことを考えてくれてるなら、喧嘩しないで仲良くしてくれるのが一番いいんだけどねー。ホント、過去とか秘密とかはどうでもいいからさ。

 

どんな隠し事をしてようと、側にいてくれる。それが私にとっては一番なんだから。

 

「メリリアさん、レオンさんにはお気をつけて。また何かの拍子に命を狙われないとも限りませんから」

「いいや、メリリア。シェリーラの言葉に耳を貸すな。そうやって言葉巧みに相手に取り入って操る。それが彼女の手管だ」

「はいはい」

 

なんか二人とも仲良い気がしてきたよ。前までは同じ家に住んでてもどこか他所他所しかったしね。今回、本気でぶつかり合ったことでむしろ分かりあるようになったみたいな感じ?

 

そう考えれば、あの喧嘩も必要な物だったのかもしれない。

 

「で、アグロさん?隣町ってのにはどれくらいで着くの?」

「うーん、そうだなぁ。大体半日も道なりに走れば着くと思うぞ」

「“ロジィズ”だったっけ?結構近いんだね」

「隣町だからな」

 

ふむ。ロジィズか。それが次の町の名前。船が手配してあるって話だったけど、ちゃんと逃げられるのかな?

まぁでも、レオンだってシェリーラだって戻ってきたんだ。きっと大丈──。

 

閃光が降り注いだ。

 

「──」

 

耳鳴りが、する。

 

 

レオンが光に包まれて、消えた。

 

シェリーラが光に包まれて、消えた。

 

 

「──」

 

耳鳴りが止まない。

 

「……ぁ」

 

……目の前に、地面があった。

 

……何が、起きて……。

 

「……“裏切り者”に、愚かな“飼い犬”。結局足止めは失敗したのね?いい具合に仲間割れして、そこの淫魔を引き止めてくれるのを期待していたのに。あなたが一体どんな手を使って二人を引き込んだのか、とても興味深いけれど……」

 

ざく、ざくと音を立てて近づいてくる足音。

 

グラグラと揺れる視界を引き上げると、その姿が目に入った。

 

「結局、“私たち”からは逃げられない」

 

マリアベル。

 

彼女は、その手に持った銃を私に向ける……ことなく、恭しく両手を揃えると、敬意を表するかのように頭を垂れた。

 

ただし私にではなく、その()()から近づいてくる、もう一人分の人影にだ。

 

「流石のお手前でした。“司令官”──もとい」

「……あらあらあらあら。虫が三匹も飛んでるわぁ?どこから入ったのかしらぁ……あっくんに叱られちゃう」

「聖天騎士“第二位”。イブ様」

 

“イブ”。そう呼ばれた彼女は、衣服を一切纏わない裸体でありながら、まるで絵画のような幻想的な美しさを纏った少女だった。

 

少女は地面に倒れている私の後ろに立つと。

 

「……あら。もう虫は一匹しかいないのねぇ?」

 

と、首を傾げた。

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