TSサキュバスの酒場娘【ダイジェスト版】   作:ぷに凝

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走れエロス

「なぁ、最近ここいらをうろついてるアイツらってさ……」

「あぁ、“聖堂騎士”だろ?中央教会から派遣されて来たんだと。この街に魔族が潜んでるとかってな」

「マジかよ?おい、お前さては魔族じゃねぇだろうな」

「ぎゃはははっ、だったら今頃この酒場の奴らは全員食い殺されてるよ」

「ははっ、ちげぇねぇ」

 

 

「……?メリリア先輩?どうしました?」

「なななななんでもないよよよよよ」

「本当にどうしました!?」

 

そう、何も問題ない。私は潔白。私は人間。パーフェクトヒューマン。

 

マゾク?なにそれ知りません。聞いたこともない。ましてや淫魔なんてエロ漫画の中の空想の産物に決まっている。

 

私は何も知らん!!

 

……マジでヤバい。私のことがバレた?いや、だとしても“聖堂騎士”だなんて……そんな大掛かりなことするぅ……?私なんて人畜無害なただの露出魔ですよ……。

 

けど、正体がバレたらどっちみち殺されるのは変わりない。“聖堂騎士”ってのは、魔族と見るや全員ぶっ殺そうとする血も涙もない連中だ。

 

……出るか、この街。気に入ってたんだけどなぁ。もう無理っぽいかなぁ……。

 

「おい!お前ら!!」

 

私が、頭の中で町を脱出するプランを考えていると。

 

「隠れてた魔族が見つかったらしい!これから広場で公開処刑だってよ!!」

 

……そんな一報が飛び込んできたのだった。

 

 

 

「皆さま、今日という日を迎えられたことを、私は嬉しく思います」

 

私はマスターに言って、少し早めの休憩を取ることにした。

 

そしてその休憩時間を利用して、私は魔族の処刑が行われるという噴水広場に赴いた。

 

広場に出ると、そこにはすでに数十人規模の人だかりが出来ていた。

 

広場の中央には……物々しい魔力で動く処刑台が置かれ、その横に手錠を嵌められた数人の魔族が俯いて並んでいる。

 

処刑台前では、どこかで見た司祭服の男が演説を行なっていた。

 

「この街に身を隠していた邪悪なる魔族たちは、今!こうして白日の下に晒されました!何人たりとも神の目から逃れることは出来ないのです!」

 

公開処刑。そもそも死刑すら行われなくなった前世の世界に対して、この世界では処刑は活発に行われる。

 

娯楽の少ないこの世界において、罪人の処刑を見れるというのは……。

 

「ははっ、いいぞやっちまえ!」

「さっさと殺せー!」

 

民衆にとって、この上ない楽しみだった。

 

「皆様のご協力と、この日のためにこのエンディの地に足を運び、尽力していただいた中央教会の皆様に感謝を申し上げます。そして、今……」

 

司祭の男がそう言うと、そばに控えていた白色に眩く光る甲冑を着た“騎士”が、魔族を促して処刑台まで進ませる。

 

「その献身に汚れた血をもって報いる時が来ました!」

 

……いやー、やっぱこのノリにはいつまで経っても慣れないね。

 

例え殺されるのが大量殺人鬼だったとしても、その処刑を喜んで見る気にはなれない。

 

単純に苦手なんすわ。血とか内臓とか、そういうゴア表現がね。

 

ただ……もしかしたら私のせいで捕まってしまったかもしれない彼らの最期を、苦手だからって理由で見届けないのは。

 

「喝采を!!」

 

無責任な気がしたんだ。

 

「“炎よ(フレイム)”」

「アギャアアアアアア!!!」

 

「うっ……」

 

だけど流石に、その瞬間を直視するのはキツイ。

 

この世界ではすでに、即座に罪人の命を奪うような人道的な処刑器はいくつか開発されている“断頭台(ギロチン)”のような物も。

 

だが、魔族は意図して長く苦しむ処刑がされる。

 

そう、例えば“魔法”でじっくり火炙りにされるような。

 

……やっぱ慣れんわー。帰るか……。

 

「……え?」

 

しかし、私以外の広場の全員の注意が処刑台に向けられたその瞬間を狙ったのか。

 

処刑台の後方で俯いていた魔族の男の内の一人が……ジャラ、と音を立てて錠を“外した”。

 

「“暗闇よ(ブラインド)”」

 

その瞬間、男は何かを呟いた。

 

そして。

 

「うわぁ!!なんだ!?」

「何も見えない!!」

 

広場は闇に包まれた。

 

「馬鹿な!魔法だと!?」

「逃すな!追え!追えー!!」

 

暗闇の中、広場のあちこちから怒号が飛び交い、会場はパニックとなる。

 

暗闇の中で……私は一人、何が起こったのかを正確に“把握”していた。

 

魔族は夜目が効くのだ。

 

「……バラバラに逃げてった」

 

処刑された魔族一人を残して。他の魔族は目眩しの魔法が発動した瞬間に、全員が逃げ出したようだ。

 

どんなザル警備やねんと思わなくもないが……そうも言ってられない状況だ。

 

「追いかけるか」

 

私はどさくさに紛れ、逃げ出した魔族たちの内の一人を追いかけることにした。

 

 

 

街の外壁を飛び越え、魔族が残した魔力の痕跡を追跡する。“魔法”を使った直後は、こういった痕跡を残しやすいのだ。

 

そしてその魔族は、“エンディ森林”へと逃げ込んだようだった。

 

「うわぁ……草ボーボー」

 

だけど当然ながら、酒場の制服で森の中に飛び込めばあちこちを枝やら雑草やらで汚すことになる。

 

こりゃマスターとアズ先輩に怒られるな……マシロちゃんに庇ってもらお。

 

「グルルル……」

 

さて、この“エンディ森林”には“魔物”が多く棲みついている。

 

とは言っても人里近くだから、そんなに凶悪な魔物は浅い場所には出ないけど……奥地に入っていくほど、ヤバい魔物が多数出てくる。

 

「……君、こんな浅い場所に出ていい魔物じゃないよね」

「グルルルァ!!」

 

私の前に現れたのは、全身に黒い体毛を生やした1匹の狼だ。

 

魔力の総量的に、ランク3ってとこか……ベテラン冒険者でも真正面から戦うのは危険なレベル。

 

恐らくは、私が追いかけて来た魔族の“使い魔”だ。私に気づいて、始末しようとしたか……あるいは追い返そうとしただけか。

 

「ま、どっちみちだね」

「グルルォ!」

 

私は黒狼君に対し、無警戒に近づいていく。

 

そして狼君は私に対し、牙を剥き出しにして威嚇してくる。

 

そんな狼君に私は目を合わせ……。

 

「“魅了(チャーム)”」

 

“魔法”を発動した。

 

狼君から見れば、私の目の中がピンク色に光り、虹彩にハート型の模様が浮かび上がったように見えるだろうね。

 

「……クゥン」

「よぉ〜しよしよしよし」

「グゥ〜」

 

私の魔法にかかった狼君は、ゴロンと寝転がって私にお腹を見せてきた。

 

そのお腹を撫でてやると、気持ちよさそうに身を捩る。

 

可愛いやつめ。私は前世じゃ猫派だったが、君のことも悪くないと思っとるぞ〜。

 

「……同族だったか」

「お」

 

狼君をわしわしと撫でていると、林の陰から一人の男が現れた。

 

浅黒い肌に真っ黒いフードを被り、顔はよく見えないが……血のように赤い目をした男だった。

 

「なぜ追って来た?」

「ん〜?別に。なんとなくかな〜」

「ワフッ」

「おぉ〜、よしよしよし……」

「戻れ。“使い魔(サーヴァント)”」

「あっ……」

 

男は、完全に私に降伏しきっている自分の“使い魔”に思うところがあったのか。さっさと影の中に引っ込めてしまった。

 

……私も犬型の“使い魔”、調伏しようかなぁ。

 

「女。お前の他に追手はいるか?」

「んーん。別に。私一人だよ」

「だろうな。他に気配は感じない」

「あっ、わかってて聞いたの?やらしいんだ〜」

 

それにしてもこいつ、結構体鍛えてやがんな。ローブの上からでも隆起した筋肉がわかる。

 

……別に、だからどうってことないけどね!私も元男だし!

 

それに胸部装甲では負けんよ?

 

「女。お前は確か……」

「女、じゃなくてメリリアだよ。ちゃんと名前で呼んで?」

「……メリリア。お前は俺たちが処刑される“あの場”にいたな?」

「あ、気づいてたか」

「何故、同じ“魔族”であるお前があの場に来た?正体が露見するリスクを負うだけだろう」

 

むぅ。こいつめ。こっちの事情はお見通しってか?生意気な奴だな。

 

だけど、質問には答えてあげよう。

 

「君たちの最期を、家族に伝えてあげる人がいなきゃダメでしょ?」

「……」

 

まぁ、実はそんな深い理由じゃないけど。これは半分本当で、半分嘘。

 

本当は私が見届けたかったから。ただそれだけの理由だ。

 

……だけどそれを言うのはちょっと恥ずいからね!誤魔化しました。

 

「……メリリア。提案なんだが」

「うん?」

 

その答えを聞いた男(そういや名前聞いてない)は、私の目を真正面から見つめて言った。

 

 

俺たち(魔族)と一緒に来ないか?」

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