TSサキュバスの酒場娘【ダイジェスト版】   作:ぷに凝

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獣人、レオン

私は普段、自分の姿を偽って生活している。

 

悪魔族(デビル)”の特徴であるツノも、尻尾も、隠して生活している現状だ。だけど、本来の自分を隠して日々を過ごすというのはそれなりにフラストレーションが溜まるもので。

 

その結果私は普通の淫魔以上に男から向けられる情欲に敏感になってしまっていたり、夜遅くに店で赤子のように(直喩)全てを解放したりするわけだが。

 

それは言わば、蛇口を少しだけ捻って水を少しずつ垂れ流すようなもので、確かにフラストレーションの解放にはなるが、なんとも言えない不完全燃焼感が残るものだ。

 

では、もし蛇口を開き切って、濁流のように自身を解放したらどうなるのか?

 

その答えが……。

 

「……ふざけてるのか?」

「ふざけてないわい」

 

この格好……というよりこの姿だ。

 

私の側頭部からは山羊に似た禍々しいツノがそそり立ち、腰の尾骨に当たる部分からは細長い尻尾が生えている。

 

髪は黒色のボブカットから、真っピンクの腰まで届くロングヘアーに。

 

極め付けは、全身を覆うほぼ下着と変わらんイカれた布面積の衣装。

 

これが、私の“淫魔(サキュバス )”としての正装だ。

 

うん、こんな際どい衣装、前世でも相当攻めたコスプレイヤーくらいしか着ない代物だろう。

私も本気で戦ってる相手がいきなりエロ漫画のコスプレし出したらふざけてんのかってなるけど。

 

“淫魔”の本気は、これでようやく出せるのだ。

 

「はっ、淫魔(サキュバス )か。男に媚びるのは得意だろうが……殺し合いは苦手なんじゃねぇか!?」

「むっ」

 

失礼な。

 

確かに私は、どこにでもいる前世持ち転生露出癖あり欲求不満サキュバスだけどね。

 

「“淫魔”っていうのはね、最強の種族なんだよ」

「ぶはははっ、笑わせんなよ!」

 

私がそう言うと、対峙した男達のうちの片方が膝を叩いて笑い転げる。

 

「“吸血鬼(ヴァンパイア)”や“大悪魔(デーモン)”ならいざ知らず……たかが淫魔ごときに何が」

「爆発」

「……は?」

「爆発させられるよ」

 

突然だが。

 

“魔力”というのはどこから生まれるのか、知っているだろうか。

 

その答えは、“睾丸”だ。

 

 

つまり金○である。

 

 

“魔力”。特に満月の夜に、目に見えるほどに濃度が濃くなるこのエネルギーの正体は未だ学者達の間でも解明されていないが、一度転生した身だからか、私にはこれの発生源がわかる。

 

死んだ人間の“魂”。それが死後、魔力となって周囲に散らばる。

 

そう。“魔力”とはいわば生命エネルギー。じゃあその大元を辿って、人間の“魂”が最初に生まれるのは……人間の命が生まれる所って言ったらどこよ?

 

当然、生殖器だ。

 

そう……金○とは、魔力の源泉なのだ。

 

そして“淫魔”とは……特に生殖器の魔力操作に干渉するのがとても得意な種族だ。

 

だけど、普通ならそれは性交時に多少強く相手に快楽を感じさせたり、相手に自分を魅力的に見せたり、相手の精力を増強したりといった、エロ能力にしか使えない。

 

だけど……私に限ってはその限りじゃない。魔力の性質を深く理解している私に、“淫魔”としての特性が加わった時、何が起こるのか。

 

そう。

 

「爆発すんの」

「……は?」

「私の攻撃が当たると、金○が爆発するんだよ」

「「……」」

 

淫魔の能力は、相手の精気を吸い取るだけじゃない。

 

能力を極めれば、強制的に絶頂させることが可能なのだ。

 

つまりはテ○ノブレイクのことなんだけど。

私はソレを遥かに超えるような快楽を直接ぶつけることができる。

 

それこそ、金○が破裂するくらいの快楽を。

 

ましてや今の私は、本来の力を全て解放した状態だ。

 

 

今の私が起こす金○爆発は、ビックバンに匹敵する威力かもね。

 

 

「……嘘だろ?」

「本当」

「最強じゃねぇか」

「そうだよ」

 

そう。ようやく気付いたようだな。

 

 

「“淫魔”はね、最強なんだよ」

 

「「……」」

 

じり、じり……と二人の男達が後ずさっていく。

 

 

ふっ、流石に自分の金玉が新しい宇宙を生み出すのは怖いみたいだ。

 

「クソッ、この女……頭おかしいぞ」

「わかってるよ。んなこたぁ……!」

「さぁ、どうする?私はまだ戦ってもいいけど……それなら覚悟しなきゃいけないよ?」

 

私のあまりの恐ろしさに、顔は見えないけど二人は戦慄の表情を浮かべていることだろう。

 

「今日から“女の子”になる覚悟をね」

「「……」」」

 

私と男達は、その場でしばらく睨み合い……。

 

「……退くぞ。あれは俺たちが敵う相手じゃない」

 

先に折れたのは向こうのほうだった。

 

ふぅ、危ねー。口から出まかせも言ってみるもんだな。

 

「チッ……クソが」

 

もう一人の男の方もそれに従い、私を忌々しげに見つめるようにこちらに顔を向けて……素早くその場から立ち去った。

 

「必ず、この借りは返すからな」

 

……なんか、かっこいい風に退場しようとしてるけど。

 

こいつら、金玉爆発すんの怖がってるだけなんだよな……。

 

 

「よ……っと、動かないで。ちょっと痛いよ」

「あぁ……」

 

金玉組が完全に立ち去ったのを確認して、私はレオンの怪我の応急処置に移る。

 

まずは、この矢を引き抜かないとね。

 

「ふんっ」

「ぐっ……」

「“癒しよ(ヒーリング)”」

 

鏃を引き抜き、出血が酷くなる前に治癒魔法で止血。

 

ちょっと跡は残るが、私は専門家じゃない。これで我慢してほしい。

 

「変な毒とかもないみたいだし、良かった良かった。立てる?」

「あぁ、平気だ」

「はい、手」

「……ありがとう」

 

レオンに手を貸し、グイッと引いて立たせる。

 

若干ふらつきながらも、レオンはしっかりと立ち上がった。

 

「で、どうすんの?これから」

「……どう、って」

「“アイツら”……逃げてったけど。追うの?」

「……わからない」

 

わかんないって、あーた。

 

「……帰る所、あるの?」

「……」

 

レオンは、私からのその問いかけに俯くばかりだった。

 

……薄々わかってたけど、アイツらがレオンのこと“奴隷”って呼んだり、この煮え切らない態度と言い……。

 

どうやらレオンは、中々複雑な立場にいるようだった。

 

「……はぁ〜」

 

私は、深々と溜息を吐く。

 

……まぁ、全部自業自得って言ってしまえばその通りだ。処刑を見に行ったりしなければ、レオンを追いかけなければ、アイツらと戦わなければ。

 

私はもっと、平穏に暮らせたはずなのに。

 

「……レオン。そのー、なんていうか……」

 

私は頭をかきながら、恐る恐るレオンに聞いた。

 

願わくば、断ってほしいと内心思いながら。

 

「……ウチ()、来る?」

 

 

 

「いらっしゃいませー!」

「おっ、来たよメリリアちゃ〜ん!」

「あっ、いつもありがとうございます!」

 

ここは『月夜のヒツジ亭』。

 

日々に疲れた男達、明日をも知れぬ冒険者が、一時の憩いを求めて今日もやってくる。

 

「メリリア」

「あっ、アズ先輩。復帰したんですね。大丈夫でした?」

 

いつも通り給仕をしていると、すっかり元気になった様子のアズ先輩が話しかけてきた。

 

「えぇ。その節は……なんていうか、世話になったわね。シスターから聞いたわ。あなたが見舞いに来てくれたって」

「いやー、まさか教会にいるなんて思いもしませんでしたから。びっくりしましたよ」

「悪かったわよ、それは本当に……あと、今までのあなたへの態度も。悪かったわ、ごめんなさい」

「え〜?よく聞こえませ〜ん」

「このっ、そういう所が……!……はぁ、まぁ良いわ」

 

アズ先輩はあれからマスターに言われ、きちんと休息を取って職場に復帰した。

 

心なしか前よりも顔色が良くなった気がする。

 

「それより、メリリア。貴方に聞きたいことがあるんだけど」

「はい、なんですか?常連様の作り方とか?」

「はりたおすわよ。……じゃなくて」

 

アズ先輩は目を細めて言った。

 

「あんた、家に男連れ込んでるって本当?」

「っっっ!!?」

 

持っていたトレーごと私はその場にひっくり返り、積んであった皿がパリンと割れる。

 

マスターが悲しそうな目でこちらを見た。

 

「そ、そんなわけないじゃないですか。あははは……この私に限ってさぁ」

「そうよねぇ」

 

私は割れた皿の破片を拾い集めながら、頬を引き攣らせて笑う。

 

「いえね、マシロがあなたの玄関を24時間体制で監視してるらしくて。それで男が入るのを見たって」

 

それはむしろ、マシロちゃんを問い詰めるべき事案なのでは。

 

「……幻覚ですよ、幻覚。人間サイズの直立歩行する犬と見間違えたとか、どうせそんなオチで……」

「あっ、あのっ。メリリア先輩……?今、表にメリリア先輩に会いに来たっていう、“獣人族”(ビースト)の方が見えてるんですが……?」

「「……」」

 

トレーがガシャンと音を立てて落ち、衝撃でカウンターに並べてあったグラスが木っ端微塵に砕け散る。

 

マスターがとても悲しそうな顔でこちらを見た。

 

「……すいませんマスター、ちょっと表に出てきます」

「(……こくこくと)」

 

その後。

 

“『月夜のヒツジ亭』のウェイトレスが男と痴話喧嘩をしている”という噂で、しばらく酒場は持ちきりになったのだとか。

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