目を覚ますとポケモン(?)がいた件について。 作:さとう。
よろしくお願いいたします。
「名前……個別の名前は付けておりません。種族名で呼んでもしっかり反応してたいので、失念していました」
水沢さんからの質問に回答する。
個別の名前を付けるという考えは思いつかなかった。
元々は一時的に預かるぐらいの感覚だったからか、あるいは俺も弟も、自分で思っているより冷静ではなかったのか。
「種族名でもしっかり反応してくれると言うのは、それもまた1つの大事な情報ですから」
と、水沢さんからフォローが入る。
そう言っていただけてありがたい限りだ。
俺にはどれほどの重みがある情報かはわからないが、水沢さんは何かしらの価値を見出しているのかもしれない。
続いて犬飼さんから、
「ラルトス、でしたか? その子の他に連れているポケモンをお見せいただいてもよろしいですか?」
と、他のポケモンも見たいというリクエストが来た。
良かったねアチャモ、また出られるよ。
そう思ってアチャモを出そうとしたら、勝手に出て来てしまった。
「チャモッ!」
「アチャモ、出来れば呼んでから出て来てね」
俺の言葉に、目を背けるアチャモ。
反応が人間っぽいが、まあ可愛いので今回は不問としよう。アチャモは可愛い。
弟はそんなアチャモに苦笑を浮かべながら、ボールからホゲータを出す。
俺はアチャモの頭を撫でつつ2匹を紹介する。
「こちらの巨大なひよこがアチャモで、そちらの爬虫類がホゲータです」
「ホゲ?」
弟に抱き抱えられたホゲータは、今どんな状況なのかあまり理解していない様子だ。どうかそのままの君でいてくれ。
兎も角として、今こうして3匹を彼らにお披露目となったわけだが、水沢さんと越智さんがポケモンを見て破顔している。元々動物が好きだったか、アチャモの可愛さにメロメロだと言う事だろう。
柿本さんも表情にこそ出さないが、目線はアチャモ達を追っている。皆可愛いだろう?
ホゲータは一応ワニである事を伝えたら凄く驚いていたが、弟が抱き抱えているので安心して欲しいと伝えると少し時間はかかったが落ち着いてくれた。ワニとは言っても、どこかのほほんとしていて、それでいて頭を撫でられると喜んでいる生き物を過剰に恐れることなど出来ようか。いや出来まい。もっとも、暴れられると恐怖を感じるとは思うが。
「……さて。ここからは少し真面目なお話といきましょう」
ポケモン達を見て満足したのか、犬飼さんが話を切り出した。ポケモンの対策についてだ。
最初、柿本さんは『未確認生物対策課』とか名乗っていた。
現状、ポケモン達は未知の生物であり、人間に有害な生き物であるというのが多くの人の共通認識……だと思われる。ネットで見ている限りではあるが。
事実として、今日ここへ来るまでに通行の邪魔になったポケモンもいた。
ポケモンが原因で怪我をしたという情報も聞いているし、停電や、今まで無かった異臭騒ぎ等もポケモンが絡んでいる可能性がある。
もちろん、ポケモンに助けられたとか可愛いとか愛らしいとかいう話もあるが。
そんなポケモン達に、人類は何らかの形で対応しなければならない。受け入れるにせよ拒むにせよだ。
そう、だから犬飼さんからのこれは必要な質問であり、晒さなければならない回答なのだ。
「失礼ですが、藤堂様の現在のご職業は?」
「……今は無職です。少し前に仕事を辞めて、実家に戻って来まして……」
「そうでしたか。こう言っては失礼かもしれませんが、ちょうど良かったと思っております」
話の流れ的に、俺にもポケモン対策に従事して欲しいと続くだろう。だから今の職業を聞かれるのは仕方がないことなのだ。
精神的な自己防衛をしつつ、犬飼さんの言葉に内心で同意する。
市役所等の職員だけでポケモンに対応するには、人員の問題があると予測される。それこそ猫の手も借りたいだろう。そこで無職ヒキニートの出番というわけだ。
それはそうと、こちらを見てうっすらニヤつく弟は後で一発はたく事にする。
「正直に申し上げますと、人手が足りない状況なのです。中心メンバーはここに入る4人で、後は電話対応に他の課の者を借りているくらいです」
臨時で組まれた為に人が少ないらしい。今後、ポケモンへの対応次第では更に人を増やす必要があるが、今はまだ、上もどこまで人員を投入すべきか決めあぐねているそうな。
さらには組織されてすぐと言うこともあり元々の業務も引き継ぎもあるときた。これには皆さんは頭を抱えている事だろう。
「そこで藤堂様には、こちらから業務を委託するという形で、ポケモンへの対応にご助力いただきたいと考えています」
「業務委託、ですか……」
「ええ。最初は個人事業主として開業していただき、ゆくゆくは法人化、あるいは組織化した際にご助力いただければと考えております」
「なるほど……」
最初は小さなところからスタートでも良いが、事が事だけに全国的に、いずれは世界的に対応しなければならない。
そうなると個人ではどうしようもないので、会社を立ち上げて組織で動く必要があるというわけだ。
もっとも、現状組織化するにしても業務内容も定まっていないので、先に方向性等を決める必要があった。
「先ずはある程度の業務、契約内容を固めて、藤堂様へ委託するところから開始です。業務について、今のところ挙がっているのは……」
そう言って列挙した業務内容は大きく5件だった。
1つ、現存するポケモンの確認と情報収集
1つ、ポケモン関連のトラブル等へのマニュアル化
1つ、実際の現場での対応
1つ、法整備に関する助力
1つ、ポケモンまたはポケモンに関わる人物の管理
これだけで足りなければまた増やす必要があるし、当然ながら1人では無理だ。凄く時間がかかるし、仕事量が多すぎる。
だからこその組織化というわけだ。
それに、いずれはポケモンの正体や、Pokemon Stationの製作者は誰で、何故ポケモンを知っているのか、なんの為に作ったのかも探る必要が出てくるかもしれない。これはだいぶ先の話になるだろうが。
「無理強いはしませんが、それでも今は藤堂様に縋るしか道はありません。何卒、お力添えを」
そう言って犬飼さんが深く頭を下がると、それに倣う様に他の3人も頭を下げる。
俺は頭を上げる様お願いした。どの道俺には協力する以外に取れる選択肢はないのだ。
何故かって? ニートだからだよ! 金が無えんだよ!
「勿論です。どこまでお力になれるかは分かりませんが、是非協力させてください」
お仕事下さい。
本音と建前の使い分けは大事だと古事記にも記載されていたはず。
本心の一部を隠しつつ、こちらこそ頭を下げる。
もしも、俺が朝アチャモ達に出会っていなければ。
もしも、彼らのことをポケモンと呼ぶと言うことを知らなければ。
もしも、人類で初めてのポケモンのトレーナーになれなければなら
きっと今頃部屋に篭って、外やべえなとか言ってだらだらしたり家事をしたりしていただろう。就活もせねば、か。
だから、きっとこれはチャンスなのだ。
逃してはいけないチャンスだ。
そう言う思いもあるし、純粋にポケモンをもっと見てみたいと言う気持ちや、これからもアチャモ達と一緒に居たいという想いもある。
だからこそ頑張ってみたかった。
犬飼さんに伝えた通り、俺自身どこまで力になれるかはわからないが、それでもやれるだけのことはやるつもりだ。
市役所を出て帰宅する。
あれから犬飼さんらと契約内容に関して話をして、ある程度まとまったところでその場はお開きとなった。
業務内容に関してや金額、機密情報の取り扱いに関する契約など、色々必要になってくるのである。
アチャモ達と一緒にいる為に頑張ろうとは決意したものの、こう言った契約周りは正直面倒に感じるものだ。勿論とても大事だが。
少し準備をさせて欲しいと言って時間を貰ったので、本格的に稼働するのはもう数日後だが、それでも既に明後日には予定が入っていた。
「兄貴大出世じゃん」
「バーロー……バーロー……」
なんせ一番最初の仕事は、自分のところの県知事に、犬飼さんらと共にポケモンに関する説明をして内容を整理、ブラッシュアップしてから、国のお歴々に説明をすると言う事だ。
まあお偉方への説明自体は知事が殆ど請け負ってくれるとの事なので、資料作成や質疑応答への回答、ポケモンを実際に見せると言うのを俺が担当する事になるらしいが。
スーツ、大丈夫だよな。ダメなら明日朝イチでクリーニング出さなきゃな。
「宏樹、キャベツ出しといて」
「ん」
今後の事を考えつつも、夕飯の用意を進める。
作り置きしておいたので、ほとんど温め直したりするだけだが。
「明日はどうするん?」
「せやな……明後日に向けての準備とフィールドワーク……的な?」
アプリの確認もしたいが、なるべくポイントを稼ぎたいのだ。
宏樹がポケステで確認したポイントを増やす方法として、ポケモンを捕まえることや、戦わせる、と言うのがあった。
捕まえたポケモンが初めて捕まえる種族だった場合に2,000Pt入ってくる。つまり、今俺の手元には、ラルトスを捕まえた分の2,000ptがある。
ちなみに初期で5,000Ptあったのは、トレーナーになったという実績で3,000Ptとアチャモをゲットした分の2,000Ptだ。
さて、暫くは新たなポケモンを捕まえる事で、Ptを稼ぐのが良いと考えているが、これではすぐに稼げなくなると考えている。
一応、同じ種類のポケモンを捕まえても500Pt得られるそうだが、8匹捕まえてポケモンフード代になると考えると、なかなか割に合わないと考えている。
ポケステ曰く、そもそもボール1個で確実にポケモンを捕まえられるわけでは無い、らしい。
餌代も稼ぎつつ捕獲のためのボールのポイントも稼ぎつつと、なかなか厳しくないか……?
後は、避けては通れない戦闘に関して。
戦闘をして相手を倒したり、戦闘を経て捕獲する事でポイントを稼ぐ事が出来るとのこと。具体的なポイントの記載は無く、相手の強さによってポイントは変動するそうだ。
世間にポケモンのことを発表するまでは、大々的にポケモンの戦闘は出来ない。が、明日は目立たない様に試してみようかと思っている。これは必要なことだ。
人の所持するポケモン同士を戦わせる事でもポイントを稼ぐ事が出来る様なので、今後は人の所持するポケモン同士を戦わせてポイントを稼げる仕組みを作るか、あるいは大衆娯楽にまで発展させていく必要があるだろう。
考えれば考える程先は長く険しい修羅の道だと実感するが、まあ明日の事は明日の自分に任せよう。
今はただ、キャベツを摘み食いしようとするアチャモと、頭に引っ付くラルトスをどうにかせねばなるまい。
ポケモンは可愛いが色々大変でもある。
ポケモン達の名前決めは次回の予定です。