東の地スタフ。
不毛の大地が続くその場所は組織の本拠地でもあった。
そんな場所で、報告を受ける一人の男がいた。
「──エマニュエルが離反か。いつかこうなる気はしていたが……」
「悠長に構えていられません。今すぐにナンバー上位を招集して──」
「不要だ」
「……は?」
「不要だと、言っている。わざわざ死体の山を作る必要もない」
「で、ですが。それでは組織の秩序が」
「死んだとでもしておけ。話は終わりだな?」
「は、はい」
組織の長リムト。名実ともに組織を統べる男だった。
その決断に意を唱えられる訳もなく下がっていく報告者の姿を見送りながら、リムトの脳裏によぎるのは件のエマニュエルのこと。
──非常に、変わった奴だった。そして組織の予想をはるか上回る強さを持っていた。
「残念ながら、その複製体を作ることは断念されたが。……もし奴が複製できれば、我々の勝利に大いなる貢献が出来ただろうな」
ボヤき、椅子に腰掛けたまま思案するリムトに新たな声がかかる。
嗄れた、不気味な色の滲む声だった。
「リムト様。ぜひお耳に入れておきたいことが……」
顔面の半分が、まるで火傷で爛れたように剥がれて眼球と歯肉が剥き出している悍ましい風貌の男。
──技術責任者であるダーエ。
エマニュエルに強い関心を抱いていた男でもあった。
「ダーエ」
「はい」
「これもお前の計画の内か?」
「いえいえ、滅相も無い。私はしがない技術者ですから。──少しばかり、奴には期待していますが」
離反しても尚、期待と口にするダーエの思惑は、リムトですら読みきれない部分がある。
しかし、有能である故に処分することもできない。
「……今度こそ答えてもらおう。なぜ、エマニュエルに『戦士の作り方』を教えた?」
「あぁ、はいはい。あれですか」
ニンマリと、ダーエは嗤った。
「アレは頭がおかしいと思ったものですから。私には無い発想で、そしてアプローチで必ずや動いてくれるでしょう」
「答えになっていない。何を目的としている?」
「私にも、答えはまだわかりませんよ、リムト様。ただ現実は予想を容易く覆してくれる、というまでの話でして……」
「……。エマニュエルに関してはお前に一任する」
「はい、ありがとうございます」
「で? 耳に入れておきたい事とはなんだ」
「ええ、はい。兼ねてより実験していた覚醒者の遺骸を活用する方法ですが、ある程度の目処がつきそうです」
「……『深淵喰い』といったか?」
「はい。とはいえ、まだ目処がつきそう、といった段階でして。さらなる飛躍にはより多くの検体が必要になります」
「……いいだろう。追って『人員』を送る」
「ありがとうございます」
「そのおもちゃを使って、何を考えている?」
「ええ、はい。──少し、肉を分けてもらおうかと」
そう言って、ダーエはニンマリと嗤った。
次回からエマニュエル視点に戻って、話を大きく動かしていきます。