「──はぁ、ほんと疲れた」
エマニュエルが去った後だった。
大の字になって倒れ込むのも当たり前だとリフルは思う。
これほど疲れたのはいつぶりだろうか。人間の時と訓練生の時と戦士の時。そのいずれでも記憶にないくらい疲れた。
ヒンヤリとした地面の温度を背中で感じつつ瞼を閉じて休むが、斬られた腕と足がジクジクと痛む。
それでも時間が経てば回復するだろう。覚醒者とは、まさしく人間をやめているのだから。
そんな風に休んでいると、近寄ってくる人影を感じる。
エマニュエルとの戦闘を観察していた覚醒者。その人物はリフルが配置したのだから知らないわけがない。助けに来なくてもいいと言っておいたし、そもそも来なくていいとすら言っていた。
とはいえ、別の方向での非難を混じらせて声を上げる。
「ちょっとダフ。あんた、なんで逃げなかったのよ」
「ご、ごめん。でも、リフルが殺されるかと思って……」
「それなら、いらないって言ってたでしょ。……って、その気なら助けに入れるタイミングあったでしょうに。ったく、あんたってば珍しく優柔不断ねぇ」
気弱そうに肩をすくめるのはダフと呼ばれた男の覚醒者だった。
短髪に少し間の抜けた表情。隆々とした肉体を持つ男である。
「──で?」
「え?」
「え? じゃないわよ。なんで中途半端に見てたのよ。あたしが殺されてたら、次はあんただったでしょ」
「う、うん……。でも、もしリフルが殺されるなら、おでが助けるよ」
「はいはい。そういうのいいから」
残った腕で身体を支えて起き上がる。振り乱した髪が砂まみれで気持ち悪いが、それ以上に気になる事があった。
有無を言わさず、起き上がってすぐに鋭い眼差しをダフに向ける。
「──アイツとなんかあったの?」
女の勘、というものだろうか。
ハッキリとはわからずとも、ダフの物言いや反応から察せた事がある。
──ダフは、エマニュエルを知っている、と。
リフルからの視線を受けてまごまごと口を動かすダフだったが、一際強い眼光を差し向ければ諦めたように口を開いた。
「アイツは……、エマのことは、訓練生の時から知ってるんだ」
「は? 誰の?」
「おでと、エマの。……おでは、エマと同期なんだ」
それは少し予想外の関わり合いだった。せいぜいが以前戦ったことがある程度だと思っていたのに。
「……待って。同期って、初代ってことよね」
「ああ、そうだよ。イースレイとか、リガルドとか」
指を折りながら数えるダフに、混乱が止まらない。
「待ちなさいよ。──アイツは女でしょ? なんで初代なのよ」
「……リフル。アイツは、男だよ」
「──はぁ!!?」
今日一番と言ってもいい驚きが、リフルの喉から弾けた。