CRYMORE   作:風梨

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約1000字




性別

 

 

「──はぁ、ほんと疲れた」

 

 エマニュエルが去った後だった。

 大の字になって倒れ込むのも当たり前だとリフルは思う。

 これほど疲れたのはいつぶりだろうか。人間の時と訓練生の時と戦士の時。そのいずれでも記憶にないくらい疲れた。

 

 ヒンヤリとした地面の温度を背中で感じつつ瞼を閉じて休むが、斬られた腕と足がジクジクと痛む。

 それでも時間が経てば回復するだろう。覚醒者とは、まさしく人間をやめているのだから。

 

 そんな風に休んでいると、近寄ってくる人影を感じる。

 エマニュエルとの戦闘を観察していた覚醒者。その人物はリフルが配置したのだから知らないわけがない。助けに来なくてもいいと言っておいたし、そもそも来なくていいとすら言っていた。

 

 とはいえ、別の方向での非難を混じらせて声を上げる。

 

「ちょっとダフ。あんた、なんで逃げなかったのよ」

 

「ご、ごめん。でも、リフルが殺されるかと思って……」

 

「それなら、いらないって言ってたでしょ。……って、その気なら助けに入れるタイミングあったでしょうに。ったく、あんたってば珍しく優柔不断ねぇ」

 

 気弱そうに肩をすくめるのはダフと呼ばれた男の覚醒者だった。

 短髪に少し間の抜けた表情。隆々とした肉体を持つ男である。

 

「──で?」

 

「え?」

 

「え? じゃないわよ。なんで中途半端に見てたのよ。あたしが殺されてたら、次はあんただったでしょ」

 

「う、うん……。でも、もしリフルが殺されるなら、おでが助けるよ」

 

「はいはい。そういうのいいから」

 

 残った腕で身体を支えて起き上がる。振り乱した髪が砂まみれで気持ち悪いが、それ以上に気になる事があった。

 有無を言わさず、起き上がってすぐに鋭い眼差しをダフに向ける。

 

「──アイツとなんかあったの?」

 

 女の勘、というものだろうか。

 ハッキリとはわからずとも、ダフの物言いや反応から察せた事がある。

 

 ──ダフは、エマニュエルを知っている、と。

 

 リフルからの視線を受けてまごまごと口を動かすダフだったが、一際強い眼光を差し向ければ諦めたように口を開いた。

 

「アイツは……、エマのことは、訓練生の時から知ってるんだ」

 

「は? 誰の?」

 

「おでと、エマの。……おでは、エマと同期なんだ」

 

 それは少し予想外の関わり合いだった。せいぜいが以前戦ったことがある程度だと思っていたのに。

 

「……待って。同期って、初代ってことよね」

 

「ああ、そうだよ。イースレイとか、リガルドとか」

 

 指を折りながら数えるダフに、混乱が止まらない。

 

「待ちなさいよ。──アイツは女でしょ? なんで初代なのよ」

 

「……リフル。アイツは、男だよ」

 

「──はぁ!!?」

 

 今日一番と言ってもいい驚きが、リフルの喉から弾けた。

 

 

 

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