千空さんと凡人さん。番外編   作:燈葱

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if√ 凡人は石の世界で推しに微笑む。弍

 

 2 凡人、叫ぶ。

 

「何故、何故なの? 何故なのよぉぉぉおおお!」

 

 そう叫んだのは誰?

 

 私だ。

 

 そう叫びたくもなるのも致し方がないだろう。

 だって私が目覚めたのは3700年後の未来。

 現代科学が滅び、ストーンワールドとなってしまった世界なのである。

 あれほど全て終わってから起こしてくれと頼み込んでおいたというのに、目覚めたらそこは一面の緑色。

 

 つまりは森の中。

 

 麗しい最推しの小馬鹿にした笑顔に見惚れたものの、ソレに気づいた瞬間私の顔は血の気がひき青ざめたことだろう。

 

 千空の隣にいた大樹と杠がどうしたのと声をかけてくるが、私の口から出てくるのは生ぬるい息だけで喉が震えることも、音を発することはない。

 もしかしてアメリカ大陸かと考えてみてもそばにあるのは見覚えのあるツリーハウスで、日本であることが確定。

 もしかしてビックリさせるための演出かと疑っても私の着ている服も、千空が復活液を入れていたと思われる陶器もどう見たって現代科学が使われているとは思えないなかった。

 

 それに何より、三人の顔が、私の知っている三人"そのまま"であったのだ。

 

「──今北産業?」

「石化復活、文明復興中、テメェが最後」

「ノォォォオオオン! まだ何も終わっちゃいないじゃない! 何故、何故なの? 何故なのよぉぉぉぉおおお!」

 

 と冒頭に戻る。

 

 大樹いわく、ストーンウォーズが終わったのだからこれ以上の危機はないとの事。

 

 杠いわく、これからの生活に私の知識を組み込んでいきたいとのこと。

 

 千空いわく、自由に使える復活液がこれで最後になるということ。

 

「WHY!」

 

 ストーンウォーズが物語の終点であればたしかに私の伝えた"終わり"には当てはまる。故にこの先を知らない人間からすればそう判断してしまっても致し方ない。

 

 だがそうではないのだ。

 

 私が言っていた最後は人類最後の意味で、復活液最後という意味ではない。

 それになによりストーンウォーズはまだ序盤、この後に宝島編があって海路があって、アメリカに行くまではあるんですが何か!?

 え、そんなの知るわけないって?

 

 私だってそんなのしらねぇよ!

 

「──ぅの! 千空のっ!!」

「あ"?」

「千空のネギ頭ぁぁぁあ! 白菜カラーのクセにイケメンのくせにっ! 顔と声が無駄にいいくせにぃぃぃい! 無駄じゃないけどぉぉおお! そんなとこも好きだけどぉぉお! でももう知らないっ! 大好きで色々知ってるけど知らないっ!! 千空のアンポンタン! 私が耐えきれなくなるまで絶交だコンチクショー!! がんばるぅぅう!」

「っおい! 待て、茉莉!?」

「ぴえーん!」

 

 背後で私を止める声など聞かずすぐさま逃走するくらい、私はパニックに陥っていた。

 まさかぴえんなんて言うとは、思ってもいなかった。

 だがしかし、そこまで取り乱す程今の状況を理解できなかったのである。

 

 二、三分猛ダッシュを続けて茂みに身を隠し、そして今が漫画のどのあたりかを考察する。

 

 自由に使える復活液が最後ってことはまだ宝島に入ってない。WHYに過剰反応しなかったし、まだソナーも出来ていない時期と考えるのが妥当だろう。龍水がいるかどうかは怪しいところだが、もしかして私のせいで龍水とフランソワの分の復活液ないとか、そんなのはないよね?

 千空が自由に使える復活液ってことでいいんだよね?

 じゃなきゃ色々詰んで死ねる。

 

「ノォォォオオオン。まさかの展開すぎてイミフ!」

「──っ茉莉ちゃん!」

「杠? どしたの?」

 

 悶々と思考を巡らせていると息を切らせた杠が私の肩を掴んでいて、眉を下げてごめんさいと頭を下げた。

 

「千空君はまだ茉莉ちゃんを起こすべきじゃないって言ってたの! でも私と大樹君がもういいんじゃないかってお願いして、それで茉莉ちゃんは復活したの! だから、だから! 千空君は何も悪くないの!」

「ウェーイ! なんてこったい」

 

 千空を庇う杠、可愛す。こんなに千空庇われたら責められないじゃない。

 たしかに明確なお願いをしなかった私も悪いし、千空だけを責められないか。

 

 だがしかし、あんなに啖呵を切ってしまった。そしてなにより、それでも私を起こした千空に憤りもあるのだ、色々と。

 

「杠の言い分はわかったよ。でもね、私にも引けない部分があるんだ。だから落ち着くまで千空とはあわないよー!」

「え!? それはちょっと……!」

「まずは現状確認じゃあ! 行きますわよ杠さん! キリッ!」

 

 と、杠の手を引いて森の中を歩いていく。

 結局どこに何があるかなんてわからないから杠に案内させたのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 元司帝国を観察しているとやはり居住区の作りが甘いように思えた。石神村の人間が監修していればもう少し良い家が作れたのかもしれないが、察するに今はストーンウォーズ終了直後。村の人間がここに来たことはないのだろう。

 

 司の姿は見えないし、現代人の殆どが連携が取れていないようにも見える。氷月もいないが大樹と杠、千空が一緒にいたことから考えれば漫画通りにことは進んだと思われる。

 

 本当に何故今の時期に起こされたんだろ、私。

 

「茉莉ちゃん? 大丈夫? やっぱりなかなか信じられないよね、こんな状態だもん」

「いやー? 信じてはいるけど、理解が追いつかないてきな? 私が出来ることそんなないよね?」

「そんなことないよっ! 茉莉ちゃんが私や大樹君に色々教えてくれてたからスムーズに進んだこともあるんだよ! 毛皮のなめし方とか加工方法とか、凄く役に立ってるの! 経験がなかったらここまでくるのに苦労したと思うもん」

 

 そういえばそうだった。

 千空に関わると決めた私は大樹と杠、それぞれに必要であろう知識を教え込んだ。二人とも何でこんな事をと反感することなく毛皮の加工方法も食べられない植物を覚えてくれたから、凄くありがたく思った記憶もあるし尊い思い出がいっぱいです。

 思い出しただけで何故だが幸せになる不思議。

 

 いやでも、それは置いといて。

 

「とりあえず家をもうちょいマトモにしようか。こっちに職人さん的な人いる? その人とも話して決めていこう。 あと保存食は平気? 鮭とばベーコンとか、魚醤とか肉醤とかも時間を見つけて作っていこう、小麦見つけてうどんも食べたいね!」

「うん! じゃあ千空君のとこ行こうか!」

「行かない☆」

「何で!」

「私が我慢できなくなるまで会わないって言ったもん、有言実行! 約束は守らなきゃならんのですよ」

「茉莉ちゃん、何日もつの?」

「茉莉ちゃん、ガンバル!」

 

 

 時代が時代なら速攻千空にあって抱きついて、推し補給したい。

 石神村との絡みとか、ゲンとの絡みとか、クロムとの科学談話とかかなり聞きたい。今すぐ駆け出しても聞きたい。

 

 でもそれじゃいかんのです。

 

「私にだって、意地というものがあるんですよ」

 

 千空なら、合理的思考の千空なら、いくら二人に言われてたからと言って石化を解く事をしなかったはず。

 なのにソレをしてしまったということは、思考が乱れているのだ。ゆえに今はまだ、私は千空に会えない。

 

「ちゃんと千空が私の気持ちに気づいたらギャン泣きしに千空の胸に飛び込む!」

「うん、茉莉ちゃんは茉莉ちゃんだった。早く仲直りしてね?」

「ガンバル!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんて言いましたが、すでに3日で辛たんです。ぴえん。

 

 

 

 

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