千空さんと凡人さん。番外編   作:燈葱

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書きたかった水着回。+イチャイチャネタが見たいとリクエストが来たので精一杯ならイチャコラ。

時間軸、帆船製作中の夏。


その11。

 

 

 

「茉莉ちゃん!頼まれてたものできたよ!」

「んー、ありがとう」

 

 茉莉がお礼を言いながら杠から受け取ったのは、最近生み出されたばかりのシルクを使った水着である。

 流石に皮の服で遊泳する気になれなかった彼女はついに、満を持して海へ向かう。これで海の幸ゲットだぜ!と思いつつ、本当の狙いは寒天を作るために必要な天草だ。夏の暑い日といえば心太。それを食べるためにいそいそと海へ駆け出したのだ。

 

 海に着くや否や着替え用にテントを張り、その中で受け取ったばかりの水着を広げる。麻の布ができたあたりに杠に作成してもらった下着と似た作りであるそれは、若草色に染め上げられていた。

 

 水着が欲しいとは言ったけれど、露出が多い。

 

 紐パンとチューブトップ型の水着は今着ている下着と大差なく、水着か下着かの言い方の違いしかない気もする。

 そう思いつつもいそいそと水着に着替えた茉莉は海に飛び込む。

 海中水泳はもちろん、3700年前に習得済みな茉莉なのである。

 

 

 茉莉が目的を達成するため天草を採取している頃、彼女を探す人物が一人。それは彼女が推しと奉る千空である。

 帆船作りの合間合間に時間を作り彼女に仕事(主に今までに作ったクラフトの資料作りである)を割り振っているわけなのだが、今日はそれを伝えていない。流石にまとめるものが多過ぎて隙間時間にメモを渡しているのだが、それをまとめるはずの茉莉がいない。

 仕方なしに周りに声をかけていけば和かに笑う杠に行き着いた。

 

「茉莉ちゃん?なら海にいったよー!海藻取るって言ってたかな?」

「ククク、助かったぜ手芸部。あんにゃろうまた個人行動しやがったな」

「んー、でもまた食べもの関係だよね?凄く有難いから許してあげてほしいな、なんて!」

「わぁってる」

 

 居場所さえわかれば問題ないと千空はその場を後にし、残された杠は仲良しでいいですな!と笑って見送った。

 

 

 

 

 

 

「茉莉!ラボから離れんなら一言かけてから出かけろ、探すのが面倒くせぇ」

「あー、ごめんね?今度から気をつける」

 

 千空が浜へ着いた頃には茉莉もちょうど陸に上がったばかりで、肩より長く伸びた髪を両手で絞っていた。この時代じゃ吸水性の良いタオルなんてものはなく、あるのは杠製の麻布。無論麻故に吸水率は悪くはないが十分に吸い取れるわけでもなく、それ故に髪の水気は絞った方が早い。

 

 茉莉のそんな様子を観察していた千空は視線を上から下に移し、ふと思う。

 思っていたより茉莉の体が薄いと。

 普段はダボダボの服を着ているからそこまで感じるものではないが、こうも素肌が出てると思うものもあるわけで。

 千空は徐に茉莉に近づくと、その腰を両手で掴んだ。

 

「ふへっ⁉︎」

「テメェちゃんと食ってんのか?」

 

 するりと掌を滑らせてみれば、柔肌のすぐ下にあるのは筋肉で皮下脂肪など全くないのがわかる。

 

「い、ふぁっ」

 

 グッと筋肉の筋に沿って親指で押してみると、自身のものとは違い柔らかさもあった。

 

「ひっ、は──ンン」

 

 ぱっとみコハクと変わらない割に、腹筋は茉莉の方が目を引く。

 

 メスゴリラの方が贅肉があんじゃねぇか。

 

 などと失礼なことを考えながら腰を掴む指を動かし体脂肪が20%以下だと予測し、千空はもうちょい太れと告げるために視線を腹から顔に向けた。

 

「テメェ、もうちょい──」

 

 太れ。

 そう言いたかったはずなのに、目の前にいる彼女の顔を見た瞬間言葉が出てこなかった。

 頭半個分違う茉莉は顔を真っ赤にさせて目を背けており、千空は今し方、自分が何をしでかしたか気付いたのである。

 

「──は、ふっ。ッこのっ!」

 

 千空の動きが止まったことに気づいた茉莉は力一杯突き飛ばし、千空はそのままバランスを崩して背中から海へとダイブ。

 水が派手に跳ねる音と共に、茉莉は必死に頭を動かし千空を責めた。

 

「お、お腹は弱いんだからくすぐらないでもらえますかねぇ⁉︎もう、アレですよ⁉︎私じゃなかったらセクハラでしょっ引かれてるからね!」

 

 お前だったらいいのかよ、と突っ込むものはここにはいない。

 

 茉莉も茉莉で推しからの過剰配給により頭が回っていなかったのだ。

 いきなり千空が近づいてきたことに驚き、腹を触られてビビり。羞恥心から泣き出したくなり、その触り方が擽ったくて仕方がなくて、だけど振り払えない。

 何が何だかわからない状態で、それこそ推しを押し飛ばしたと気付くのはペションと萎びた千空の髪を見てからであった。

 

 ひゃ!おひたし千空!SSRじゃないですか⁉︎

 

 先ほどの羞恥心はどこにいったのやら。

 茉莉のテンションは爆上がりし、そのままんぐぐと唇を噛み締めて笑みを堪える。

 その姿を見た千空は触り過ぎて怒っていると勘違いしているのだが、訂正するものもここにはいない。

 

 先ほどのやり取りなど記憶から消え去った茉莉は内心はわはわとしながらも、突き飛ばしてごめんねと謝罪し千空に手を伸ばす。そして。

 

「うわっ」

 

 ぐいっと引き寄せられ、そのまま海へダイブ。

 否、千空の胸へ飛び込んだ。

 

「は、へ?」

「クククッ、茉莉テメェちゃんと怒れんのな」

「は、千空君は私に感情がないと思っておいでで?」

「あ"?普段から碌な顔してねぇ奴がいんだからそう思っても仕方ねぇだろ」

「あんまりだっ」

 

 私が普段、どれだけニヤけるのを我慢してるか知らないで。

 そう言えない茉莉は眉間に皺を寄せながら今度こそ千空の手を引き立ち上がる。

 そしてテントから麻布を取り出して千空の髪を拭き、その後自分の服を手渡した。

 

「服、濡れちゃったからこっち着て戻りなよ。着方もおんなじだしサイズも問題ないでしょ」

「……テメェはどうすんだ」

「もうちょい天草採ってから戻るし、その頃には乾いてるかなと。お借りしても問題ない?」

「まぁ、問題はねぇな」

「じゃあそゆことで。……あ、そいやなんでここにきたの?」

「あ"ー、まとめて欲しいもんのメモ持ってきたんだがな、こりゃ無理だな」

 

 そう言って千空が取り出したのは文字の読めなくなってしまったメモ用紙だ。すでに文字は滲んでいて、何が書かれていたか解読は不可能だろう。

 

「あー、こりゃ無理だ」

「夜までにまとめ直しておくから問題ねぇ」

「申し訳ない」

 

 茉莉はもう一度謝りながらテントを出ていき、千空は体を拭いたのちに渡された服に腕を通す。

 確かにサイズ感も着方も同じだが、なんとなく違和感があるわけで。

 いつもと違う匂いとか、感覚とか。

 大差ないはずなのに、なんとなく何かが違う。

 

「あ"ー、戻ったら着替えっか」

 

 なんとなく、このままじゃ仕事にならない気がして。

 

「茉莉、先に戻る!気ぃつけろよ」

「んー、わかったぁ」

 

 違和感を抱きながら、千空は仕事に戻った。

 そしてそれを見ていた茉莉は海に潜り、必要以上にぶち上がってしまったテンションを宥めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 オマケ

 

 千空と銀狼。

 

 

「あれ?千空、何かいつもと違くない?」

「あ"ー、茉莉の服着てっからだろ」

「へー、そうなんだぁ……ってなんでぇ⁉︎」

「服が濡れたんだよ」

「だからって、なんで⁉︎」

 

 

 

 ※※※

 

 

 茉莉とコハク。

 

「ん?茉莉、その服は千空のものではないのか?」

「あー、千空君海にドボンしちゃって。風邪引くといけないから私の服貸して、代わりにこっち乾かしてから借りたんだ」

「わざわざ脱いでまで、か?」

「いや、私、水着着て泳いでたから。だから貸せたんだよ」

「なるほど!だから千空も茉莉の服を着ていたのか!」

「そゆこと。コハクちゃんも後で杠ちゃんに水着もらうといいよ。泳ぐの楽しいだろうし」

「うむ!楽しみにしておくとしよう!」

 

 

 

 ※※※

 

 余談の茉莉。

 

 はー、千空パイセンの服とかヤバいんだが?

 いい匂いがするとか何故?千空はお花の妖精だったのかな?あ、白菜か。

 あー、なんで服交換しちゃったんですかね?

 誰かに頼んでもらって、持ってきて貰えばよかったのでは?

 

 あー、推しの服を着てしまうのか。

 流石に下着で帰れないもんね?

 

 よし、きよう。

 

 

 ────今日が、命日かなぁ。

 

 

 

 

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