いただいネタより。記憶退行茉莉ちゃん。のその後のお話。
※ご都合主義です!
本編とは別物とお考えください。
「茉莉ー!一緒に遊ぶんだよー‼︎」
「今日こそは遊んでもらうでぇー!」
「っいや、ごめん仕事が……」
茉莉の精神年齢が幼くなってしまったのはおおよそ一ヶ月ほど前。数日前にようやく姿を現し始めた茉莉であるが、村の人間も復活組も彼女をみる目は暖かかった。
何故ならば皆が知ってしまったのだ。
茉莉という少女が本来どんな性格であったかと、全てのものに呼吸をするかの如く自然に怯えてしまうのだと。
彼女は護るべき対象だと思い込んでしまうほどに、皆が皆、茉莉に対しての印象を真逆に変えてしまったのである。
あの日までの茉莉は知識豊富なみんなの先生であったが、今では必死にいろんなことを覚えて頑張って生きているバブちゃん。
そうなるために何があったか千空に聞いたところでその理由は分からず、ただ彼女の性格と技術の全ては努力によって形成されているとだけ伝わってしまった真実。
あの時の笑顔を覚えているものはもっと気楽に生きていいのだよと仕事を奪い取り、些細な事で驚き泣いた姿を見たものはもう怖いものはないんだよと彼女の前から危険を排除した。
つまり、茉莉の仕事のほとんどが他者によって奪われてしまったのである。
下心のあるものはまたあの幼い笑顔で笑ってくれないかなとも考え、うっかり千空並みに甘えてくれたらいいなとも考える者もさもありなん。
「茉莉ちゃぁぁあん!よかったら僕と一緒にわたあめでも食べようヨォ!」
「待つんだ銀狼!茉莉は私とルリ姉のところに行く予定があるのだ!」
「はっはー!美女達の戯れを見るのも一興だが、俺と共に来い茉莉!フランソワがデザートを作って待っているぞ」
「ゴエンリョしときますー」
上から銀狼、コハク、龍水の三人である。
仕事を代わってくれた羽京とニッキーもいるが、あからさまに構おうとするのは概ねこの三人でもあった。
何これ、どんなギャルゲーだよ。
そんな思いを募らせた茉莉は逃げ出すのだが、何てったって周りが生やさしい目で見てくるのだ。どこに行ったって地獄でしかない。
一度マグマや金狼ならば態度を変えないのではとうしろにそっと隠れてみたこともあったが、その時は両手を広げられて見えないように庇われた。
君らも私をバブちゃん扱いするの⁉︎と唖然とした挙句にその場から逃げ出した記憶は真新しい。
物陰に潜みながら逃げ出して、人目を盗んで駆け抜けて。
結局いつもたどり着くのはラボであった。
ラボには大抵カセキとクロム、千空がいて、最初こそクロムは茉莉に探検自慢を聞かせてきたのだが彼女が黙って聞いていればアレ?と首を傾げたのだ。
幼少期に戻っていた茉莉ならばすごーい!どうやったのー?とバブちゃん並みに何故何故期であったのだが、元に戻ればそんな事あったんだーと塩対応しか返ってこない。
茉莉が内心そんな事やってたんだ、マジですごいね?と考えていたところでそれを察する術はなく、クロムは幼少期と今は違うのだと誰よりも早く分別をつけて接することができたのである。
「んで、オメェはまた逃げてきたんか?ククク、人気者は大変だなぁ?」
「全くもって嬉しくない。何でみんな分別つけてくれないのっ」
「オホホー、そりゃ茉莉ちゃんがあんなに可愛いんだもの。構いたくなっちゃうものよ?」
「もうワスレテヨ」
「いや、あれは忘れらんねぇだろ」
クロムの返答にがくりと頭を垂らす茉莉を見た千空はニヒルに笑い、カセキは優しく肩を撫でる。
この三人だけは自分をお子様扱いしないと理解している彼女にとってラボは唯一の逃げ場所であった。
しかしその楽園も壊れるときはあるもので、ひょろっと現れたゲンは茉莉を外へと連れ出そうとした。
「ほらほら茉莉ちゃーん、お子様達が遊ぼうって誘ってるよ♪行ってあげなきゃ!」
「げ、私はいいってば」
「今まで頑張った分、遊んだ方がいいって!お子様達も待ってる事だしね、いいよね千空ちゃん?」
ラボの外から聞こえるスイカ達の声に茉莉は冷や汗を流し、千空に縋るような視線を向ける。
「せ、千空くん、お仕事っ──」
今この場で誰よりも頼りになるのは千空ただ一人なのだ、お願いだから見捨てないでと茉莉は必死に視線で訴えた。
流石にゲンよりも茉莉の方が筋肉があるため引きずられることはないが、握られた手が離されることはない。
ゲンとて茉莉に嫌がらせをしているわけでもなく、この年までほぼ遊ぶことがなかったという彼女のことを思っての行為であるのだが茉莉がそれを知る術はなく。
必死に勘弁してと目で訴えていると、ため息をつきながらも千空はゲンを窘めた。
「ゲン、オメェもそんくらいにしとけよ。本人がイヤっつってんだから連れてくんじゃねぇ。ただでさえ作業が遅れてんだ、茉莉はここで俺らと楽しいクラフトがあんだよ」
「えぇーでもさぁ?みんな茉莉ちゃんと遊びたいって」
「そこはメンタリストのテメェの出番だろ、どうにかしろ」
「ドイヒー!茉莉ちゃん、本当にダメ?」
「ダメ!」
「──そっか、じゃあ外のみんなには言っておくよ。仕事がんばってねぇ」
バイバーイと手を振るゲンの背中を眺め、茉莉は盛大にため息を吐く。こんなところに伏兵がいたかと頭を垂れながら、ソロソロとしゃがみ込んだ。
「……もうイヤァ」
「人の噂も七十五日っていうだろ、それまで我慢しとけ」
「長いぃ」
珍しく眉を下げながらどうしてこうなったと天を仰ぎ出した茉莉の頭に千空は手を伸ばし、そして触れる前にそれをやめた。
茉莉が子供扱いされる事を嫌がっているのは分かっている。それなのに頭なんて撫でたらここからも逃げ出すだろう。
案外俺も引きずられてんな。
と千空は小さく息を吐き、撫でる代わりにその頭をこづいた。そして庇ってやったのだから働けと言葉をかけたのである。
「やることは山ほどあんだ。きびきび働けー」
「んー、了解」
ほっとした表情した茉莉はそのまま千空の隣で作業を始めた。
千空は何事もなかったようにそれを眺め、今はまだこの距離でいいのだと己に言い聞かせたのである。
※※※
千空とコハク。
「茉莉はもっと甘やかすべきだ!」
「いや、本人が嫌がってんだろ」
「ぐぬっ、でも、茉莉は頑張っているし……」
「だからって甘やかすことはねぇだろ。本人も望んでねぇ」
「うむ、そうなのだが」
「それよりそろそろその態度を辞めてやれよ。いい加減にマジで失踪されんぞ」
「うむ、善処しよう」
※※※
千空とスイカ。
「千空ー、茉莉はどこにいるんだよー?」
「あ"ー、悪りぃなスイカ。あいつには別に仕事頼んでんだわ」
「そう、なんだよ。また花冠作りたかったんだよぉ」
「……また後でな」
※※※
千空と茉莉。
「もう無理」
「諦めろ」
「だってみんながひどい」
「あれでも善意だ」
「だからこそ辛いんだもん」
「──ならいっそのこと、甘えてやれよ」
「無理」
「──ほんと、テメェは」
「なに?」
「何でもねぇ」
何でテメェはそうなった。
その疑問を千空はまだ問うことはできない。
リクエスト頂いた幼児退行後のお話。
多分みんなギャップにやられて甘やかしたい衝動に駆られると思ってやりました。
個人的にはマグマさんが兄貴風を吹かせてると良き。嗚呼あったタイプは子供はちゃんと守ってくれるのでは?と幻想を抱いております。
ぐへへ、みんなに可愛がられる茉莉ちゃんかきたいけど、そうするとどうするとifネタになってしまう。
お酒飲んでみんなに甘える茉莉ちゃん書きたいけど、過保護なパイセンが出てきそう。羽京さんにもいい子いい子してほしい。
そんな願望にまみれております。